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世界/日本リーダーパワー史(967)-『トランプ大統領弾劾問題と米中テクノナショナリズムの対立(下)』★『米中通商協議の期限は3月1日』★『中国経済失速へ!「中所得国の罠」にはまったのか』★『中国の「テクノナショナリズム」「<中国製造2025>のスパイ大作戦』

   

世界/日本リーダーパワー史(967)

『トランプ大統領弾劾問題と米中テクノナショナリズムの対立(下)』

   前坂俊之(ジャーナリスト)

 

米中通商協議の期限は3月1日

「3月1日期限の米中通商協議は中国側があわてて、ホワイトハウス詣でして1月31日、大豆500万トンの追加購入を約束した。習近平皇帝を睥睨するトランプ大王は「通商協定合意の前の素晴らしい信頼の証だ」と絶賛した。中国側はさらに、農産品、エネルギー、工業製品などの輸入拡大で合意し、知的財産権や技術移転の制度を改善すると平身低頭した。

しかし、中国に乗り込んだ対中強硬派の米通商代表部(USTR)のロバート・ライトハイザー代表は大幅な構造改革を促したといわれる。両者のミゾは深い。そこは事大主義の自己改革できない中国のこと、短期間に合意に至るか予測できない。2月7日にトランプ氏は「3月1日までに首脳会談を開く可能性についてはない」と前言をひっこめた。さらに90日間期限を延長するとも述べたという。さらに中国に圧力をかけるネライのようですね」

「米側の徹底したボディー攻撃で、中国もたじたじというところですかね。経済面では上海総合株価指数は昨年24%も下落し、中国経済の輸出・投資・消費ともに落ち込んだ。トランプ大統領の恫喝ディール(取引)外交にロープ際まで追い込まれている状態ですね。毛沢東主席が1938年に唱えた『持久戦論』に学べと習近平主席は号令をかけて、対米21文字方針「不対抗、不打冷戦。按歩伐開、国家核心利益不退譲」(対抗せず、冷戦を戦わず、歩みに即して開放し、国家の核心利益は譲らない)の最高方針を示したといわれる。」

 「昨年12月18日、中国の「改革開放40周年記念大会」で演説した習近平国家主席は、この40年間で世界経済に占める中国のシェアは2%未満から15%超に大きく飛躍する「中国の奇跡」を起こした、さらなる奇跡をおこす決意を語った。ところが、この2日前に中国マクロ経済学者で、人民大学国際通貨研究所理事兼副所長の向松祚(コウ ショウソ)氏は「国内総生産(GDP)6.5%という政府発表のデータに異議を唱え、今年の中国GDP成長率はわずか1.67%しかない。さらに別の試算方法では、マイナス成長だ」と講演して大反響を呼んだ。この講演動画はYoutubeにアップされて拡散したが、政府公安当局は直ちにアクセスできなくした」

中国の高い成長率には以前から疑義が出ていましたが、これほどズバリと指摘されたことはありません。

しかし、今年1月21日に中国国家統計局が発表した18年の実質成長率6・6%と発表しているのです。この数字も、向教授に言わせれば全くの眉唾なのでしょう。向氏はこのリセッション入りの原因として「米中通商摩擦」の影響と「中国国営企業(ゾンビ)の優遇とその逆に圧迫された民営企業の投資意欲の減退」をあげています」

中国は中所得国の罠」にはまったのか

 「つまり、中国が「中所得国の罠」(低開発国が経済成長を遂げて中程度の所得レベルを達成したものの、1人当たりGDP10000ドル程度のあたりで成長が鈍化し、先進国にはなかなかなれない状態)にはまっているということです。アジアでは一足早くシンガポールと香港、台湾、韓国がこのワナを回避できたが、中南米や旧ソ連、中東の大国はこのわなにはまって発展できなかった。

なぜできなかったのか。国有企業が大半の中国では国有企業改革は国家体制を揺るがす事態になる。生産手段の私有化を前提とする投資の自由化、外資の導入も基本的に受け入れられない。

