日本リーダーパワー史(240)『3・11事件処理と「昭和の大失敗」張作霖爆殺事件のリーダーシップ不全と比較する①』
首相、西園寺公望、昭和天皇のリーダーシップ不全を比較する①』

田中内閣辞職の原因については
その事柄を西園寺さんや牧野さんにも話してあった。ところがそれを実行することに対して田中総理は非常に骨を折ったのであるが、当時の内閣諸公が、そうすると日本陸軍の名誉を傷つけるということになり日本の国辱になるから荒ら立てずに片付けねばならんと、田中君の決心に対して反対された。
そのために田中総理大臣の意見は陸軍および内閣諸公によって阻まれて実現することができないでいた。そのうちに反対党の民政党から張作霖事件の実情を話せとしきりに迫った。そこで白川陸軍大臣は、いわばあれは支那人がやったので日本の陸軍がやったのではない、しかしその駐在軍の権域内で起こったことであるから、ここの駐在武官は行政処分するといったようなことでもって議会に臨もうとした。そしてそのことを、陛下に、白川君からその事情を上奏した。
そこで陛下は、先に総理大臣が上奏したこととまったく違った上奏を陸軍大臣がしたので、田中総理の拝謁の際にその両人の上奏の喰い違いを詰問されたので、田中さんは恐愕して御前を退下してから、そのことを私に話された。そして自分は辞職するということをいわれたけれども、それに対して、ただ侍従長としてなんら返事することはできない。真に気の毒なことと思っておったのです。もちろん総理の上奏に対しては、侍従長は侍立したのでは重い。陛下と総理とのど対談の様子は自分には少しも判らん。ただ総理の決心の事実を内々に私に話されたのであった。
これが田中内閣の辞職の原因であるが、その時の情勢を後から聞けば、内閣にはいろいろ議論が湧いて内閣の辞職を総理が一存で決するのはいかん、今一応事情を申し上げて辞職しないように取り計らいたいという意見もあった。田中さんは自分は心が萎えてそれはできないと断わったという。その影響であったろう、閣僚の二、三が侍従長を訪ねて来て、何かといえば中間にたって、つまり陛下と総理の間になって、おとりなしをしたらよさそうなものだというようなことをいわれたように思う。私は、それは違う、侍従長はそういう位置ではない、侍従長は総理のもらされたのを聞いておいただけで、それ以上は侍従長としては、どうしようということはできないのだと断わった記憶がある。
(注) しかし今日になってみれば、明らかに日本人のやったものだと判る。政治家が正直に左様認め、素直に中外にも告げたなら、国辱どころか大道を行く正直な正義の上に立つ政治家として、かえって信用が高まるのであったろうに、陸軍および政党が俗にいう臭い物に蓋をする式な、宣伝をもって事実を蔽おうとする。公明正大にやる意識のない政治、この腐敗が今日の事情をもたらした遠因であろう。私は田中さんに同情する。
ところが、政友会の一方では、あれを宮中の陰謀として宣伝した。牧野や鈴木が政友会内閣を倒したのだといった。自己の不正不義を棚にあげてそういう宣伝をしたのであった。
鈴木侍従長は就任早々で慣れていなかったため、天皇の言葉をそのまま田中首相に伝えた。首相は涙を流し恐愕して、即座に辞意を決意、三日に総辞職したのである。(以上は鈴木一編『鈴木貫太郎自伝』時事通信社、1968年刊 254―255P)
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