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漫画「美味しんぼ」の「福島での鼻血描写」ー「チェルノブイリでは避難民5人に1人が鼻血を訴えた」(広河隆一氏の調査)

   

 


ビッグコミックスピリッツの漫画「美味しんぼ」の「福島での特に鼻血の描写」が「不安をあおる」などとして抗議を受けているが、1986年のチェルノブイリ原発事故以降、50 回以上の現地取材と救援活動を続けているフォトジャーナリスト広河隆一氏(月刊誌「DAYS JAPAN」編集長、チェルノブイリ子ども基金設立者、福島の子どものための保養施設「沖縄・球美の里」設立代表)は13日、「チェルノブイリ原発の避難者2 5564 人に独自のアンケートを行った結果では、避難民の5人に1人が鼻血を訴えている」という調査結果をマスコミ各社に発表した。その概要を以下で紹介する。

 

 

チェルノブイリでは避難民の5人に1人が鼻血を訴えた

2万5564人のアンケート調査で判明

 

広河隆一

 

『ビッグコミックスピリッツ』(小学館)に掲載中の漫画「美味しんぼ」の「福島の真実」篇に多方面からの抗議が寄せられているという。 問題になったのは次の2点である。

「原発を訪れた主人公が鼻血を出すシーン 」「そして疲労感を訴えるシーン 」

特に鼻血が「ありえない」「不安をあおる」といった抗議を受けた。

 

疲労感については、福島原発事故の後に私自身が経験している。2011313日朝から原発周辺での取材を繰り返した後、持っていた測定器が振り切れるという経験をして、その後 4 月に突然非常な疲労感と下痢が襲ってきた。被曝と疲労感が関係あるのかどうか、あとで数字を見てもらう。

鼻血はどうか。私自身は鼻の粘膜の異常を感じることはよくあった。しかしはっきり流れるほどの鼻血は経験していない。

私は 2012 7 月に沖縄県久米島で福島の子どもたちの保養施設「沖縄・球美の里」を設立し、運営している。ここにこれまで訪れた保護者たちから、鼻血の話題はよく聞いた。福島でも聞いている。だから誰でも知っていることかと思っていた。

 

だがこれほど大騒ぎになって、「ありえない」とか「事実無根」とか聞くと、そんなに完全に打ち消そうとするということは、どのような意図が働いているせいかと疑ってしまう。これほど大きく問題にすると、かえって「住民の不安をあおる」ことになってしまうではないかと思う。

鼻血は出ると訴えている人がいることを認めた上で、それが大きな病気に結びつくのを防ぐためにはどうすればいいのかを話す方が建設的ではないかと思う。

 

私は1986年のチェルノブイリ原発事故以降、50 回を超えて現地での取材と救援活動を続けている。そしてこの3月、映画取材班とともに、チェルノブイリを5年ぶりに取材した。ウクライナの高濃度汚染地域であるナロジチ地区のナロヂチ市中央病院の副院長に、日本では福島原発事故の後、鼻血がでた子どもが増えたという声を聞くが、チェルノブイリではどうだったのか、と聞いた。

 

すると副院長は「チェルノブイリでも事故の後、鼻血が増えた」と答えた。被曝によって血液系統の病気が増えた。鼻血もそうだが、貧血も増えたということだった。白血病の前段階の症状も増えたという。

 

1990 年、IAEAはチェルノブイリの調査団を派遣し、翌年、健康被害の不安を打ち消す報告書を発表している。その報告に疑問を持った私たちは、広河事務所とチェルノブイリ子ども基金(当時は私が代表だった)共同で、現地NGOの協力を得て、1993年8月から1996年4月まで、避難民の追跡調査を行ったのだ。

 

調査項目は数百にのぼり、アンケート形式で本人あるいは家族に書いてもらった。回収できたアンケートは2万5564人分である。チェルノブイリ避難民のこれほど大掛かりなアンケート調査は、ほかにはないと思われる。私たちにそれができたのは、これが救援目的におこなった調査だからである。人々の健康状況を把握できなければ、どのような救援を行っていいのかわからないからだ。

 

アンケート調査は困難だったが、私たちには IAEA にはない強みがあった。それはそれまでの救援活動の実績と現地の人々との信頼関係、チェルノブイリ支援の現地NGOとのつながり、である。ほかならぬ被災者に会うことが、私たちの仕事だったということもある。

