『Z世代のための日本近現代興亡史講座(上)』★『「日露戦争の日本海海戦で英海軍ネルソン提督を上回る完全勝利に導いた天才参謀・秋山真之のインテリジェンス①』★『秋山真之中将のこと』-山梨勝之進大将の証言』』
「逗子なぎさ橋通信、24/06/24/am700]梅雨の合間の夏空に富士山美人が影絵のように姿をあらわした。
『リーダーシップの日本近現代興亡史』(229)
クイズ『坂の上の雲』記事再録
①『敵艦見ゆの発見電文の戦略内容に付けくわえた』
②「マハンから「米海軍大学校へ入らんでもよい。お前は戦史を読んで、ひとりで考えれば、海軍大学校にはいる以上だ。それで日本大使館にある万巻の書をすべて読破した』
③『ロシアで極秘中の極秘の一等戦艦の図面を見せられたが、1,2分の間にすべてを頭に叩き込み、出てきてトイレに入りその設計図のすべての寸法を見事に再現した』
前坂俊之(ジャーナリスト)
2011年のNHKスペシャルドラマの「坂の上の雲」は昨年末の放送も欠かさずみた。
明治時代の雰囲気、日露戦争の経過については最近のテレビドラマとしてはこの程度でやむを得ないかもしれないが、戦中生まれ(1943年)のわしなどには、物足りないことおびただしい。
嵐寛重十郎の『明治天皇と日露戦争』(1957年、新東宝)の空前絶後の記録的な大ヒット映画を岡山の超満員の映画館で、舞台の上から見たわしにとっては、渡哲也(東郷平八郎役)や石坂浩二(山本権兵衛)などの草食系の老人たちのナマクラ演技には頼りないことおびただしい。野獣系の軍人を演じるのはトホホ・・じゃった。


100年前の明治の軍人、70年前の昭和の軍人たちの『軍国時代』あの殺伐、いけたけだけしさ、軍人の態度、雰囲気、しゃべり方を今の俳優に再現させることなど、黒沢明や昭和戦前のにおいをちょっとでもかいだ65歳以上の演出ではないと無理であろう。
それも、よほどの監督でないと歴史の再現は難しいのじゃな。
それはさておき、日本人のリーダーシップとリーダーパワーの変遷について、最近、我が家の古本を倉庫からひっぱりだして、特に軍人、戦記に関してほこりを払いながら、マスクをして読んでいる。
『秋山真之』については、かつて「水野広徳全集」(雄山閣出版)を監修した際、水野が秋山の伝記の実質的な監修者だったので、関係者から秋山のそのごについていろいろ取材したことがある。
そんな訳で、坂の上も秋山についてどう描くかに関心を持って見ているが、『もっくん』はなかなかの名演技だね。但し、秋山は天才参謀であり、奇人参謀でもあり、イケメンの『モックン』はこの奇人演技についてはあまり得意でないようじゃが、とにかくよくやってるよ。
次に、秋山の後輩で山梨勝之進大将がみた「秋山将軍の実像」を紹介しよう。「歴史と名将―歴史に見るリーダーシップの条件」(毎日新聞社、昭和56年)からじゃ。
山梨大将は88歳の長寿だったが、晩年は海上自衛隊幹部学校で講義をされて、明治以来の自分が体験した政治家、軍人たちの人間性、リーダーシップ、リーダーパワーについて、後輩に忌憚なく語っており、戦争の歴史と軍人、政治家の実像を知る上にもドラマ以上に迫力があるよ。

