日中北朝鮮150年戦争史(30)『ノース・チャイナ・ヘラルド』(1886(明治19)年9月10日) 『壬午事変・甲申事変と軍拡―朝鮮の中国代表・袁世凱の政治介入の横暴』
2016/09/13
日中北朝鮮150年戦争史(30)
『ノース・チャイナ・ヘラルド』(1886(明治19)年9月10日)
『壬午事変・甲申事変と軍拡―朝鮮の中国代表・袁世凱の政治介入の横暴』
最近の朝鮮情勢について,新たに情報が入った。ここ数年,ソウル駐在の中国代表の袁世凱は,好き勝手なことをし,ありとあらゆる方法で,朝鮮政治に介入してきたもようだ。うわさによれば,彼は,朝鮮の王を退位させると言っては脅し.王と臣下を窮地に陥れ,中国から大規模な軍隊を呼び寄せると言って脅迫したそうだ。この脅迫が何週間も続き,王や大臣たちが自分たちの権力と立場に危機感を感じたからには,どこかに助けを求めなかったとしたら,その方が不思議なくらいだ。
事実,彼らは助けを求めており,王とその臣下の何人かが,ロシアに救いを求めた可能性もないとは言えない。
われわれは.朝鮮の宮廷とロシア代表が実際に交渉に臨んだというような話は聞いていないが.すでに交渉に臨んだ可能性はある。だが,もしそうだとしても.脅迫にさらされた王とその臣下をあまり責めるわけにはいかない。ロシアはこうした事態-つまり,袁世凱が今回引き起こしたような事態などには,いつでも手を差し伸べ
られる位置におり.声が届くところ(と言ってもいいと思うが)には,艦隊さえ待機している。ロシアは.朝鮮に介入する機会を王が合法的に与えてくれれば,自己の目的にとって願ってもないことと歓喜することだろう。
このような朝鮮に対する干渉は,中国と日本にとって控えめに言っても,きわめて不満な結果をもたらすだろう。もしロシアが.朝鮮の王を蓑の脅迫から救い出した後で朝鮮の宮廷と国家を信託統治するだけにとどめて,海軍基地にふさわしい港を独占し,多少領土の調整を行うだろうと予想するなら,ロシアを友人として呼び入れた場合の結果をかなり控えめに表現したことになるだろう。
だが.中国は.結果がこれほど甚だしくなくとも.国際的な立場がなくなってしまうはずだ。中国は先に,フランスとの間で事件が起きたときに示した決断力と分別によってかちとった評価と立場を失うことになるだろう。もちろん,武力を行使して.ロシアの朝鮮への侵略を阻止することもできるが,中国はそういうまねは絶対にしないだろう。北京の支配者たちは.フランスとの衝突で出費がかさんだ後だけに.財政の面からも,また.人民の窮状の面からも.あと数年は平和を維持しなければならないのを知っているからだ。
各地方の財政が底をついている状態では.朝鮮に兵を出すだけの余力がないのはわかっている。それに.ロシア艦隊や,朝鮮北部から進入してくるロシア軍も考慮に入れなければならない。今あげた事柄は,1か月前には,みんな起こり得る状態だったのだ。
この地域の平和をかき乱す元を作り出したのは.ほかならぬソウルの中国代表,袁世凱だったと言わなければならない。袁世凱のために,ソウルと首都近くの沿岸地域の人々の間に強い反中国感情が起こり,その結果,李鴻章が兵隊(人数にして,300人から500人の間)を朝鮮に送り込んだとき,朝鮮の国民は彼らの上陸を拒み,兵は,しかたなく出発地旅順に戻るはめに陥った。
こうして,中国の武力を使って,朝鮮の王を玉座から引きずり降ろそうとした,卑しい中国代表は,自分が呼び寄せた兵が.属国だとみなしていた国に上陸することも認められず,祖国に向かって帰っていくのをみすみす見送ることになったのだ。李鴻章にとっても.総理街門にとっても.これは快いわけがなく,彼らが見下している国の人々によって,そのような辱めを受けたというのは,屈辱でしかなかった。
これは,袁世凱の最近の行動がもたらした最初の成果であり,中国が.自国のためにも同じようなことをくり返さないことを願うだけだ。李湾章が.今や,朝鮮の実状を完全に把握し,朝鮮での中国の行動を全面的に見直す必要があると認識しているのは確実だ。
もっとも,今まで述べてきた不測の事態に対処できるというのであれば話は別だが。こうした不測の事態を起こさないためには,朝鮮との友好的で堅実な政策を導入し,それを維持することが必要だ。
先月,ソウルで起きた問題は,ほかならぬ,こういう政策の欠如によるものであり.それを埋めようとする袁世凱のやり方が引き起こしたものだった。この中国代表の行動は,中国の国と国民を,ここ数年の日本の立場と全く同じ立場に陥らせる結果となった。
