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 『日本戦争外交史の研究』/『世界史の中の日露戦争』⑬『開戦5ヵ月前の『英ノース・チャイナ・ヘラルド』報道―『開戦の直接原因となった『鴨緑江の竜岩浦(朝鮮領)に軍事基地を建設したロシア』●『英タイムズが報道した『ロシアの極東総督に強硬派のアレクセーエフ提督が就任』

      2016/12/30

     『日本戦争外交史の研究』/『世界史の中の日露戦争』⑬

1903(明治36)年8月21日 『英ノース・チャイナ・ヘラルド』

『鴨緑江の竜岩浦(朝鮮領)に軍事基地を建設したロシア』

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鴨緑江の河口から黒雲がわき起こり,今にもあらしが来そうな気配だ。東京からの特電をはじめとして,本紙の独占的情報によって,本紙の読者は,満州と朝鮮の国境を流れるこの川の両岸で,ロシアの侵略が前進中であることを熟知しておられるはずだ。今朝の本紙に掲載する特電によれば,このロシアの侵略に対する日本の緊張は限界点に近づきつつあるようだ。

「ロシアが竜岩浦を占領したのは朝鮮の主権の明白な侵害だ,と日本の主要新聞各は激しく非難している。朝鮮の弱腰の事後承諾は日本の合法的利益の安全保障を破壊するものだ。

均衡を取り戻すため,日本は決然たる手段をとるべきだ,と日本の新聞は主張している。そして,日本は朝鮮に対して一貫して寛容な態度をとってきたが,ロシアはそれをあくどく利用したという。

日本政府は竜若浦の土地のロシアへの賃貸を批准することに対して,強く抗議し,も

しその抗議が無視された場合には,適切な処置をとる権利を留保していると理解される」。

つまり,ロシアは今や陸海ともに準備を完了したと確信し,日本の面前で自分の手袋の代りに,朝鮮の手袋を投げて,挙に事態を進めようと決意したのだ。アレクセーエフ提督が極東総督に任命されたのはこの目的のためだ。

 

 竜岩浦(YongAmpho,地元ではYoompaoと呼ばれる)は鴨緑江の南口を制する地にあり,すでに本紙が報じた通り,ロシア人はその湾を要塞化しつつある。

彼らは居留地として必要な土地を朝鮮の地主から買収した。ソウル駐在の日本公使がこれに異議を唱えたので,パグロフ氏は朝鮮政府を説得して,その土地を回収させ,ロシア木材伐採会社を名義上の借手にしてロシアに借地させた。

もともとこの会社の伐採権は,1896年,当時ソウルのロシア公使館に避難中の朝鮮皇帝から巻き上げたものだ。この協約は723日,竜岩浦に派遣された朝鮮の役人ChoSekTyOと,ロシア木材伐採会社代表との間で調印されたと言われる。

 

ジャパン・タイムズ紙によると,この協約の内容は次の通りだ。 「この協約の前文は.次のように宣言している。マチュ一二ン氏は木材伐採契約に基づき,竜岩浦において木材会社を設立し,同地に家庭および工場を建設した。本協約は.賃貸された土地に関連し,境界線その他の事項を取り決めるために締結するものである」

 「協約本文は8条から成る。

(以下第1条から8条までの条文内容は略す)

  ジャパン・タイムズ紙が正しく指摘しているように,この利権譲渡に基づけば,伐採会社は伐採権が認められた森の中に工場を建設すること昼できるだろうが,竜岩浦のような,森からはるかに離れた場所に工場などを建設する権利はないはずだ。

100歩譲って,工場を作ることが正当だとしても,現在ロシア政府のためにロシア軍将校が竜岩浦に建設中の軍事施設はこの協約の範囲を超えるものだろう。

軍事施設が完成すれば竜岩浦はロシアの要塞と化し,鴨緑江はロシアの川になってしまうのだ。中国は朝鮮において治外法権を有していること,したがって.朝鮮の官憲は中国人を逮捕してロシアに引き渡し処罰させる権利を持たないということ,それはイギリス人をロシアに引き渡す権利を持たないのと全く同じだということを,パグロフ氏は見落としているのではないか。

 

しかし,それは些末なことで.「肝要なこと」はほかにあるとジャノヾン・タイムズ紙は指摘し,次のように述べている。

「この協約の目的は,商業的にも軍事的にも重要な地点に,1個のロシア植民地を合法的に作り出すことにある。朝鮮の領土保全はわが外交政策の基本原則の1つでありながら,朝鮮領土に対する,このずうずうしい侵略を黙視してよいのか。いや,そうは思わない」

