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尖閣問題・(資料)『日清戦争にみる日中誤解(パーセプション・ギャップ)の衝突③中国は機に乗じ勝利を収める

   

 
尖閣問題・日中対立の先駆報道の研究

(資料)『日清戦争にみる<日中誤解>
(パーセプション・ギャップ)の衝突

 
 
清国新聞『申報』<明治27年(1894824日付>
 
日本の内情が明白となり,形勢も不利なので,中国
は機に乗じ勝利を収めるべきことを諭す

 
 
 
実情というものは見きわめがたく、形勢というものは変勤しやすい。元来よく兵を用いる者は.ただ自己の実情と形動に審かなだけでなく,とりわけ必ず他者の実情と形勢に審かなものだ。実情と形勢がすでに審かとなれば,自分がはたして相手を制することができるかどうかを明らかた悟ることができる。
 
しかる後.その場に応じてたちどころに決断し、すばやく行動を起こすのだ。兵法に言うように,己を知り相手を知らば百戦百勝である。今日の日本はまさに,実情は明白となり形勢も不利と奮える。日本が初めて兵を動かして朝鮮へと赴かせたときは.もともと兵力の恃むに足りないこと、軍需の継続しかたいことに考え及ぶ暇がなく、ただ琉球や台湾のあとに倣い、あらかじめ,中国はもとより寛大に対処し,軽々しく戦端を開くことを欲することはないと予想し、ついに公然と悪事を犯し軽挙妄動したのだ。
 
日本の政治を担っている諸臣は皆軽率に事を喜び、その説に付会して.それにより日本の朝廷の耳をそばだたせて次のように言った。すなわち,中国は元来隠忍自重を事となしており,兵を動員し少しばかり朝鮮へ赴かせれば,中国は
必ず局外の仲裁する言を聞いて、それにより停戦を求め.数百万の戦費賠償も容易に得られるだろう,と。
 
日本の朝廷はその言に惑わされて,ついに朝鮮を狙う挙を起こすに至った。しかしながら諸臣のうち、老成にして慎重な者は昔この挙を非とし,陰では色をなしてこれを難じでいる。全国の民情はとりわけきょうきょうして中国軍が東に向かえば,ちっぽけな小国たる日本は保ちがたいことを深く恐れ,風説の伝わるところ、草目さえも皆兵隊ではないかと疑ってびくびくしている。動員した常備兵は西洋式の訓榛を行っているとはいえ、平素はいまだ戦陣を経験しておらず.いまだ大軍に遭遇してもいないのに戦々恐々として恐れおののき,ついにはきょう怯として自殺する者までいる。牙山の戦闘では7000~8000の多勢によってわが中国軍200-300の残兵を攻めたが,なお死傷者は相匹敵し,戻るときには異常に狼狼し.歩みはよろよろして、甚だしい者に至っては靴や帽子を投げ捨てる者までいた。
 
すなわち日本の兵が役に立たないことがわかる。続いて移動させられてくる後続部隊の兵も皆、老弱残廃の人であり.数をまにあわせるべく臨時に募集した者も、皆市井の無頼の徒であり,甚だしきは、昼に応募して日暮れには烏合の衆となっている。
路半ばで脱落したり逃亡したりするのでなければ,陣に臨むと敗れて崩れ、ちり寄りばらばらになってしまう。いわんや日本の人口はわずかに4000万で.中国の10分のl しかいない。たとえ国中の老若男女を強制的に兵籍に入れても.数の上でおのずから限界がある。
この種の男女は老弱であり.まさに形ばかりの教を合わせるだけで実用上は役に立たず.中国軍の手で殺されるだけだ。そうでないとしても東海の藻屑となるだけだ。事を起こした諸臣は、遠方における軍事行動でいっこうに成果があがらないため.兵の士気がばらばらとなり民情が騒ぎ乱れることを免れないことを恐れ.ついには偽って勝ち戦と報じて彼らを欺き、かつ各新聞社を管制下におき戦争についての記載は必ず政府の検閲を受けさせ.必ずさしさわりのないことを確かめてからようやく刊行を許可する。
 
取り繕い.覆い隠してごまかし.大変苦心を重ねているのだ。しかし実際は日本兵で朝鮮にある者は前後動員されてまさに3万余人であり,先般牙山へ進攻したが.葉・轟提督によって大いに打ち破られ死傷者は2000余人の多きにのぼった。その後両提督は1000余の衆を率いて日本のとりでに迫り.これに当たる日本兵をそのたびにけちらして無人の境に入るがごとくだ。
 
