前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

地上波デジタル放送スタート(‘02.12)

   

『地上波デジタル化スタート、今のテレビがただの箱になって、見えなくなる』-
前坂俊之(静岡県立大学国際関係学部教授)
『みなさんが今、見ているテレビは九年後には見えなくなってしまうのを知っています
か』-総務省は来年から東京など三大都市圏で地上波テレビのデジタル化に取組み、
二〇一一年までに、全国すべてをデジタルテレビに切りかえる方針。そうすると「家庭
のテレビはデジタル型に切り替えなければ、現在のアナログテレビは見えなくなって、
ただの箱になる」
総務省は七月に、デジタル化の第一歩である<アナアナ変換>の費用の総額千八
百億円を国費で負担することを決定した。しかし、国民にはデジタル移行計画がほと
んど知らされておらず、アナアナ変換には難問山積で、視聴者無視の論議が迷走し
ている。
地上波デジタル計画では十一年までに全国でデジタル化を完了させ、現在のアナロ
グ放送が全面停止される予定だが、その間はデジタルとアナログを並行して放送す
るサイマル放送を放送局は義務づけられている。
現在のアナログテレビ放送の周波数はVHF 帯だが、デジタル化するには、一時別の
周波数に移す必要がある。地上波デジタル放送はUHF 帯に移す計画だが、一部の
地域では電波が密集しており混信しやすい。このため、アナログ放送の周波数を変
更して、デジタル放送のために空けるのが<アナアナ変換>で、文字どおりアナログ
からアナログへの変換であって、いわば電波の一時的な区画整理的なもの。
このアナアナ変換が必要な世帯は全国で四百三十七万世帯にのぼり、電気屋が一
軒一軒回って各家庭のテレビのチャンネル設定を変更したり、アンテナの向きを調整
する必要が出てくる。これには膨大な費用がかかり、約千八百億円と見積もられ今回、
総務省が国費投入を決めた。
放送業界もデジタル、アナログの2本立てでコスト負担が倍増すると反対し、これをな
だめるためにアナアナ変換費用を国が税金で肩代わりしたかっこうだ。日本民間放送
連盟でも地上波のデジタル化は事業にならないとの声が強く、日本民間放送労働組
合(民放労連)も、「一時的なアナアナ変換というムダな措置に、2千億円近い税金を
投入することは視聴者の理解を得られない」と計画を凍結し白紙に戻すよう緊急提言
を出した。
デジタル計画に熱心な総務省は「デジタル化が世界の趨勢であり、デジタル化で多チ
ャンネル、データ放送、高画質放送、インタラクティブ番組など放送自体の多様化も進
む、家電業界などにはデジタル放送の受信機など十年間で二百十二兆円の経済波
及効果の新規の需要が発生する」などーの数々のメリットを上げる。
しかし、アナアナ変換にはたくさんの難問があり、異論、反論が続出している。
① 当初、総務省は対象世帯を二百四十七万、費用七百二十七億円と推定したが、
実態調査の結果、四百三十六万世帯、2千億円と3倍近くに膨らみ、今後まだふくら
むおそれが強い。
② 放送局もサイマル放送が長引けば長引くほど、2倍以上のコスト負担がさらに続
き、放送局平均60億円がことになる。
③視聴者にとっても、今のテレビをわざわざデジタル対応型の新しいテレビ(価格10
数万円以上)に買い換えなければならない。金がなくて買えなければ、九年後からは
テレビから画面が消えてみることが出来ない。
④ 家電メーカーにとっても、不安の声のほうが根強い。二〇〇〇年十二月に始まっ
たBS デジタルが不人気で、三年間で1千万台を売る計画が、今年七月末でわずか
約百五十万台程度と見通しが大幅に狂っており、デジタルテレビ低価格化、量産化の
メリットも期待できないと言う。
また、専門家の間でも、「アナアナ変換しなくてもデジタル化を行うことは、技術的には
容易。すべての地方民放を同時にHDTV(高画質・ハイビジョン)に移行するという方針
さえ変更すれば、アナアナ変換は必要なくなる。未利用の周波数を無線LAN に利用
することを認めれば、数百チャンネルの『デジタル放送』が可能である」という。
放送と通信に詳しい独立行政法人研究所・池田信夫上席研究員は「総務省のデジタ
ル計画は完全に失敗した。衛星なら二百億円でできるデジタル化に一兆二千億円も
つぎ込むのは、第二の住専問題となる」と批判している。