それに比べて、日本は明治以来150年、自由主義、資本主義的なルールに従って経済発展を遂げてきた蓄積があるが、中国にはそれがない。中国では国有企業のトップは共産党員や官僚であっても、民間企業のマインドを持った起業家,企業家ではない。これに旧ソ連の国家社会主義経済政策とまるで同じで、習近平永久国家主席がカビの生えた毛沢東理論を振りかざして、伸び盛りのIT民間企業のイノベーションを抑圧しているので「中所得国の罠」は突破できない。習主席が掲げる「中国の夢」の最大の敵はトランプではなく、習自身、中国の国家体制そのものなのです」

「結局、中国は共産党1党支独裁の社会主義国家の足かせです。13億人の人口を抱え経済力があるために米国がWTOに加盟を認めて、資本主義、自由主義のルールを守ることを約束させた。ところが、中国はその恩恵を受けて経済成長を続けながら、資本主義、自由主義に背をむけて、「一帯一路」(中国経済共栄圏)や「中国製造2025」「5Gスマホ監視スパイ・テクノナショナリズム」(ファーウエー事件)を推し進めて、世界覇権(中国の夢)を夢見ている。

「中国経済は思ったよりソビエト的」(英誌エコノミスト)というよりも、それ以上の

「China2049年-秘密裏に遂行される「世界覇権100年戦略」(マイケル・ピルズベリー著、文芸春秋社、2015年刊)

で指摘している「世界制覇」を着々と進めている。米国はこれに明確に待ったをかけたわけです」

「中国の全要素生産性(TFP)=労働・資本に加えて技術革新・業務効率化・規制緩和・ブランド価値などの生産性の伸び率=は近年マイナスになっている。生産年齢人口もピークアウトし、マネーゲームと不動産バブルも破裂寸前で、警鐘を鳴らしてきた向教授が最近上海での講演で「ミンスキー・モーメント」に言及したという。ミンスキー・モーメントとは、長く隠れていたリスクが突然顕在化し、慌てふためいた投資家による資産の投げ売り、マーケットの暴落が発生する瞬間を指す言葉です。世界経済へのリスク、中国不動産、テクノバブルの破裂は高まっている」

「日経2月7日付によると、『中国企業の失速鮮明』の見出しで上場約3600社のうち、2018年12月期の最終損益が前の期より悪化すると表明した企業は1070社と約3割弱に上り、400社超が最終赤字に陥る。米中摩擦のあおりを受けた企業が多く上場企業全体が減益に転じる可能性も浮上する。人民元は18年秋に対ドルで10年ぶりの安値をつけた。と」

「トランプ米大統領はこれまで以上に、国内問題から目をそらすために前のめりの姿勢で、米中貿易交渉にも米朝会談にも積極的だ。しかしこれが危ない、トランプの素人外交は失敗のケースが多い。昨年6月の北金正恩との米朝会談では、金委員長を持ち上げるばかりで、重要な非核化問題、拉致問題などではっきりとした言質をとることができなかった。ロシア疑惑のプーチンとの会談と同じです。

2月4日の 国連安保理の北朝鮮制裁委員会の専門家パネルの報告書(317 ページ)で、北朝鮮は核・弾道ミサイル開発プログラムを維持しており、いかなる軍事攻撃を受けても核・ミサイル能力が破壊されることがないよう取り組んでいるーと指摘した。昨年6月の会談で金委員長は非核化に取り組むと約束したのに、この態度です。さらに、「製造、保管、試験施設を分散させたり、海上で石油、石炭を違法に積み替える「瀬取り」を大幅に増やしている。」

「2回目の米朝会談は2月27,28日にベトナムのハノイでの開催がきまったが、トランプ大統領は一般教書演説でも朝鮮戦争の終結と平和条約の締結をにおわせる演説をしている。北朝鮮の非核化を行うと約束して、一方では絶対手ばなさない。トランプは平和条約を結ぶ可能性がある。ぬるい非核化を口約束をしてね。トランプの腹は東アジアのことは日本が取り仕切れというというものだgs。日本には米国への甘えで、相変わらず日米安保にすがっている構図です。」

