前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

『日本戦争外交史の研究』/『世界史の中の日露戦争』㉙『開戦1ゕ月前の『米ニューヨーク・タイムズ』の報道』-『日露戦争の行方はロシアは敗北する可能性を予測』★『ロシアのアジアへの「氷河的進出」には敬意を表するとしても,氷河すら朝鮮を大陸から隔てる山脈には阻まれるのであり,対日戦の必然的な目的である朝鮮征服にロシアはあらゆる不利な条件下で臨むことになろう。』

      2017/08/19

 

 『日本戦争外交史の研究』/『世界史の中の日露戦争』㉙『開戦1ゕ月前の

  1903(明治37年)年1229

『米ニューヨーク・タイムズ』ー「日露戦争の行方はロシアは敗北する可能性を予測』

海外で尊敬されていた和平派のヴィッテ氏がロシアの国政に発言力を失った。

日本と戦争になってもロシアには同盟国がない。フィンランド、ポーランド、スウェーデン、その他のロシアによる

植民地になった国々は一斉にに反乱、革命に立ち上がるだろう。

ロシア軍は,すべての兵員,武器弾薬,ほぼすべての補給物資をアジアを通じて運ばなければならないで、海上はでは日英同盟によるイギリスの干渉、シベリア鉄道は満州馬賊らによる破壊活動を防ぐことはできない。

--------------

 『記事本文』

露日情勢に関する新聞報道で疑いの余地がないのは,ロシアの公式発言がいよいよ傲慢な調子を帯びて,日本と協調する意向をなくしつつあることを示していることだ。

これが最も重大な特徴だ。

大方のロシア人も日本人も,両国間の利害対立はいずれ戦争で決着をつけねばならないと一致していることは確かだ。

だがロシアは現在の方が,事を遅らせるより自国にとって都合がよいと考えている様子を見せている。それ故に同国は調子を鋭くし,断定的な発言を強めていると見られる。

だがそれは冷静な観察者に対しロシアの政治家の名声を高めるものではない。というのも.同国の最も開明的な政治家として海外で尊敬されていたヴィッテ氏がロシアの国政に発言力を失ったらしいからだ。

 日本と戦争になってもロシアには同盟国がないことは確かなようだ。

英日同盟に直面してロシアが同盟国を持つのは自国のためにならないように英日同盟は,日本が2か国以上に改革されたなら大英帝国が日本を救援することを義務づけている。

太平洋のアジア沿岸で戦争になれば,イギリス海軍がロシアに対しても,ロシアの同盟国につく可能性のあるいかなる国に対しても,直ちに決定的な要因になるからだ。

それにも増して,大英帝国とロシアの間に戦争が起これば,極東に限定できそうになく,ヨーロッパに拡大することは避けられまい。

そしてヨーロッパ・ロシアの沿岸はイギリス海軍に対しまるで無防備となろう。というのも,ロシアはあるだけの軍艦を東洋の海域の任務に回して丸裸にならたと,すべての報道が一致しているからだ。

イギリス艦隊は,その大きな一部を太平洋の制海権確保のため割いた後も,ロシアのパルト海諸港をたやすく効果的に封鎖できる。

フィンランドは決してロシア化されていない。英露戦争になれば,当然かつ直接的な結果としてフィンランドで反乱が起ころうし,イギリスの海軍力は反乱派にとり絶大な助けと励ましとなろう。

対日戦にどんなヨーロッパの国を同盟国に誘おうとしても,利益よりリスクの方がはるかに大きいから,ロシアがその方針をとるとは思われない。

 そこで戦争は地元における日本と,本国を遠く離れたロシアとの間で行われることになろう。ロシア軍は,すべての兵員,武器弾薬,ほぼすべての補給物資をアジアを通じて運ばなければならないだろう。

たとえば,シベリア鉄道の東端に.ロシアが人口20万の,軍でなく都市を持っていて,この都市に対し単線の鉄道1本によって2000マイルのかなたから補給を行わなければならないと想像するがよい。

平時ですら問題はかくも困難きわまるものだ。戦争ともなれば全く解決不可能となる。

鉄道は半分以上の距離にわたって日本の攻撃ばかりでなく,ロシアがすでに手を焼いていると報じている満州馬賊に加え,おそらく中国正規軍の攻撃にもさらされることになるからだ。

彼らは戦場ではいかに劣っていようとも.鉄道を切断するだけなら危険この上ない存在であり,そのためロシアはこの死活的な連絡線に強大な守備隊を維持せざるを得なくなり,戦力に重大な支障をきたすことになりかねない。

ロシアは両方を賄う兵力があるというなら,その通りだろう。

 遠い戦場への兵站、補給線で失敗が自明のロシア

だが戦闘部隊も守備隊も遠くの本拠地から楠給しなければならない。

ロシア人は東アジアへ「離れるごとに引きずる鎖が長くなる」から,無数の地点で攻撃にさらされ得る鉄道が1か所でも切断されれば大変なことになる。

 だが戦場は満州でなく,朝鮮と海になりそうだ。日本は釜山からソウルへの鉄道の「突貫工事」により,今でさえ朝鮮の完全支配を握っている。この鉄道は長崎からわずか数時間の良港の釜山から発し,朝鮮半島の半分以上を縦断して内陸の首都に至る。この鉄道を制する国が朝鮮を制するのは確かだ。

 ロシアにとっては朝鮮へ開かれた道は海しかなく,首都ないし鉄道へ進撃を始める港を得るにはまず日本海軍を撃滅しなければならないのに,日本から朝鮮の支配権をもぎ取るどんな可能性があるというのか?

