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地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

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『Z世代のための<日本安全保障史>講座①」★『1888年(明治21)の末広鉄腸の『安全保障論①』★『1888年(明治21)、優勝劣敗の世界に立って、日本は独立を 遂げることが出来るか』★『各国の興亡は第1は金力の競争、第2は兵力の競争、 第3は勉強力の競争、第4は智識(インテリジェンス)の競争である①』★『トランプ1国孤立主義で世界秩序は大変革期(大軍拡時代)に突入した』

   

オンライン講座/日本興亡史の研究』
日本リーダーパワー史(610)記事再編集
末広鉄腸は(1849~1896)
愛媛県生、新聞記者、小説家、政治家、父は宇和島藩士、明治8年(1875)曙新聞社に入社。新聞紙条例を批判して投獄、のちに朝野新聞に入り、再び投獄。自由党結成に尽力し、板垣退助の外遊を批判して脱党。
21年4月ヨーロッパに旅行し、22年2月11日帰朝した。その旅行記は「鴻雪録」(22年)、「唖の旅行」(前編22年、後編24年)として知られている。ここに掲げた「我国之内政外交」は、帰る朝後まもない3月、新宮座における大同団結演説会での演説であるが、内容は一種の旅行談で、新帰朝着の目で憲法発布当時の「内政外交」を論じている。これは同年6月出版された。
1888年(明治21年)の外遊経験から「内政外交」を論じる末広鉄腸の大演説
私は1888年(明治21)4月からヨーロッパに旅行し、22年2月11日帰朝した。足掛け2年海外へ出でおりまして、留守中に起った我が国の事変は1、2の新聞紙で知った位に止りますから、演説中に色々間違った事柄があるかも知れません。
この段は予じめ御承知あって御聴取下さるようにお願いします。
さて私のヨーロッパから返って来て構浜へ上陸しましたは1889(明治22)年2月11日(紀元節)の憲法発布式の当日でありました。http://tamutamu2011.kuronowish.com/teikokuhappusiki.htm
明治憲法発布式の感想ー誰も読んだことのない憲法草案、紙に書いた憲法よりも,実践こそ大切
迎えに来た人々が東京、横浜は言うまでもなく、わが国中はどこもかしこも憲法発布のお祝で古今未曽有の騒ぎであることを話しましたから、私はその人々に向い「わが国の人々は憲法々々と言うてお祝をするからには定めてその憲法の発布になる前に草案が世の中へ出て皆んながそれを一読したのであろうな」と問いましたところが、
その人々が「なあに、今日まで誰れもその草案を見たものはない」といいますから私はすこぶる奇怪の思いがしたので「それではいささかお祭りが早や過ぎるようじゃ、わが国の人はただ憲法というものが出来さえすればその性質はどのようなものであろうとも国家のために利益になるかと思うのかそれは大層な間違である。発布になった憲法を見てそれからお祝の相談をするのが順序であろう。
ただ紙に書いた憲法が立派であれば政事社会の実際はどのようにあろうとも国が文明富強にに進歩しようと思うのは大変な間違いというものである。
私の聞く所では今日各国の憲法中にてスベインやギリシアの憲法は新らしく出来たものだから学理にも協い、批難されるところが少いそうです。しかしながら、この2ヶ国の政事はヨーロッパ第一等に位すると言われぬばかりでなく、スペインの如きは国勢の次第に衰微につく傾きのあるのは何故でありましょうか。
また英国の憲法は歴史上自然の発達から起ったものであるから、紙の上で視るときは混雑とも何んともたとえようのない程でありますが、さて実際でいうと英国ほどうまく政治の運転する国はないようです。
これは一国人民の智誠と熟練(インテリジェンス)が進歩して巧みに憲法を利用する故でありましょう。それゆえに私は『ペーパア・コンスチチウション』即ち紙に書いた憲法にのみ着目して国家の文明富強に進歩することを予想することはできない」と言いました。
優勝劣敗の世界に立って、日本は独立を遂げることが出来るだろうか心配
ナゼ私は帰朝早々、さような議論を吐きましたのでありましょうか。私は洋行中見るもの聞くものについてわが国のために心配することが多く、満胸の感慨を抱いて横浜へ上陸しましたから、お祭の騒ぎなどは少しも私の目に入らずこれまでの通りのわが国ではこの優勝劣敗の世界に立って、独立を遂げることが出来るであろうかと頻りに心痛に堪えませんからのことであります。
諸君よく眼を開いて世界の有様を御覧なさい。各国の興廃は
第1は金力の競争であります。
貧乏な国は一も二もなく金の多い国に押付けられるではありませんか。
第2は兵力の競争であります。
軍艦や鉄砲弾丸の少ない国はいつも軍備の整頓した奴つにめちゃめちゃにせられます。
第3は勉強力の競争であります。

