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「国難日本史の歴史復習問題」ー「日清、日露戦争に勝利」した明治人のリーダーパワー、 リスク管理 、インテリジェンス⑥」◎「ロシアの無法に対し開戦準備を始めた陸軍参謀本部の対応』★『決心が一日おくれれば、一日の不利になる』

   

 

「国難日本史の復習問題」

「日清、日露戦争に勝利」した明治人のリーダーパワー、

リスク管理 、インテリジェンス⑥

日露戦争開戦にむけての陸軍参謀本部の対応』

★『決心が一日おくれれば、一日の不利になる』

1903年(明治36年)4月8日は、ロシアが列国に公約した第二期撤兵の時期であった。このときに日本全国民が朝野の別なく撤兵が無事に行われることを期待したが、この希望は水泡に帰した。

ロシアが撤兵の約束を破ってから一カ月もたたない5月はじめ、鴨緑江河口の朝鮮側にある竜岩浦に侵入し、千人の兵士を送り込み宿営地をつくりはじめた。ロシアの朝鮮への侵略意図が、いよいよ明白になってきた。

しかし、日本政府と陸海軍の首脳、それに元老たちの多くは、「ロシアは大国であるから、慎重に対勉しなければならない」といい、「外交でなんとかならないか」と、ロシアの譲歩をアテにしていた。

陸軍参謀本部はロシアのこれまでの外交手段とその侵略政策から判断して、満州撤兵は容易に実行できないものと判断した。4月11日、在保定の立花小一郎少佐から、撤兵が行われないばかりか、ある部分では増兵されたという電報があった。また在芝罘(チーフ)・守田少佐からは、ロシア軍がしきりに軍用麺包を製造し、石炭を買入れているとの報告があった。

そしてその後も同じような報告が次々に各所から入ってきた。

当時の陸軍省および参謀本部の主なスタッフは次の通り。

陸軍大臣   寺内 正毅

次官(総務長官)石本 新六

軍務局長   字佐川一政

軍事諌長   岡 市之助

経理局長   外松 孫太郎

砲兵課長   山口 勝

騎兵課長  浅川 敏靖

参謀総長   大山 厳

同 次長   田村怡与造

総務部長   井口 省吾

第一部長  松川 敏胤

第二部長  福島 安正

第三部長  大澤 界雄

第四部長  大島 健一

第五部長  落合塑三郎

総務部長、第一部長、第二部長がしばしば会合して意見の交換を行ない、田村次長に迫って、速かに閣議をひらいて参謀総長の列席をもとめ、時局解決を勧告することを何度も迫った。

政府も腹を固める時期が迫った。内田公使の北京急電に接した翌々日、4月21日、伊藤、山県の二元老、桂首相、小村外相は、山県の京都南禅寺畔にある別邸「無隣庵」で会談した。

この時、山県から命じられて台湾総督・児玉源太郎(内相)が呼ばれ、黒幕・杉山茂丸も東京から呼び出され『無隣庵』1階の別室で待機し、そのなりゆきを見守っていた。

席上、桂、小村は次の提案をした。

➀ 「ロシアが満州還付条約を履行せず、撤兵しない時は、われからロシアに抗議する。

② 朝鮮問題は、ロシアにわが優先権を認めさせ、一歩もロシアに譲歩しない。

③ 満州問題は、ロシアの優越を認め、これを機会に朝鮮問題を根本的に解決する。

伊藤、山県は、この提案を了承した。日本がとるべき根本的態度がここで決まった。

 

日本リーダーパワー史(786)「国難日本史の復習問題」 「日清、日露戦争に勝利」した明治人のリーダーパワー、

リスク管理 、インテリジェンス③』★『日本史の決定的瞬間』★『京都「無隣庵」での伊藤、山県、桂、

小村の4巨頭に児玉、杉山の6者秘密会談で『日露戦争も辞せず』と決定した』

●『小村外相のロシアの巨熊を生け捕る方法とは・・』

http://www.maesaka-toshiyuki.com/person/23869.html

 

一方、陸軍参謀本部には5月上旬、ロシアが、韓国の竜岩浦(義州南方)に陣地を建設している報告が届き、これにより田村次長も決断した。

早速、近歩四に特命検閲中の井口総務部長に命じて、各部長を会同して至急準備すべき事項を調査させた。病気中の福島少将を除き、他の部長は、急きょ各担任事項について精査し、

5月9日、その要項をまとめて皆行社に会同して次長に復命した。

同日、小田海軍中佐は、軍令部長の指示で参謀本部に赴き、参謀本部の意見を聴いた。たまたま総長、次長不在であったので、総務部長が次のように答えた。

『本部の意見はこれを断定できないので、個人的意見としては、ロシアの横暴は口舌をもってこれを抑止することはできない。日本帝国たるもの断然たる決心をとるのは已むを得ざるところで、また最も時宜に適するものである。故に参謀総長、軍令部長は協同して内閣の決心を促す必要がある。」

小田中佐もまた海軍側の意見として、わが帝国の決心が「一日おくれるは一日の不利である」ことを述べて去っていった。

以上の事実は、開戦のわずかに8ヵ月前の出来事であり、陸軍最高統帥部が開戦に関する準備が不充分であったことがわかる。ただし、これを政府当局、特に外交当局がいまだロシアと直接交渉を開始しなかったことに比すれば、軍部、特に陸軍が先見の明あったことの証明であろう。

5月10日、日曜休日にかかわらず、各部長は参謀本部に出務し、特に第一部長は、ロシア通の荻野少佐、朝久野大尉を補助としてロシアの行動に対し、日本が決心しなければならない趣旨と情報とを起案し、翌11日に作業を終り次長の手を経て総長の許に提出した。

これが5月12日参謀総長大山巌から「帝国軍備の整頓充実を図る必要の意見書」となって 明治天皇への上聞に達すると同時に、総理、陸相および海軍軍令部長に通報したのであった。

『帝国軍備の充実整頓に関するー大山参謀総長上聞の要旨』

満州におけるロシアの行動、漸く活気を呈するに反し、彼のバルカンに於ける(当時マセドニア問題を中心としてスラブ諸邦連合してトルコに開戦しようとした)態度は変化し、極力平和の維持を希望しつつあり。

これ即ち彼れが全力を満州方面に傾注し、東三省の占領を企てんとする所以にして、今後におけるロシアの行動は、その慣用手段たる脅喝を以て帝国を威喝しその態度の硬軟を見て多少の利を占めんとするか、

若しくは飽くまでも兵力に訴え防敗を決せんとするかにあるべく、目下の戦略関係は我に有利なるも、年月を経るに従がい、その情勢が逆転する。

かつ韓国にして彼の勢力下に置かれることになれば、帝国の国防また安全でなくなる。宜しく速に帝国軍備の充実・整頓を図るべし。

つづく

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