『英タイムズ』からみた 『日中韓150年戦争史』(52)「浪速(東郷平八郎艦長)の 高陞号撃沈」-J・ウェストレーク教授の投書
2015/01/01
『中国紙『申報』,『英タイムズ』からみた
『日中韓150年戦争史』(52)
1894(明治27)年8月3日、『英タイムズ』
日清戦争開戦前―「浪速(東郷平八郎艦長)の
高陞号の撃沈について」-J・ウェストレーク
(ケンブリッジ大学国際法教授)の投書
「豊島沖海戦」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%B1%8A%E5%B3%B6%
E6%B2%96%E6%B5%B7%E6%88%A6
日本リーダーパワー史(516)日清戦争120年➂高陞号事件で
見せた東郷平八郎の「国際法遵守」が日本勝利を決定した。http://www.japanesemission.com/detail/2079
拝啓,
イギリス国旗を掲げた中国の輸送船・高陞号(こうしょうごう)を沈めた日本の巡洋艦浪速の行為については,まだ明確な意見を述べる段階ではありませんが,事が国旗にかかわる問題であるため,事件はこの国の国民感情を著しく刺激する性質のものです。
したがって.現在どんな問題点が明白であり.今後どの点を調査すべきか.ここで若干の意見を述べることも有益かと思われます。
第1に,高陞号がイギリス船籍の船だったこと,合法的にイギリス国旗を掲げていたことは明らかですが.同船が中国政府に雇われた輸送船だったことも同様に明白です。
もしこれに加えて.高陞号の任務が交戦国の任務であると言い得るならば.同船はイギリスの国旗と船籍によっていかなる保護も受けられません。ストーウェル判事は,「軍人の移送のために敵国が雇った船舶は捕獲されるべき輸送船とみなされる」という理由で.敵国(オランダ)の3人の将校を運んでいた中立国(アメリカ)の船舶オロゼンポ号の没収を命じました。
この理論の適用が3人の将校で済むならば,将校を含む1700人の兵士を乗せていた高陞号は言うまでもなく,上記の理論が当てはまります。
第2に,これまた同様に確信できることですが.宣戦が布告されていなくても.日本は高隆号の任務を交戦国の任務とみなしてもよいと私は考えています。宣戦布告なしに戦争を始めるのは悪しき習慣ですが,これは過去何世紀もの間諸国が実践してきた習慣であって,今世紀後半に確立された少数のよき事例によってもまだ否定されているとは思えません。
国際法上,事実上の戦争開始はそのような形で戦争を始めた当事国にしか法的効力がありません。
中立国は戦争状態が課する特殊な責任を負う.前に,戦争開始を通告される権利を持っています。しかしながら,高陞号は中立国の船舶として封鎖を破るとか.戦時禁制品を運ぶとかしていたわけではありません。同船は中国に雇われた輸送船です。したがって中国が交戦国であるならば.オロゼンポ号が交戦国オランダと同一視されたように,高陞号も交戦国の船舶であるとみなされます。
しかし第3に,日本は高陞号を攻撃することで高陞号を交戦相手とすることはできません。同船を所有する中立国の船主と,乗船している中立国の国民に対して自己の行為を正当化するには,他の地域で行われた交戦行為によって,すでに日中間に事実上の戦争が発生していることを証明するか,あるいは高陞号が属する中国艦隊が.日本にはとうてい黙視できないと思われる任務に従事していたことを証明する必要があります。
前者の要件は,朝鮮における日中間の敵対行為や.朝鮮が中国の支援を受けた一連の行動の過程で日朝間に生じた敵対行為によって満たされるでしょう。また後者の要件は,問題の艦隊に乗船中の増援軍が,日本軍が維持する権利があると主張する地域から日本軍を排除する目的で朝鮮に投入される途中であったことを示せば正当化できるでしょう。
しかし第4の問題点として,高陞号を敵国船として処置する権利が日本にあるとわれわれが認めても(われわれがそれを認めざるを得ないとして).それで英日間の問題が解決するわけではありません。高陞号は沈めないで捕獲できたかもしれません。あるいは同船を追跡して,乗船部隊の朝鮮上陸を阻止できたかもしれません。
あるいは同船が朝鮮半島のどこかに到達し.そこに乗船部隊を上陸させたとしても.そのために日本軍が被る軍事的損害がきわめて軽微であったかもしれません。事実関係に関してこのように示唆すべき一連の事柄があります。
われわれはまだ答を出すに必要な情報をほとんど入手しておりません。しかしその筈が日本に不利であるとしたら.われわれは告訴する権利を主張すると