この報告書は日露版の冊子の形で発行され、この3・11後にその一部を『暴走する原発』(小学館)に収録した。

 

その結果から、鼻血と疲労に関する数字を中心に見ていきたい。ただ人々を襲ったのはもっと多様な症状だったので、それらも記載しておきたい。

 

●プリピャチ市(原発から約3キロ)の避難民アンケート回答者9501人「事故後1週間に体に感じた変化」という質問に、人々は次のように答えた。

 

頭痛がした 5,754 60.6

吐き気を覚えた 4,165 43.8

のどが痛んだ 3,871 40.7

肌が焼けたように痛んだ 591 6.2

鼻血が出た 1,838 19.3

気を失った 880 9.3%

異常な疲労感を覚えた 5,346 56.3%

酔っぱらったような状態になった 1,826 19.2

                            

「その人々の事故から約10年後の健康状態」

健康 161 1.7

頭痛 7,055 74.3

のどが痛む 3,606 38.0

貧血 1,716 18.1%

めまい 4,852 51.1

鼻血が出る 1,835 19.3

疲れやすい 7,053 74.2

風邪をひきやすい 5,661 59.6%

手足など骨が痛む 5,804 61.1

視覚障害 2,773 29.2

甲状腺異常 3,620 38.1%

 

「現在の健康状態は事故の影響だと思っているか」

100%事故が原因である 47.3%

かなり事故が影響している 14.5

全く事故と無関係ではない 38.2%

事故とは無関係である 0.0

<念のため、数は多くはないが、比較対象のために行ったモスクワ市民の集計(316 人)

は次のとおりである>

 

「現在の健康状態」

健康173人54.7%

頭痛    53人16.8%

のどが痛む 27人       8・5%

貧血 6人 1・9%

めまい  22人 7・0%

鼻血が出る 10人 3・2%

疲れやすい67人21・2%

 風邪をひきやすい56人 17・7%

手足などの骨が痛む23% 7・3%

視覚障害51人 16・1%

甲状腺異常 11人 3・5%

白血病 2人0・6%

         

●チェルノブイリ市(原発から約17キロ)の避難民のアンケート回答者 2,127

(人々は事故からおよそ8〜9日後に避難した) 「事故後1週間に体に感じた変化」

鼻血が出た 459 21.6

気を失った 207 9.7

異常な疲労感を覚えた 1,312 61.7

 

「現在の健康状態」

健康 58 2.7

頭痛 1,587 74.6

鼻血が出る 417 19.6%

疲れやすい 1,593 74.9%

風邪をひきやすい 1,254 59.0%

手足など骨が痛む 1,361 64.0

視覚障害 649 30.5

甲状腺異常 805 37.8%

(以下省略)

●チェルノブイリ地区の村々の避難民 12,864 人の回答 「事故後1週間に体に感じた変化」

頭痛がした 7,805 60.7

吐き気を覚えた 5,497 42.7

鼻血が出た 2,491 19.4

気を失った 1,194 9.3

異常な疲労感を覚えた 7,259 56.4

(以下省略)

 

●ノヴォシュペリチ村(原発から6キロ)の避難民の回答者 351 人 「事故後1週間に体に感じた変化」

頭痛がした 216 61.5

吐き気を覚えた 158 45.0

鼻血が出た 65 18.5%

気を失った 35 10.0

異常な疲労感を覚えた 192 54.7

酔っぱらったような状態になった 69 19.7

その他 55 15.7

「現在の健康状態」

健康 4 1.1         

頭痛 264 75.2

めまい 171 48.7

鼻血が出る  70 19.9

疲れやすい 268 76.4

●ポレスコエ地区(原発から約45キロ)避難民の回答者 1,005 人 「事故後1週間に体に感じた変化」

頭痛がした 623 62.0

吐き気を覚えた 380 37.8

鼻血が出た 292 29.1

気を失った 166 16.5

異常な疲労感を覚えた 595 59.2

「現在の健康状態」    鼻血が出る 216 21.5% 疲れやすい 675 67.2

 

このほかアンケートを行ったのは、約40の市や村である。その避難民の統計を見ても、

同じような数字の傾向となっている。 (以下省略)

 

 

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