つまり.彼らは,徹底的に嫌われているのだ。朝鮮のような弱体国は,野心あふれた近隣諸国がロを挟む格好の材料になるし,ポート・ラザレフ【永興湾]ほどの港となれば,ロシアのような国を引きつけることになる。もし.朝鮮が,自国の海岸にある重要拠点を手放すぐらいでは,中国代表から受けた侮辱に対する仕返しとして十分ではないと思い込んだならば,中国の政治家にとっては,由々しい事態になろう。
もし.中国が,朝鮮との外交で犯した最近の誤りを即刻正さないならば,ロシアのはかにも別の国が,この地域での自国の利益,そして太平洋での自国の利益を守るために,干渉してくる可能性もあろう。
関連記事
-
-
世界史の中の『日露戦争』⑤『一触即発の危機迫る』<日露戦争開戦40日前>英国『タイムズ』
『日本世界史』シリーズ 世界史 …
-
-
『 地球の未来/世界の明日はどうなる』< 世界、日本メルトダウン(1041)> 『トランプ大統領の就任100日間(4/29日)が突破した』③『注目された米中会談(4/6,7)の内容とその結果は?・』★『朝鮮半島クライシス!』『トランプの北朝鮮威嚇で中国が高笑いの理由―ー北朝鮮をどんな形でもコントロールできる中国』●『朝鮮半島有事で日本に大量に「難民」が流入するの?』★『北朝鮮が中国を名指し批判――中国の反応は?』
『 地球の未来/世界の明日はどうなる』 < 世界、日本メルトダウン(1041) …
-
-
日本リーダーパワー史(263)名将・川上操六伝(38)野田首相は明治のトップリーダー・伊藤首相、川上参謀総長の指揮に学べ①
日本リーダーパワー史(263)名将・川上操六伝(38) <野田首相は明治のトップ …
-
-
『オンライン講座/ウクライナ戦争と日露戦争を比較する①』★『本史最大の国難・日露戦争で自ら地位を2階級(大臣→ 参謀次長)降下して、 陸軍を全指揮した最強トップ リーダー・児玉源太郎がいなければ、日露戦争の勝利はなかったのだ。 ーいまの政治家にその叡智・胆識・決断力・国難突破力の持ち主がいるのか?』
2021/08/31『オンライン講座/日本 …
-
-
『Z世代のための天皇論講座』★『日本リーダーパワー史(199)『約110年前の日本―「ニューヨーク・タイムズ」が報道した大正天皇―神にして人間、即位とともに神格化』(上)再掲載
2011/10/16 日本リーダーパワー史(199) 『ニューヨーク …
-
-
世界史の中の『日露戦争』⑯『日露戦争―日本の先制攻撃、水雷攻撃の教訓』『タイムズ』1904年2月22日
世界史の中の『日露戦争』⑯ 英国『タイムズ』米国「ニューヨーク・タイ …
-
-
『オンライン講座/日本歴代最高の戦略家は誰か>「日清・日露戦争の勝利の方程式を解いた川上操六(陸軍参謀総長、日本インテリジェンスの父)ですよ(1回→46回一挙大公開①
★日本リーダーパワー史(579)◎(再録)<日本歴代最高の戦略家>「日清・ …
-
-
日本リーダーパワー史(212)『日露戦争勝利の秘訣は軍事力以上に外交力・インテリジェンス・無線通信技術力にあった。
日本リーダーパワー史(212) <クイズ・『坂の上の雲』の真実とは …
-
-
最高に面白い人物史②人気記事再録★勝海舟の最強の外交必勝法①「多くの外交の難局に当ったが、一度も失敗はしなかったヨ」『明治維新から150年の近代日本興亡史は『外交連続失敗の歴史』でもある』
日本リーダーパワー史(499)勝海舟の外交必勝法ー「多くの外交の難局に当ったが、 …
- PREV
- 百歳学入門<159>「100歳まで元気な人」はやっている? たった3つの意外な長寿法』●『101歳よく食べ歩く、記憶鮮明「おしゃべり好き」』●『世界一の長寿者の大好物はチョコレートだった!? 122歳まで生きたフランス人女性の食卓』●『 健康寿命を延ばす「10の方法」 生活習慣と食事、運動がカギ!』●『高齢者の「貧困率が高い国」1位韓国、日本4位』●『むのさん逝く ジャーナリズムを貫く』
- NEXT
- 日中北朝鮮150年戦争史(31)★現代史復習『日清戦争は日本が完勝したが、実質は清国軍が戦闘能力なしの「鵜合の集団」『張り子のトラ」だったこと。現在の『中國人民軍』は果たして近代化し、最強装備になっているか、北朝鮮の軍事力は核弾頭搭載ミサイルの脅威のレベルは如何!
