『オープン講座/ウクライナ戦争と日露戦争④』世界史の中の『日露戦争』⑱『日露戦争-朝鮮の独立と領土保全のための戦争』『タイムズ』【開戦3週間】★『日本が朝鮮と締結した条約の全文は,英米両国は好意的にみている。』★『 日本は朝鮮の皇室の「安寧」と「朝鮮帝国の独立と領土保全」を保障している』
2013/06/18 記事再録
世界史の中の『日露戦争』⑱英国『タイムズ』米国「ニューヨーク・タイムズ」
は「日露戦争をどう報道したか」⑱
『日露戦争-朝鮮の独立と領土保全のための戦争』
【開戦3週間】<『タイムズ』1904(明治37)年2月29日 >—<インテリジェンスの教科書としての日露戦争>―
<記事のポイント>
① 日本軍の戦略家たち(参謀本部、児玉源太郎ら)はスピーディーで大胆細心な作戦、戦術をとっている。
② 近代日本の陸軍はこれから戦闘を始めるが、海軍同様の優秀さを発揮して勝利するであろうとみている。(この軍事的な予見能力の高さ)
③ 日本が朝鮮と締結した条約の全文は,英米両国は好意的にみている。
④ 日本は朝鮮の皇室の「安寧」と,「朝鮮帝国の独立と領土保全」を保障している。
北部朝鮮における相当規模の戦闘が迫っているのは明らかだ。天皇とロシア皇帝のそれぞれの軍隊が平壌近くで相互に接触しており,両国の最初の地上戦がここ数日間に起こることは確実だ。
ロシアの騎兵が咋日朝,同市の数百ヤード以内まで接近したが,日本の歩兵部隊に発砲されて撤退,損害はなかったもようだ。彼らが単に偵察に来たことは間違いないが,その出現は.ロシア軍がすでに若干の兵力をもってここまで南下してきたことを示すものと受け取らなければならない。その兵力,また日本側の兵力がどれほどかは,推定が容易ではない。
本社特派員が済物浦から土曜日に送ってきたド・フォリスト無線通信は,朝鮮側の推定によれば-これをあまり盲信すべきではないが-先週の昨日までにロシア軍3000が越境してきたという。このうち
1000は義州,1000は慈山にあり,そのはかは小部隊で分散しているとされる。その1つは当時兵数40程度だったが.水曜日に順安にいたそうで,これは平壌の北20マイルの北京街道上にあり,日本の歩兵部隊に昨日発砲されたのは,増強されていたかどうかはともかく,この部隊だったかもしれない。
慈山は平壌から北東に20マイルのわき道にあり,兵力1000のロシア軍部隊が選びそうな場所とは思われない。名前が北京街道にある嘉山と混同された可能性もあり,嘉山は安州の西へ約20マイルのところにある
。一方日本側は済物浦に兵力2万と砲兵中隊6を上陸させたことは確かで,朝鮮にはそのはかにも明らかに部隊を入れているだろう。海州の南の沿岸にも部隊を上陸させつつあるが,その数は多くないと考えられる。彼らは田舎道を通って黄州に向かい,そこで北京街道を進んできた友軍と合流すると見られる。この作戦だと5日間節約できる上,北京街道に対する圧力を軽減するという重要な副次的利点もあると信じられている。また日本軍部隊については,ソウル南の悪路に悩まされているとの情報もあるが,彼らがどこに上陸したか,どこへ向かって移動中かは不明だ。
日本軍8000が今平壌へ向かっていると想像され,同地には土曜日の前に小兵力が到着している。
本紙東京通信員の報告では,鴨緑江の南でロシア軍が本格的な移動を行うことは不可能と見られており,その理由はまず,まだしばらくは氷の上を渡河できるとはいえ,川には橋が架かっておらず,第2に,前進中の部隊の連絡は海上から容易に遮断することができるというもので,また現在朝鮮にいるロシア軍は全員が騎兵だと信じられているという。
反面,日本側は,本社の済物浦の特派員によれば,旅順前面の作戦が完了するまで「主計画」なるものの展開は考えていないもようだ。同港で決定的な成功を収めれば,日本側は旅順と鴨緑江の間のロシア軍の側面にはっきりした効果のある打撃を加えることができるだろうし,そうなれば朝鮮北西部のロシア軍の立場をまさに維持不能に追い込むだろう。同特派員は,日本はまず遼東半島の占拠を試みるまでは,朝鮮内の行軍を余儀なくされるような作戦に乗り出さないことは確実と見ている。
この方針は,日本軍の戦略家たちの協議が,時宜を得た大胆さにほかならない熟慮によって導かれていることを示しているようだ。
陸上の緒戦の精神的影響は,その軍事的重要性が仮にたいしたものでな-くても,侮りがたいのはもちろんで,特に中国人への影響は強く.本紙北京通信員が最近述べたように,彼らは海上の勝利より陸上の勝利にはるかに深い感銘を覚えるだろう。
近代日本の陸軍はまだどの大国の軍隊とも力を比べていないが,軍人として海軍の戦友に劣ると想像すべき理由はない。彼らも同等に細心の訓練と規律を注入されているし,彼らを指揮する将校も同等の知能と同等の徹底さをもって職務を研究してきたし,彼らの装備も組織も同じく優秀だと信じられており,また同じ勇気と同じ愛国心に鼓舞されている。彼らが戦闘の苦労を同じ勝利で乗り越えるだろうと信じるすべての理由がある。
