前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

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<米国での政府対メディアの取材ルールの変遷>

   

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<米国での政府対メディアの取材ルールの変遷>
2003 年4 月 前坂 俊之
1-米政府は今回のイラク攻撃では、湾岸戦争でのプール取材で戦争報道の現場か
ら記者を一切シャットアウトするのをやめて、従軍・同行報道< 「埋め込み
(embedding)」取材>を認めた。そのための従軍取材ルールを決めた。
イラクでの戦争開始に備え、報道各社は米軍への同行記者の派遣を始めた。米国防
総省は二月三日付で従軍取材ルール(別項参照)を発表、既に前例のない五百人を
超える記者、カメラマンの同行取材を許可している。申し込みなどを調整しているティ
モシー・ブレア国防次官補室(広報担当)少佐によると、約二割が日本を含む米国外
の記者という。同行取材には危険とともに様々な制約が伴うが、戦争の実態に迫ろう
とする各社の努力が続く。
朝日は七日付朝刊一面で、「イラク周辺に展開する米海軍と米海兵隊に、それぞれ
一人の記者を同行させる」との「おことわり」を掲載、「米国防総省によって従軍記者
の報道に一定の制約が課されているが、前線で何が起きているのかをより詳しく伝え
るため、記者を派遣することにした」と説明した。
亘理信雄・東京本社外報部長は「制約の中で書いた記事であるということを、読者
に説明する必要があると考えた」と話す。今後も従軍記者からの記事には、読者に注
意を促す断り書きを入れるという。
毎日は十一日付朝刊で、同行取材の実施を明らかにした。一九九一年の湾岸戦争
で報道が厳しく制限された経緯や、今回の米国防総省の報道対応を紹介。さらに同
行記者の取材方法について、作戦行動に参加する陸海空軍、海兵隊の各部隊と寝
食をともにする「エンベッド」(Embed、「埋め込み」の意)方式で、これだけ大規模で組
織的なものは米軍史上でも初の試みであることを伝えた。
その上で、「米空母に記者を乗艦させ、エンベッド方式により取材報道を行う。規制
はあるが、米軍の動きを直接取材できる機会であり、より多く報じるため、記者を派遣
した」と表明した。
また十四日付朝刊では、「提携紙・朝鮮日報(韓国)と米軍従軍ルポを相互に交換し
随時掲載する予定」であるとの記事を掲載した。
読売は十日付夕刊で、「従軍取材のため記者を派遣する。米国防総筈が設ける一
足の条件下で取材を行い、米軍の動向左随時、詳報する」と報じた。
共同通信も三人の同行取材を申し込み、既に一人が同行しているという。 テレビで
は、日本テレビがクウェートに配置された陸軍に二人、フジテレビはクウェートに配置
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された空軍に二人を派遣。TBS は空母に三人同乗させる。NHK も空母での取材を行
っている。
同行取材者の選考基準にっいてブレア少佐は「軍事取材への関心度や発行部数、
視聴者数など多くの要素を考慮する。すべての主要外国メディアを含めるよう努力し
ている」と説明している。(以上は『新聞協会報』2003年3月18日)
●米国防総省が発表したイラク戦争従軍取材ルール(骨子)
米国防総省が2 月3 日付きで発表した従軍取材ルールの骨子は以下の通り。
▽メディアはエンベッド方式で、軍の一部となり陸海空軍に対して長期的に、最小限
の規制の中で深い取材をする。
▽指揮官は、メディアがあらゆる機会に実際の軍事行動を目撃できるよう取り計ら
う。記者の安全を理由に、軍事地域から排除してはならない。
▽メディアに対する全般的な検閲は行わない。
▽軍人へのすべてのインタビューはオン・ザ・レコードとする。
▽友軍兵力の概算や負傷者数、拘束した敵軍の数などは報道可。
▽報道を許さないのは、(①下位部隊、艦隊の正確な数②大砲や戦車、トラックなど
重要物資の正確な数③各地域で展開する軍隊の位置④将来の軍事行動に関する情
報⑤野営地などでのセキュリティーのレベルを示す写真⑥戦術などに影響する諜報
活動情報⑦顔や名前を特定できる捕虜の写真や映像⑧捕虜とのインタビューや捕虜
収容作業の写真・映像撮影-など。
ただし、原則として報道を許されないセンシティブな情報でも、指揮官の判断で、報道
