前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

「英タイムズ」「ニューヨーク・タイムズ」など外国紙が報道した「日韓併合への道』㉒「伊藤博文統監の言動」(小松緑『明治史実外交秘話』)⑦『前代未聞の退位と即位』

      2015/09/14

 

「 英タイムズ」「ニューヨーク・タイムズ」など外国紙が

報道した「日韓併合への道』の真実㉒

  「伊藤博文統監の行動」(小松緑『明治史実外交

秘話』中外商業新報社, 昭和2年刊)より)⑦

『前代未聞の退位と即位』

『前代未聞の退位と即位』

林外相の入京した十八日に、首相李完用始め閣員一同が三たび参内したが、光武帝は、臣として君に退位を迫るのは無礼なりとて聴き容れなかった。この時一番末座に控ていた宋秉畯(そうへいしゅん)がズカズカと前に進み、

『日本は、今回の密使事件のみならず、従来陛下の十五回に亘る背信行為につき確実なる証跡を握れり。統監、若しこの証跡を挙げて陛下に迫らば、陛下はただ知らずの一語を以て免れ給う可らず。陛下強いて偽りを以てし給わば、邦家の災は益々重大を加うるに至らん。苦し陛下の逃れ給うべき途為らば、臣等登にこれを求むる労を厭うものならんや。今臣として君の退位を勧むるは真にやむを待ざれはなり。切に明鑑を仰ぐ。』と言上した。

ここまで直言されては、如何に固い光武帝の心も動かざるを得なかった。なお李完用は林外務大臣が本日を以て入京し、時局切迫、最早一刻も猶予すべきにあらずと言葉を添えた。

光武帝は閣員の意見一致すといえども、元老に問わざるべからずとて、閔泳韶(びんえいしょう)、李允用(りいんよう)、申箕善(しんきぜん)、閲泳微(びんえいき)、李重夏(りじゅうか)、李容植(りようしょく)等を召して譲位の可否を諮諭されたが、いずれも内閣諸大臣の奏するところに賛同したので、光武帝はここに始めて意を決し、四十四年間占有された図位を皇太子に譲らるることを宜言された。

それは十九日の午前二時であったが、三時には早くも譲位の詔勅が発せられ、次いで八時に即位式を行われ、その翌日午後二時三十分に、新帝が内外臣僚を引見して即位の事実を公表することに定められた。

一潟千里とはこんな事を形容するのであろう。

深夜の中に、譲位詔勅が焼発され、それからわずか五時間の後に正式の即位式が行われるなどは、前代未聞の事であるが、韓廷では日本の怒りを和らげるために、かかる非常手段をとったのである。

こういう場合に、あらぬ流言蜚語の起ることは当然の事で、新帝朝見式の当日は、何となく物情騒然として薄気味の悪い形勢であった。当時の韓国駐都軍司令官・長谷川好道の如きは態々統監を訪うて、

『かかる場合には、途中の要撃は予防しがたく、別けて宮城内に如何なる兇漢が潜伏するやも測り知れぬから、御自身の参内は見合せられ、代理を立てられるようお勧めすと注意した。統監邸に詰めかけた随員中にも、死恥をかくまいとて新しい褌(ふんどし)を締めて来たなどと戯談に本当の事を口走った勇者もあった。著者は一足先きに参内した。

宮中には各大臣はもとより各国総領事も悉く参集していた。 やがて定刻の二時三十分になったが、時間を厳守する統監がまだ見えない。統監がいなくては式を始めることができないので、著者は電話を統監邸にかけて開いて見ると、まだ出られないというから、内閣員、王族、元老、各国領事等、一人の遅刻者もなくことごとく出揃っていると統監に告げよと言って電話を切った。

あとで開くと、この時まで統監の出馬を止めた者が多かったので、統監も一寸躊躇していたが、この全員参集の電話を聞くや否や、.バネ仕掛のように椅子から飛び上って、

『さあ行こう。』

と言いつつ馬車に乗ったので、一同その後につづいて出かけた。

統監到着は定刻より三十分ばかり遅れたが、儀式は支障もなく済んだ。

宮城には何事もなかっが、ふと窓ガラス越しに市中を見下すともうもうたる猛火が俄に起った。急報によると一団の暴徒が首相李完用の邸宅に焼き討をかけたということである。

李完用はその自邸の焼けるのを一寸見ただけで、神色自若、殆ど意に介せざる様子であった。伊藤は自分の馬車に李完用を乗せて帰り、しばらく総務長官・鶴原定吉

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%B6%B4%E5%8E%9F%E5%AE%9A%E5%90%89