ロシアのアジアへの「氷河的進出」には敬意を表するとしても,氷河すら朝鮮を大陸から隔てる山脈には阻まれるのであり,対日戦の必然的な目的である朝鮮征服にロシアはあらゆる不利な条件下で臨むことになろう。

 - 人物研究, 戦争報道, 現代史研究, IT・マスコミ論

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
日本リーダーパワー史(423)『日中韓150年対立史⑨「ニューヨーク・タイムズ」は中国が 侵略という「台湾出兵」をどう報道したか②

 日本リーダーパワー史(423)   ―『各国新聞からみた東 …

no image
日中北朝鮮150年戦争史(30)『ノース・チャイナ・ヘラルド』(1886(明治19)年9月10日) 『壬午事変・甲申事変と軍拡―朝鮮の中国代表・袁世凱の政治介入の横暴』

日中北朝鮮150年戦争史(30)   『ノース・チャイナ・ヘラルド』( …

no image
日本リーダーパワー史(225)『上海でロシア情報を収集し、バルチック艦隊を偵察・発見させた商社政治家―山本条太郎②』

日本リーダーパワー史(225)   <坂の上の雲・日本海海戦秘話> & …

no image
池田龍夫のマスコミ時評(114 ) 沖縄慰霊の日「非戦、今こそ」ー集団的自衛権に反発(6/25)

池田龍夫のマスコミ時評(114 )  沖縄慰霊の日「非戦,今こそ」-集 …

no image
日本リーダーパワー史(100)金子堅太郎・日露戦争で全米を味方にした驚異の外交力<世界史上最も成功した外交術>

日本リーダーパワー史(100)   金子堅太郎・日露戦争で全米を味方にした驚異の …

no image
『リーダーシップの日本近現代史』(78)記事再録/ ★歴史の復習問題ー日清戦争『三国干渉』後に、 ロシアは『露清密約』(李鴻章の巨額ワイロ事件)を結び遼東半島を入手、シベリア鉄道を 建設して居座り、日露戦争の原因となった。

    22016/09/19 /中北朝 …

no image
速報(315)◎『不確実性の雲:暗中模索する世界経済』●『心配すべきはChindown」だー中国経済の減速で損、得する国』

速報(315)『日本のメルトダウン』   ◎『不確実性の雲:暗中模索す …

no image
●世界最大規模「2013国際ロボット展」が開催ー産業用/民生用/介護の最新ロボットと関連技術を動画で全公開①

   ●☆ 世界最大規模「2013国際ロボット展」が開催 ― …

『オンライン入門講座/シルバーYou tuber(前坂俊之チャンネル)になる方法』★『ネット動画の時代に乗り遅れる既存メディアー 情報をあまねく広げる「個人」の出現で社会が変わる』(2012年でのインタビュー)記事全文再録)

取材場所:日本記者クラブ (インタビューの聞き手:沖中幸太郎氏)   …

no image
日本リーダーパワー史(103)名将川上操六⑯日清戦争の大本営で見事に全軍を指揮する

日本リーダーパワー史(103) 名将川上操六⑯日清戦争の大本営で見事に全軍を指揮 …

PREV
『日本戦争外交史の研究』/『世界史の中の日露戦争』㉘『開戦1ゕ月前の「独フランクフルター・ツワイトゥング」の報道』ー「ドイツの日露戦争の見方』●『露日間の朝鮮をめぐる争いがさらに大きな火をおこしてはいけない』●『ヨーロッパ列強のダブルスタンダードー自国のアジアでの利権(植民地の権益)に関係なければ、他国の戦争には関与せず』★『フランスは80年代の中東に,中国に対する軍事行動を公式の宣戦布告なしで行ったし,ヨーロッパのすべての列強は,3年前,中国の首都北京を占領したとき(北支事変)に,一緒に同じことをしてきた』
NEXT
 『日本戦争外交史の研究』/『世界史の中の日露戦争カウントダウン』㉚『開戦37日前の『米ニューヨーク・タイムズ』の報道』-『「賢明で慎重な恐怖」が「安全の母」であり,それこそが実は日本の指導者を支配している動機なのだ。彼らは自分の国が独立国として地図から抹殺されるのを見ようなどとは夢にも思っておらず,中国が外部から助力を得られるにもかかわらず,抹殺の道を進んでいるかに見えるのとは異なっている。』★『日本はロシアに対する「緩衝地帯」として朝鮮を必要としている。半島全体が日露のいずれかの支配に帰さなければならない。分割は問題外だ』