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   日中北朝鮮150年戦争史(37)<歴史復習問題>『120年前の日清戦争の真実』② 陸軍でも秀吉の朝鮮出兵以来の大陸へ進出する『日清戦争」が開始された。開戦の詔勅に「国際法を遵守すべし」

      2016/10/03

   日中北朝鮮150年戦争史(37)<歴史復習問題>

『120年前の日清戦争の真実』-

陸軍でも秀吉の朝鮮出兵以来約300年後に、

大陸へ進出する『日清戦争」が開始された。

開戦の詔勅に「国際法を遵守すべし」との一項目が・・

 

豊島沖海戦が起きた25日には、陸軍の大島義昌少将率いる混成旅団(歩兵3000人、騎兵47山砲8門)は牙山駐留の清国軍部隊(4100人、砲8門)を攻撃するために仁川から出発した。

 

炎天下を37キロもの行軍で水の補給がなく途中、日射病患者が続出したが、前進し、成歓に到着した。

 

7月29日、大島率いる第9歩兵旅団は成歓付近で、初めて清国軍と戦闘した。

成歓の陣地に立てこもった清国兵は約3500で日本軍もほぼ同数の3000、付近は丘陵に水田と陣地があり、見通しのよい水田をいけば狙い撃ちされる。

 

大島混成旅団は大きく迂回して夜間行軍して同深夜、清国軍の背後から奇襲攻撃をかけて成歓を奪い牙山を占領した。戦前の修身教科書の「死んでもラッパを口から離しませんでした」の木口小平ラッパ卒の軍事美談はこの時のもの。

 

寄せ集めの3500の清国兵は初めて見た日本兵の勇猛果敢な一斉突撃に驚き、

総崩れとなり武器等を放棄して平壌に逃げ帰った。日本軍の死傷者80に対して、清国軍500以上にのぼった。

 

この緒戦の勝敗がその後の行方を決めた。日本軍は縦隊進軍―散開―射撃-突撃という近代戦法で、夜襲、奇襲の積極果敢な攻撃を繰り返した。

 

この戦闘開始当日の東京株式市場は大暴落し、海軍公債も値下がりするなど、勝利を不安視する声が強かった。特に、各国の中立や支持を取り付けるために8月1日に出された開戦の詔勅に「国際法を遵守すべし」との一項目をいれた。

 次の天王山は平壌の戦である。

平壌は約10mの堅固な城壁で囲まれた朝鮮最大の要塞都市。城壁には七星門、静海門など10の開門があり、外郭に玄武門や牡丹台が築かれ、難攻不落を誇っていた。清国軍はここに約1万2000と、成歓の敗兵約3000人も退却し、山砲28門などで日本軍を迎え撃つ作戦だった。

 

一方、日本軍第5師団(団長・野津道貫中将)の主力は8月19日、京城付近に到着。野津中将は山県有朋第1師団長から独断専行の権限を与えられており、平壌へ向け早くも30日、師団に進軍を命じた。

大島混成旅団は北進、佐藤支隊は元山から平壌道へ、朔寧支隊は義州街道を前進して、師団主力は西方から包囲する計画で、9月15日を総攻撃の日と定めた。

日本軍は約1万2000、山砲44門で、わずか2日で攻略する大胆な作戦で、食糧も3日分しか携帯していなかった。

9月15日未明、総攻撃を開始した。大島旅団は清国軍主力の猛反撃を受けて430人の死傷者を出して一時退却した。

朔寧支隊と佐藤支隊は平壌北側の城壁をよじのぼり占領、平壌市街に迫り午前7時過ぎ玄武門、牡丹台などを占領した。

 

このとき、朔寧支隊では工兵16人の決死隊を送った。玄武門は堅く閉ざされていたが、一同城壁をよじ登ったところ、敵兵の一斉銃撃で進退きわまった。ここで、原田十吉(等工兵むらが12mの高さから城内に飛び下りて門を開き、16名を入れて、これが勝利の決め手となった。

この「原田十古の玄武門破り」の武勇は講談、演劇などで日本中に喧伝され、日清戦争初期の軍事美談となった。

一方、師団主力の攻撃ははかどらなかったが、午後4時過ぎ、突然、敵は城壁に白旗を掲げ明朝の開城を約束した。驚いた野津司令官は「策略ではないか。明朝の攻撃をおこたるな」と命じた。

