前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

世界が尊敬した日本人◎「メジャーリーグを制した「野球道」の天才 ・イチローは現代の宮本武蔵なり」

   

  


 
世界が尊敬した日本人

 

◎「メジャーリーグを制した「野球道」の天才

・イチローは現代の宮本武蔵なり」

 

<歴史読本(201101月号)に掲載>

 

前坂 俊之(ジャーナリスト) 

 

 {天才ができるまで 〕

  20109月、イチローは十年連続二〇〇本安打の大リーグ(MBA)新記録を作った。あの小柄な体で、打撃眼、打撃技術、俊足をフルにいかした内安打という「イチローマジック」

を量産し打撃王に輝いた点では、まさに「打撃の発明王」という名がふさわしい。

「天才とは一パーセントのひらめきと九九パーセントの努力である」(エジソン)そのものなのだ。

 

 イチロー(本名は鈴木一朗) は昭和四十八年(一九七三)十月、愛知県西春日井郡豊山町生まれ。小学三年生から、一年間全く休まず三六〇日少年野球に明け暮れ、夜は父と近所のバッティングセンターで時速一四〇キロのボールを打っていた。中学でも二百球以上の打ち込みを毎日欠かさなかった。愛工大名電高校で平成二年に甲子園に左翼手として出場し、同四年ドラフト四位でオリックスに入団した。

 

「音楽の英才教育に一万時間」という法則がある。

 

物心ついた幼児から一日三時間、十年間休むことなく稽古すれば、約一万時間の練習になる。ピアノやバイオリンの世界コンクールに入選する多くが、この手である。イチローはこのスポーツマンのダントツの世界新記録である。日本の武道をさかのぼれば、宮本武蔵が『五輪書』で強調した「鍛錬」が思い浮かぶ。

 

<鍛とは千日の稽古、鎌とは一万日(三十年)の毎日欠かさず>の修行である。

 

〔野球道―アメリカの舞台へ〕

 イチローの野球道は剣をバットにかえた剣豪・宮本武蔵、佐々木小次郎の生まれかわりを見る思いである。オリックスプレイブス入団三年目の平成六年(一九九四)からパリーグ首位打者を七年間続けて、タイトルを総なめにして念願の大リーグに挑戦する。

 

二〇〇一年に入団したマリナーズのキャンプでは「日本の野球は3Aクラス。あの振り子打法でヒットが打てるのか」と監督からも疑問視されたが、いざフタを明けると、いきなりア・リーグ新人王、首位打者(三割五分)、盗塁王(五六回)、新人最多安打記録(二四二本) の鮮烈デビューを飾った。

 

 それから十年。「小さいことを重ねることが、とんでもないところに行くただひとつの道」(イチローの言葉)でMBAで革命を起こし次々に金字塔を打ち立てた。

二〇〇四年には、一九二〇年にジョージ・シスラーが記録した年間最多安打記録二五七本を更新して二六二本安打という大リーグ記録を塗りかえる。二〇一〇年には連続十年の二〇〇本安打達成と記録づくめである。

 もともと、MBAのベースボールはベーブルース、タイ・カップ、ハンクアーロン、ボンズらの西欧、中南米出身者の肉体的に秀でた選手たちのホームランを競うパワースポーツだったが、そこにイチローはスピード、テクニック、頭脳、ストレッチを加味して、日本の 「武道」 の進化系の 「野球道」 を吹き込んだ。

 

〔天才バッターは努力・継続の人〕

 

 世界一の記録を作ることは難しい。その記録を伸ばすことはもっと難しい。最高に至難なのは十~二十年と連続してトップを維持することで、天才・イチローは「努力の継続」で頂点に立った。

 

バッターボックスに入る前に必ずおこなうヒザの屈伸、足腰の筋肉のストレッチ、バットを垂直に立てる一刀流の構え、という不変のイチロー流儀は、人間の生き方、仕事術にも通用する方法論なのである。けがをしない身体の入念な管理と筋肉ストレッチを毎日欠かさない。

 

どの分野のプロフェッショナルのトップリーダーになるためのマインド10条件―

 

毎シーズン休まず百五十試合に出場するように心がける。

グローブその他の道具の手入れを丁寧に毎日欠かさない。

試合前後の入念な筋肉トレーニング、バッティング練習も三十年欠かさない。

カレーを常食にする

「(打率でなく)ヒットを一本増やしたいとポジティブに考える。そうすれば打席に立つのがたのしみになりますよ」

「何かを達成した後は気持ちが抜けてしまうことが多いので、打った塁上では『次の打席が大事だ』と思っていました」

「自分の持っている能力を活かすことができれば、可能性が広がると思います」

「打てない時期にこそ、勇気をもってなるべくバットから離れるべきです」

「打線が苦しいときには、守備とか走塁で流れをつくるのが野球の基本です」

⑩「小さいことを重ねることが、とんでもないところに行くただひとつの道」

 

