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*

国際ジャーナリスト・近藤健氏のディープニュースー『変わるアメリカ社会と大統領選挙はどうなるのか』(ビデオ120分)

   

 

変わるアメリカ社会と大統領選挙はどうなるか
 
2012.4.13
 
近藤 健氏(国際ジャーナリスト、毎日新聞ワシントン支局長、外信部長、
元国際基督教大学教授)
 
 
 
 
アメリカの社会と政治の動向をどうみるか

 
人口動態からの切り口;それとの関連での「ティーパーティー」現象の分析とアメリカ政治の現状;そして、選挙との関連
 
<人口動態と白人のアイデンティティ危機>  (資料1~3頁)
 
1・白人人口の減少速度―2041年には非ヒスパニック白人のマイノリティ化
<人口動態と白人アイデンティティの危機>
 
1・2010年国勢調査 白人人口の減少
 全人口      3億870万       増加率9.7%
ヒスパニック   5千40万(16.3%)     43%
黒人       3千900万(12.6)     12,3%
アジア系     1460万(4.8)       43,3,%
白人       2億2350万(72.4)      9,2%
(内)非ヒスパニック白人1億9680万63、7%)
        10年前は 69,1%%だった。
 
将来予測は
 
‥ヒスパニック系・アジア系の移民増大と出生率の高さから、2041年には非ヒスパニック系白人人口は50%を切る。18歳以下の若者人口では、2019年ごろに非ヒスパニック白人は少数派になる。
 
 2・少数派人口の住居地拡散と郊外化
 
 移民や黒人はロサンゼルス、ニューヨークなど都市に住み、それに押されて白人は郊外に移るというのが、従来のパターン。この10年、白い郊外のイメージは急速に変化。人口50万以上の大都会地域(メトロポリタン)の郊外住居者の三分の二は依然白人。史上初めてメトロポリタン地域で、すべての少数派集団の過半数が中心都市でなく郊外に住むようになっている。
アジア系の61・9%、ヒスパニックの58・7%、黒人の50・5%が郊外住居者である。
 
3・こうした人口動態のアメリカ社会にとっての意味。
 
 郊外に住むようになった移民(不法であれ合法であれ)たちは、仕事を見つけ落ち着くと家族を呼び寄せる。これまで長い間白人中心のコミュニティに突然異質なものが多数参入してきたとき、そこには文化的緊張状態が生ずる。移民や黒人は相対的に貧困かつ教育水準も低い。その生活援助や学校教育の財政を誰が負担するのか。税金は誰のためか、資源配分の問題。不法移民 2011年1100万人)
 
2・リベラル文化の容認、浸透、定着 同性愛結婚合法化の承認異人種間結婚の増大
 
<文化的リベラリズムの承認、定着>
 
1・同性愛結婚合法化の承認
 
全体としての賛否二分‥ 2011年 賛成46% 反対45%
           はじめて賛成上回る。
 
世代間の相違:世代間文化ギャップ
 
2011年の承認 戦前生まれ(1945年以前生まれ) 32%
       ベビーブマー(46~64年生まれ) 40%
        65~86年生まれ        48%
       80年後生まれ         61%
 
2.社会は同性愛を受け入れるべき。
1994年 2000年 2006年  2011年
承認 46% 50%  51%   58%
否認 49% 41%  38%   33%
1986年の段階では、異人種異民族間結婚承認は三分の一
 
現在、家族あるいは近い親類の誰かが異人種・民族間結婚していると答えた人は、人口の3分の一以上に。(1967年まで異人種間結婚を禁止した州がいくつか残っていた)
 
<ティーパーティ運動と白人のアイデンティティ>
 
 2009年オバマ政権発足。経済大不況対策として約8000億ドルの景気刺激策。
税金投入による破産に瀕した銀行及び自動車産業の救済。ティーパーティ運動とは、この政策は、税金の無駄遣い、財政赤字′国家債務の悪化、自由市場への政府の過剰介入だと、これまで政治に関心なかった人々が経済危機にたいして立ち上がった没政治的で自然発生的な「草の根運動」とされた。果たしてそうか?
 
TP運動の性格:
 
1.運動発生初期の意識調査。(NYT/CBSニューズ。2010・4・5~12・18歳以上
   の有権者対象)
 ①「あなたは自らをティーパーティ運動の支持者とみなしますか」との問いに、支持者18%。(他の同種調査で多くて20%)
 ②この18%のうち、白人の占める割合は89%(調査対象全数の白人の割合は77%、以下同上黒人、アジア系はれ1%(12%と3%上ヒスパニック系3%
  (12%)
 ③支持者の年齢層は、45~64歳が46%(34%);64歳以上29%(16%);
 18~29歳は7%(23%)。
 ④性別では、男性59%(49%);女性41%(51%)
 ⑤支持者のデオロギー傾向。保守73%(34%);通常共和党支持54%(28%);
 無党派36%(33%)。
 ⑥支持者家庭の経済状態(2008年)。年収5万~7万4999ドルの人が25%
 (18%)で最も多い。10万ドル以上は20%(14%);1万5千~2万999
 9ドルの貧困層は13%(22%上5万ド′レ以上を合計すると、56%(44%)
 階層を最裕福層から最低貧困層まで五つに分けた場合、自らを中の上の層としたものは15%(10%)、中流50%(40%)、労働者階層を自認したものは26%
 (34%)。支持者は米国人平均よりも相当程度裕福な人びと。
 この調査から描ける、TP中核支持者のプロフィールは「白人、男性、年配者、比較的裕福、共和党支持者で保守派」
 