 日本兵が役に立たないことはますますわかる。いわんや中国の陸兵のうち鴨緑江を渡ってきた者は,きわめて勇猛な大軍であり.非常に威勢がよく.数はすでに3.4万となっており.すでに葉・轟両提督に合流している。両軍門はすでに日本兵を大いに打ち破っているので,日本兵の腕前についてはとっくによくわかっている。したがって,奇襲によって勝ちを制し,著しい戦果を収めることは.期して待つべきだ。また日本の軍艦20余隻が威海衛・旅順等の場所をうかがっていたが、皆砲台の撃退するところとなって相率いて遠くへ逃げ、日本人の計策は尽きてしまった。

われわれはただ各海港において厳に守備を固め.これによって日本の軍艦に進退のすべをなからしめればよい。海港にすでに砲台があり.要所に拠って敵を防ぎ.また水中ひそかに水音を設置しておけば,日本の艦隊は聞入できない。わが南洋・北洋の各兵船はまさに1ヵ所に集合して,急ぎ朝鮮海域へ行き.ひ
 とたび日本の艦船を見つけたならばすぐに痛撃を加え.糧食を積み機械を運んで日本兵を援助することができないようにする。
 
 海上で援助がすでに断たれたならば.日本兵の朝鮮にいる者は座して困窮する状態となる。朝鮮の民衆はもともと忠義の心をもち憤っているので、ひとたび王の軍隊の至るを聞くや,必ずや旗を奪って義挙する者があるだろう。わが陸軍の大隊は北から南へとしだいに進攻し.百戦を経た精兵をもって性病で無能な弱虫の日本兵をたたく。
これはいわゆる「破竹の勢い,数節の後は、当に迎刃して待つべし」というものだ。日本の3万余の兵は.もはや形をなさなくなってしまうだろう。日本の事を起こした諸臣は,面目なく帰国して.ただ刀を抜いて自ら首をはねるしかないだろう。
 
 ここに至ればすなわち中国の名声と威厳を強大とし.世界の公憤を表すことができる。朝鮮の日本兵はすでにことごとく中国の滅ぼすところとなり.また軍艦2、30隻で大急ぎで東方へ進撃し.戦勝の余勢に乗じて.日本の要害の地たる海港を攻める。日本はすでに国外軍隊を失っており.もはや強壮な兵士は存在せず.国中に残っている者は半ばは老弱であり、ひとたび敗戦の知らせを聞けば,すぐにも魂が飛び散るほどに驚き,中国軍が国境に迫るのを見るに及べば.武器を投じひれ伏して降伏を請うだろう。
 
いわんやその国民の大半は.兵力を乱用し武徳を汚し軽挙妄動したことを失敗
 だったとしている。今や国家が瓦解せんばかりの状況にあり,身や家が累卵の危うきにあることを知れば.必ず戦をやめて君主の側にいる悪人を粛清し中国軍を迎えることだろう。
 
わが国としては.日本の海港のうちの1,2か所に拠って戦費賠償金数十億.数百億を求める。賠償金すべてを支払うまでは、その海港は返還しないように
する。そして中国は得られた賠償金によって軍艦を増強し,精鋭なる軍隊に訓練を加え、何事もなくとも自強を考えないときはないようにし.君臣が徳を同じくし,上下心を一にすれば,今後日本が長いことあえて中国を軽視することがないようになるだけでなく.局外の諸外国人の、かつては中国をそしり.き弱国であるとしていた者も、ここに至ってまた皆新しい目で見るようになり.東方にもいくらでも人材がいると思うようになるだろう。
 
そうすれば、朝鮮の保全は可能であり.中国も安んずることが可能であり.アジアの大局も長く保つことが可能となるだろう。古人の言に「天与取らざれば却って其の咎を受く」とある。今日本は外に軍を失い.内に軍需が尽き,民衆の不満は沸騰し.兵士の心はばらばらで.危険で一刻の猶予もならない。これはまさに天がこれを滅ぼそうとしているときだ。
 
中国は10倍の兵と10倍の兵糧により.大なるをもって小なるを制し,順なるをもって逆なるを討たんとしているのだ。もし、この機に乗じて大いに懲罰を加え.それはよって数十年の積み重なった怒りをはらさず、座してこの好機を失い,日本の一時逃れを許し,敵を放任して災いを招くようなことがあれば,必ず後に悔いを致すこと甚だしいものがあるだろう。そしてそれは中国にとって得策ではないのだ。
 
これを要するに,中国と日本は勢いとして並立せず.中国が日本を制することができないならば.日本は必ずや百計を尽くして中国を狙うだろう。ただ日本を大いにたたいてこそ.1度の労力で長く安んじることができるのだ。中国の威信と覇権を確立するのは,今このときにこそある。決してこの機を失してはいけない。
 
 
 

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