前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

日本敗戦史(49)マスコミ人のA級戦犯指定・徳富蘇峰が語る『なぜ日本は敗れたのか』①

      2017/08/16

日本敗戦史(49)

マスコミ人のA級戦犯指定の徳富蘇峰が語る

『なぜに日本は敗れたのか』①

 

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BE%B3%E5%AF%8C%E8%98%87%E5%B3%B0

徳富 蘇峰はいうまでもなく日本近代、最大のジャーナリストであり、知識人でもある。日清戦争に従軍し、日露戦争では開戦を支持、山県有朋、桂太郎ら明治のトップリーダーの伝記編纂、著者となり、太平洋戦争中は「大日本言論報国会会長」として、日本の新聞、出版のトップに君臨して、戦争の旗振り役に徹した。昭和16年12月8日の開戦では東条英機の依頼で、詔書を添削した。昭和19年)2月には『必勝国民読本』を刊行した。終戦後の昭和20年9月、敗戦責任を取り、自らの戒名を「百敗院泡沫頑蘇居士」とする。GHQによって戦争責任を追及されてA級戦犯に指定されたが、後に不起訴処分となった。徳富の死後半世紀たった2006年、蘇峰が終戦直後から綴った日記「終戦後日記」が初めて公開された。

この中で『何故に日本はやぶれたるか』を追及し20回連載している。A級戦犯に指定されて人物で、ここまではっきり書いた者はいない。

原因として昭和天皇をはじめ軍人、政治家、首相、リーダーたちが明治のトップリーダーと比べると質が大幅に低下し、さらに欠乏したこと、大東亜共栄圏の指導者たる資格にかけていたこと、日本人の欠点について、満州事変、日中戦争の大失敗、大戦略の欠如、教育の失敗、軍事、外交の失敗などの全面的な批判を展開している。

私がブログで展開している「天皇ガラパゴス国家の<死に至る日本病>」であり、今もこれが再発して、重症化し「第3の敗戦」が切迫しているのである。

 

徳富蘇峰が語る『なぜに日本は敗れたのか』①

 

いまさら敗戦の原因などを、詮議したとて、いわゆる死児の齢を数える類で、愚痴の極みであるが、しかし、少なくともわが日本人は、なぜに今日のような、浅ましき惨めなる状態に陥ったかという事を、研究し置く必要がある。それは

  • 日本国運の興亡の正当なる智識を、得るためである。
  • 将来、再びかかる間違いをひき起し、過ちを繰り返さないためである。
  • 万一日本が、再興する場合があるとすれば、この苦がい経験を、先人が遺した大きな教訓として、受用すべき為めである。たとえ国は亡びても、歴史は滅びるものではない。歴史の上に、間違った事を書き残して置く事は、自国を誤まるばかりでなく、世界の総ての人類をも、誤まる事となる。

そこでわたしは、終戦以来、なぜに日本は敗れたかという事について、常に研究を凝らしていた。しかし過去の一年間(昭和20年8月から昭和21年)は、むしろ何故に日本は、戦かわねばならなかったかという事を、多く考え、多く語り、何故に負けたかという事は、全く語らぬではなかったが、むしろ第2に置いていた。本年はこの方面について、少しく語って見ようと思う。

 

相手側の米英その他はもちろんの事、わが国の論者も、戦ってはいけない戦争を、戦ったために、敗北したのである。軍閥、財閥などが、不義の戦争を起こしたために、天罰を受けたのである、という意味の1点張りで、この間題を一掃した者が、多いというより、ほとんど総てである。

これは言いかえれば、日本人は悪人であって、悪事をなして、必然なる悪い結果を受け、米欧人は善人であって、善事をなし、善い結果を受けるという意味に外ならない。このように初めから世界の人類を、善玉悪玉に区別し、その必然なる運命をたどろうとする事は、非科学的の骨頂であるが、今日はむしろ科学の仮面をかぶった人々が、その議論の過程では、相当合理的な文句も吐くが、裸かにして見れば、私が前に述べたる通りに他ならない。これではとても問題にならな

い。

今回の戦争と限らず、開国以来日本の、外に向っての行動は、

何れの国を対象としたものに関わらず、また如何なる手段を使用したるにかかわらず、自存のため、自衛のため、自尊のために、行ったという事を、前提とし、これはむしろ国民的本能であって、民族として存在する限りは、善悪の論はしばらくおき、世界的に公認されるべきものであるという前提の下に、これを語ろうと思う。

