前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

『リーダーシップの日本近現代史』(193)記事再録/<クイズ>-今から160年前の1860年(万延元年)2月、日米通商条約を米ホワイトハウスで批准するため咸臨丸とともに米軍艦の蒸気船『ボーハタン号』で太平洋を渡たり、全米の女性から最もモテたイケメン・ファースト・サムライはだれでしょうか?!

   

 
 
全米女性からラブレターが殺到したファースト・サムライの立石斧次郎①
 
前坂俊之(ジャーナリスト)
 
 
いまからちょうど150年前のこと。1860年(万延元年)6月16日。ニューヨークは日本からのサムライ使節団を一目見ようと市初まって以来という約50 万人の市民たちがマンハッタンを埋め尽した。
 
日本人を乗せた馬車がくると、女性たちが一斉に「トミーはどこなの?」「トミーはどの人?」と大声で叫び興奮はピークに。           

馬車の条約箱の後ろに陣取ったトミーが現れると、「トミー!こっちを向いて!」「トミー、バンザイ!」と大歓声。トミーは笑顔で手を振って応えた。『彼があの中で一番ハンサムね」とため息や悲鳴が上がり、ジャパンフィーバー、トミー・コールが続いた。(『ニューヨーク・ヘラルド』1860 年6 月17 日付)

 
ペリーが黒船で来航し、日米和親条約(安政元年=一八五四年)が結ばれてから6年後の万延元年(一八六〇年)二月、幕府遣米使節団=新見豊前守(正興)正使ら計77 人=は日米通商条約を米ホワイトハウスで批准するため咸臨丸とともに米軍艦の蒸気船『ボーハタン号』で太平洋を渡った。

 
<一行のスケジュールー>

 
1860年2月13日 日米修好通商条約の批准書交換のため、総勢77名の遣米使節団がアメリカ海軍の蒸気ボーハタン号に乗船し、サン・フランシスコへ向けて横浜港から出航。           

1860年3月29日 、サン・フランシスコへ入港。

5月14日にワシントンへ到着。 ホワイトハウスでジェームズ・ブキャナン大統領に謁見。

5月22日には国務省で、日米修好通商条約批准書の交換を国務長官ルイス・カスとの間で行う。

 使節一行は6月16日、ニューヨークへ入り、全市を上げての大歓迎を受けます。
6月26日には、故ペリー提督の未亡人を訪問しています。
ニューヨークには2週間滞在し、6月29日、帰国の途につきます
 
 
アメリカ議会は一行を国賓待遇で迎えたが、一行は太平洋を二ヵ月間かかってサンフランシスコに到着、ワシントンへ行き、ブキャナン大統領に謁見、ホワイトハウスで正式に条約批准書に調印。ボルチモア、フィラデルフィア、ニューヨークと回った。           

使節団はいく先々で、圧倒的な歓迎を受け、各都市では盛大な歓迎祝典の行事が繰り広げられた。

 
その中で一人、人気が集中しアイドルと化したのが、トミーこと最年少の十六歳の通詞見習い立石斧次郎である。
 
イケメンの〝ファースト・サムライ〟トミー(立石斧次郎)は、全米に一大旋風を巻き起こした。女性からラブレター、ファンレターが殺到し、彼をたたえる「トミーポルカ」という歌までできた。
 
ヤンキースの松井選手やイチローの人気どころか、アメリカで最高にモテた仰天の日本人だった。
 
 
米政府は鎖国を解いたアジアの新興国・日本が米国と最初に通商条約を結び、使節団を派遣したことを歓迎し、メディアもはじめてくる日本人に興味津々で、特派員を派遣して大々的な報道合戦を繰り広げた。           

ホワイトハウスの訪問や調印式、ニューヨークのパレードなどは大特集で数ページにわたって驚くほど詳細に伝えている。中でも使節団の一行よりも、トミーにスポットライトを当てて報道した。

 
『ニューヨーク・ヘラルド』紙(1960年六月十七日付)は「トミーは、若き日本の美しい代表である。一行の主だった人々は、冷たい威厳のある態度であるが、トミーはそれと対照的で、ざっくばらんで明るい。」
 
『ハーバース・ウイークリー・ニュース』(六月二十三日付)はトミ-の写真を掲げて、ワシントン滞在中の動静を伝えているが、『婦人たちの間で大変なお気に入りとなった。
 
気立てのやさしく、人柄もかなり良く、その上新しい状景や珍しい同席者に自分を適応させる道を心得た若者である』
「トミ-は記者に対して、この国で適当な妻を見つけて、その人と永久に和やかに暮したいので、日本に帰りたいなどとは決して思わない、と打明けた。』(トリビューン)など
 