内容の事前チェックを条件に許可する場合もある。検閲と取材許可は、自主的な合意
の下に行う。
対イラク攻撃=ベトナム戦争以来の従軍取材を認める
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米英は3 月20 日早朝(イラク時間)、イラク攻撃に踏み切った。米国にとって、
大量のハイテク機器を投入した前線の作戦本部を設置し、最新兵器を駆使する
本格的な戦いとなる。メディア各社にとってもベトナム戦争以来約30 年ぶり
に「従軍記者」が認められるなど、新たな態勢での戦争取材になる。攻撃開始
に備えて記者を国外退去させるかどうかでは、メディアの対応はまちまちだ。
●取材陣「組み込み」
米ブロードキャスティング・アンド・ケーブル誌などによると、メディアにとって
アフガニスタン戦争取材などと異なるのは、米国防総省が前線部隊への従軍
取材を認めたこと。
国防総省は、「メディアは、」般市民に国家安全保障上の環境について、良い点、
悪い点双方を事実に基づき報道する」方針のもと、取材を容認することとし、
① 敵のスパイ活動、情報収集、安全保障上の措置などに関する情報
② 捕虜、拘束者の写真、映像、名前などの情報」などについては報道を禁
じるという条件付きで取材を受け入れた。
検閲付きの報道となるが、報道機関は「検閲された場合、その旨を伝える」
(CNN 関係者)ことで対応可能と判断している。
湾岸戦争やアフガン紛争では、記者は部隊から離れた場所での取材だった
ため、前線の動きを伝えられなかった。
これを教訓に今回はメディア側が要請したもので、600 人以上の記者(米系
メディアが80%)が空母・前線部隊・航空基地・兵たん部隊などと行動をとも
にしながら報道する。ベトナム戦争時には1 日単位で部隊を移ることが多か
ったが、今回は数週間、場合によっては数カ月、同じ部隊を取材する「第二次
大戦以来」(同誌)の態勢となる。
●「湾岸時より良い」
メディア側からは、「すべてを生中継で放送することはできないが、それでも
映像を送ることは可能」(CBS 関係者)とみて、「湾岸紛争時に比べてはるか
に良い」との反応が多い。ただ、取材可能かどうかの判断は現場の指揮官
に任されているため、報道内容は参加する部隊の指揮官によって養いが出
る可能性が大きい。
また、長期間行動をともにするため、兵士への親近感が強まり、客観的な報道
が困難になる事態も予想されている。
●反戦の動きに配慮
一方、英ガーディアン紙によると、BBC では編集方針を担当する責任者が
記者に対しへ戦争中でも戦争反対者の声をくみ上げるよう要請、客親報道
を目指すことを促した。
それによると、英国その他各国での反戦の動きを番組に反映させる必要が
あるとし、こうした動きも現実の一つとして報道する必要性を強調している。また、
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「大量破壊兵器」という用語については、「扱いに注意し、いたずらに脅威を引き起
こすことのないよう」警告した。
●米軍の新たな試練
また、対イラク戦争は米軍の作戦遂行と指揮系統のあり方にとって大きな試練
となる。米軍はカタールに統合作戦センターを設置、ここから前線の指揮を執
る。同センターには軍情報部、米中央情報局(CIA)からの情報のほか、刻々と
変化する天候情報、無人機からの映像などが送られてくる。さらに艦船、航空機
からの映像に印兄、今回初めて地上部隊の車両、兵士からの映像も受信する。こ
うした情報、映像に基づいて司令官が作戦の遂行を判断する。これらの映像は数
分単位で受膚する。第二次世界大戦、ベトナム戦争では、前線からの情報は無線
によるものだった。これが湾岸戦争の際に全地球測位システム(OPS)、コンピ
ューターが取り入れられ、今回はさらにハイテク化している。ただ逆にハイテクを
いかに効果的に利用できるか、司令官の裁量が問われることになる。
●退避か残留か
イラクの首都バグダッドでは、安全に配慮しNBC、ABC が攻撃開始直前に特
派員を国外に退去させた。一方、1991 年の湾岸戦争の際、米軍によるミサイ
ル攻撃状況を同地から最初に伝えたCNN のほか、CBS も記者を滞在させるな
ど、対応が分かれている。なおFOX は、米政府の駐米イラク人記者追放に対す
る報復措置で、先月強制退去させられている。
(民間放送 2003年3月23日付)
対イラク攻撃:米軍が従軍取材規制 ルールの詳報
米軍が今回、初めて試みたエンベッド取材を申請する際、米軍は取材記者に「取材規則」
