『各国新聞からみた日中韓150年対立史⑤』「1882年、中国は琉球問題で対日戦争準備を進めた」と英『ノース・チャイナ・ヘラルド』⑤
『各国新聞からみた東アジア日中韓150年対立史⑤』
最近の日中韓の対立のコジレをみていると、日中韓の150年戦争史の既視感(レジャビュ)がよみがえります。あと5年(2018)後は明治維新(1868年)からちょうど150年目に当たります。この間の三国関係を振り返ると、過去100年以上は対立、紛争、戦争の歴史であり、仲良くしていた時期はこの最近3,40年ほどの短いものであり、単に「近隣関係、近隣外交は仲良くしなければ」という建前論からではなく、その対立、戦争のとなった原因までさかのぼって客観的に調べなければ、何重にもモツレた歴史のネジレを解いて真の善隣友好関係は築くことができません。その意味で、150年前の対立、戦争となった事件の各国の報道をたどってみたいと思います。
●131年前の日韓第一次戦争
(1882年の壬午の変)前に「中国は琉球帰属問題で対日戦争の
準備を進めた」と英『ノース・チャイナ・ヘラルド』は報道⑤
琉球帰属問題に恒久的終止符が打たれない限り、日中のにらみ合いは続く。
●『中国の軍事組織』『ノース・チャイナ・ヘラルド』(1882(明治15)年3月1日付)
2年前のロシアとの紛争の当時,中国が進めた戦闘準備には隠れた目的があったと伝えられている。Hunan・アムール川間に軍隊モ動員したのは明らかに防衛的な措置で.突発的緊急事態に備えたものだった。中国にはやむを得ない場合は別として,本気でロシアと一戦を交える気はなかった。そして結局ロシアとの危機は去ったが,実はその間,同時に対日戦争の準備が進められていたのだ。
琉球の宗主権に執着する中国の執拗さには多くの者が驚いているが,われわれの得ている情報が正しいとすれば,中国は明確な政策のもとに,終始好機到来を待ち続けていたことになる.両国が今にも交戦状態に入るかのごとき,驚くべき風評が最近われわれの耳に届いたが,これはどうやら疑ってかかる必要がありそうだ。
だが日中両国がそれぞれに武装中立の態勢にあり.外交交渉なりなんなりを通じて両国間に一定の協定が成立し.当該問題に恒久的終止符が打たれない限りにらみ合いの現状が続くことは否定できない。
問題は中国軍の組織だ。とうてい部分的・地方的戦闘力以上のものを発揮できるような組織ではない。一般行政面で.かくも中国政府の弱体化を招いている中央集権の欠如が軍事面にもはっきりと現れている。
それぞれが一定の自治能力を持つ18の州の連合体が中国帝国だといっても過言にはなるまい。むろんこれを厳密な意味で受け取られても困るが.まるで根拠のない言い分でもない。同様の欠陥は軍隊組織にも見られ,こちらの場合は文字どおりに受けとめてもらって結構だ。
まず深刻なのは,熟練将校(つまり外国式訓練を受けた将校)がいないことだ。熟練将校を見る役人の目は,疑惑を超えて嫌悪に近い。熟練将校には海兵も反対している。結局,陸軍なり海軍なりの戦力を保つ道は1つしかない。一種の派閥制度を維持するしかないのだ。
西洋の軍隊をくっきりと特徴づけている「団体精神」に代わる主たる代用品として,中国には派閥制度があるだけだ。中国の陸・海軍組織の欠陥を助長する重要な要素として.生誕地の違いや方言の違いをあげてもいいだろう。寧波の水兵は.広東や福州の将校の指揮下では動かない。湖南の戦士は湖南人の指揮下に入ることを要求する。広東の兵士は湖北や山東人の指揮を拒否する。要するに均質性だの一体感だのは求めても無理だということだ。
北京人が広東人をほとんどヨ一口ッパ人と同様.外国人とみなしていることは.ほぼ間違いない。両者の言語・伝統はもちろん,風俗も,また(ある程度まで)衣服さえ違っている。
万一中国が日本と戦争するような愚挙を犯すなら,上述のもろもろが一体となって中国の前に立ちはだかるだろう。中国人の間では対日戦争を支持する声が高まっていると伝えられている。もしそれが事実だとすれば.中国にとってはいっそう始末が悪い。
民衆の意向に迎合して戦争に走れば,恐るべき冒険を冒し,多数の貴重な人命を失い.莫大な出費を免れないだろう。この手の戦争は人民と当局を団結させると言われる。
だが,それは認めるとしても,いったいどんな目的のためになのか?貿易はさんざんな痛手を被ることになるだろうし.さらに日中両国の共通の敵に絶好の機会を与え,いったんそのすさを突かれたら,両国にとっては長く続く痛ましい結果を生む危 険をはらんでいるのだ。中国と日本が琉球問題で争いをしている間に,ロシアは朝鮮を侵略するだろう。
争っている当事者はカキもカキの貝がらも得られまい。どちらも国力を消耗し.共通の敵からの攻撃ないし侵犯に対する抵抗力がいっそう弱まるだろう。
日中両国のいずれも外国の援助を当てにしてもむだだ。両国の戦争目的が,ヨーロッパ諸国政府の同情を得られる性質のものではないのだ。
現地語新聞が自由に書き立てていることだが.万一日本が中国と紛争状態に入った場合,日本は合衆国の援助を当てにしてよいと,グラント将軍が東京に滞在中に非公式ながら内々に約束したという話が日本国内で広く喧伝されている。
この話に根拠がないことは明らかだ。グラント将軍は,そんな乱暴な取返しのつかない約束をしたり.または母国を,とうてい実行するはずのない政策に追い込んだりするような人物ではない。仮にグラント将軍がそんな約束をしたのが事実だとしても,将軍の約束にはなんの重みもなく.アメリカの無責任きわまるジャーナリストの約束となんらかわりがない。
中国人にも日本人にも理解できていないらしいが.グラント将軍は今は,ごく普通の一介のアメリカ市民に過ぎないのだ。合衆国の公務には無関係だし,おそらく影響力さえほとんど持っていないだろう。
また.日本人が期待しているような介入は,日本人が期待を寄せる国の外交政策と全く調和しないのだ。アメリカは孤立葺義をとっている。それが幸いして他の国々の紛争から独立していることができるのにもかかわらず.一片の感傷から軍事行動を起こすとは考えられない。まして,紛争を起こしていないどころか、あらゆる点から見て友好関係を維持したい国を敵に回して,特定の国に味方するはずがない。
要するに.日中両国がはっきり認識すべきことは,仮に戦争になったら,双方とも全く自力で戦わねばならないということだ。しかも戦争で得るところはなにもなく.あるのは損失だけだということだ。われわれが得ている範医の情報から判断して言えることは,双方にはいらだちの感情が存在し,最近とみに両国間のやりとりが苛烈さを帯びてきているということだ。
またわれわれが確信するのは中国がかなり前から全力をあげて,日本に対して優位に立とうと準備してきているということだ。ひと言で言えば.外国公使の友好的な仲裁によって大惨事を避けられるかもしれない事態というのが現状だ。そのような仲裁が成功すれば,条約締結国すべての利益になることは確かだ。
ひとりロシアだけが好機到来をうかがっているが,何よりも重要なことは.その好機をロシアに与えてはならないということだ。
中国との戦争に巻き込まれた場合,「北方のタコ」からの重大な危険にさらされることを日本がしっかり認識していないとは、まず考えられない。つまりこの間題では.中国・日本・条約締結国の利害は分かちがたく結び付いているのだ。
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