記事再録/知的巨人たちの百歳学(129 )-日本興業銀行特別顧問/中山素平(99歳)昭和戦後の高度経済成長の立役者・中山素平の経営哲学10ヵ条「大事は軽く、小事は重く」★『八幡、富士製鉄の合併を推進』『進むときは人任せ、退く時は自ら決せ』★『人を挙ぐるには、すべからく退を好む者を挙ぐるべし』
/日本リーダーパワー史(907)
日本興業銀行特別顧問 中山 素平(1906-2005、99歳)
〝財界の鞍馬天狗〟といわれた中山は、政財界の重大事件には必ずといっていいほど登場した。影武者に徹しながら、見事に決断し、用意周到に根回しして、実現していく力は中山の右に出るものはない、といわれた。
経営哲学➀「大事は軽く、小事は重く」
その中山の心構えが「大事は軽く、小事は重く」である。「私はこの言葉を若いころから守り、判断を間違えることはなかった。
経営ばかりでなく、政治の世界でも、上下のへだてなく通用する言葉だと思う。大事を決断する時は、重大な覚悟が必要です。職を賭してやらなければならない。
ただ、それだけでは大事は成就しない。小事を丹念に一つひとつ調査研究し、情報を収集、分析して解決しなければダメ」と。
経営哲学②一九六八年の八幡・富士製鉄の合併を実現。
反対の大合唱の中で、中山はガンとして動じなかった。「小事をおろそかにしてはいけませんヨ」と口をすっぱくして、周りを説き、障害を一つひとつ除き、根回しをして、ついに実現させた。
小事を軽視していると、大事は成し遂げられないのだ。
経営哲学③「問題は解決されるために提出されている」
中山は頭取時代には、興業銀行がメインバンクの役割をしている会社からは、更生会社はつくらないという方針でのぞんだ。そして、事実つくらなかった。
というのは、更生会社にしてもよいと言うと、何とか難しい問題を解決して、更生会社にしないでどうしても再建しよう、という取り組み方をしなくなるからだ。会社更生法に頼って安易に流れてしまうからである。
どんな難しい問題でも、それは自分一人では片づかないかも知れないが、いずれは解決しなければならないものだ。よく、難しい問題を提出されると、これにはこういう困難なところがあって無理である、というふうな答えを出す者がいる。
どんなに難しい問題でも、これを何とか解決しようという、非常に強い意欲を持って取り組むことが何より大事であり、その姿勢いかんが、その人間の評価を定めていく。その対応の仕方に、その人間独自の人柄が浮かび上がってくる。
経営哲学④「進むときは人任せ、退く時は自ら決せ」
石橋湛山は(1884−1973)は戦前期に東洋経済の記者、編集長、社長を務めた後、1945年の戦後からは政治家に転じ、1956(昭和31)年12月には首相にのぼりつめた。
ところが病に倒れ、わずか65日で首相を退いた。中山はこの石橋の決断を高く評価した。「責任者は出処進退に特に厳しさを要する。というよりも出処進退に厳しさを存すほどの人が、責任者になるべきだ」と。
一九六八年(昭和四十三)、中山は頭取から会長に退いた。「年齢も六十歳を超え、頭取業も七年。幸い二年越しに渋っていた正宗猪早大がOKしてくれたので、これを機会に引退することにしました」とすっきりした表情で記者会見で述べた。
中山の出処進退の哲学4か条-
➀進む時は人まかせ、退く時は自ら決せ。
②責任を持って第一線でバリバリやれるのは六十歳が限度。それまでに後継者を養成して後事を託しておくこと。
③社長業は六年で退くということ。激職を三期六年も務めたら体力の限度である。
④中国の古典に「人を挙ぐるには、すべからく退を好む者を挙ぐるべし」とある。
関連記事
-
-