オバマ政権に対するパーセプション。
 
問「オハマ政権の政策は、富者、ミドルクラス、貧困者のうち、どのグループを優遇していると思いますか、それともすべてを平等に扱っていると思いますか」―貧困者優遇56%(全調査対象では27%、以下同);平等な扱い9%(27%)。
 
 問「オハマ政策は黒人よりも白人、白人よりも黒人、のどちらを優遇していると思いますか、あるいは両方を平等に扱っていると思いますか」―黒人優遇25%(11%);平等な扱い63%(83%)
 問「バラク・オハマはあなたのような人びとの問題や要求を理解していると思いますか」―YES24%(58%)、NO73%(39%)
 有権者一般との承離。オハマに無視されているとの感情
 
オバマ大統領自身へのパーセプション
 
 問「バラク・オハマは米国で生まれたと思うか、それとも他国生まれと思うか」―ティーパーティ支持者は、米国生まれが41%(58%)、他国生まれ30%(20%)、わからない29%(23%)、(ただし、一般有権者の間にも他国生まれと思っている人が20%)
 問「バラク・オハマは、ほとんどの米国人が守ろうとしている諸価値を共有していると思うか」―YES20%(57%)、NO75%(37%)
 
 
ティーパーティの特徴は:保守というよりは反動
 
60年代文化革命の余震:リベラル文化浸透への反動の流れ。
 80年代、90年代の宗教右翼との薄似  共和党との依存関係
「えせ保守主義者」一不況時にあらわれる不満、苦情の表軋 自らの政府に常に疑いと恐れを抱く人々。阻害された怒り(中西部や、農村、中小都市に多い)、土着保守主義、"民主主義的反乱精神。
よき時代のアメリカへのノスタルジア。民族的・人種的多様性の広がりでそれが脅かされてきた。高教育のテクノクラットという新たなエリートの台頭とその支配への不満、憤慨(かれらは民主党支持が多い)
 
「権力構造のねじれ」
 
2012年の現在の"ねじれ"
 民主党は大統領と議会上院支配 上院議席:民主党51対共和47、その他2
 共和党は下院過半数下院議席共和党242対民主党191、欠員2
2008年の選挙→民主党は大統鼠上院57対41、下院258対177、連邦議会も多数。
2010年の中間選挙→下院共和党242対民主党193と大逆転。
 民主党上院で6議席減、かろうじて過半数を保持。 ねじれ"発生。
 

 

「権力構造のねじれ」
 
2012年の現在の"ねじれ"
 民主党は大統領と議会上院支配 上院議席:民主党51対共和47、その他2
 共和党は下院過半数下院議席共和党242対民主党191、欠員2
2008年の選挙→民主党は大統鼠上院57対41、下院258対177、連邦議会も多数。
2010年の中間選挙→下院共和党242対民主党193と大逆転。
 民主党上院で6議席減、かろうじて過半数を保持。 ねじれ"発生。
 
<アメリカ政治の”ねじれ”と選挙>
 
大統領選挙よりも連邦議会選挙のほうが、アメリカ政治にとってより重要ではないか。"ねじれ”の解消、緩和、劣化。
二つの"ねじれ"一 権力構造のねじれ アメリカ社会のねじれ
1・権力構造の"ねじれ"日米の相違:議院内閣制の日本と、行政府大統領と立法府議会が分立しているアメリカのシステム。その態様も内容も相違。
三様の"ねじれ"→大統領とは別の政党が連邦議会両院を支配する場合、大統領と上下両院のいずれかを大統領与党が多数を占める場合。
2・アメリカでは、政治システム上、"ねじれ"は珍しくない。20世紀に入って、56回の議会会期(2年)中、22回何らかの"ねじれ"870年代以降が多い。(右の表象魁"ねじれ"のたびに、党派的対立で何も決まらず政治は停滞?そうではない。理由‥二大政党ならず四つの政党」。少なくとも80年代までは、そうであった。
 
 70年代からねじれ顕著。なぜか。
 
3・アメリカ社会の"ねじれ"二極分裂:イデオロギー的価値的分断、宗教と政治 地方と都市 レッド対ブルー
 
  <議会選挙のシナリオ>
 
① オバマ再選、上下両院とも民主党過半数→バラ色の夢?"ねじれ"解消
② オハマ再選、民主党上院議席増、下院で差を縮めるが過半数に達せず。鵠じれ緩和。オハマ政策展開容易に。もっとも考えられ展開か。
③ オハマ再選―上下両院共和党過半数 "ねじれ"悪化、劣化
④ ロムニー当選、共和党上院過半数、下院過半数維持。"ねじれ"解消。社会の分極化状況でありうる。見方によって悪夢-「アメリカの悲劇」、反動勢力の政策促進?ロムニーの統治次第。
⑤ 現状維持?これも考えられる展開。政治の停滞、劣化。
 
<大統領選挙展望>
 
オバマのコートテールは長いか?
08年のオハマ・ブームは期待できないとして 動員力  投票率

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