前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

日本リーダーパワー史(726)《対中交渉の基礎的ルール10ヵ条》『中国人の交渉術(CIAの秘密研究)』尖閣諸島、南シナ海対策の基礎知識

      2016/08/18

 

以下は、米中和解を実現したキッシンジャー、毛沢東、周恩来の初会談以来、十五年にわたる米中政府間の公式の交流の記録を研究した『中国人の交渉術(CIAの秘密研究)』産経新聞外信部訳、文芸春秋社、平成7年刊)結論的な部分の10か条である。

『中国側の戦術も明白であり、おおむね予測が可能である。中国の交渉方法には、中国にしかないユニークな点というのはあまりない。ただ中国は、自国の目標を特色あるスタイルと規律と決意とをもって追求する』として、

その中国的な交渉スタイルのルールを明らかにしたうえで、その対処方法を提示しているが、文中の米国という部分を日本に置き換えても.大いに役立つ方法論である。

特に、交渉当事者だけではなく、それ以上にマスコミ当事者は中国流の交渉術、マスコミ操縦法、外国のメディアコントロール、スパイ作戦について、よくマスターしておかねばならない。日本マスコミが簡単に中国に手玉に取られているからである。

日本のマスコミの中国音痴、中国人の国民性、民族性、行動形式への無知で、過剰な報道が相互のコミュニケーションギャップを生み、中国当局者はそれの巧妙に利用してくるからである

《対中交渉の基礎的ルール》

以下の指針の多くはきわめて単純にひびくかもしれないが、いずれも中国側との折衝には基礎的な重要性を持っている。

これら指針は実際のところ原則的なルールなのだが、最近は対中交渉にあたる米国側交渉者たちにより、しばしば破られてきた。したがって米国側交渉者にとって当面、最大の挑戦は、交渉を組織的に進める能力を抑える米国側内部の官僚的な障害や、その他の制度的、文化的な要因を克服し、交渉を最適の方法で実行することなのだ。

①    主要問題を熟知せよ

中国側交渉者は交渉に入るに際して、最大限の事前の準備と学習とをすませてくる。彼らはさらに官僚的規律を保ち、問題の細部まで把握したスタッフにより補佐され、米国側交渉者の準備不足のどんな細かな点でも逆用しようとする。このため米国側では、交渉者自身が交渉テーマとなる主要問題を徹底して調べ、熟知することか必要となる.

②    過去の交渉記録をマスターせよ。

中国側交渉者は過去の交渉記録を完全に把握し、理解し、その知識を相手への圧力行使のために使うことをためらわない。

この記録の掌握は、米国側交渉者にとってはとくに厄介な問題となっている。中国側に比べると、米国の政府職員か一定のポストに在任する期間がずっと短い。そのうえ米側の政府内の各省庁、大統領記念図書館、記録保存機関に散らばっているため、分析するのはきわめて困難となっている。メモとか公電とかがいまでは数万ページという膨大な分量。すべて、デジタル化して、ビッグデーターとして管理すべきであろう。

③    米中関係全体を踏まえた主張を提示せよ

中国側は、法律(国際法など)にのみとらわれた交渉へのアプローチには不信の念を抱く。中国側には、交渉相手の個人レベルでの中国や米中関係、さらには中国側の超大国としての権利要求に対する態度を基礎にして、その交渉相手の「誠意」を測るという傾向がある。これは交渉プロセスを人格化しようとする傾向だともいえる。

④    自国の基本目標を正確に認知せよ

中国側交渉者は長引く交渉では、大体においては自国が最終の目標として何を求めているかに関してはっきりした認識を持って交渉にのぞむ。

中国側はまた自国の都合に応じ、交渉を長引かせ、相手をじらせる能力にきわめて長けている。

このため米国側交渉者にとっては、交渉の冒頭で自国の最終的な基本目標が何であるかを正確に認知することが、なによりも重要となる。とくにその目標の達成のために、ここまでは譲歩できてもこれ以上は絶対に譲歩できない、という一線を交渉の出発点で認識しておくことが不可欠となる。

⑤    忍耐せよ

中国側交渉者は、交渉での時間を自分たちにとっての有力な武器だと考えている。彼らは敏速なやりとりには不信を抱き、時間をかけて諸問題を探したいと望む。なぜなら時間を延ばすことは、自国の主張を確定する前に相手の考えを最大限、表明させることにつながるからだ。

米国側交渉者は、「ゲスト側がいつも最初に発言すべきです」という中国側の戦術的な慣行を予期しなければならない。中国側が抱く主張の全体像は、交渉のかなりあとの段階までは聞けない。

⑥    中国マスコミに惑わされるな

中国側は交渉相手の政府に圧力をかけるために、相手国のマスコミをきわめて露骨な形で利用する。このため交渉がマスコミに察知されない秘密の形で進められれば、交渉自体のコントロールはより容易となる。さらに中国側は相手国が交渉に対し、あくまで秘密厳守という方法でのぞもうとする場合、その秘密厳守を交渉への真剣さの表れとしてみる。

さらに、中国側は自国の報道機関で米国の政策を批判することはまったくためらわない。だが、米国側からマスコミを使って論争を挑むことは、米中関係にとって非生産的である。

⑦    中国の内政と交渉者の個人情報を分析せよ

過去十五年間の記録は、中国の国内政治が対外交渉の行動様式に重要な影響を及ぼすことを明白に示してきた。最高指導部内の対立や衝突は、中国の外交関係にインパクトを投げる。中国の対外交渉の柔軟性は、最高指導部内の不仲の度合いと最高首脳の権力掌握の度合いとにより左右される。