「英タイムズ」「ニューヨーク・タイムズ」など 外国紙は「日韓併合への道』をどう報道したか⑬「朝鮮王子,死の宣告について当地で語る(ニューヨーク・タイムズ」(1907年8月2日付)
「英タイムズ」「ニューヨーク・タイムズ」など外国紙は「日韓併合への道』をど …
-
-
日本メルトダウン脱出法(739)「日中首脳の対立は似た者同士だから? 根っからの反日ではない習近平、日中関係の新常態は築けるか」●「長期展望、日経平均長期上昇シナリオは終わったのか?」
日本メルトダウン脱出法(739) 日中首脳の対立は似た者同士だから? 根っから …
-
-
『Z世代のための昭和100年、戦後80 年の戦争史講座』★日本で最初の対外戦争「元寇の役」はなぜ起きたか③』★『一国平和主義に閉じこもっていた鎌倉日本に対して世界大帝国『元』から朝貢(属国化)に来なければ武力攻撃して、日本を滅ぼすと恫喝してきた!、国難迫る!』
2019/10/01『リーダーシップの日本近現代史』(68)記事再編集 日本の「 …
-
-
日本リーダーパワー史(505)勝海舟の政治外交力⑦「政治には学問や知識は二の次 」「●八方美人主義はだめだ」
日本リーダーパワー史(505)   …
-
-
知的巨人たちの百歳学(172)記事再録/「みんなで『百歳学入門』へ・超高齢社会を元気に長生きする『長寿脳』を鍛えるために』★『『定年なし、年齢差別なし、老人観の全く違う米国では65~74歳はベビーオールド(赤ちゃん老人)、75~84歳まではリトルオールド(小さい老人)、84~94歳はヤングオールド(若い年寄り)、95歳以上がリアルオールド(真の高齢者)』』
2009/06/06 /みんなで『百歳学入門』へ &nb …
-
-
『オンライン講座/真珠湾攻撃から80年⑧』★『 国難突破法の研究⑧』★『1941年12月8日、山本五十六連合艦隊司令長官が1日千秋の思い出で待っていたのは愛人・河合千代子からのラブレターだった』
2010/06/30/日本リーダーパワー史(60) 真珠湾攻撃と山本五十六『提督 …
-
-
日本リーダーパワー史(463)「西郷隆盛」論④明治維新で戦争なき革命を実現した南洲、海舟のウルトラリーダーシップ
日本リーダーパワー史(463) 「敬天愛人」民主的革命家としての「西 …
-
-
<F国際ビジネスマンのワールド・カメラ・ウオッチ(204)>『7年ぶりに、懐かしのアメリカ★『ブルックリンからイーストリヴァーを挟んでロウアーマンハッタンを遠望― 再建されたワンワールドトレードセンターが見える。』
逗子なぎさ橋珈琲テラス通信(2025/10/04/am8) &nbs …
-
-
2014年ー世界経済トレンド・ウオッチ④』◎「2014年の経済の見通し」ロバート・フェルドマン氏の記者会見動画(80分』
2014年ー世界経済トレンド・ウオッチ④』 …
-
-
安倍首相と橋下維新の会代表とのリーダーシップ を比較する②「女性閣僚ダブル辞任の失敗と『ヘイトスピーチ」の対応に大差
日本リーダーパワー史(528) 安倍首相と橋下維新の会 …
- PREV
- 記事再録/知的巨人たちの百歳学(128)‐『蟹江ぎん(108歳)きん(107歳)さんのギネス長寿姉妹『スーパーセンテナリアン10ヵ条』★『「人間、大事なのは気力ですよ。自分から何かをする意欲を持つこと』★『「悲しいことは考えんほうがええよ。楽しいことを夢見ることだよ』
- NEXT
- 記事再録/知的巨人たちの百歳学(130 )『百里を行くものは、九十里を半ばにす』 ●『心は常に楽しむべし、苦しむべからず、身はつねに労すべし、 やすめ過すべからず』貝原益軒) 』●『老いておこたれば、則ち名なし』●『功のなるは、成るの日に、成るにあらず』●『 咋日の非を悔ゆるものこれあり、今日の過を改むるものすくなし」(佐藤一斎 )