さて、これを語るには、別に順序立てて語らず、思い出し、引き出し、感興の湧くままに、大小軽重取り交ぜて、断片的に語る積りであるが、しかしこれを語って了えば、それらの材料で、立派に、何故に負けたかという事が、明白にわかるであろうと思う。

(昭和22年1月6日午前、晩晴草堂にて)

 

 

 - 人物研究, 戦争報道, 現代史研究

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
『リーダーシップの日本近現代史』(274)★『江戸を戦火から守った <勝海舟、山岡鉄舟と共に幕末三舟の一人として知られた高橋泥舟の国難突破力②-泥舟の槍・淋瑞の禅』

       2011/06/11&nb …

『60/70/80代への良寛<生死一如>お笑い講座』★『80歳の金持ち老人が「わしは百歳まで何とか生きたい。よい方法はないかな」と相談にきた』★『良寛は「たやすい御用じゃ。それくらいなら簡単じゃ』★『答えは!〇〇と大笑した』★『 「災難にあう時節には、災難にてあうがよく候。 死ぬる時節には、死ぬがよく候。 これ、災難をのがるる妙法にて候」

  2021/08/19  『百歳学入門」再録 「 …

no image
『リーダーシップの日本近現代史』(44)記事再録/明治維新の革命児・高杉晋作の「平生はむろん、死地に入り難局に処しても、困ったという一言だけは断じていうなかれ」①

    2015/07/29日本リーダーパワー史( …

『チャイナリスクの歴史研究』★『 2019年1月、米中貿易戦争は軍事衝突に発展する可能性は!?』★『中国漢民族中心の「中華思想」(華夷秩序体制)×韓国の『恨の文化』×日本の『恥の文化』『ガマン文化』『和の文化』のギャップが大きすぎる。』★『外交バトルの底に日中韓ケンカ作法の違いがある』

22019/10/17/『リーダーシップの日本近現代史』(93)記事再編集 米中 …

no image
知的巨人の百歳学(143)知的巨人たちの往生術から学ぶ②-中江兆民「(ガンを宣告されて)余は高々5,6ヵ月と思いしに、1年とは寿命の豊年なり。極めて悠久なり。一年半、諸君は短命といわん。短といわば十年も短なり、百年も短なり」

    2010/01/21/百歳学入門②ー知的巨 …

no image
世界リーダーパワー史(928)-『「アメリカ・ファースト」から「トランプ・ファーストへ」」★『トランプの仕掛ける世界貿易戦争勃発』、第一ターゲットは対中国、第2ターゲットはEU・NATO同盟国、日本も第3ターゲットに?』★『1945年後の米国1国支配の国際秩序の崩壊へ』―「トランプ・ファースト」へ

  米中貿易関税戦争勃発―「トランプ・ファースト」へ コミー前FBI長 …

no image
『「申報」からみた「日中韓150年戦争史」(63)『(日清戦争開戦1ヵ月後)-『日本.まさに滅びんとす』

     『「申報」からみた「日中韓150年戦争史 …

no image
記事再録/知的巨人たちの百歳学(128)‐『蟹江ぎん(108歳)きん(107歳)さんのギネス長寿姉妹『スーパーセンテナリアン10ヵ条』★『「人間、大事なのは気力ですよ。自分から何かをする意欲を持つこと』★『「悲しいことは考えんほうがええよ。楽しいことを夢見ることだよ』

 百歳学入門(172)-『生死一如』 『百歳天女からの心に響くメッセー …

no image
『F国際ビジネスマンのワールド・カメラ・ウオッチ(62)』(世界の至宝、日本の国宝 奈良の薬師寺三尊像を仰ぎ見る)③

   "World Camera Watch of …

『中国近代史100年講座』★『辛亥革命で孫文を助け革命を成功させ革命家・宮崎滔天兄弟はスゴイ!、宮崎家は稀有な「自由民権一家」であった。(下)』★『1905年(明治38)8月20日、東京赤坂の政治家・坂本金弥宅(山陽新聞社長)で孫文の興中会、黄興の華興会、光復会の革命三派が合同で「中国同盟会」の創立総会が開催され、これが『辛亥革命の母体となった。』

  2011/10/22 『辛亥革命100年』・今後の日中関 …