池田龍夫のマスコミ時評(64)●原子力規制委員会の責務は重大(9・21) ●国会事故調提言の具体化を急げ(9/19)
●原子力規制委員会の責務は重大(9・21)
●国会事故調提言の具体化を急げ(9/19)
池田龍夫(ジャーナリスト)
原子力規制委員会の責務は重大(9・21)
原発の安全規制を担う新組織「原子力規制委員会」が9月19日発足した。原発を推進する経済産業省から規制部門の原子力安全・保安院を切り離し、さらに内閣府原子力委員会と文部科学省放射線モニタリング部門を解体して一元化した。
環境省の外局とし、公正取引員会と同じく、国家行政組織法3条に基づく「3条委員会」と位置づけ、独立性を明確にした意義は大きい。これに伴い「原子力規制庁」(池田克彦長官=前警視総監)も環境省外局としてスタートした。
田中俊一委員長らの人事で難航
原子力規制委は当初4月発足予定だったが、政局の混乱で同意を得られないまま国会は閉幕してしまった。その原因は「原子力ムラ」への不信感で、委員長に田中俊一氏(前内閣府委員長代理)らを起用したことにあった。
原子力規制委設置法の公布かから3カ月となる9月26日までに発足させねばならない制約があり、野田佳彦首相は「規制人事をめぐる例外規定」を援用して田中委員長ら5人の人事を発令したのである。
民主党内からも田中氏への反発があり、反原発を叫ぶ市民団体からは人事撤回を求める動きもあって、なお混乱が危惧される。緊急時には首相が国会の同意なしに任命できる規定に基づいたと政府は説明しているが、緊急の事情がなくなれば国会の事後承認が必要となる案件である。
「新安全基準」の策定、年内は難しそう
原子力規制の重大任務を担う委員会人事に問題は残るが、ともかく規制庁は発足。福島原発事故の責任を痛感したという田中委員長の公正な手綱さばきを、強く要望したい。田中委員長は9月19日の記者会見で「できるだけ早く従来の安全基準見直しを図るが、年内は難しいだろう」と述べているので、新安全基準ができるのは来年以降とみられる。
人事の国会同意は不可欠
毎日新聞9月19日付社説は「国会の事故調査委員会は、規制当局が専門性で東電に劣り、『規制する立場とされる立場に逆転関係』が起きて事業者の『虜』になっていたと指摘したが、その轍を踏んではならない。規制庁の職員の多くは保安院などからの横滑り組が占めるが、虜とならないための専門性の向上策や意識改革が欠かせない。
……規制委は今後、原発の再稼働に関する安全基準の法制化や40年廃炉ルール、原発の活断層リスクの再評価などにも取り組むが、国民の信頼を得ることが『活用』の大前提となる。そのためにも、規制委人事の国会同意を改めて求めたい。政府は与党からも造反が出ることを嫌い、特例規定に基づき首相権限で委員を任命したが、規制委の発足の経緯やその強大な権限に照らせば、国会同意は不可欠である」と指摘していたが、同感である。
こうした経歴からは3人が原発推進を目指す『原子力ムラ』の住人であるのは明白だ。……こうした展開になった背景には国会の怠慢がある。国会は事故調報告を受けていながら、たなざらし同然にした。いまからでも遅くはない。国会が原子力ムラ人事をどう考えるのか。しっかり検証し意志を表明すべきである」と、厳しく指摘していた。
国会事故調提言の具体化を急げ(9/19)
国会事故調査委員会(黒川清委員長)が「福島原発事故調査報告書」を衆参両院議長に提出してから2カ月以上経つのに、国会が真剣に受け止め、対応策を示す動きは皆無と言っていい。国会議員は目先の政局に振り回されるだけで、折角の提言が放置されていることに国民の不信感は高まっている。