きに新しい分野を切り開くことになるでしょう。
戦争は.たとえ交戦国の闇であっても,得られる軍事的利益と著しく隔絶した損害を与えてはならない,という原則に基づいて行われなければなりません。これは何人も否定し得ない原則です。
したがってこの原則を侵害された交戦国は,相手国に報復手段を行使するか.できれば平時に賠償を要求することになるでしょう。しかヨーロッパ文明を享受する国家間の戦争では,この原則が無視されることがきわめてまれであるため.交戦国の一部とみなされる行為を行った中立国の国民が先の原則を侵害された場合に,この国民に代わって国家が賠償を要求したという先例が1つもありません。
しかし原則的には賠償を要求することは可能であり,またそのような中立国の権利を認めることが,現在存在する恐ろしい破壊手段の過度な使用に対して
有効な抑制力となるかもしれません。
第5に.高陞号に乗船していた中国軍が同船の降伏を許さなかったと言われています。しかし高陞号が降伏しない場合,同船の破壊が軍事的に必要であるなら,先の事実は同船を破壊する日本の権利になんの影響も与えません。中国軍を輸送する任務を引き受けたヨーロッパ人は,彼らと運命を共にしなければなりません。
敬具
J・ウェストレーク(ケンブリッジ大学の国際法教授)
チェルシー 8月2日
関連記事
-
-
『中国紙『申報』からみた『日中韓150年戦争史』⑱「中国の対朝鮮政策、ロシアも朝鮮を狙う」(「ノース・チャイナ・ヘラルド」
『中国紙『申報』からみた『日中韓150年 …
-
-
『なぜ日中は戦争をしたのか、忘れ去られた近現代史の復習問題』―「日清戦争の引き金の1つとなった『長崎清国水兵事件(明治19年)の5年後、再び日本を震撼させた清国艦隊『巨艦』6隻の東京湾デモンストレーション」
『なぜ日中は戦争をしたのか、忘れ去られた近現代史 の復習問題②』 …
-
-
日本リーダーパワー史(919)記事再録『憲政の神様/日本議会政治の父・尾崎咢堂が<安倍自民党世襲政治と全国会議員>を叱るー『売り家と唐模様で書く三代目』②『総理大臣8割、各大臣は4割が世襲、自民党は3,4代目議員だらけの日本封建政治が国をつぶす』②
日本リーダーパワー史(919) 『売り家と唐模様で書く三代目』② 前坂俊之(ジャ …
-
-
『オンライン講義/140年前の外国新聞 (フランス紙『ル・タン』)がズバリと指摘した<死に至る日本病>とは』★『①論理的な学問なし②記憶力、詰め込むだけの教育③理性的学問では小学生レベルの無能な学者を量産④優柔不断で論理性のない人間ばかり⑤新しい状況に適応できない、実際的な良識にかけた人間を作っている』
(記事再録) 1874(明治7)年5月23日付 フランス紙『ル・タン』 報道の『 …
-
-
『Z世代のための日中韓外交史講座』㉓」★『第一次トランプ暴風で世界は大混乱、日本も外交力が試される時代を迎えた。日清戦争の旗をふった福沢諭吉の「外交論」を紹介する」』★『外交の虚実』『時事新報』1895年(明治28)5月8日付』★『虚々実々の手段をめぐらし、百難を排して、国の光栄・利益を全うするは外交官の仕事。充分に任務を果たせるのは実に朝野一般の決心如何にある』
2017/02/23 /日本リーダーパワー …
-
-
『Z世代のための台湾有事の先駆的事例<台湾出兵>(西郷従道)の研究講座㉖』★『英「タイムズ」米「ニューヨーク・タイムズ」など外国紙は中国が侵略と いう「台湾出兵」をどう報道したか①』★『富国強兵政策は「植民地にならないための日本防衛」が目的』
2013/10/12 日本リー …
-
-
日中韓150年戦争史(80)伊藤博文、井上馨ら歴史当事者が語る日清戦争の遠因の長崎事件(長崎清国水兵事件)について
日中韓150年戦争史-日中韓パーセプションギャップの研究(80) 伊藤博文、井 …
-
-
『オンライン講座<イラク戦争から1年>『戦争報道を検証する』★戦争報道命題①「戦争報道はジャーナリズムのオリンピックであり、各国メディアの力量が問われる。★⓶『戦争は謀略、ウソの発表、プロパガンダによって引き起こされる』★『➂戦争の最初の犠牲者は真実(メディア)である。メディアは戦争を美化せよ。戦争美談が捏造される』
2003年12月5日<イラク戦争から1年>―『戦争報道を検証する』 …
-
-
世界が尊敬した日本人③6000 人のユダヤ人の命を救った勇気ある外交官・杉原千畝
2005年3月20日記事再編集 前坂 俊之 1940 年(昭和15年)7月27日 …
