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『日本戦争外交史の研究』/『世界史の中の日露戦争』㉓『開戦2ゕ月前の「申報」の報道ー『中国が日本を頼りにロシアを拒む説を試みに述べる』★『日中同盟そうすることでアジアが強くなり,欧米各国が弱くなる』●『日本と中国はロシアの近隣であり.ロシア人はすきあらば襲いかからんと狙っていた』

      2017/08/19

 『日本戦争外交史の研究』/『世界史の中の日露戦争』㉓

開戦2ゕ月前の「申報」の報道

1903(明治36)年1110日/光緒29922

『申報』-『中国が日本を頼りにロシアを拒む説

を試みに述べる』

現在,中国とロシアの2国間にはすでに争いが始まっている。

この争いは,わが方から始めたものではなく,むしろロシア人が始めたものだ。 ロシア人が争いを始めたその考えは,今日その発端を見ることができるが,実際には東三省(満州)に関する各条項を要求したときに,すでにひそかに謀を持っていたのだ。

 

本報は,一昨日と昨日このことを2回論じ略述した。ロシア人は,すでに甘んじて火つけ役となり,突然争端を開いたが,それは十分に考慮され,長い間、謀を練ってのことだ。争いが始まった後に,いかなる対処策を講じればよいのだろうか。

早くから考えていれば成算ができていたろうが,哀れなのはわが政府中の人々で,酔いからちょうど覚めたように,夢からまさに目覚めたように突然この異変に遠い.あわてずにはいられなかった。 ただいたずらにあわてることもまた無益なことだ。 たとえば,火がすでに物を燃やしていたら,火を消しとめる方法を必ず考えなければならず,強盗がすでに家の中に入っていたら,抵抗し防御する方法を必ず考えなければならない。

今,すでにロシアが横暴無礼な挙動をわが国に突然加えたからには,わが国 の対応策は,どのようにしたら善処策となるか。仮にもし,わが国が戦闘準備をしてロシア人と戦闘に至ったとしても,わが軍は軍糧や兵器の準備ができておらず,用いる財源もない。

甲申の年【清仏戦争】,甲午の年【日清戦争】,庚子の年【義和団の乱】以前には,わが国陸海各軍はまだ全軍喪失には至っていなかったし、国庫金の蓄えはまだ実際には全く空にはなっていなかった。

しかし,ひとたび戦いヴェトナムを失い,再戦して台湾を割譲し,3戦目で城下の盟を受け入れ,4億余りの大金を賠償した。そして今日に至ってなお戦争を主張しても.それが不可能だということを識者は当然知っている。

もし,重ねてロシア人との折衝に尽力し,あくまでそれを堅持し,忍耐をもってこれを行い,諸国の怒りを買わないようにとロシアをさとし,万国公法に背かぬようにとロシアを説得し,勇気を奮い起こして,何回挫折しても屈することなく,ひたすら自分の意見を押し通し,ロシア人がいかに強かろうが,いかに勇猛であろうが関係なく,東三省を割譲することをついに承知しなかったとしても,そのとき,ロシア人がはたして困難を知り退くだろうか。

もし,ロシアが撤退を承知しなければ,われわれは再びどんな策でこれを処理すべきだろうか。協議の結果を堅持して極力ロシア人に抵抗しても必ず効果があるとは限らない,と私には分かる。

だとすれば,朝廷はロシア人への対応策をいかにすべきか。 私が朝廷の御旨意をひそかにうかがってみるに,その意向の所在が分かる。

その意向はどこにあるのか。日本にあるのだ。

なぜそう言えるのか。那琴軒【桐】大司農の外務部尚書への転任により知ったのだ。

郡尚書は日本に派遣されたことがあり,かねてから親日,連日を主張し,そうすることでアジアが強くなり,欧米各国が弱くなることを望んでいた。 ましてや.ロシアを拒むことはわが中国の利となるばかりでなく,日本の利益にもなり,日本がなぜ従わないことがあろうか。

日本と中国は同じようにロシアの近隣であり.ロシア人はかってすきあらば襲いかからんと狙っていたことがある。

いったん中国がロシアに蚕食されれば,日本はますます孤立無援になる。 故に,私はかつて日本が中国と連合すべきなのは実は地勢がそうさせているのであると述べたことがあった。

しかもさらに,甲午の戦い(日清戦争)でロシア人は日本に迫って遼東半島の地を返還させたことがあり,日本はその旧怨を根に持っているのだ。 もしも中国が日本人と連合するならば,日本人がそれを望まないことは絶対にない。

2つの国が1つの国を敵にすれば,ロシア人が強いといっても.勝敗の成行きはまだロシアが勝っと決まったものにはならない。 しかし,このように言うのは,中国が自国のために考えたもので,日本人の心に即して深く考えたものというわけではない。

日本人の心は,地勢は中国と連なっており,一方が倒れれば他の方も倒れざるを得ないという教訓を恐れざるを得ず,また日本はロシアに深く旧怨を持っているので報復を図るべきであり.実情から言っても道理から言っても当然このような考えを心に抱いているだろう。

なお心配せずにはいられないことは,ロシア人が勇猛であり.恐れるべきだということと.中国がこれほど軟弱で連合するに足らないことだ。それで1つの政策を露日協商の方針に変更したのだ。

いわゆる協商とは,日本人がわが中国を愛して東三省の地を保全しようと望んでいるのではなく,ただ各々が利益を得ようと考えているに過ぎない。協商はまだ完遂しておらず,日本人はロシアに望みを持てないことを知っており,またロシア人も日本が必ず翻って中国の味方になることを知っている。

ついにそれ故.ロシアは機先を制する行動に出て,再び東三省を占拠して中国に手も足も出なくさせて,中国が先んじてロシアを防ぐことをできなくさせた。中国は,ここにおいてまた,その親露の考えを親日に変えざるを得なくなった。 これは一方で失ったものを他方で取り戻そうと望んでのことだ。

しかし,ここに及んで初めて親日を考えても,私は日本人には狡猾な謀があると考えている。

おそらく,中国人を弾よけにしてロシア人と戦わせ中国が勝てば,それは最初からの日本の最大の願い通りだし,ロシア人が勝っても日本は少しも損をするところがなく,落ち着いてその政策を敷き.漁夫の利の分け前を手に入れることができるようにするだろう。

これ故,昨日は日本と連合せず,しかし今日は日本と連合するというのは,また,事に当たる政府の愚味なところで当り,政府に重きを置いて信頼を寄せることができないことなのだ。

 - 戦争報道, 現代史研究

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