国の人民がどんな困難に出逢うとも少しも屈従することがなく是非とも進んで目的を貫徹する気性がなければとても一国の独立を維持することは出来ません。
第四は智識の競争であります。
今日、国家の優劣を定むるのは1に智識(インテリジェンス)にありといってもよい位で、ヨーロッパ諸国の世界に跋扈(ばっこ)するのは智識の巧法に外ならぬかと思います。そこで今日、わが国の有様をもって欧州諸国に比較しますれば金力から智識まで誠に残念ながら遠く数十歩を譲らねはなりません。

 

然れば優勝劣敗の盛んに行われる今日の世界においてわが国は如何になりゆくことでありましょうか。私ははなはだ懸念に堪えません。元来、わが国は1つの島国で外国と交通が少うございますから有識の士でも、とかく海外の事情について注意が薄いようであります。
且つ器械の内にあるものはその器械の良否を知らずと言うが如く、たびたび外国へ出で局外から観察をしないと大層に判断を誤ることがありますから、私も外から内を観るの利益を思うて洋行を思い立ったのであります。
ところが昨年4月に日本を出てから先日横浜へ帰るまで事々、物物ことごとくく私のために非常の感動を引起す種となりました。ついて私は諸君に向い欧米諸国の見聞上、最も自分の脳髄に感激を与えた事件をお話いたし、それから進んで本題に説き入りましょう。
(米国の旅は省略)以下は、英国ロンドンに入った。
英国は世界を引受けて商売をなし、それで1国の繁盛するばかりでなく地方はここごとく製造場(工場)でありまして、その有名なる「マソチェスター」近傍などはちょっと汽車の窓から覗いて見ても、四方10キロの間に煙突が林立しておるのは丁度大きな港で帆船の林立するを見るようにて黒煙のために日光をおおうう勢であります。
今日、我が国の有様ではとても容易にこれと競争することは出来ますまい。それからフランスへ参りました。パリの市街の美麗なのと建物の広大なのはよく洋行先生の話すことでありますが、私の心に感じたのはそれではありません。
諸君も御承知の通りフランスは1870年の戦争でドイツのためにメチャメチャに蹂躙され、(普仏戦争)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%99%AE%E4%BB%8F%E6%88%A6%E4%BA%89
その上に50億「フラン」という大金を取り立てられ、一国の困難は思いやられるほどでありましたが、20年も立たぬ内に、たちまちち勢力を恢復したばかりでなく軍事上進歩の迅速なのは古今万国に比類なきことであります。
現に陸軍の盛なるとその武器の整頓したのは勇武をもって自ら誇るドイツも一歩を譲る勢となりました。
海軍も同様で四、五年前までは英国軍艦の数はにわかにフランスの上に出でて、十字の旗章は覇を海上に称うるという有様でありましたが、今日ではフランスの艦数は英国より五隻多くなり、これがために英国も狼狽せねばならぬようになって釆ました。またフランス人の報国心に富むのは感心なことで諸君も御承知の通り、昨年ロシア政府はパリにおいて国債を召募しました。
ロシアから申出した値段は債主にとって利益という程でもなくその上、ロシアは随分財政困難でありますから、その公債は余り安全とも思われません。しかるにパリの人民は非常の熱心にて爺さんも婆さんも「ポケット」をたたき振ってこれに応じ、暫時の内に申込み高が予定の金額に倍しました。
