日中韓対立のルーツ『日清戦争』を日本の新聞はどう報道したのかー徳富蘇峰,福沢諭吉、朝比奈知泉らの主張は・①『対朝鮮発言権は日本のみと』(徳富蘇峰)
日中韓対立のルーツ『日清戦争』を日本の新聞は
どう報道したのかー徳富蘇峰,福沢諭吉、朝比奈知泉らの主張は・
『対朝鮮発言権は日本のみと』「〔明治27年7月12日 国民新聞〕徳富蘇峰執筆
『朝鮮における発言権 我が国は一大難関に』
逢着せり、われらは特に今日において英断猛決の必要を見る。今日、外交が紛糾してそれはめんどうなり、ただそれ毅然として初志を確持し、千の弥縫(びぼう=失敗や欠点を一時的にとりつくろうこと)、万の調停、すべてを「否」の一語を以って排し去らなければ、わが国はしらず知らずに清国詐術(中国にだまされること)の中に陥没し、前進その路を失い、後退その時を失し、茫然自失(ぼうぜんじしつ=あっけにとられたり、あきれ果てたりして、我を忘れること。気が抜けてぼんやりとしてしまうこと)する悔いを残すであろう。
清国は独力でもって、わが国に対することができず、諸外国の力を貸し来たりて、もって我に当らんとす、これ彼が今日、わが国を困殺(困らせ殺すこと)せんとしようとする第一の秘術なり。清国はこれを外国にして、他に日清の平和を計り、朝鮮における日本国勢の膨脹を妨ぐべき方策はないと信じ、今やその全力をこの方針に向かって注ぎ、列国の公使に哀訴歎願 (あいそたんがん=なりふりかまわず、心の底から願い出ること。 「哀訴」は、哀しそうに訴えること。 「嘆願」は、嘆きながら願い出ること)、
もってその同情の恵みを請い、列国の力を借りて、以ってわが国に談判を試み、朝鮮の処分を決定しようとしている。これ、あんに卑屈千万(ひいくつせんばん=自分をいやしめて服従・妥協しようとする、いくじのない態度)の処置ではないか。
朝鮮の問題について発言権を有するものは、世界各国の中、ただ清国と我日本とあるのみ。これ従来の歴史、従来の関係、従来の慣習が、両国に与えたる特典にして、またこれ隣国として、後進国たる朝鮮を保護する好誼(こうぎ=心のこもったつきあい)である。欧州列国のごときは「もとより従来の歴史、従来の関係、従来の慣習において、朝鮮の事に容喙(ようかい=くちばしをいれること、介入すること)した例はない。
わが国が当初、欧洲諸外国に向かっては1言の通告をもなさず、ただひとり清国に向かって、朝鮮処分に対する談判を申し込んだのはわが国の外、ひとり清国のみ朝鮮の事に発言する典例があるためだ。しかるに、清国がこの申し込みに対し全然拒絶したのは、これすなわち清国自分から朝鮮に対する発言の権を放棄したものいがいのなにものでもない。
清国はすでにその発言権を放棄す、ここにおいて、朝鮮に対する発言権は我が国の特占(独占)に帰したものであり、我が国が独力以って朝鮮の保護にあたることは、すなわち、朝鮮における発言権、我が国の独占に帰したるためにすぎない。
事すでにここに至らば、清国たるもの、またなんぞ朝鮮の事について1言も挟(はさ)むことはできない。われらは清国が、我が国の朝鮮におけるすべての発言、すべての行動を黙々と看過するのが、当然であると信ずる。我が国が申込みを拒絶した旨、その意味、その精神は一致した行動であると信ずる。
しかるに反覆、掌(てのひら)を翻(かえ)すがごとく、十数日前、わが国の申し込みを拒絶したのと同一口により、朝鮮の処分について合議共謀せんことを申し込んでくるにいたっては、一体何事ぞ。ひとたび放棄したものは、再び収拾すべからず、朝鮮に対する清国の自由は、今やただ我が国の行為を黙過するに在るのみ。(後略)