 

実は清軍の総司令官・葉志超は玄武門を占領されたショックで、緊急の将軍作戦会議を開いた結果、退却を決めて、白旗を上げ午後9時ごろ、清国軍は一斉に逃走してしまった。翌日、日本軍はもぬけの殻となった平壌城内をなんなく占領した。

海上の天王山・黄海で北洋艦隊の主力を圧倒する

平壌の戦いのあった9月16日、海上でも天王山があった。黄海海戦である。

大本営の作戦では8月中旬までに渤海の制海権をとらないと、氷結のために陸軍の山海関上陸、直隷平野の決戦ができず、作戦全般に大きな支障をきたすとしていた。

大本営参謀の樺山軍令部長は9月6日、連合艦隊の仮根拠地の朝鮮・長直路に乗り込み、慎重派の伊東司令長官にハッパをかけて決戦を促した。士気はいやが上にも上がった。

16日夕、連合艦隊本隊(6隻)、第1遊撃隊(4隻)など12隻が出動、勇猛果敢な樺山は自ら日本郵船の貨客船を武装して巡洋艦に代用した『西京丸』に乗艦して、艦隊に同行して見守るという異例の展開となった。

17日朝、大孤山沖の黄海で清国艦隊と遭遇した。日本側は、坪井司令官の率いる第1遊撃隊・吉野、高千穂、秋津洲、浪速、伊東長官指揮の本隊・松島、千代田、厳島、橋立、比叡、扶桑。樺山軍令部長の乗る西京丸、砲艦赤城。

これらが単縦陣(1直線)で突進した。指揮官の艦に続いて行動する単縦陣は一番わかりやすく、指揮、命令も徹底するので日本海軍は「指揮官先頭、単縦陣」の戦法をとった。

一方、清国艦隊は単横陣(鶴翼の陣形)で「定遠」「鎮遠」他両翼に4隻づつ合計10隻が並んで艦の首砲で頭から突っ込んで敵艦に体当たりし沈没させる旧来型の戦法をとった。

本隊は旗艦の「松島」が3500mで「定遠」を狙う。各鑑も高速で駆け回り、速射砲(12センチ砲) で「定遠」「鎮遠」に集中砲火を浴びせた。

清国艦隊は日本の本隊を砲撃しようとしたが、日本艦隊の快速に、砲の旋回も艦首の立てなおしも追いつかず、かえって陣形を乱した。「致遠」は最初の5分間で戦闘力を失い、「来遠」「済遠」も火災を起こした。「定遠」は159発、「鎮遠」は220発、「来遠」は225発の命中弾をくらって、大損害を出した。

肝心の定遠などの30・5センチ巨砲は日本側の猛攻によってほとんど発砲できず役に立たなかった。日本の旗艦「松島」は、「鎮遠」からの砲弾2発が命中し、一門しかない32・5センチ主砲は、使用不能となったが、沈没はしなかった。5時間の戦闘は日本側の圧勝に終わった。

清国側は沈没3、遁走6。「定遠」「鎮遠」も大破し、沈没はまぬがれたものの旅順口へ逃げ帰った。日本側の沈没はゼロという完勝ぶりだった。

 

この海戦の勝因を挙げれば…。

①  樺山軍令部長が作戦現場に出向き、同乗するという海戦史上にもない異例の強硬姿勢とって、戦意鼓舞したことが挙げられる。そこには開戦直前に予備役の樺山を現役に戻して海軍々令部長に復帰させた人事の成功があった。

②日本の快速艦と速射砲の威力が実証された。平均速力で2ノット上回るため、1分間で60m差になり、北洋艦隊の大砲の照準を大いに狂わせた。

速射砲の威力。清国巨艦の大口径砲はその発射速度が遅い。日本側の速射砲は門数で清側の5倍あり、中小口径砲でも破壊力は何倍にもなった。

単横陣で動きの不自由な清国艦隊は、日本側に先手先手と攻撃のチャンスをとられて、せっかくの30・5センチ砲も、ほとんど発砲できなかった。

 

7対3で清国海軍の勝利を予想していた世界の海軍関係者は驚き、世界最強の英国のライバルが出現したと論評した。

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