中国の「テクノナショナリズム」

「今年1月24日にスイスで開催されたダボス会議で講演した米投資家のジョージ・ソロス氏は「習近平は自由主義社会の「前代未聞の危険な敵だ。中国は世界において独裁的な政権であるだけでなく、最も裕福で強力で、技術的に進んでいる。ひとたび中国企業が5G技術に関して主導的役割を果たすようになってしまったら、世界各国はもう、その脅威から抜け出すことができなくなる。もし中興通訊(ZTE)や華為(Huawei)などが5G市場を占拠するようなことになったら、世界各国に計り知れない安全上のリスクをもたらすことになるだろう」と述べたという。つまり、中国2025は「テクノナショナリズム」そのもの」

『米司法省は昨年12月に、中国の国家安全省と関係のあるハッカー集団「APT10」2人の知的財産権をサイバー攻撃で盗み取った疑いで起訴した。2人は中国天津華盈海泰科技発展有限公司に勤務しながら、中国国家安全省傘下の天津市国家安全庁の管理下に置かれている「APT10」のメンバーです。2人は2006年から、ハイテク技術情報を盗む目的でサイバー攻撃を開始、米国では、米エネルギー省傘下の17の国立研究所と米航空宇宙局(NASA)のジェット推進研究所など合計45以上のテクノロジー企業と政府機関が機密情報を盗んだ。このほか、日本、フランス、カナダ、ブラジル、スイスなどの11カ国の企業もAPT10のサイバー被害を受けた。APT10の本拠地は天津国家保安局と特定した。つまり、国家ぐるみのスパイ行為です』

「また米司法省は中国のメモリメーカー「福建省晋華集成電路」(JHICC)とその関連の台湾企業が「アメリカのメモリ企業Micronの企業秘密を盗み出した」として、アメリカ製品の輸出を禁じる対象としてエンティティリスト(輸出管理規則リスト)に加えた。2015年に中国政府は「中国製造2025」を打ち出し、その中で独自のDRAMチップを製造することが国家安全保障上の優先事項であると発表。政府はJHICCの設立に50億ドル(約5600億円)以上の資金援助を行った。当時、JHICCはメモリ製造に関する技術を持っていなかったため、台湾のUMC社からの技術供与を受け、同社副社長がアメリカのメモリ大手Micronの子会社の従業員を引き抜き、彼らからMicronが保有していたDRAM技術や営業秘密などを含む900もの機密ファイルを持ちさせた疑いが浮上し、その機密文書の損害額は約500億円から960億円にのぼるといわれます」

トランプ大統領 中国製通信機器使用禁止へ

「結局、『製造大国2025』により、AIに用いる半導体の開発・製造分野で第2、第3のファーウェイを育て、先行する欧米勢に追い付き、追い越せと大号令をかけたわけです。米半導体大手エヌビディアのM40チップ(現在の主要製品)の20倍の性能を持つニューラルネットワーク(人間の脳の情報処理の働きをモデルにしたAIシステム用半導体の開発を最重要の目標にしていた。これが出来れば、自動運転から顔認証までAIシステムの実用化で優位に立てるので、官民挙げて知的財産権、技術情報をスパイしたわけだ。米国の諜報機関はファーウェイ製の半導体には「バックドア(不正侵入のための裏口)」が仕込まれているのではとも疑っている」

『2月9日、トランプ大統領が米国の通信会社に対し、中国製の通信機器の使用を禁じる大統領令に署名する見通しだと報じられた。アメリカは、中国の通信機器大手「ファーウェイ」と「ZTE」をサイバーセキュリティー上の脅威とみなしている。米中の貿易協議が続く中、アメリカは中国への圧力を一層強めており、これに同調して、欧州連合(EU)も高速大容量の(5G)の域内整備をめぐり、中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の機器などの使用を事実上禁じる措置を検討している。日本もこれに加わるでしょう。米中通商協議は関税問題以上に、この中国のテクノナショナリズムとテクノスパイ防止問題が最大の焦点ですが、こらは簡単に解決できる問題ではありませんね』

 - IT・マスコミ論, 人物研究, 健康長寿, 戦争報道, 現代史研究

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