前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

<クイズ>-世界で最ももてたイケメンの日本人はだれでしょうか③トミーの愛称の立石斧次郎

   

<クイズ>-世界で最ももてたイケメンの日本人はだれでしょうか③
 
活かされなかったその異文化スキル・サムライ・立石斧次郎③
前坂俊之(ジャーナリスト)
 
米メディアでの「トミ―フィーバー」「サムライフィーバー」ぶりが、その一挙手一投足にスポットライトをあてた、センセーショナルに報道から伝わってくる。
 
トミーは米国人とすぐにうち溶け、英語を積極的に覚え、他のメンバーがしりごみする中、ただ一人、客車から蒸気機関車にのり、汽笛を鳴らしたり、消防士に交じってホースで放水したり、コミュニケーションを深めていった。
 
フィラデルフィアでは「ピアノの伴奏で日本の歌とアメリカの歌を歌って婦女子の喝采を浴びた」 (フィラデルフィア・インクワイヤラー)と報じられているが、この時の日本の歌は『お江戸日本橋』であった。
米国の少女に恋をして自分の髪を切って与えたとも報じられた。米国人女性とキスをした最初の日本人もトミーである。
 
トミーの人気を決定づけたのが、『ニューヨーク・イラストレイテッド・ニュース』(一八六〇年六月二三日付)で、第一面にトミーのイラスト全身像の写真とともに記事がドデかく掲載された。「トミー、日本人の陽気な男」と題した長文のトップ記事はこんな調子で絶賛した。
 
『良き一団には必ず随行する陽気なお供がいるもので、日本使節もその例外ではない。一行にはトミ-がいて、何人も楽しませ、婦人たちや美しい少女たちに、一目でもあいたいとおもわせる名物男で、しかも彼ほどの男は他にいない。

彼ははしゃぎまわる、陽気な男で、その素敵ないい顔立ちはまんまるで、ふくよかだ。彼は不滅であり、この国の歴史のなかで今後もずっと永遠にトミ-である』と書いている。

 
今、大リーグで松井選手やイチロー選手のように米メディアでも大きく取り上げられているが、この150 年間でみてもトミーほど米女性にもてた日本人はいない。
 
トミーは異文化コミュニケーションのスキル(技術)を自然と体得していたのである。長い鎖国が続いたので、使節団が異文化を理解できなかった中、ただひとりトミーは異文化コミュニケーションに成功し、人気者になった。
 
 異文化コミュニケーケーションでの言葉の占める割合は意外と低い。最も大切なのは、外国人と積極的に交流しようという気持ち、積極性、友好心、言葉以外の顔の表情、笑顔、米国人のような陽気な性格(はしゃぎや魂)、アイコンタクト(目配り)、ジェスチャー(身振り)といったさまざまなボディーラングウエッジ(肉体言語)であり、根本は相手文化への尊敬、その文化を理解しようとする熱意、情熱である。
 
トミーの成功の秘訣は誰からも教わることなく、人権尊重、レディーファースト、個人主義の理念などの西洋文化をいち早く理解したその異文化コミュニケーションスキルの高さにあり、それを実践できたことだが、このような国際交流術を身につけたのは天性の資質があったのであろう。
 
 これだけ人気を博した日本人は、日米150年の交流史の中でも例がない。ただ、日本の研究者の間で評価はそれほど高くはない。

咸臨丸で同行した福沢諭吉や勝海舟、小栗上野介らは研究し尽くされているが、トミーについては若くて人気者になった道化役、トリックスターとして取り上げられることばあっても、異文化コミュニケーションにたけた先駆的な人物という視点でこれまで評価されたことはなかった。

 
日本では立石は成功しなかった。帰国後は明治政府から目をつけられ長野桂次郎と名を変え岩倉派米使節団に同行して、再び訪米し、その後、工部省の役人や、北海道で開拓史になったが出世せず、役人をやめハワイに渡って移民監督官になったがうまくいかず、2年で帰国。47歳で大阪控訴院の通訳官などをして73歳でなくなった。
 
海外留学生の多くが明治政府下で出世した中で、立石その卓越した異文化コミュニケーションの能力を活かされることはなかった。
日本のその後の英語教育は英語の読み書きのみに最重点がおかれ、異文化コミュニケーションへの視点が欠けていた。現代人がトミーから学ぶことば多いのではないだろうか。
 
