前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

池田龍夫のマスコミ時評(108)高速増殖炉-原発再稼働どころか、核燃料サイクル 計画も破綻(2/26)

   

  池田龍夫のマスコミ時評(108)

 

高速増殖炉原発再稼働どころか、核燃料サイクル

計画も破綻(2/26

 

    池田龍夫(ジャーナリスト)

 

 

安倍晋三政権は925日、国の長中期的な「エネルギー基本計画」の原案をまとめた。①原発を「重要なベースロード電源と位置づけ、原子力規制委員会の規制基準に適合した原発再稼働を認める②核燃料サイクルは、再処理ややプルサーマルなどを推進する③高速増殖炉「もんじゅ」研究計画に示された研究成果の取りまとめを目指し、実施体制の再整備などを検討する――等々の基本方針を明示している。

 

      「原発は重要なベースロード電源」と位置づけ

 

素案では、原発を「基盤となる重要なベース電源」としていたが、与党内の慎重論や「脱原発」の世論をかわすため「基礎となる」の文言を削除。「重要なベースロード電源」との表現に変えているが、原発再稼働推進の方針に変わりない。

 もんじゅは1995年の運転開始直後からトラブル続きでほとんど運転できず、福島第一原発事故後には、約1万件の機器点検漏れが発覚。原子力規制委は放置できないとして、運転低目入れを出したほどだ。

 

       核燃料増殖のカラクリ

 

 増殖炉のカラクリは特に分かりにくいので、技術的コメントを借用(『知恵蔵』)して問題点を探ってみたい。

 「天然ウランの99.3㌫を占めるウラン238は核分裂を起こしにくく、そのままでは核燃料として使えないが、中性子を吸収すると核分裂するプルトニウム239になる。高速増殖炉は、炉内で発生する中性子を減速せず『高速』のまま使うことによって、MOX燃料に含まれる燃えないウラン238を燃えるプルトニウム239に変え、燃料を増殖させる。

もんじゅの場合、消費する燃料の約1.2倍の燃料を増殖できる。高速増殖炉は、原発の使用済み燃料から回収したプルトニウムを燃料として再利用する核燃料サイクルの中核を担う技術として実用化が期待されているが、ウランよりも放射能毒性が高く核兵器の原料にもなるプルトニウムを燃料として使用することや、冷却材として用いる液体金属の取り扱いが難しいことなどから、実現を疑問視する見方もある。

米国・英国・ドイツなどはすでに開発を断念している」――。

 

       政府は〝夢〟を捨てきれず

 

毎日新聞222日付朝刊は、「自民党内でも増殖炉機能の棚上げを求める意見が出ている。

しかし、政府のエネルギー基本計画案によると『これまでの取り組み反省や検証を踏まえ、徹底的な改革』を前提に『もんじゅ研究計画に示された研究成果を取りまとめることを目指す』と、現状維持の方向性が示された。

(中略)これまでにもんじゅに投じられた国費は約1兆円に上る」と指摘したが、かつて安全神話に支えられた〝夢のような〟増殖炉計画の破綻を暗示しているように思える。

 

この計画は使用済み核燃料処理とも密接に関連する問題で、プルトニウムを増殖炉で再利用しようとの遠大なものである。石油に続きウラン資源の枯渇も指摘されている折、期待が大きかったことは確かだろう。

先進各国が挑んだことは理解できなくはないが、技術的に超えられない壁は厚い。フランスはまだこだわっているようだが、米英独が開発を断念した背景の深刻さを感じる。果たして日本の増殖炉政策推進に問題点はないのか、もっと厳密に再検証すべきである。

 

いけだ・たつお)1953年毎日新聞入社、中部本社編集局長・紙面審査委員長など。

 

 - IT・マスコミ論 , , ,

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

『Z世代のための台湾有事の先駆的事例<台湾出兵>(西郷従道)の研究講座㉕』★『よくわかる尖閣問題の歴史基礎知識』★『日中、台湾、沖縄(琉球)の領土紛争の底にある『中華思想』と台湾出兵との関係、交渉は・・・』』