への同意と署名を求めた。毎日新聞が参加する空母キティホークの従軍取材で提示された
取材ルールの内容の詳報は次の通り。
<総則>
米軍と従軍報道機関の安全のため、報道機関は定められた総則を順守する。総則は
従軍する。報道機関が事前に同意、署名する。総則の違反は従軍の終了につながる。
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◆全ての乗組員へのインタビューはオン・ザ・レコード(実名報道、公式取材)とする。
航空機パイロット、搭乗員へのインタビューは任務完了後に許可される。
◆活字・放送媒体は全ての記事、細則に従って取材・報道する。細則は窓口である
中東軍司令部を通じて適切に定められる。
◆米軍に従軍する報道機関は、火器の持込を許されない。
◆光を発する以下の機材の使用については制限が加えられる。カメラのフラッシュ、
テレビライト。
現場の司令官が事前に特別に許可を与えた場合を除いては、夜間の作戦行動中
にカメラのフラッシュを使用することはできない。
◆作戦行動の安全のため、荷物の持ち込みに制限が加えられることがある。制限は作
戦行動上の安全の問題がある時のみ適用され、問題が解決された時は、できる限り速
やかに制限が解除される。
<提供可能な情報>
◆友軍の勢力の概要。
◆友軍の犠牲者の概況。従軍報道機関は、制限の範囲内で、目撃した部隊の犠牲
者数を確認できる。
◆拘束・捕捉された敵兵の人数の確認。
◆戦闘、作戦行動に参加した友軍の規模は概数で公開される。特定の部隊の規模
に関しては、安全を保証しなければならない理由がなくなった時点で公開する。
◆攻撃対象となった軍事上の標的、目標、及びその情報の事前通報。
◆航空作戦行動を取る際、その拠点に関する一般的な説明。
◆通常の軍事任務と作戦行動に関する日時や場所の事前通報は、任務の結果
報告と同様に一般的な説明の 形で提供される。
◆使用された兵器の種類に関する一般的説明。
◆中東軍司令部の作戦行動空域内で行なわれた空中戦、偵察飛行。
◆作戦に関与した部隊の種類(防空部隊、歩兵部隊、装甲部隊などの区別)
◆作戦行動に参加した兵力の種別(艦船、航空機、地上部隊など)は指揮官の許可
の後に公表される。
◆作戦行動のコードネーム。
◆合衆国軍部隊の部隊名と本拠地。
◆作戦に従事する者の氏名と出身地は本人の同意を得たうえで公表する。
<提供不可能な情報>
◆中東軍の部隊に関する明確な数字
◆航空機の明確な数字
◆その他の装備や重要補給品に関する明確な数字(火砲、戦車、揚陸艇、レーダー、
トラックなど)
◆空母戦闘群の艦船に関する明確な数字
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◆中東軍地域にある部隊の特定の位置および基地名。国防総省や中東軍司令官
の発表の際は、この限りではない
◆将来の作戦に関する情報
◆基地や野営地の防護策に関する情報
◆基地や野営地の安全性に関する写真提供
◆戦闘規則
◆情報収集活動に関する情報
◆作戦の効果を最大限引き出すため、攻撃開始の報道には細心の注意を払うこと。
第1陣の帰還、あるいは指揮官の許可が出るまで、滑走路や地上からの生中
継は禁ずる。
◆作戦中の同盟軍の動き、および配置に関する明確な情報は作戦の安全、人命を危う
くする。交戦中の情報は許可が出るまで公表されない。
◆作戦や攻撃の内容に関する情報では「低い」「早い」などの(抽象的)言葉が使われ
る可能性がある。
◆イラクの電子戦の有効性に関する情報
◆作戦中止や延期を特定する情報
◆捜索救助活動の立案、あるいは実行中における、不明機、撃墜機、不明船舶に関す
る情報
◆イラク側の偽装、情報収集、安全策などの有効性に関する情報
◆戦争捕虜の顔や名札など人物の特定につながる映像や写真の公表
◆捕虜収容作戦の映像、写真撮影や捕虜へのインタビュー
<負傷や病気をした兵員について>
◆報道機関の代表者は情報提供を受けた後も、負傷者の名前や負傷者が特定で
きるような写真を使う際は注意する。
◆医療機関を訪問する報道機関は、適用される法規、規則、作戦命令や、担当医
師の指示に従う。もし(取材が)承認されれば、兵員か医療機関の職員が、常に報
道機関に付き添わなければならない。
◆報道機関による医療機関訪問は許可されるが、医療機関の長と担当医師の承認を
受けなければならず、治療を妨害してはならない。
◆取材記者は、医療機関の長が指定した場所を訪問できるが、手術中の手術室の訪
問は許されない。