⑧    中国式「友好」に注意せよ

米国側交渉者たちは、中国側が外国の「友人」とみなす人間に、きわめて多くを期待することを明記しておくべきである。「中国の古い友人」などと呼ばれて追従され、自尊心をくすぐられることに最大限、注意しなければならない。中国の盛大な歓迎が生む感激も排さねばならない。

実際に提供できる以上のことを、絶対に約束してはならない。中国側は必ず過去の約束を果たすよう迫ってくる。こちらの間違いや欠陥とも思われる点への、恥とか罪の意識を深めさせようという中国の試みを拒まねばならない。

⑨    圧倒でもなく、哀願でもなく

中国側が、対外交渉に臨む時には、目標、全体戦略、相手国交渉者を特定の関係に巻きこむために術策をろうする意図などの明確な目的意識をもっている。それからのプロセスで米国側交渉者は、中国側に有利に交渉を運ぼうという目的の追従と圧力にさらされる。

中国への対処の最も効果的な姿勢は、相手を圧倒することでもなく、哀願することでもない。ある程度、抑制された公開性と共通の利益とを探そうという意欲を保ち、なお中国との間には多くの顕著な相違がある点を認めることである。

⑩    中国側の圧力戦術をかわすよう努めよ

中国の交渉術はわりに簡単に判定ができる。ときには予測可能でもある。

だから米国側交渉者は中国側の相手をとまどわせるような対抗戦術を開発し、交渉プロセスでの米国側の能力とコントロールとを誇示すべきである。

だが戦術操作の行き過ぎは、交渉プロセスへの信頼や信用を侵食する危険がある。

 - 現代史研究

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

『インバウンド ジャパン2017』(東京ビッグサイト7/19)ー「観光×インバウンド×Wi-Fi~観光マネジメントを実現しませんか」(NTT西日本)★『訪日外国人の満足度向上にむけた多言語ソリューション』(NTTマーケッティングアクト)

 日本の最先端技術『見える化』チャンネル インバウンド ジャパン2017(7/1 …

no image
日本最先端技術『見える化』チャンネル ー『日本のロボット技術のレベルがよくわかる動画/『 厨房設備機器展2019(2/20、東京BS)-「ロボット・オクトシェフ誕生、その見事な職人芸にアメイジング!」★『ロボット技術単体と同時にそのロボット技術産業全体を総取りするグローバル、マーケッティング戦略こそ最重要課題』

日本の最先端技術『見える化』チャンネル  厨房設備機器展2019(2/ …

「今、日本が最も必要とする人物史研究/日英同盟を提言した林董(はやしただす)元外相』★『国難日本史ケーススタディー④>『日英同盟論を提言ー欧州戦争外交史を教訓に』 <「三国干渉」に対して林董が匿名で『時事新報』に日英同盟の必要性を発表した論説>』

  2012-03-10 /『リーダーシップの日本近現代史』(56)記 …

『オンライン講座・習近平中国の研究①』★『強中国夢』(中華思想単独覇権主義)をめざす習近平共産党政権は「近代中国の父・孫文」の『覇道より王道をめざせ」という日本への遺言を読み直さねばならない。<孫文「大アジア主義」の演説全文を再録>②

    2016/07/30  日本リー …

『オンライン/日本宰相論/講座』★『日本最強の宰相・原敬のリーダーシップーその見事な生き方、人・金の使い方は④<同僚・後輩には「富と名誉は諸君の取るに任せる。困難と面倒は自分に一任せよ」が口癖だった>』

2012/08/04  日本リーダーパワー史(292)記事再録 &nb …

no image
<国難日本史ケーススタディー④>『日英同盟論を提言するー欧州戦争外交史を教訓に林董の外交論』②

<国難日本史ケーススタディー④> 林董(ただす)の外交論を読む② 『日英同盟論を …

no image
日本メルトダウン脱出法(588)「日銀はルビコン川を渡った。安倍首相は死線(ナローパス)突破のリーダーパワーを発揮せよ」

      日本メルトダウン脱 …

  日本リーダーパワー史(771)―『トランプ暴風で世界は大混乱、日本も外交力が試される時代を迎えた。そこで、日清戦争の旗をふった福沢諭吉の「外交論」を紹介する」★『日清講和条約(下関条約)から3週間後の福沢諭吉の外交論である。 『外交の虚実』『時事新報』明治28年5月8日付』●『今日の順風も明日の逆潮に変化するその間に立て、虚々実々の手段をめぐらし、よく百難を排して、国の光栄利益を全うするは外交官の技量にして、充分に技量を振わせるものは実に朝野一般の決心如何に在るのみ。』

   日本リーダーパワー史(771) トランプ米大統領の誕生で『世界は大混乱の時 …

no image
日本の最先端技術「見える化」チャンネル/『文字から音声認識の時代へ』★『AI・人工知能EXPO2019(4/5)』-TISの「業務用スマートスピーカーによる音声文字起こし、スマホで会議録、報告書がサクサクできる』

日本の最先端技術「見える化」チャンネル AI・人工知能EXPO2019(4/5) …

no image
知的巨人の百歳学(151)ー 東西思想の「架け橋」となった鈴木大拙(95歳)―『禅は「不立文字」(文字では伝えることができない)心的現象』★『「切腹、自刃、自殺、特攻精神は、単なる感傷性の行動に過ぎない。もつと合理的に物事を考へなければならぬ」』

東西思想の「架け橋」となった鈴木大拙(95歳) 前坂 俊之(ジャーナリスト) J …