前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

日本リーダーパワー史(971)-『若き友人からのオランダ通信』★『寛容性の国オランダと外国人労働者の受け入れに大騒ぎする日本』★『「皆んな違って当たり前」がオランダの常識、「皆んな同じでないと困る」のが日本』★『「寛容性」とは自身とは違う意見や信念を受け入れようとすること。ただし、それを同意したり認めたりするとは限らない』

      2019/03/22

『オランダと日本』

オランダ・ロッテルダムで働いていた若き友人のA君から3月末で日本に帰国するというメールが届いた。彼は3年間、ロッテルダムの国際機関で勤務してきたが、オランダのすばらしいところ、日本が学ぶべき点などを書いてきた。

➀オランダではただの 1 度も「外国人扱い」されたことはなかった、という。たとえ知らない人でも「こんにちは!」と笑顔であいさつをする。多くの人がニコニコして心に余裕があり幸せそうに見えた。(日本人の不愛想、知らない人にはあいさつしない態度とは違っていた)

②オランダ(総人口1700万人)の移民人口は11%。世界中から人が集まる「多民族共生社会」なので「皆んな違って当たり前」というのがオランダの常識。「寛容性」(自身とは違う意見や信念を受け入れようとすること。ただし、それを同意したり認めたりするとは限らない)がオランダの精神という。(外国人観光客がたくさんきた。外国人労働者が来る大騒ぎしている日本とはまるで違う)

➂ オランダは LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの頭文字を並べた略称)の性的マイノリティー(性的少数者)にも、大変「やさしい国」という。(日本は男女共同参画社会を目指しながら、女性の社会的進出度では先進国中最低、世界男女平等ランキング2018では日本は110位でG7ではダントツの最下位)

④ 日本は「外国と自国との違い」を強調しがちだが、オランダのように「違いをみとめて、それ受け入れる心の広さ、寛容な社会づくり」が日本に求められるーとA君は書いている。

➄ オランダ人の判断の基準は「何が大切で、そのために必要なことを、むだなく、効率よくやることだ」という。一度決めた方法で目的を達成できなければ、別の方法にすぐ切り替える「柔軟性」「効率性」「合理性」がある、ともいう。

⑥ 例えば、買い物はほとんど「銀行カード」でキャッシュレスですむ。ごみの収集法も街にある大きな「ゴミ箱」を箱ごと回収する。生活に必要な諸手続きはインターネットで行うことができる。日本のハンコ、書類中心の旧態依然たる行政、その他の手続きがほとんどない。日本はITデジタル化の遅れがひどい。 日本は「伝統的な形や型」にこだわり、一度決めたことを変えることが出来ない。前例踏襲、形式主義にとらわれといる。すばらしい技術はもっているのに、まだまだ「人力にたよる」ものが多い。

⑦「オランダの学校」は子ども一人一人の個性を伸ばし、効率よくその目標を達成するためには「学校として何ができるか」を教育の基本としている。日本の画一的な集団教育とは違う。

――などなどで、結論としてオランダの「多民族共生国家」としての移民受け入れ制度や異文化コミュニケーションの教育に学ぶ必要があると説いている。

確かに、オランダと日本はよく似ており、関係は深い。資源のない国同士で、平野の耕地面積が少ない。その分は、人づくりの教育と知恵と努力によって発展してきた。オランダはネーデルランド(低い土地)と呼ばれていたように、海抜5メート以下の国土面積(九州とほぼ同じ)が約半分を占める。そのため北海との境に大堤防を築いて大きな風車に水を汲みだして干拓して国土を広げて、狭い耕地を有効に生かして高品質の園芸の花き、野菜や酪農製品、畜産等の世界有数の農産物輸出大国となった。

日本はオランダから西欧文明を学んだ。1641年にオランダのみと交易関係を築き、長崎の出島にオランダ商館ができた。以後、徳川時代230年間にわたって貿易を続けて来た。ペリーの黒船来航(1853年)の情報もオランダ国王から事前に知らされていた。米英仏よりもオランダとの外交友好関係が最も長いことになる。

オランダの地政学的な位置は英仏独ロなどの大国にはさまれた小国として戦争に敗北して占領される苦労を散々味わったため軍事力ではなく、経済力と文化力(寛容性)で貿易を中心に発展を続けてきた。

アジアでの植民地争奪戦でポルトガルやイギリスとの戦争が絶えなかったので、相手の宗教や文化に介入せず、軍事力にも頼らず貿易を成功させるために相手の自由を認める寛容性が養われた。移民受け入れも、人種、民族、言語、宗教、宗派にこだわらず規定の条件を満たせば寛容で、そのほか、麻薬、売春、LGBT、移民、宗教、安楽死なども高度な自由度に保たれ政治体制も民主主義の徹底とその透明性、情報公開の精神に貫かれている。

