日本リーダーパワー史(424)『日中韓150年対立史⑩」英「タイムズ」,外紙は中国が侵略という「台湾出兵」をどう報道したか③
2015/01/01
―『各国新聞からみた東アジア日中韓150年対立史⑩』
『日中韓150年対立・戦争史を―英「タイムズ」米
「ニューヨーク・タイムズ」など外国紙で読む、中国が
侵略という「台湾出兵」をどう報道したのか③
最近の日中韓の対立のコジレをみていると、日中韓の150年戦争史の既視感(レジャビュ)がよみがえります。あと5年(2018)後は明治維新(1868年)からちょうど150年目に当たります。この間の三国関係を振り返ると、過去100年以上は対立、紛争、戦争の歴史であり、仲良くしていた時期はこの最近3,40年ほどの短いものであり、単に「近隣関係、近隣外交は仲良くしなければ」という建前論からの「お人よし外交」ではなく、その対立、戦争のとなった原因までさかのぼって調べなければ、何重にもモツレた歴史のネジレを解いて真の善隣友好関係は築くことができません。
前坂 俊之(ジャーナリスト)
●英米紙から絶賛された副島の台湾出兵外交
ところで、明治外交では「日清戦争」当時の陸奥宗光外交が最大の評価を得ているが、副島外交もこれに劣らぬ、外交力を発揮した。この時の日中外交の談判では台湾問題、琉球帰属問題が並行して話し合われた。現在、中国が尖閣諸島、台湾を「盗み取った」と主張している問題のルーツである。
この台湾出兵を外国紙の報道からみていこう。
台湾出兵の原因となったのは1871年(明治4)10月、琉球の宮古島,八重山島の琉球人70名が分乗した船が沖縄の首里城に朝貢しての帰りに漂流し、流れ着いた台湾で、生蕃と呼ばれる台湾現住民に、54人が殺害され、食べられるという一大事件です。副島外務卿は清国が台湾の領有していたため、生蕃の処罰を求めて、琉球の帰属についても国際的に明確化ずるために談判に行ったのです。
もともと、この台湾地域は「文明諸国でさえ,手の施しようがないとして,長い間甘んじてきた場所。台湾は半蛮族の住む大きな島で.ヨーロッパとアジアの重要な交易路にあたっていた。このきわめて排他的な島の海岸に上陸した者は,虐待されるか殺されるかした。表向きは中国が台湾を統治していることになっていたが,ほとんど有名無実で,どこの国もそれを本気で認めてはいなかった」(1874年<明治7>12月6日付「ニューヨーク・タイムズ」「新しい東洋の外交」)。
清国側は「生蕃が住む山岳部などは化外の地で、清国の統治が及ばないところ」と答えたため、生蕃の責任追及に西郷従道率いる日本軍6千人が出兵した。
「戦闘が始まって数週間もたたないうちに,18部族のうち16部族が日本軍の司令官に降伏を伝え.残りの2部族の平定を助けると約束した。」(同上)というほどの圧勝だった。
これに対し、「中国は,けんか腰でこの敵対的侵略に対する説明を求めた。日本は友好的な態度で,中国が台湾を統治しているのか,と尋ねた。そのとおりとの返事に日本は,『どこからもきちんと統治されておらず,文明社会の厄介者で、この出兵費用は中国が支払うべきと』主張。中国側は虚勢を張って戦争も辞さない構えを見せた。しかし,日本は.断固たる態度で臨んだ。今回.中国はしぶしぶ,日本の遠征費75万ドルを支払うことと,台湾の平静を約束した」(同ニューヨーク・タイムズ」は解説し、万国法に照らして、日本側の処置を評価した。。
「ノース・チャイナ・ヘラルド」(同年6月27日付け)は「総理衛門にしてみれば.責任を放棄し,少数の蛮族に制裁を加える仕事など野蛮な日本人に転嫁するのが政治家として賢明な策だと思ったに違いない。
北京で育ち,古い伝統に縛られてきた者たちに外の世界のできごとを正しく判断できるわけがない。孔子の教えと優雅な書と宮廷作法こそ人間がめざす最高目標だとみなすのが当り前になってしまっている者たちには」
「タイムズ」(同年7月31日付)は「われわれ外国人は,この遠征を敢行した人々のエネルギーを認めねばならないし,彼らの大いなる成功を心から祈るべきだろう。台湾遠征の大目的は全文明世界から擁護されてしかるべきではあるまいか。」と英米紙はこぞって日本外交を支持。
「台湾出兵」の結論として「ニューヨーク・タイムズ」(12月6日)は中国の傲慢な態度に対して日本側の国際礼儀を守る外交態度を比較して絶賛して、「中国の諸外国への対応は陰険で欺瞞に満ち.無慈悲でとらえどころのない。