の官舎に住まわせた。

つづく

 - 現代史研究

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
日中ロシア北朝鮮150年戦争史(44)『日本・ロシア歴史復習問題』★ 「日清戦争後のロシアの満州進出」が日露戦争の原因になった。

日中ロシア北朝鮮150年戦争史(44)『日中歴史復習問題』★ 「日清戦争後のロシ …

no image
速報(465)●『世界から尊敬されるドイツ、警戒される日本』●『規制緩和を骨抜きにする霞ヶ関の常套手段

   速報(465)『日本のメルトダウン』   ● …

no image
『中国紙『申報』からみた『日中韓150年戦争史』⑦「中国側が属国視した琉球(沖縄)処分をめぐる対立がすべての発端」

  『中国紙『申報』からみた『日中韓150年戦争史』 日中韓のパーセプ …

no image
日本メルトダウン( 978)『トランプ米大統領の波紋!?』●『トランプ新大統領、中国には脅威と好機 ー経済的・地政学的には両面の影響がありそうだ(WSJ)』★『フランス極右政党の党首がトランプ勝利を大喜び 来春の大統領選への影響は?』●『不法移民、犯罪者をまず送還=壁はフェンスも利用-トランプ氏』★『首席補佐官にプリーバス氏=共和主流派との連携狙いか-米次期大統領』●『ついに馬脚現した習近平、歴史歪曲が白日の下に–南京虐殺の捏造がついに暴かれ始めた』

  日本メルトダウン( 978) —トランプ米大統領の波紋!? 【W …

『Z世代のための日本の超天才人物伝⑥』★『Z世代のための生成AIを超えた『世界の知の極限値』★『南方熊楠先生の書斎訪問記(酒井潔著)はびつくり話③』★『先生は本年65歳。数年前より酒を廃して養生に心がけ、90歳まで生きて思うよう仕事を完成して、「死んだら頭の先から爪の先まで売り払って乞食にいっぱ飲ましてやる」と豪語された』

  2015/05/01  記事再録編集 <以下は …

『決定版・20世紀/世界が尊敬した日本人』ー20世紀で世界で最高にもてた日本人とは『「ハリウッドを制したイケメンNo.1, 『ハリウッドの王者』と謳われた早川雪洲』①

決定版・20世紀/世界が尊敬した日本人 20世紀で世界で最高にもてた日本人とは誰 …

no image
日本メルダウン脱出法(664)「安倍首相の演説、海外でカンペ画像が報じられる「顔を上げ拍手促す」◎「おわび」使わず 首相米議会演説の読みどころ 」

  日本メルダウン脱出法(664)   ●「安倍首相の演説、海外でカン …

★『明治裏面史』 -『日清、日露戦争に勝利した明治人のリーダーパワー,リスク管理 ,インテリジェンス㊻★『児玉参謀次長が日露開戦と同時に命令したのは満州馬賊をシベリア鉄道の破壊工作に活用する 『特別任務班』の編成で福島に指示した。』★『青木宣純大佐を『特別任務班』隊長に任命』

 ★『明治裏面史』 – 『日清、日露戦争に勝利した明治人のリーダーパ …

『オンライン・日中国交正常化50周年記念講座②』★『台湾をめぐる米中日戦争が危機を向かえている今だからこそ、もう1度 振り返りたいー『中國革命/孫文を熱血支援した 日本人革命家たち①(16回→31回連載)犬養毅、宮崎滔天、平山周、頭山満、梅屋庄吉、 秋山定輔、ボース、杉山茂丸ら

      2016/07/31再録)日中関係ギグ …

no image
日本メルトダウン脱出は可能か(597)「経済の珍病には大胆な治療法必要」(英FT紙)◎「日本の総選挙:同レース、同馬」(英エコノミスト誌)

       日本メルトダウン …