移民やその子供に対しては教育機会平等を目指しており、各宗教に公平に国庫補金を出して学校を運営し、母国語や母国文化教育を行う一方、全てのオランダの学校では異文化教育が義務付けている。「多民族・多文化共生社会」の実現を目指しているのだ。

一方「超高齢・無子・人口減少社会」「移民拒絶社会」の日本で、この4月から改正入国管理法の実施となり、今後5年間で最大34万人の受け入れを見込んでいる。これは事実上の「移民解禁」政策であり、オランダから約70年遅れた「多民族-多文化共生社会」への出発、日本人の「心の鎖国」から「オープンマインド」への出発でもある。

 - 人物研究, 現代史研究, IT・マスコミ論

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
日本リーダーパワー史(941)~「ノーベル賞とジャーナリズム」★『社会を根本的に変えるのは科学技術の進歩とイノベーション』★『最も必要な教育とは科学教育であり、論理的な思考力である』

日本リーダーパワー史(941) ノーベル賞とジャーナリズム 今年のノーベル生理学 …

no image
『リーダーシップの日本近現代史』(80)記事再録/ ★『日本の〝怪物″実業家・金子直吉―鈴木商店を日本一の商社にした』★『当時、鈴木商店の倒産は世界三大倒産の一つといわれた』「もし、金子が米国で生まれていたならば、 カーネギー、ロックフェラーと並んで偉大な事業家として成功していたであろう。二人 には科学的な頭脳はなかったが、金子は持っており、無から有を作る事業家であっ た』

    2009/02/10 &nbsp …

『リーダーシップの日本近現代史』(73)記事再録/『日露300年戦争(4)』『露寇(ろこう)事件とは何か』★『ロシア皇帝・アレクサンドル一世の国書を持って、通商を求めてきた第2次遣日使節・ラスクマンに対しての幕府の冷淡な拒絶が報復攻撃に発展した』

  2017/11/18 / 日露300年戦争(4 …

『Z世代のための<憲政の神様・尾崎咢堂の語る「対中国・韓国論④」の講義⑫』★『 尾崎行雄の日清戦争(明治27)の「清帝の逃走」論』★『<尖閣、竹島問題で150年前の歴史事実を外国メディアの報道によってチェックする。歴史健忘症の日本、歴史誇大症の中国、歴史恨み、被害妄想症の韓国の3重ネジレを読み解く』

  2013/07/02   日本リーダ …

no image
日本の最先端技術「見える化」チャンネル-『最新の3次元CADがよくわかる動画』★『KODAMA CORPORATIONの「先進の3次元CAD Top Solid”7」のプレゼン』

設計・製造ソリューション展2018(6/21、東京ビッグサイト) -KODAMA …

『Z世代への百歳学入門』ー「最後の元老・西園寺公望(92歳)-フランス留学10年の歴代宰相では最高のコスモポリタン、晩年長寿の達人の健康十訓」★『 まあ生きてはいるがね、涙が出る、はなが出る、いくじがなくなって、 これも自然でしかだがない』

     2013/08/16 百歳学入 …

no image
池田龍夫のマスコミ時評(85)◎『福島原発被害者を泣かせる」政府のズサンな対応(7/6)』

  池田龍夫のマスコミ時評(85)   ◎『福島原 …

『Z世代のための明治大発展の国家参謀・杉山茂丸の国難突破力講座⑬』★『杉山の「バカとアホウの壁」解説③」★『始皇帝の「バカ息子」の行動を学べというのではない。馬鹿阿房学の真の意味を理解せよ』

そこで、庵主(私)は諸君に勧めて辛棒や我慢や忍耐の好きになる方法の「馬鹿阿房学」 …

no image
◎「日本・スリランカ友好の恩人」ジャヤワルデネ前スリランカ大統領ー感謝の記念碑は鎌倉大仏の境内にある(動画)

     ★★<日本独立のサンフランシスコ講和条約 …

「Z世代のための日中外交敗戦10年史の研究(下)」★『明治リーダーの必勝法は決断し、命令し、誓約させ、断固実行させる」★「川上の戦訓「上司の機嫌にとらわれず、勝者にその範をとれ」★『 リーダーは長期に担当させよ、川上参謀総長は軍令を十四年間、桂太郎首相は軍政を通算十五年間も担った』

『リーダーなき日本の迷走と没落、いまこそ明治のリーダシップに学べ』 ②&nbsp …