「野球殿堂」 入りは間違いない。どこまで記録をのばすか、楽しみだ。

 

          (201010月に執筆)

 

 

●「イチロー、「年齢による衰え」の固定観念に挑戦状 
スポーツライター 丹羽政善

http://www.nikkei.com/article/DGXZZO60897550Q3A011C1000000/

 

 

●「イチローが大切にする「記録」に残らぬプレー 
スポーツライター 丹羽政善

http://www.nikkei.com/article/DGXZZO54692150V00C13A5000000/

●「本田圭佑「ここでメディアやファンに叩かれてブレるのが一番ダメ」
/日本代表

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131016-00000016-ism-socc

 - 人物研究 , , , , , , , , , , , ,

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
『リーダーシップの日本近現代史』(132)/記事再録★『昭和天皇による「敗戦の原因分析」①★『敗戦の結果とはいえ、わが憲法改正もできた今日において考え て見れば、国民にとって勝利の結果、極端なる軍国主義 となるよりもかえって幸福ではないだろうか。』

    2015/07/01 &nbsp …

no image
日本リーダーパワー史(388)「最強のリーダーシップ・児玉源太郎伝(9)『全責任を自己一身に帰し、一身を国家に捧げる決意」

 日本リーダーパワー史(388)   「日本のナポレオン」・児玉源太郎伝(9) …

『オンライン講座/日本興亡史の研究 ⑩』★『児玉源太郎の電光石火の解決力➅』★『児玉は日露外交交渉は不成立の見通しを誤った』★『ロシア外交の常套手段である恫喝、武力行使と同時に、プロパガンダ、メディアコントロールの三枚舌外交に、みごとに騙されたれた』』

 2017/05/31  日本リーダーパワー史(818)記事 …

no image
知的巨人の百歳学(150)ー『日本で最も聡明な女性・野上弥生子(99歳)の晩年の生き方』★『もし文学者たらんと欲せば、漫然として年をとるべからず、文学者として年をとるべし(夏目漱石)』★『今日は昨日、明日は今日よりより善く生き、最後の瞬間まで努力する』

日本で最も聡明な女性・野上弥生子(99歳)の晩年の生き方   野上弥生 …

no image
日本リーダーパワー史(194)<国難を突破した吉田茂の宰相力、リーダーシップとは・・>「首相なんて大体バカな奴がやるもんですよ。

  日本リーダーパワー史(194) <国難を突破した吉田茂の宰相力、リ …

『Z世代のためのオープン自由講座』★『日中韓500年東アジア史講義②』★『世界的権威ベルツの日韓衝突の背景、歴史が一番よくわかる解説』★『明治天皇のドイツ人主治医・ベルツ(滞日30年)の『朝鮮が日本に併合されるまでの最後の五十年間の経過を語る』

2019/08/15  記事再録 『ベルツの『日本・中国・韓国』五百年 …

no image
『中国紙『申報』からみた『日中韓150年戦争史』⑦「中国側が属国視した琉球(沖縄)処分をめぐる対立がすべての発端」

  『中国紙『申報』からみた『日中韓150年戦争史』 日中韓のパーセプ …

人気リクエスト記事再録 百歳学入門(185)-『画狂老人・葛飾北斎(90)の不老長寿物語』★『70、80洟垂れ小僧、洟垂れ娘に与える』★『クリエイティブ/熱狂人間は年など忘れて不老長寿になる』★『画業三昧で時間に追わて描きまくり、気がつけば百歳』

  百歳学入門(185) 『画狂老人・葛飾北斎(90)の不老長寿物語』 ★『創造 …

★『オンライン講座』★『192,30年代に芸術の都・パリで世界一の『プレーボーイ』は誰だ?』★『滞仏三十年、使った金は約500億、花の都パリで豪遊したバロン-サツマこと薩摩治郎八です」

    2009/12/29  「 世界 …

no image
日本メルトダウン( 968)『黒田日銀総裁の「敗北宣言」は新たな戦いの始まり 「真珠湾」の奇襲で日本経済は回復しなかった』●『中国の歴史:虚無主義と戦う習主席 (英エコノミスト誌 2016年10月29日号)』●『国際舞台で派手に転ぶ中国人投資家 驕りにかけては欧米並み、買収計画が相次ぎ頓挫 (英FT紙 2016年10月31日付)』●『大前研一の特別講義「大卒に特別な価値はない。世界教育動向と進む学歴インフレ」』●『  イタリアの避難所に簡易個室 建築家の坂茂さんが実演』

   日本メルトダウン( 968)   黒田日銀総裁の「敗北宣言」は新 …