 - IT・マスコミ論

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

片野勧の衝撃レポート(82)原発と国家―封印された核の真実⑭(1997~2011) 核抑止力と脱原発 ■東海再処理工場で火災・爆発事故発生ー三谷太一郎氏 (政治学者、東大法学部長、 文化勲章受章者)の証言➀昭和20年6月の岡山大空襲を9歳で体験、 九死に一生を得た。『原発事故は近代日本の挫折である』

  片野勧の衝撃レポート(82) 原発と国家―― 封印された核の真実⑭(1997 …

no image
『5年前の記事を再録して、時代のスピード変化と分析ミスをチェックする』-『2018年「日本の死」を避ける道はあるのかー 日本興亡150年史』(1)

 2012年12月17日執筆 ★『2018年「日本の死」を避ける道はあるのかー …

最高に面白い人物史①人気記事再録★「日本人の知の限界値」「博覧強記」「奇想天外」「抱腹絶倒」―南方熊楠先生の書斎訪問記(酒井潔著)はめちゃ面白いよ①

    2015/04/29 &nbsp …

『世界一人気の世界文化遺産「マチュピチュ」旅行記』(2015 /10/10-18>「朝霧の中から神秘に包まれた『マチュピチュ』がこつ然と現れてきた」水野国男(カメラマン)⓶

2015/11/02★<世界一人気の世界文化遺産『マチュピチュ』旅行記 ( …

no image
池田龍夫のマスコミ時評(101)◎『1票の格差4・77倍」◎『武器輸出三原則」揺らぐ」◎『福島第1原発汚染水対策』

    池田龍夫のマスコミ時評(101) &nbs …

スクープ!?材木座海岸沖に謎の「大クルーザー?」か、(2019/11/10pm3)『世界第129番目のロシアの大富豪所有の世界最大の超豪華クルーザー(建造費350億円)が逗子マリーナ沖に突然出現!』

この豪華モーターヨットはロシアの大富豪 アンドレイ・メルニチェンコ氏の所有するメ …

no image
◎「特定秘密保護法や日米の安全保障について米外交・安全保障の専門家・ハルペリン氏の記者会見(5/9)

   特定秘密保護法や日米の安全保障について米外交・ 安全保 …

no image
 『F国際ビジネスマンのワールド・ビジネス・ウオッチ(198)ー『なぜ日本では起業家が育たないのか? 英米メディアの指摘する問題点とは』●『中国のEV市場が驚くほど急拡大した理由–日本はEV冷遇国?支援策で先行する中国』●『会社の未来をつくる「ネットワークの築き方」』★『トランプ大統領のシリコンバレーに対する意味―ニュースの大部分は暗い』★『  日本の科学研究、知られざる深刻な地盤沈下の実態…論文の被引用数の圧倒的少なさ』◎『「動画戦略なきパブリッシャーは生き残れない」:シェアスルー プレジデントの警告』

 『F国際ビジネスマンのワールド・ビジネス・ウオッチ(198)   な …

『倉敷美観地区動画3本付ー21世紀型の米国・利益至上資本主義が地球環境をつぶす!」★『100年以上前に公益資本主義を実践した経営者は倉敷紡績(現クラレ)を創業して社会貢献に尽くした大原孫三郎を学ぶ①』★『江戸時代、明治の街並み蔵が残る』岡山県倉敷市の「美観地区」の『大原美術館」』

 2022/06/01  『単に金もうけだけしか考 …

no image
人気記事再録/『ニューヨーク・タイムズ』で読む日本近現代史①ー日本についての最初の総括的なレポート<「日本および日本人ー国土、習慣について>

    2012/09/10 の記事   …