『オンライン/新型コロナパンデミックの研究』-『 トランプ大統領、習近平主席の内憂外患』★『世論調査でバイデンに水をあけられてトランプ再選に赤ランプ点滅』★『一方、中国でも習近平体制も派閥抗争で揺らいできた』(6月20日)
2020/10/04
トランプ大統領、習近平主席の内憂外患
前坂 俊之(ジャーナリスト)
「米ニューヨークタイムズ」(6月18日付)は5ヵ月後に迫った米大統領選挙について「ついに起こった支持者「トランプ離れ」の実態」と題した記事をの記事を掲載した。それによると、トランプ大統領の支持率は直近で42%(不支持率は55,8%)で2ヵ月前から大きく低下した。
特に女性の支持離れが大きく、民主党のバイデン候補に25ポイントと大きくリードされ、若い有権者(18~34歳)の支持率でも22ポイントの差を許すなど、トランプ氏と岩盤支持層が大きく揺らいでいると分析している。
このため、今、選挙が行われればバイデン氏が勝利するとみているが、あと5ヵ月間には何が起こるかわからない。前回の選挙では選挙直前の9,10月に国務長官時代のヒラリー・クリントン氏の私用メール問題が飛び出して、一挙にトランプ氏の逆転勝利につながった。今回はコロナの第2波が秋には来るのではないかとみられており、その前に経済が急回復すればトランプ再選の可能性もあると予測している。
そんな中でボルトン前米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が「トランプ大統領は国益重視の外交姿勢を全く放棄し、自己の再選を最優先して中国の習近平氏に対して支援を求めた」との暴露本の内容を全米のメディアが一斉に報道した。それによると、
① 2019年6月に大阪で開催されたG20の会合の米中首脳会談で、習主席に米農産物の購入を増やすことで自身の再選を手助けするよう求めた。
② 米国にも人種問題があり、「香港民主化問題」や「新疆ウイグル族の収容所問題」には自分は関心がないことを伝えていた。
③ 米朝会談でもトランプ大統領は金正恩委員長との一緒の写真撮影にしか興味がなく、肝心の北朝鮮非核化問題などは全く理解していなかったーなどなど、ボルトン自身のトランプ氏体験談を赤裸々に語り「トランプ大統領はうそつきだ」と酷評している。
6月20日、新型コロナの第2波が警戒中に、トランプ大統領が100万人以上の記録的な参加者となると豪語していた、共和党優位のオクラホマ州タルサ郡で選挙集会が開催されたが、いざ蓋を開けてみると、会場には空席が目立ち、トランプ氏も参加者のほとんどがマスクもせず、ソーシャルディスタンスも守っていない三密集会だった。
このため、選挙集会の準備してきたトランプ陣営スタッフ6人が、新型コロナウイルス感染の陽性判定を受けた。タルサ郡ではこの日も2206人の感染者が確認され、「パンデミック」が続いている。
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一方、中国でも習近平体制も派閥抗争で揺らいできた。
中国の全人代(全国人民代表者会議)が5月28日に香港の民主化運動を禁ずる香港国家安全法を可決。香港立法会(議会)もこ中国国歌への意図的な侮辱行為を禁じる『国歌条例』を同時に可決した。この全人代終了後の記者会見で李克強首相は「昨年、中国人の平均年収は3万元(約45万円)で、中国には月収1000元(約1万5000円)が6億人もいる」と中国の貧困層の実態を暴露して、世界を驚かせた。この所得格差は、中国共産党が宣伝した所得と貧困削減率とは大きく違っており、党はウソを発表していたのかと、ネットでも驚きが広がった。
中国では北京、上海など海岸部と内陸部では巨大な所得格差がある。2015年9月の中国共産党内部の調査報告書によると、31省・自治区・直轄市では、1000万元(約1億5000万円)以上の資本と財産を持つ人や家族が548万~560万人おり、そのうち360万~365万人が現役や引退した中国共産党・政府関係者で、65%以上を占めるたという。https://www.epochtimes.jp/p/2020/06/57362.html」
また、山田泰司著「3億人の中国農民工」(日経BP社)によると、農民工の平均年収5,597元,(84000円)、 郷里への平均送金額3,472元(52000円)という「絶対的貧困」(1日当たり約205円)の生活を送っている、という。
この中国共産党に痛い“不都合な数字”をあえて全人代の記者会見で暴露した背景には習近平派と李克強派(胡錦涛派)の派閥対立激化が見える。胡錦涛前国家主席は対外、対内的にもソフトな柔軟路線で、G7や周辺国との対立を避けてきたが、習近平氏は強硬路線に転換して、米中衝突、近隣諸国との領有権対立を激化させてきた。中国共産党では国家主席は外交と安全保障、ナンバー2の首相は経済を担当する役割分担となっていた。
ところが、習近平主席が経済分野にも介入し、李首相の頭越しに2016年3月、盟友の王岐山中央紀律委員会書記(現在は副主席)を使って、第13次5カ年計画(2016年~2020年)の策定者にして「小康社会」(鄧小平氏が唱えた言葉で、「貧困のない社会」の意味。脱貧困を実現、平均個人所得を2010年比で倍増、GDP平均成長率は6.5%以上が最低ラインとして、ゆとりある生活、社会の実現めざす」目標を掲げたが、武漢発「新型コロナ」の世界的蔓延の影響で、今回の全人代では経済成長率(GDP)の数字目標を示せなかった失態を演じた。
なぜ、数字を発表できなかったのか。実務派の民間活力重視派の李首相が現実を踏まえて「場合によっては2%以下に落ち込む」との厳しい予測を示したのに対し、「2020年小康社会実現」に固執する習主席は「5%以上を目指せ」と要求して対立し、調整ができなかった、といわれる。
しかも、新型コロナ対応で1月27日に最高指導部として最初に武漢に入り現地で陣頭指揮したのは李首相で、習近平国家主席は遅れること40日後の3月10日武漢市に入り、武漢市民から大ブーイングを浴びた。習主席は米中経済交渉には劉鶴副首相を重用しており、李首相は外されており、これらに対する抵抗とみられる。
さらに「露天商経済」をめぐる対立が再び起きた。コロナ不況による中小企業の倒産、失業者の急増、出稼ぎ労働者の救済対策として李首相は「露天商の復活営業」を5月末に認めた。これまで街の美観をそこなう、食の安全、既存の飲食店の営業に差し障るなどを理由に、中国当局は露天商を禁止していたが、北京、上海、西安などでは営業を認めた。ところが、1週間もたたないうちに習近平派から「北京のイメージや中国のイメージを損なう」として再び禁止にされた。両派閥の内部抗争は一段とヒートアップしている。
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