中国は各国公使に威張りちらし、あれこれと引き延ばす作戦に出る。二枚舌はいつの時代にもヨーロッパ使節団を煙に巻く方便だった。日本はこの種の外交をまず行わない。アメリカの遠征によって世界に国を開いてから,日本は尊敬に値する寛容な国家であることを身をもって示している。日本の外交が収めた今回の勝利は台湾紛争の名誉ある解決といえよう」とまで書いているのです。
また、長い間、日中両国に朝貢していた琉球王国の帰属問題が両国の紛争の種になっていましたが、
対立した英国駐日公使となったアーネスト・サトウは両国の言い分を精査した上に『琉球諸島の帰属問題』という論文を発表し、 「疑問の余地なく,日本の宗主権のほ
うが中国のそれよりも現実的だ。日本は実際に250年ほど前に琉球諸島を征服し,それ以来.直接的に支配してきた。それに対し,中国との関係はただ美辞麗句のたぐいのものにすぎなかったようだ。このことは.天子とその支配する学問と文明の中心に対する非常な尊敬によって暗に示されている」(1873年4月10日付「ノース・チャイナ・ヘラルド」)と書いています。
結局、この最初のボタンの掛け違い(思い違い)の対立関係がその後も延々と続き、朝鮮を属国とする清国側と、ロシアが南下して朝鮮を押えた場合には「日本列島の横腹にドスを突き付けられる」という強い危機感をもった日本側の対立が一層エスカレートしていきます。
「中華思想」にどっぷりつかった李氏朝鮮では、守旧派の大院君(王高宗の実父)と開化派の閔妃(ミンぴ(王高宗の妃)の間で権力闘争が絶えず、国内政治は腐敗し、守旧派が日本公使館員らを殺害する壬午事変<じんごじへん、1882年(明治15>、この2年後には金玉均ら親日派の朝鮮独立党がクーデターを起こす甲申事変(こうしんじょへん1884年(明治17>があり、これにロシアも介入し、朝鮮の支配をめぐる三つ巴の激しい争いになります。
1894年(明治27)、日本で亡命中だった金玉均が、朝鮮側により上海に連れ出され、清国側との共謀で暗殺されるテロ事件が、長年のたまりにたまった3国の敵愾心、怨念がついに日清戦争(明治27年7月)へと爆発したのです。
「エスノセントリズム」(自民族・自文化優先主義のナショナリズム)で、中国、韓国は長年の「中華思想」から脱却できず、日本は明治維新による旧来の封建的、閉鎖的な「日本主義のイデオロギー」をいち早く脱ぎ捨てて、より近代的な「天皇中心の開明的な国民国家づくり」に成功したことが、三国の運命を分けのです。
●習近平国家主席の「中国夢」と強硬な「核心的利益政策」
以上の150年前の三国関係と現在を比較すると、いまさらながらその類似性に驚きます。今年3月、就任したばかりの習近平中国国家主席は全人代の演説で、「中国夢」という言葉を9回も繰りかえしました。この「中国夢」とは「中華民族の偉大な復興」であり、アヘン戦争の敗北から中華民族がたどった負の170年の歴史の総括をして、それ以前の外国に侵略された領土を取り返し「大清帝国」を復活したいという夢です。
チベット、モンゴル、シベリア東部まで支配し、世界の中心が中国であると自画自賛して、グローバリズムの大波にのみこまれて滅んでいった清国の「世界一国中国主義」の幻想を夢みており 150年前の清王朝とまるで同じナンセンスです。
中国が目下、尖閣諸島、フィリピン、ベトナムの離島をめぐって領有権を主張し、日本など周辺のアジア各国と衝突、対立しているその強硬な「核心的利益政策」こそ、海軍力の強化でこの「中国夢」を実現しようとしている習近平の外交政策の一環なのです。
これも「清国」に対して「国際法」を順守して、話し合いをしようとした日本、英、米各国と同じく、今回も日米、アジア各国は「国際法」でもっての対応を呼びかけているが、あくまで中国の利益を最優先する「中華思想」(現在は、一党独裁の中国共産党の独善主義)に凝り固まっており、150年前の清国時代から全くといっていいほど変わってないことに改めて愕然とする。
結局、日米、ヨーロッパの民主主義議会国家とはまるで異質の中国3千年の皇帝政治の延長線上の変わらざる中国の共産党一党独裁、非議会主義の経済優先、軍事優先、公害たれ流し、人権抑圧国家なのであり、その属国的な北朝鮮の無軌道、無頼国家が世界の不安定要因をますます増幅させていくことは間違いないでしょう。
(以上、文中で引用した外国新聞の出典は「外国新聞に見る日本②1874-1895年(本編)」毎日コミュニケーション,1990年です)
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