国会の劣化に腹を立てたメディアコンサルタントの牧野義司氏(元毎日新聞記者)は、朝日新聞9月17日付朝刊「私の視点」欄に「国会事故調提言の実現を国会は急げ」と題して寄稿。「国会事故調が最終報告書で打ち出した7つの提言の国会対応が宙に浮き、最悪の場合、お蔵入りになる恐れがあることだ」との鋭い警鐘に、共感した。
ともかく、国会の職務怠慢、問題意識の欠如は甚だしい。国会事故調報告を生かす施策を、国会は早急に示してほしい。
(いけだ・たつお)1953年毎日新聞入社、中部本社編集局長・紙面審査委員長など。
関連記事
-
-
『リーダーシップの日本近現代興亡史』(230)/「厚労省の不正統計問題」は「不正天国日本」を象徴する事件』★『大本営発表ではウソの勝利を発表し、戦果は米戦艦、巡洋艦では一〇・三倍、空母六・五倍、飛行機約七倍も水増した』★『昭和の軍人官僚が国をつぶしたように、現在の政治家、官僚、国民全体が「国家衰退、経済敗戦」へ転落中であることを自覚していない』
2019/02/18 日本リーダーパワー非史(969) 「 …
-
-
『元団塊記者/山チャンの海外カメラ紀行②』★『オーストラリア・シドニー編②」★『ロックス港近くの地区に流刑地時代の建造物で、世界遺産の囚人施設「ハイド・パーク・バラックス」がある』
「2017年12月19日,美しきシドニー旅行記」② オペラハウスな …
-
-
速報「日本のメルトダウン」(500) Googleが世界を制する日「Google Glass発売は約1年後」シュミット会長がラジオ発言
速報「日本のメルトダウン」(500) Googleが世界 …
-
-
日本メルトダウン(953)★『政官財の不正腐敗天国・庶民地獄の日本』を『何も追及しない検察・警察、マスコミのお粗末』4重苦、こうして日本はつぶれていく。●『二重国籍問題の蓮舫氏』★『三菱自動車排ガス不正事件』★『東京都庁、東京都議会の不正腐敗天国』●『「独身の交際相手なし」過去最高、男性7割 女性も6割』
日本メルトダウン(953) 『政官財の不正腐敗天国 …
-
-
モンゴルメディアの変容
民主化後のモンゴルメディアの変容 前坂 俊之 (静岡県立大学国際関係学部教授) …
-
-
★『大爆笑、メチャおもろい日本文学史』⑤『アイヌ「ユーカラ」研究の金田一京助はメチャおもろい』講義は人の3倍の情熱、純情一直線の金田一先生』
2016/02/21 『大爆笑、メチャおもろい日本文学史 …
-
-
『オンライン中継/1ヵ月後の九州豪雨の被害状況』★『熊本県球磨村の現場を取材する(2020/8/9am9)ー大雨では谷全体が川となり、水位計も壊れてしまっており正確にはわから ないが、場所によっては国道219線から5,6メートルの高さまで水がきたと考えれる.
『熊本県球磨村の現場を取材する(2020/8/9am9) 8月9日朝 …
-
-
『オンライン/ウクライナ戦争講座⑨』★『ウクライナ戦争勃発―第3次世界「見える化」SNS大戦へ(上)』★『植民地時代の恫喝・武力外交を相変わらず強行するロシアの無法』★『テレビ戦争からYoutube・SNS戦争へ』★『無差別都市攻撃・ジェノサイドの見える化」の衝撃』』
ウクライナ戦争―第3次世界「見える化」SNS大戦へ(上) 前坂俊之 …
-
-
池田龍夫のマスコミ時評(116)集団的自衛権など、松坂市長の勇気ある発言(8/20)
池田龍夫のマスコミ時評(116) 集団的自 …
-
-
記事再録/日本リーダーパワー史(846)ー『原敬の「観光立国論』★『観光政策の根本的誤解/『観光』の意味とは・『皇太子(昭和天皇)を欧州観光に旅立たせた原敬の見識と決断力』★『日本帝王学の要諦は ①可愛い子には旅をさせよ ②獅子は我が子を千尋の谷に突き落とす ③昔の武士の子は元服(14/15 歳)で武者修行に出した』
2017/09/23日に書いた日本リーダーパワー史(846)★記事再録『原敬の「 …