列国の調停介入を排す「東日」〔明治27年7月13日 東京日日=現毎日新聞〕
従来の電報は好音か、はたまた凶聞か。韓廷(朝鮮宮廷)は大鳥公使の要請を納れ、庶般の改革を行うべと決答し、その調査委員を任命したり。しこうしてその実際に於いては帝国の心事、彼なお深猜措かず、清その虚に乗じて妨碍(妨害)を遥しくせんと欲するもののごとし。我豈に帝国の外交的勝利として深く喜ぶべけん、我豈ににわかに光栄を平和の談判に得たりとして満足すべけん。
それ帝国の兵、京城に在るもの寡(すくなし)といえどむ、また精また強、軍容の盛んなる、紀律の厳なる、以って韓延をして深く畏憚せしむるに足る。我もとよりその威力を挟みて韓延に臨まずといえども、韓延の我に対するは、けだし本邦の国力よりも善隣の好誼よりも、眼前, 咫尺(しせき=ものすごく狭い土地のこと。 「咫」と「尺」はどちらも距離の単位で、短い距離のたとえ)に屯駐の兵力を顧みるものその常情(じょうじょう=人間として普通の感情)たるべし。
すなわち彼の我が要請を容るるや、これただただ当然のみ。韓延がこれを決答するまでに、清廷裏面の運動頻数(ひんすう=たび重なること。また、多くの回数や度数)なりしを思う時は、この事や我に在りてもとより一歩を進めたりとするを得べし、
しかれども決して功とするに足らざるなり。これがために我が光栄を保ち得たりとして兵を撤せんというがごとき、よくよくまたはなはだ早計たるのみ。(中略)
しこうして、いったん妨碍の起るあり、実行以って阻止される虞(おそれ)れあらんや、我は兵力を用いても当初の目的を遂げざるべからず。否、清にしてすでに我の協議を否み、我よって以って独力経営の地歩と責任とを取りたる以上は、今日となりて妨害はほとんど仇敵として視るの価あり。その官吏の干渉を絶ち、その兵士の屯駐を禁ず、肯かずんば我より開戦するのみ。吾曹がただただ戦機を待つのみと称したる事態は、昨なお今のごとし。いずぐんぞ韓廷の応諾の一報を得て、満足すべけんや。
列国会議の時宜に適せざる帝国の権利、利益、面目のために、現今これを求め、もしくはこれに列する要なきは無論なり。しこうして仮に列国連合の力を用い来たりて我に勧告するも、取りあえず現今屯駐の兵を撤去せよというがごときは、我断じて応諾すべからず。
我既に独力韓の改革に着手す、清の声かつ聞くを要せず、いわんや欧洲諸邦の言をや。吾曹(ごそう=一人称の人代名詞。われわれ。われら。吾人)はこれによって平和を求めんとするのまたはなはだ早計なるを信ず。(後略)
『開戦の好機来たる』(「国民新聞」社説)〔明治27年7月15日 徳富蘇峰執筆〕
好 機(7月15日稿)
好機は得難くして、失い易し。
今や好機は我に接吻せんとす、握手せんとす。未だ知らず、当局の政治家は何を以ってこれを迎えんとする。
好機とはなんぞや、言うまでもなし、清国と開戦の好機なり、別言すれば膨脹的日本が、膨脹的活動をなす好機なり。
語に日く、天の与うるを取らざれば、かえってその禍いを受くと。未だ知らず、我が当局の政治家は、天与の好機を閑却して、国家を不測の禍に横し、かつ自個をもおしもどさんとするか。はたこの好機を善用して、国家をして、超越的飛躍をなさしめ、併せて自個の姓名を、国民的膨脹史の第1頁に特筆せしめんと欲するか。彼等は今やこの十字街頑に立つを知らずや。