     1903(明治36)年8月22 『英タイムズ』 

『ロシアの極東総督にアレクセーエフ提督』

(本紙ロシア通信員記事)

 

ロシア各紙は一様に,極東総督の任命を強い満足を持って歓迎している。モスクウのヴェードモスチ紙はこの人事は「大いに重要なものの1つ」だとし,ロシアの総督職の設置はきわめて例外的な状況において,知事に完全な全権を授けることが必要な情勢になったときにのみとられる措置だと述べている。

 

極東のロシア属領の一般情勢は,かつてのカフカス(コーカサス)情勢よりもはるかに複雑だから,非常権限を持った総督を特に必要とする。

「ロシアの間接的な属領の版図は.建設が給まったばかりで.その開発に必要な措置が1度でも遅れれば,きわめて有害な結果をもたらしかねない。しかるに,わが国が領土を永続的に獲得する能力は条約のもとで正式に帰属するものであれ,現在わが国の実際の保護監督下にあるものであれ.まさにこの間接的属領の向背にかかっている」と,同紙は言う。

 ヴェードモスチ紙はさらに,満州と関東地区は中国が更生不能の連中のごみ捨て場に選んだところで,匪賊に席巻されており,彼らはロシア国境でもわが者顔にのさばっている上,数も多いため,その鎮圧にロシア軍の遠征が常に必要になっていることを忘れてはならないと言う。

カフカス(コーカサス)の有名なゲリラ団も紅鬍子【馬賊】とはまるで比べものにならない。その上,狂信的な義和団の連中が満州を活動の舞台に選んだため,19001年の鎮圧作戦にもかかわらず,義和団は今日なお「中国人を惑わし」続けている。

 

これらの地域にロシアは膨大かつ複雑な経済的利益を持つため,すでに何倍ルーブルもつぎ込んでいるが,正常な開発に必要な秩序が整っていない。アムール川の両岸は,強力な大国の手中に収まるまで,平穏ということを知らなかったし,知る由もなかった。

 

19001年の作戦は中国人によい教訓となったが,そこへ日本が領土拡張政策を持って参入し,その政策は日本の力では実現できないのは確かだが,それでも極東の平和にきわめて重大な脅威となるものだ」とヴェードモスチ紙は言う。

 さらに同紙によれば.ロシアの属領の繁栄が重大な阻害を受け,また現地のロシア支配体制が十分な権威を奪われている兆しがあり,いくつもの部局に分割され事々にペテンプルグと交渉することを強いられているため,満州のアムール地方と開東地区の利益を最大限に守ることは全く不可能だった。今や最も緊急な必要は満たされ,新総督の権限の全容はまだ不明とは言いながら.すでに十分な権限を与えられたと言ってよい。

 

総督は上記亀属領において民政と軍事両面の権限を一手に握っているだけでなく,近隣諸国と外交交渉を開始・実行する権利もある。

新総督府のすべての部局は閣僚の支配から免れている。新総督アレクセーエフ提督はロシア皇帝とその特別任命の委員会に直属している。

ヴェードモスチ紙は次のように言う。「かくて極東におけるロシア皇帝の意志と目的は新しい手段を与えられたのであり,今後は臨機の処置をとるのに遅疑遽巡が生じることはあるまい。これからはわれわれは極東において必要に応じ,状況の求めるままに敏速かっ精力的に行動することができる」

 新総督の人物については,ヴェードモスチ紙は,改めてロシア人読者に紹介する必要もあるまいと言う。その軍事および行政上の手腕は最初に極東の司令官に任命されて以来,十分に発揮されてきた。自分の領域を隅から隅まで知っており,その元気,判断力,万端の能力は,これからは極東でロシアのために必要な措置を怠らず,ロシアの行く手を阻む者は容赦しないことを保障して余りある。

 ノーヴォェ・グレーミャ紙も,この間題についての社説で,一貫した鉄道によりヨーロッパ・ロシアと結ばれてはいるが,太平洋岸および関東地方のロシア属領は,ロシア中心部から膨大な距離にある植民地なので,帝国の他の地域と一緒に扱うことはできないと言う。

同紙は,これらの領土の必要事項に,首都から頻繁に干渉されずに取り組む権限を与えられた総督が任命されたことを,温かく歓迎している。また,この措置にはきわめて異例な政治的意義があるという。

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