◆患者へのインタビューや写真撮影は、担当医、あるいは医療機関の長と患者の同意
がある場合だけ許可される。
◆患者は、自分の写真やコメントが報道目的で収集され、ニュースで報道されうることを
理解している必要がある。
<機密、極秘情報の扱い>
◆機密情報や、機密扱いでなくても、敵にとって作戦上の価値があるか、あるいは他
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の機密扱いでない情報と一緒になれば、機密情報が明らかになってしまう可能性の
ある情報へのアクセスを認められた報道機関は、部隊の指揮官やその指定する代
表者から事前に、情報の使用や公開に関する制限について知らされる。疑問のある
場合、報道機関は部隊の指揮官やその指定した者と相談する。
◆どんな情報が機密扱いなのか、情報を報道する時に、どのような制限を受けるか
など、重要な保障措置については事前に報道機関に説明される。もし報道機関が不
注意に機密情報にさらされた場合、その後に、報道する際にどの情報の公開が回
避されるか、説明される。
◆記者が安全保障上の検閲に同意することは、全く自主的に行われる。もし記者が
同意しなければ、こうした情報へのアクセスは認められない。
◆記者が安全保障上の検閲に同意したとしても、それは、極秘や機密扱いの情報が
報道内容に全く含まれないことを確実にするためだけに行われる。
◆検閲は、作戦や報道を妨げないようできるだけ迅速に行われる。もし、検閲の結果、
異論が出れば、指揮官か、報道担当者を通して申し出る。
◆報道内容は、捜索、押収の対象にはならない。
[毎日新聞2003年3月19日付]
対イラク攻撃・米軍従軍取材の現場 「戦争の核心」見えるか
「見えない戦争」と言われた湾岸戦争(91年)の反省から、米国防総省は米国を中
心に約600人の報道関係者に米軍と寝食を共にして取材する「エンベッド」(埋め込
み)と呼ばれる従軍記者を初めて認めた。現在は比較的自由な報道が許されている
が、対イラク開戦後、当局とメディアの駆け引きも予想される。戦争取材のあり方につ
いて現地から報告する。
●米国内―規制求める声
米メディアは連日、「エンベッド」取材の記者たちの前線ルポを競って報じている。そ
の中で、米ABCテレビが10日に放映したルポを契機に共和党の下院議員らが取材
規制を求める書簡をラムズフェルド米国防長官に出す騒ぎに発展している。
下院議員らが問題にしているのは、ABCの看板キャスター、ピーター・ジェニングス
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氏によるクウェート駐留米兵らに対するインタビューだった。共和党のクリフ・スターン
ズ下院議員(フロリダ州選出)は「(ジェニングス氏の)質問は、犠牲者が出たり、敵が
反撃してきた仮定の状況に焦点をあて、兵士らに最悪の恐怖について考えさせるも
のだった」と述べた。米兵の恐怖をいたずらにあおり、士気に悪影響を与えかねない
というのだ。
同議員は14日、趣旨に賛同する同僚の下院議員11人と連名で「エンベッド」方式
の従軍取材への懸念を表明する書簡をラムズフェルド国防長官に送った。
書簡は「エンベッド計画の基本的な考えは理解できるが、質問は不適切だった。戦
争に犠牲は付き物だが、若い兵士らが記事のためにそうした可能性を思い出させら
れる必要などない」として、報道内容が作戦に影響しないかを事前にチェックする安
全確認検査(セキュリティーレビュー)や検閲がなぜ行われないのか見解を示すよう
求めている。開戦後、エンベッド取材をめぐる米国内の論議は、さらに広がる可能性
もある。【ワシントン佐藤千矢子】
●空母―「異常なほどオープン」
◇開戦後は不透明…
ペルシャ湾に展開する米空母キティホークでは米英仏、そして日本など各国の取材
記者約30人が従軍取材を続けている。軍事機密を除く情報へのアクセスにはかなり
の自由が確保され、開戦前の時点でのメディアの反応はおおむね良好だ。
米海軍取材を20年以上続け「USAトゥデー」など米各紙に記事を送る海軍情報紙
「ネイビータイムス」のマーク・ファラム記者(43)は今回のエンベッド取材の情報公開
度について「よそ者を受け入れない米海軍の伝統からすればキティホークは異常な
ほどオープンだと思う」と語る。
実際、作戦行動や立案に直接かかわる幹部士官や、戦闘機のパイロット(広報同伴
での取材は可能)を除けば、ほぼ制約なく取材可能である。だが記事や放送の内容
は広報担当者が細かくチェックし、士官用食堂でのパイロットとの雑談内容を無断で