 2012/09/26  日本リーダーパワー史(325) & …

『オンライン/ウクライナ戦争講座⑩』★『ウクライナ戦争勃発―第3次世界「見える化」SNS大戦へ(下)』★『チャップリンの「独裁者」とプーチン] 』★『ウクライナ戦争―ロシアは国家破産!』★『ロシアの戦費は1日200億ドル(2兆3千億円)』

『オンライン/ウクライナ戦争講座⑩』(下) チャップリンの「独裁者」とプーチン …

「オンライン講座・百歳学入門」★『<書評>高齢化社会を読み解く最良のテキスト「日本長寿の記録」(内田 啓明著、善本社、550P 平成21年7月刊行、3619円)

    2009/11/14  &nbs …

no image
★『地球の未来/明日の世界どうなる』 < 東アジア・メルトダウン(1074)> ★『第2次朝鮮核戦争の危機は回避できるのか⁉④』★『「クリスマスまでに…」トランプが安倍首相に告げた北朝鮮危機限界点』★『アメリカは北朝鮮の「先制攻撃」を、いまかいまかと待っている 国連安保理の制裁決議で起こること』★『北朝鮮より大きな危機が、5年以内に日本を襲う可能性 中国に「乱世」がやって来る』

★『地球の未来/明日の世界どうなる』 < 東アジア・メルトダウン(1074 …

no image
『オンライン/新型コロナパンデミック研究』★『新型コロナと世界の沈没②―コロナ共存社会は数十年続く』★『コロナ感染者、世界で2000万人突破(8月15日)』★『米中対決のエスカレートは加速一方』★『大国の興亡」の歴史、覇権国の行方は?』★『『3ヵ月をきった米大統領選挙の行方』』

            前坂 俊之(ジャーナリスト)  米中 …

no image
日本リーダーパワー史(838)(人気記事再録)-『権力闘争対メディアの戦い』②★『日本政治史の分岐点・5・15事件 での犬養毅首相、ジャーナリスト・ 菊竹六鼓から学ぶ➀』

2010年10月17日の日本リーダーパワー史(94) 日本政治史の分岐点・5・1 …

no image
世界最先端イベント『見える化』/チャンネル世界最大級の観光の祭典『ツーリズムEXPOジャパン-『 『日本財団』日本パラリンピックサポートセンター』●『 東京都の『多摩、島しょと東京の特産品」』★『山口のパビリオン』★『鹿児島のパビリオン』

世界最先端イベント『見える化』チャンネル 世界最大級の観光の祭典『ツーリズムEX …

no image
日本リーダーパワー史(926)-『良心と勇気のジャーナリスト桐生悠々の言論抵抗とは逆のケース』★『毎日新聞の「近畿防空演習」社説訂正/言論屈服事件の真相』

  毎日新聞の「近畿防空演習」社説訂正事件 桐生悠々の「関東防空大演習 …

『F国際ビジネスマンのワールド・ウオッチ⑫』ポルトガル・リスボン旅行日記①』★『リスボンの繁華街も閑古鳥が泣いている』★『ポルトガルの民謡、FADOに聞き惚れる。しかし、我が一行の他、2組だけでガラガラ(12/14)』

2012/12/21  『F国際ビジネスマンのワールド・ウオッチ⑫』記 …

『Z世代のための日本の超天才人物伝⑧』『エ・コールド・パリ』でパリ画壇の寵児となった『世界のフジタ』藤田嗣治』★『1949年、二度と故国に帰らぬつもりでフランスへ旅立った。空港での記者会見で、「絵かきは絵に誠実であること、絵だけ描いていてほしい」「仲間喧嘩をしないでもらいたい。日本画壇も早く大人になってもらいたい。」

2010/01/01     2025/08/02 …