 
立石がイケメンであったことは全米の各紙が驚くほど細かく報道した。アメリカ人たちが初めて見る日本人を比較人類学的に考察していることがよくわかる。
 
 「フィラデルフィア・ザ・プレス紙」は
 
 「われわれはトミーと長い話をしたが、彼は一種天才的なところがある。彼は十八歳らいで、顔色はほとんどコーカシア人種のように白く、きれいな歯をしている。動物的な精力で、間なしに動き廻っている。           

トミーの英語は達者で、明らかに普通の人より頭がいいようだ。彼は熱心に英語を覚えたがっている。われわれとのインタビューの問でも、種々な物を指しながら『あれは野原、それから家(ハウス)それから牝牛(カウ  )それから垣根(フェンス)』と尋ねるような口調でいっている。英語の単語を覚えたいからであろう。
 

  あるとき、接伴委員がトミーに話しかけていたとき、その委員がくしやみをした。トミーはすぐ ホワット・ドゥ・ユウ・コール・ザツー  『あれはなんといいますか』と聞いて『スニーズィング』だといわれると、トミーは手帳を出して、その字を書いてくれといい、書いてもらうとその字を何回もくり返し読んでみて、その言葉を 記憶しょうとするのだった」
 
 
「ボルチモア・アメリカン〃紙」の「ギルモア・ハウスにおける日本使節」の記事では
 
「ギルモア・ハウスにはいった日本使節の一行は、いったん休憩のため部屋に退いたが、正副使節のほかはじきに出てきて、打ちとけた態度で、人々の間を彼らにわかる程度のおしゃべりをアメリカ人との間に交換しつつ廻るのであった。
 
 トミーはいつものように大もてで、彼の活発なユーモラスな態度はアメリカ人を楽しませた。広場を埋めているたくさんの見物人にも、日本人は愛橋をふりまくのを忘れず、ときどきバルコニーに出ては扇子を振ったりして歓呼に答えるのであった。」と報道している。           

(つづく)

 

 - 人物研究, 現代史研究, IT・マスコミ論

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
『オンライン講座/日本は新型コロナパンデミックを克服できるのか(下)』★『欧米紙はIOCを「ぼったくり男爵」と大批判』★『「無観客大会」へ 会議は踊る、されど決せず』★『「ホテルに缶詰め、食事はカップ麺と欧州選手団から非難殺到」』★『スペイン風邪の苦い教訓』★『「大谷選手の100年ぶりの快挙」』

『オンライン講座/日本は新型コロナパンデミックを克服できるのか(下)』      …

no image
日本リーダーパワー史(585)「近代日本の国父」ー先覚者、教育者としての福澤諭吉先生(小泉信三の講演録)

日本リーダーパワー史(585)  「近代日本の国父」ー先覚者、教育者としての福澤 …

no image
『池田知隆の原発事故ウオッチ⑲』「共同体自治」を基軸に再生を「内を開発する」ということ――

『池田知隆の原発事故ウオッチ⑲』   『最悪のシナリオから考えるー「共 …

no image
速報(230)『今の民主主義は経済危機を止められない』『中国ニューリーダーの誕生は日本に何をもたらすか』

速報(230)『日本のメルトダウン』   ●『今の民主主義では経済危機 …

no image
『リーダーシップの日本世界近現代史』(300)★『明治トップリーダーのインテリジェンス』★『英仏独、ロシアのアジア侵略で「日中韓」は「風前の灯火」の危機に!』★『国家危機管理能力が「日本の興隆」と「中韓の亡国」を分けた②』

 2015/07/11終戦70年・日本敗戦史(107)記事再録 <歴史 …

no image
速報(248)『4号機・燃料棒取り出し困難さ「空中に釣り上げたら周辺の人達が死んでしまう被曝」小出裕章」3本

速報(248)『日本のメルトダウン』 ◎『「2月20日 4号機・燃料棒 …

no image
『リーダーシップの日本近現代史]』(19 )記事再録/『韓国併合』(1910年)を外国新聞はどう報道したか①』<『北朝鮮問題』を考える参考記事>

      2012/01/01&nbs …

『オープン講座/ウクライナ戦争と日露戦争④』世界史の中の『日露戦争』⑱『日露戦争-朝鮮の独立と領土保全のための戦争』『タイムズ』【開戦3週間】★『日本が朝鮮と締結した条約の全文は,英米両国は好意的にみている。』★『 日本は朝鮮の皇室の「安寧」と「朝鮮帝国の独立と領土保全」を保障している』

    2013/06/18 記事再録 &nbsp …

no image
『リーダーシップの日本近現代史』(110)/記事再録☆『伊藤博文がロンドンに密航して、下関戦争(英国対長州藩との戦争)が始まることを聞いて、急きょ帰国して藩主に切腹覚悟で止めに入った決断と勇気が明治維新を起した』(上)

  人気リクエスト記事再録 2010/12/22執筆・日本リーダーパワ …

no image
速報(268)★『ナベツネ、読売、自民党(A) 対 橋下大阪維新(B)の歴史音痴の対決!』

  速報(268)『日本のメルトダウン』   一目でわかるど …