記事化して注意を受けたメディアもある。戦闘司令室など機密部分についての取材は
軍上層部の認可を前提に取材を認めるはずだったが、開戦が近づいたためか、いま
だに実現していない。
広報担当のブルック・デウォルト大尉は「今後も情報アクセスを確保するよう努力す
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る」と前向きだが、開戦後の作戦内容や評価、誤爆などへの対応など現段階では評
価不可能な部分も多い。空爆作戦の機密と安全確保のため「開戦時には作戦機の帰
艦まで衛星通信システムを停止する」との通告も受けており、状況に即した報道が可
能かどうかも微妙な情勢だ。【米空母キティホーク艦上(ペルシャ湾北部)井上卓弥】
●陸上司令部―当局者取材困難
米軍の地上戦を統括する「合同軍陸上司令部(CFLCC)」(クウェート市郊外)に登
録された記者は、18日現在約2100人。うち約500人はワシントンの国防総省で事
前登録した従軍記者だ。前線部隊の取材はこの従軍記者だけに限られ、一般の記者
はクウェート市北方の検問所で止められることになる。
クウェート市内では市民への取材は自由。しかし、当局者へは何日もかかって許可
を得る必要がある。市内各所で警備にあたる国防軍の兵士は「テロを防止するため」
(情報省)との理由で、撮影が禁止されている。【クウェート市・大木俊治】
●前線司令部―情報は発表中心
「ここは撮影禁止だ」。18日、カタールの首都ドーハの国際空港に隣接する米軍基
地「キャンプ・スヌーピー」近くの道路にタクシーを止め米軍輸送機の写真を撮ってい
たところ、監視の米兵が遠くから叫んだ。慌ててその場を離れたが数時間後、地元警
察がタクシーの居場所を割り出し、運転手は事情聴取された。
米軍の前線司令部が置かれるドーハ郊外のアッサイリヤ基地内のメディアセンター
では開戦後、フランクス米中東軍司令官らが「戦果」を連日発表する予定で、米軍の
“情報発信拠点”となる。報道担当のソープ米海軍大佐は「取材の便宜は最大限図
る」と話す。しかしセンター以外の基地取材は制限され、近くのアルウデイド空軍基地
も非公開のままだ。【ドーハ田中洋之】
◇エンベッド取材ルール
米軍が今回、初めて試みたエンベッド取材を申請する際、米軍は取材記者に「取材
規則」への同意、署名を求めた。毎日新聞が参加する空母キティホークの従軍取材
の際、提示された取材ルールの要旨は次の通り。
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<総則>
米軍と従軍報道機関の安全のため、報道機関は定められた総則を順守する。総則
の違反は従軍の終了につながる。
◆すべての乗組員へのインタビューはオン・ザ・レコード(実名報道、公式取材)とする
◆活字・放送媒体は、中東軍司令部が定めた細則に従って報道する◆光を発する撮
影機材には制限が加えられる◆安全のため荷物の持ち込みに制限が加えられること
がある
<提供可能な情報>
◆友軍の勢力の概要◆友軍の犠牲者の概況◆拘束・捕捉された敵兵数の確認◆戦
闘、作戦行動に参加した友軍の規模の概数◆軍事上の標的及びその情報に関する
事前通報◆使用された兵器の種類に関する一般的説明◆作戦に関与した部隊の種
類◆作戦行動に提携参加した兵力の種別(艦船、航空機、地上部隊など)◆作戦の
コードネーム◆合衆国軍部隊の部隊名と本拠地◆作戦に従事する者の氏名と出身

<提供不可能な情報>
◆中東軍の部隊に関する明確な数字◆空母戦闘群の艦船に関する明確な数字◆中
東軍地域にある部隊の配置および基地名、将来の作戦に関する情報◆基地や野営
地の安全性に関する写真提供◆作戦の効果を最大限引き出すため、攻撃開始の報
道には細心の注意を。第1陣の帰還、あるいは指揮官の許可が出るまで、滑走路や
地上からの生中継は禁ずる◆交戦中の情報は許可が出るまで公表されない◆イラク
の電子戦の有効性に関する情報◆作戦中止や延期を特定する情報◆イラク側の偽
装、目標設定、情報収集、安全策などの有効性に関する情報◆捕虜の特定につなが
る映像や写真の公表
<機密、極秘情報の扱い>
◆機密情報などへのアクセスを認められた報道機関は事前に、情報の使用や公開に
ついての制限について知らされる◆この種の情報にアクセスする代わりに、安全保障
上の検閲に同意することは全く自主的なものであり、もし記者が同意しなければアク
セスは認められない◆記者が検閲に同意したとしても、それは極秘や機密扱いの情