                                (前坂 俊之=静岡県立大学国際関係学部名誉教授)
 
 
 

 - 人物研究

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
知的巨人の百歳学(141)-日本画家・奥村土牛(101歳) は「牛のあゆみ」でわが長い道を行いく』★『スーパー長寿の秘訣はクリエイティブな仕事に没頭すること』』

  『60歳から代表作を次々に出した奥村土牛』 芸術に完成はあり得ない …

no image
『F国際ビジネスマンのワールド・ニュース・ウオッチ(146)』「水木しげるのラバウル戦記」読後感ー「生へ健全な執着」の表現と 『「人間を虫けらの様に扱う」軍隊組織を嘲笑する』距離感は天才的です。

  『F国際ビジネスマンのワールド・ニュース・ウオッチ(146)』 「水木しげる …

★『米朝核戦争勃発を防げ!、今こそふりかえれる日本史上/最強の勝海舟のリーダーパワー史(879)ー『英雄・偉人・大バカ・軍人・凡人・みな屁なチョコよ』<「ナアニ、明治維新の事は、おれと西郷とでやったのさ!』

 日本史上/最強の日本リーダーパワー史(879)   日本リーダーパワー史(15 …

no image
日本リーダーパワー史(875)『日中韓、北朝鮮の三角関係はなぜ、かくも長くもめ続けるのか②』★『本邦の朝鮮に対して施すべき政策を論ず②』(尾崎行雄の対中国/朝鮮論策、明治12年12月)

(尾崎行雄の対中国/朝鮮論策、明治12年12月) 『本邦の朝鮮に対して施すべき政 …

no image
記事再録/知的巨人たちの百歳学(135)-勝海舟(76歳)の国難突破力―『政治家の秘訣は正心誠意、何事でもすべて知行合一』★『すべて金が土台じゃ、借金をするな、こしらえるな』(これこそ今の1千兆円を越える債務をふくらませた政治を一喝、直ぐ取り組めという厳命)

2012/12/04 /日本リーダーパワー史(350) ◎明治維新から150年- …

no image
日本リーダーパワー史(944)「日中平和友好条約締結40周年を迎えて、日中関係150年の歴史を振り返る」★「辛亥革命百年ー中国革命の生みの親・孫文を純粋に助けた宮崎滔天、犬養毅、頭山満らの熱血支援』

日本リーダーパワー史(944) 日中平和友好条約締結40周年の祝賀記念行事が各地 …

『オンライン講座/日本/明治大正昭和/150年興亡史』★『憲政の神様/日本議会政治の父・尾崎咢堂が<安倍自民党世襲政治と全国会議員>を叱るー『売り家と唐模様で書く三代目』②『総理大臣8割、各大臣は4割が世襲、自民党は3,4代目議員だらけの日本封建政治が国をつぶす 』

  日本リーダーパワー史(236)記事再録」 『売り家と唐模様で書く三 …

『オンライン/75年目の終戦記念日講座』★『終戦最後の宰相ー鈴木貫太郎(78歳)の国難突破力が「戦後の日本を救った」-その長寿逆転突破力とインテリジェンスに学ぶ

  2015/08/05 日本リーダーパワー史(577)記事 …

『オンライン現代史講座・日清戦争の原因研究』★『延々と続く日中韓衝突のルーツを訪ねる』★「『英タイムズ』が報道する130年前の『日清戦争までの経過』③-『タイムズ』1894(明治27)年11月26日付『『日本と朝鮮』(日本は道理にかなった提案を行ったが、中国は朝鮮の宗主国という傲慢な仮説で身をまとい.日本の提案を横柄で冷淡な態度で扱い戦争を招いた』

     2019/02/06 記事再録 英紙『タ …

『大迫力!台風24号接近中の怒涛の稲村ケ崎サーフィン10分間動画決定版(2018年9/29am720-8.30の圧縮版)-怒涛の大波とサーファーの対決決闘編!だれが勝つか!

  2018/10/02 大迫力!決定版◎台風24号接近中の稲村ケ崎サ …