これは何故かと問いまするに今日仏国は八方に敵を受け、その同盟の国と言えば一のロシアがあるばかりですから、人民は国債の安全であるかないかを不問に置き、ロシアの満足を得るのは自国の利益であると思うて我れ先きにと召募に応じたのであります。
民にこの精神がなければフランスはとても諸大国の間に立って今日の地位を維持することは出来ますまい。私はパリを去って「マルセーユ」に出で、地中海を横ぎってそのエジプトのアレクサンドリア港へ上陸しました。
アジアはイギリス、フランスが2分する
ここは以前ヨーロッパの風を真似て都府の外観を飾りましたから建物などには随分広大なものがありますが、今では大方屋根が落ち壁が崩れ、目も当てられぬ有様です。その内でも相応な家で商売をしておるのは大方西洋人であります。
土人(現地人)は豚小屋のような内に棲み貧乏な形で往来しておりますから、私はわずかに一つの地中海を越したばかりで早やこんな悲惨な有様を見受けることかと覚えず長大息をしました。それから「アデン」「コロンボ」「シンガポール」「ホソコン」などの港へ参って見れば東洋の要地はことごとく英国のために侵略せられ、安南(ベトナム)の領地であった「サイゴン」は全くフランスの支配の下に立っております。
何んと我々アジア人にとっては残念至極のことではありませんか、さりながら私は独り欧州諸国の東洋政略について憤慨したばかりではなく、ごく手近かの処に最も怖るべき大敵のあるのを見出しました。
中国人がアメリカへの移民から排除されたが、熱帯、東南アジアの商業の実権を握り、日本の存在感はゼロ
諸君は支那人(中国人)が漸次にアメリカに侵入し節倹と勉強をもって同国人の職業を奪いまするから同国政府は致し方なく支那人拒絶案(中国移民排除法)という無法千万の法律を発したのをお聞き及びになりましたろう。
今「コロンボ」以東の諸港は名のみ英仏2国の領地でありまして、しかし商業上の実権は皆な支那人の手に落ちております。熱帯地方の太陽のためにやき付けらるるにもかまわず我れ先きにと飛び出し、金力のある西洋人と競争して全勝を得るとはいかにも感心至極のことではありませんか。
支那人がこの通りインドの地方にまでも蔓延しますから、わが日本人はどんな有様かと尋ねますれば、誠に気の毒至極にて「コロンボ」や「シンガポール」などにて相応に商売をしておる日本人は全くおらず、ただ長崎辺から憐れむべき貴女達が多人数出かけて、最も貴重なる職業を営むばかりであります。(海外出稼ぎの日本人娼婦)、それ故に私はわが国の人が今日のようにうかうかしておりましてはとても進んで金力あり兵力あり勉強力あり智識あるヨーロッパ人と対立することが出来ぬばかりでなく、近く支那人(中国人)と競争することもむずかしかろうと思うて心配に堪えません。
ヨーロッパの勢は限々と進みまするに、我が国は十歩も二十歩も辺に退いておりますから、我が国人の少しも外を見ずして安心をしておるは丁度万丈の懸崖がいつ崩れかけてくるも分らぬのにその下で枕を高くして眠むるようなもので、識者より見れば危険とも何んとも申しようがありません。ことに私の憂慮しますのは現在の有様ばかりでなく、従来一層わが国のために注意せねばならぬ事が沢山にあります。

続く

 - 人物研究, 戦争報道, 現代史研究

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