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報が報道内容に全く含まれないことを確実にするためだけに行われる◆報道内容は
捜索、押収の対象にならない
(毎日新聞2003年3月20日)
以下で、米国での大統領、政府、高官に対するメディアの取材報道のルールについ
て、歴史的な経緯をここで紹介する。
(1)-・ラスク長官時代の米国務省ルール(1960年代前半)
記者会見、単独会見、立ち話などで、次のルールが存在する。取材・報道にさいし
て、このルールを確認し合うことが、情報伝達の重要な前提条件になる。(ただし、こ
のルールは、文書化されていないので、政権、個人によって異なるから、いちいち確
認する必要がある)
①on the record(オン・ザ・レコード)
ニュースソースの名前と肩書、発言の日付、場所を明示して報道する。後で誰にで
も確認できるので、政治・外交その他で重要な公開記録となる。
②background(バックグラウンド。backgrounder)
ニュースソースの名前をふせて報道する。ただし、できる限りニュースソースの所属
を明らかにする。
例:government sources 政府筋
authoritative sources 権威筋。通常長官を指す。
high officials,senior officials 高官筋、通常次官補以上のクラスを指す。
diplomatic sources 外交筋
informed sources 消息筋
reliable sources 信頼筋 など。
・通常、メモ、テープレコーダーによる記録は可能。
・同一人物一例えば、国務省スポークスマンが、定例記者会見で、on the record と
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background を使い分けることが多い。
③off the record あるいはdeep background(オフ・ザ・レコードあるいはディープ・バッ
クグラウンド)
ニュースソースが絶対にtrace できないようにして報道する。すなわち、ニュースソー
スの名前はもちろん、地位を想像できるような報道は一切しない。(記者は署名報道
の原則にそっており、一方のニュースソースは姿を全く消してしまうので、ニュースソ
ースの方は、記者に‘at your own risk’で報道するようにと伝える。1 対1 あるいは少
数の記者を相手に行われる。)
(オフ・ザ・レコードは一日本と異り一報道されることを前提にニュースソースが発言す
るが、記者が報道をやめる-拒否する-こともありうる。)
記事では、ニュースソースが一切わからないようにするので、記者の独断記事のよ
うな形をとる。例えば、「米政府は3 日、イラン本土への進攻を決定した」とか「決定し
たもようである」などとなる。
・テープレコーダの使用は、相談事になる。(声からニュースソースが判かるからであ
る)
④大統領の移動予定など記事にしない情報
大統領の移動予定に対応するTV 器材の設置のための情報であり、これは、安全
保障上絶対に記事にはならない。
本来、オフ・ザ・レコードという名称は記事にしない情熱こついて使われていたが、前
記の第3 項のように使われ始めたため、大統領予定などの情報は‘just for your
information,などの言葉で区別するようになった。(この辺の混乱と調整は、米政府内
部にも一時期あった)
⑤strictiy off the record(ストリクトリー・オフ・ザ・レコード)
「私の死後、公表して欲しい」というような約束。
この米国務省ルールに関連して、次のような参考意見が説明された。
①例外的ルール
大統領、公職者、学者などの発言は、基本的にオン・ザ・レコードである。変更が極
めて難しいからである。フォード大統領が、在韓米軍が核兵器を保有していることを
認めた発言の例がある。
②公職者(public officials,選挙候補者も含む)の発言と、私人の発言
公職者の発言は、名誉棄損や反論権の保護を受けない。
米マイアミ・ヘラルド紙の連邦最高裁判決の例がある。
③leak(リーク、漏洩。重要情報の意図的伝達)とwhistle blowing(ホイッスル・ブロー
イング、内部告発)
両者とも、オフ・ザ・レコードでもたらされることが多い。
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leak は、外交的・政治的に使われると、ballon d’essai(試験気球)として働く。