しかし試練はこれからであり,試練を越えるまでは,この戦争の将来についてのすべての推測と憶測は決め手を欠かざるを得ない。日本が朝鮮と締結した条約の全文は,英米両国が当初電報による要約を検討の上,その内容について好意的な見解に達したのを確認するものだ
。日本が朝鮮の皇室に「安寧」を,また世界全体のさらに大きな関心事である「朝鮮帝国の独立と領土保全」を保障していることは,望み得る限り正確かつ十分と言えよう。
この条約は,イギリスのインド行政官に周知の用語を使うなら.朝鮮側にとって一種の「従属的同盟」を暗示していることは間違いないが,同国にその国土の所有権とすべての適正な自由を保障しており,そのことは同国の安全と福祉に合致しないわけではない。
関連記事
-
-
日本リーダーパワー史(126)辛亥革命百年(28) 内山完造の『日中ビジネス論』「民間外交力』『前事不忘 後事之師』(2)
日本リーダーパワー史(126) 辛亥革命百年(28)内山完造(2)の『日中ビジネ …
-
-
百歳学入門(151)元祖ス-ローライフの達人「超俗の画家」熊谷守一(97歳)●『貧乏など平気の平左』で『昭和42年、文化勲章受章を断わった。「小さいときから勲章はきらいだったんですわ。よく軍人が勲章をぶらさげているのみて、変に思ったもんです」
百歳学入門(151) 元祖ス-ローライフの達人・「超俗の画家」の熊谷守一(9 …
-
-
★「冷戦終結のベルリンの壁崩壊から30年、今、再び「新冷戦」の時代へ」
前坂 俊之(ジャーナリスト) &nbs …
-
-
日本リーダーパワー史(667) 日本国難史にみる『戦略思考の欠落』(49) 「日本の『インテリジェンスの父』川上操六参謀次長が密命して、シベリアに送り込んだ『日本の007、満州馬賊隊長の花田仲之助」
日本リーダーパワー史(667) 日本国難史にみる『戦略思考の欠落』(49) …
-
-
『リーダーシップの日本近現代史』(43)記事再録/国難リテラシー⑩最後の首相・鈴木貫太郎の突破力ー『まな板の鯉になれ』★『負けっぷりを良くせよ』
2011/06/19 /日本リー …
-
-
日本リーダーパワー史(403)『安倍国難突破内閣は最強のリーダーシップを発揮①『2013年末までの短期国家戦略プログラム』
日本リーダーパワー史(403) 『安倍国難突破内閣は最強のリーダーシップを発 …
-
-
『リーダーシップの日本近現代史』(197)『日本戦争外交史の研究』/『世界史の中の日露戦争』㉘『開戦1ゕ月前の「独フランクフルター・ツワイトゥング」の報道』ー「ドイツの日露戦争の見方』●『露日間の朝鮮をめぐる争いがさらに大きな火をおこしてはいけない』●『ヨーロッパ列強のダブルスタンダードー自国のアジアでの利権(植民地の権益)に関係なければ、他国の戦争には関与せず』★『フランスは80年代の中東に,中国に対する軍事行動を公式の宣戦布告なしで行ったし,ヨーロッパのすべての列強は,3年前,中国の首都北京を占領したとき(北支事変)に,一緒に同じことをしてきた』
2017/01/09   …
-
-
日本風狂人伝⑬ 日本最初の民主主義者・中江兆民は明治奇人の筆頭
日本風狂人伝⑬ 2009,7,06 日本最初の民主主義者・中 …
-
-
熊本地震を考える①『被災動画』と政府、気象庁、御用学者の『地震予知連絡会』の無能を追及する」★『東大のロバート・ゲラー教授は「日本政府は、欠陥手法を用いた確率論的地震動予測も、仮想にすぎない短期的地震予知も即刻やめるべきだ」と主張
熊本地震を考える① 『被災動画』と政府、気象庁、御用学者の『地震予 …
- PREV
- 『オープン講座/ウクライナ戦争と日露戦争➂』★『ロシア黒海艦隊の旗艦「モスクワ」が撃沈された事件は「日露戦争以来の大衝撃」をプーチン政権に与えた』★『児玉源太郎のインテリジェンス・海底ケーブル戦争』★『マルコー二の無線電信発明(1895年)から2年後、逓信省は東京湾56キロの通信に成功、海軍艦艇の遠距離無線通信を完成』★『連合艦隊の32艦すべてに世界最新式の三六式無線電信機を配備した』★『日本海海戦で世界海戦史上最高のパーフェクト撃滅を達成した東郷平八郎司令長官』★『世界的な情報通信網と通信技術、インテリジェンスと英米日の三国同盟で日露戦争に勝利した』
- NEXT
- 『オープン講座/ウクライナ戦争と日露戦争➄』★『国家予算、軍事力とも約10倍のロシアに日露戦争開戦に踏み切った児玉源太郎の国難突破決断力②』★『ロシアと戦ってきっと勝つとは断言できないが、勝つ方法はある』★国破れて何の山河じゃ。ロシアの無法に譲歩すると国民は必ず萎縮し、中国、インドと同じ運命に苦しみ、アジアは白人の靴で蹂躙され、植民地からの脱却は何百年も先となるぞ』