経世の識者は、理外の理(りがいのり=意味は普通の道理や常識では説明のできない、不思議な道理)を看取せざるべからず、算外の算(けいさんがいのこと)を計較(計算、比較すること)せざるべからず。
局部の不道理にして全局の大道理なるものあり、現在の小損害にして将来の大利益なるものあり。
看よ、かのカブールは、何が故に国民よりは狂気の沙汰と罵られ、議院よりは反対せられ、その閣僚すら辞職するに関せず、二万五千の援軍を出して、英仏同盟軍に投じ、クリミヤ戦争の活劇場裡に突入したるか。(中略)
今や天、好機を賜えり、かの清国は白から頑冥不霊(がんめいふれい=頑固で無知なこと、頑固で道理がわからないこと、「不霊」は頭の働きが鈍いということ)にして、その開戦の辞を与えたり。それ彼既に朝鮮を属邦となし、しこうして我が朝鮮の独立を担保するを妨害す。それ弱国の独立を扶けて、暴国の呑噬(どんぜいどんぜい=のむことと、かむこと)を挫く、これ侠士(きょうし=弱い者を助け強い者をくじく勇気に富む人)の事、これ義人の事、しこうしてまた仁者の事なり。
これを天地の公道に質し、これを世界の公論に訴え、これを古今の事実に尋ね、またなんぞ疑わん。百年の大計を誤るものは一日の苟安(こうあん=一時的な安楽をむさぼること)なり、一日断ぜず、二日断ぜず、三日断ぜず、好機は脱兎のごとく、既に去りて捉うべからざるを気付かずや。汝等もし代
価を払うの勇なくんば、安逸の極は国家を窒息せしむ名を忘るるなかれ。
好機失い易うして、得難し。
今や我が邦は、清国と快戦するの最高潮に際す。
(一)軍備は我遥かに彼を凌駕せり。
(二)財政は余裕あり、国債を募らざるもなお一億余万円の戦
費を供給するに足る。
(三)他国は傍観の位地に立てり。
(四)我は朝鮮に於いて既に地を占めつつあり。
(五)国民は一体となり、国民は一心となり、政府の前には、忠勇
なる軍隊あり、政府の後には、剛健にして殉
図の心に富む四千余万の国民あり。
あたかも国家彼自身の一大活動を見る、この時におよんで断ずるあたわずんば、かの当局者は何の顔(かんばせ)ありてカブールを地下に見んや。カブールを見るの顔(かんばせ)なきなお可なり、何を以って我が国民に対せんとする。
もし今日に於いて断ずるあたわずんば、
(一)我が邦は全く清国の下風に就きたるなり。
(二)朝鮮に対する威信を全く失うたるなり。
(三)東洋に於いてはもとより、世界各国に於いて、もはや我が邦を相手とするものはなきに到らん。しかり全く相手となさぬなり。
(四)国民は反動せん、しかり大反動せん。しこうして国論沸騰せん
(五)国論沸騰、国民反動なお忍ぶべし、その内部の紛転に乗じ、清国、露国、英国の他、思い思いに手を伸ばし、脚を伸ばす(中略)好機は前額に毛髪あり「後頭は禿すとも前に於いて捉えるあたわずんば、後に於いて掴(つか)むべからざるなり。ただかの時勢を識るもの、一よくこれを捕え、これを用い、これに乗ず。すなわち今日はこの好機に乗じて、帝国と一快戦するの潮合いにあらずや。
国家の大事は、一朝、憤激のよくなす所にあらず。.吾人をして清国の無礼を怒り、国民的誇大心の客気に役せられ、頭熟し、情昂り、
この言をなすものと速了(そくりょう=早合点すること。早のみこみ)するなかれ。吾人は実に静かなる大功夫と冷かなる大打算よりして、かくは沈痛なる論告をなすなり。
好機の後には必ず禍機あり、幸運の背には必ず悪運あり。
一日遅疑すれば好機は二日遠ざかるなり、悪運は一日近づくなり。
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