秋山中将はいうまでもなく伊予松山の人じゃ。陸軍大将秋山好古の弟で、日露戦役当時、連合艦隊参謀として世に知られた人であるが、これがまた俳人正岡子規とも松山以来の無二の友人で、予備門時代には神田で同じ下宿にいたこともある。子規の句集の中に、▶送秋山真之の英国一暑い日は思い出だせよ ふじの山
▶送 秋山真之米国行一君を送りて思うことあり 蚊帳に泣く
などの句がある。その『病体六尺』に、枕許にちらかっているものを列挙した中に「目立ちたるのはでなる毛布団一枚、走れは軍艦に居る友達から贈られたるものである」とあるなど、親友、幼な友達であったことは『坂の上』でも丁寧に描かれている。
『秋山真之』には、「日本海々戦の時、大本営に電報した連合艦隊出動の第一報告は、若手の幕僚等が執筆したもの。敵艦見ゆ との警報に接し、連合艦隊は直ちに出動、之を撃滅せんとす、と書いて秋山参謀の承諾を得、加藤参謀長に提出しようとすると、秋山はちょっと待てといって、終りに本日天気晴朗なれども波高しの一句を加えた。
この一句によって生気躍動する名文句となったことはいうまでもないが、わが海軍はしばしば海上濃霧に悩まされていたので、今度も霧のために敵艦隊を逸しはせぬかということが大本営の心配の種になっていた。天気晴朗の一語はその不安を一掃し、波高しの三字は、これによって戦術上勝算我にありという自信を与えたものである」
『秋山真之中将のこと』-山梨勝之進大将の証言
秋山さんが生まれたとき、御両親が困って、「また男の子が生まれた。困ったなあ、あれは大きくなったら、坊さんにしようかな、他に育てようがない」と。聞いておったのが、兄さんの好古将軍で、陸軍大将になった人である。
「どうか、弟を坊さんにするのをやめてくれ。自分がなんとかして、あれを育てて、両親には心配をかけんようにするから」と。
それで、兄さんの方が士官学校にはいって、少尉になって、貧乏少尉でもいくらか金がはいる。それで、弟を東京へ呼んだ。行ったところが、ご飯を食べる茶碗が一つしかない。兄さんが食べているときは、それがすむまで、秋山将軍は待っているわけです。下駄も一つしかなかった。そういう貧乏をした。
頭がいいんだが、東大で上の方まで行くには学費がないから、海軍にはいった。坊さんになるのはやめたわけである。
そこで鹿児島の人で、有馬純位さんという人がいたが、「おい、秋山、今日の水雷の試験は、どこが出るんだ」そうすると、秋山さんは「ここと、ここと、ここが出る」といった。「そうか」といって、そこだけ勉強して、まあ、落第点だけは取らなかった。「どうして秋山、貴様知っているのか」「いや、貴様らは馬鹿だ。おれはね、水雷の教官が講義するとき、黙って聞いていると、自分の好きなところを講義するときだけ顔つきも、もののいい方も違う。そこだけしるしをつけておくと、試験のとき、そこから出るんだ」。
秋山さんという人にはそういった敏捷さがあった。
それから、アメリカに留学した。マハンに会って、アメリカの海軍大学校に入ることを希望したが、アメリカ海軍は許可せず、はいれない。米海軍きっての戦略家・マハンが「海軍大学校へ入らんでもよい。お前は、本が読めるだろう。戦史を読め。戦史を読んで、ひとりで考えれば、海軍大学校にはいる以上である。それには、こういう本がある」と。それで勉強した。非常に本を読んだ。
小村寿太郎(後の外務大臣)さんが、そのとき公使でワシントンに来ていた。非常に二人が気が合って、おれ、貴様で喜んで話しあっていたが、貧乏なことは、二人には勝ち負けはない。
小村さんも非常な貧乏であった。親から借金を引き継いでいた。「ところが、秋山君。今、日本には政党なんていうものがあるが、あの政党なんていうものは、野次馬の集まりだ。外国の政党では、主義があって、多年の訓練によって、政党というものができている。日本の政党ではデマゴーグの集まりで、主義もへったくれもありゃせん。あんなのは今にいきづまる。国家に大事がある場合に、今の政党なんていうものは、なんにもならない。その場合に、君だの、われわれだのは立って、本当に、日本のためを思って働くべき時機がそのとき来るのだ」。
こういうことを、小村さんが秋山さんに言って、おたがいに許しあった仲だという。そして、読んだ、読んだ。大使館においてあらゆるある本を、かたっぱしから、秋山さんが読んだのである。そして、鋭くて、周到で米西戦争について本省に出した報告には、みな舌をまいて驚いた。
こまかいことは時間がないので申されないが、とにかく着眼が極めて鋭く、また周到で、砲台なんかについても、みなこまかい表がついていた。まあ、そういうふうにして、アメリカの留学をすまして日本に帰ってきた。
私も秋山さんといっしょに旅行したことがあるが、シベリア鉄道で、長いトンネルがあると、ちゃんと図面をもっていて、すぐそこへマークする。非常にすばやい鋭利な人で、ちょっとあの頭というものは、どんな頭なんだろう。
フォッシュ元帥が、ナポレオンを批評して、「頭に体操させるようなものだ」と言ったが、ちょっと図面を見て、作戦計画をすぐ立てて、そうすると、こういう点、こういう点などというものは、ぐるっとまわる。秋山さんも頭の働きかたが、われわれには、わからんところがあった。

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