ニクソン大統領辞任をもたらしたウォーターゲート事件は、Wh 血1eblowing とも1eak
ともいわれる。
④アメリカでは、オン・ザ・レコード(公開記録)を非常に重視する基本的考え方がもと
もとある。
・大統領、各長官、各省記者会見、議員会見などのトランスクリプト化と速報・公表。
・政府要人、議員などの外国訪問の記録と公開。
・公職者(政府要人、議員)のメモワール(回顧録)の執筆と公表。辞任後、非常に早
い時期に行われる。
・例えば、ブルッキングズ研究所などの研究所では、オン・ザ・レコード以外の情報は
原則として使わない。確認のできない個人の未確認情報は、何の役にも立たない、
という考え方である。
・同様に、CIA(中央情報局)が収集し、使用する情報は、80%が公開情報(新聞、
TV、ラジオ、文書など)であり、バックグラウンドやオフ・ザ・レコード情報は補助的に
20%使うだけだという記述がある。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
2 ・1982 年の米国務省ルールの文書メモ
米国務省文書は「オン・ザ・レコード」「バックグラウンド」「ディープ・バックグラウンド」
「オフ・ザ・レコード」の定義を下している。定義を下す中で、同メモは「オン・ザ・レコー
ド」での発言を制限し、プレスとの関係で「バックグラウンド」を勧めている。
メモは、記者と対応する場合の「やれ」と「やるな」をある程度示している(いいニュー
スがある。「第一にそして最も重要なことは誠実であること」と書かれている)。メモは
特に微妙な政策の問題についてどう対処すべきかを教えている(「彼には、現時点で
は話せない、と告げなさい」)。
メモは広報担当者に対して、記者からの電話には必ず応ずるが、呼び返すように、
と告げ、次のような予防措置を提案する。「記者との会話の初めに、基本ルールを決
めることを忘れてはいけない」。
そして、この文書の注目すべき点は、約束のルールを次のように定めていることで
ある。
①オン・ザ・レコード ― これは貴官(米国務省広報担当官)の姓名と肩書きを引用
できることを意味する。一般的な定めとして、また省のスポークスマンを例外として、
政府当局者は、演説、議会での証言、公式な記者会見でだけオン・ザ・レコードとな
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る。
②バックグラウンド ―これは記者に語る時に最も普通な立場である。このルールは
当局者が、オン・ザ・レコードの場合よりもっと自由な形で、事実や政策を説明できる
ように作られたものである。
建前からすると、電話ないし省内でのバックグラウンド討議からの直接引用は許され
ない。(これは省内での担当者間の直接の政策討議を指すものと考えられる)。会話
の結果は、「国務省当局者」「米国政府当局者」「外交筋」または貴官と記者の合意す
る筋名から出たものとする。
③ディープ・バックグラウンド ―これもまた記者と語る時の普通の立場である。会話
の初めに貴官がこのルールを採用したとすると、記者は記事の中に特定の情報源を
書き込めないことを意味する。記事は「・…‥と理解される」「……ことが明らかになっ
た」といった形で書かねばならない。明らかに、この基本ルールの下で、貴官はいくら
か広範に率直さを発揮できる。しかし、このルールはまた、事実に関する目に見える
情報源がないための(川中子注:情報源が示されないので記事を確認する方法がな
い)、記者に対し自分の書くものについて責任上いっそう大きな個人的負担を背負う
よう求めることになる。その反面、当局者は記者をミスリードしたり、ミスインフォーム
しないよう道徳的責任のいっそう重い責任を負うことになる。
④オフ・ザ・レコード ―建前からすると、これは記者が、これからの計画などに利用
する以外には、聞いたことを利用できないことを意味する。「オフ・ザ・レコードだが、長
官は13 日、ニューヨークに行き、演説する」ということは、記者はこの事実は書けない
が、演説を取材するためニューヨーク行きの準備を進めることができる、ということを
意味する。実のあることはなにも「オフ・ザ・レコード」で討議してはならない。実のある
ことは、決していつまでもオフ・ザ・レコードにとどまりはしないというのが、その十分な
理由である。

 - IT・マスコミ論

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