月刊誌『公評』7月号『異文化コミュニケーションの難しさ― <『感情的』か、『論理的』かーが文明度の分かれ目>➁
2015/01/01
月刊誌『公評』7月号―特集『実感』②
『異文化コミュニケーションの難しさ―
『感情的』か、『論理的』かーが文明度の分かれ目➁
前坂 俊之
(静岡県立大学名誉教授)
(以下の原稿は5月15日までの状況分析である)
●小保方氏は科学者か、論理的な説明がなぜできない、
小保方氏の証言を聞いて痛感するのは事実をきちんと数字、記録、物的な証拠に基づいて論理的に、相手が納得するよう説明する態度がみられないことである。それは「不勉強だった」とか「未熟だった」「申し訳ありません」とか、言い訳ですまされる問題ではなく、本質的に真実に対する怠慢、科学者としての良心の欠如があるといってよい。
科学的な証明とはいったい何か、生物、科学的な実験とは何だろうかー正確な事実が合理的に立証されるということである。他者が同じ条件下で再現実験をしても同じ結論に達するということで、それができなければ「科学的な新発見」ということはできない。
実験ノートがないというのは、ジャーナリストが取材に行ったのに取材ノートをとらなかったというのと等しい。イロハのイもできていない。しかも、自らへの捏造疑惑を晴らすための最重要な会見で、「STAPは200回以上成功」したと、ビックリ発言をしながら、それを証明する物的証拠、記録、写真を提示できなければを、彼女の証言に信憑性がないと判断されるのは当たり前ではないか。そんな普通の大人の判断力さえ欠いた会見のやりとりだった。
200回も成功したのにそのことを実験ノートになぜ、記録しなかったのか、それは不勉強で済まされる問題ではない。
もし、新聞記者だった私の職業的な体験から考えた場合「世紀のスクープといわれる大物との会見成功」という原稿を書いても、それを裏付ける写真、記録も、取材ノートもなければ、デスクは記事を信用せず、別ルートからも念押し、裏付け確認する。記者本人の話だけでは、絶対に出稿をしない。スクープの信憑性を担保する写真、録音テープなどは不可欠な要件である。
科学者の場合も、研究者の場合も同じである。STAP細胞という世紀の大発見をしながら、その存在証明を記録しなかったなんて、あり得ないではない。現に、山中教授のiPS細胞発見の論文も、本人も論文発表ではその正確性を徹底して追及されるので、再現実験を何十回もやって間違いないと確認した上に、実験記録や確証もってしっかり担保して発表したという。
小保方氏が「200回も成功したとのビックリ発言をしながら、実験ノートに記載せず、証拠の写真、記録を取らないということは100人中小保方氏を除いてあり得ない、と断言してもいい。
この実験を確認しているほかの研究者が1人がいるといいながら、その人の名前は言えませんなんて、一体何のための反論会見なのか、自ら墓穴を掘った発言といえよう。
この200回作成については『週刊文春』(4月24日号)でも、同じ研究者のコメントとして「どの段階を成功と言っているのか。200回の作成には最低数年はかかる。STAP実験3年で200回成功なら、3日に一度、長くても週に一回は実験可能ということになる」と信憑性を疑問視している。
●200回実験成功したのに、なぜその証拠がない!?
2010年にノーベル化学賞を受賞した根岸英一教授(78)は「私は化学が専門であり、STAP細胞については詳しく知りません。ただ、科学者たるもの、百パーケント自分に正直でなくてはならないということです。報道を見る限り、小俣方さんはそこを十分に守れたのか、疑問に思うのです」(週刊文春4月24日号)と指摘。
科学ジャーナリストでもある評論家の立花隆氏は「STAP細胞はあり得ると思っています。論文発表した長い間立って再現実験にやっと成功した例はいくつもある」」(週刊文春5月8,15日号)と述べている。」―この小保方氏擁護ともとれる発言もあり、まだ私の結論は出ていなかった。
ところが、5月9日になって、小保方氏側はようやくその「実験ノート」なるものを公開したが、その内容は想像以上にお粗末なもので、細胞が作成された日時や詳細な実験条件の記述はなく「陽性かくにん!よかった。」とか、「小学生の理科の観察日誌?」のようなものであり、これが世界的な発見をしたという証拠の実験ノートなのかと理研側もびっくり、偽造判断の大きなポイントになったという。私もこれが200回の実験成功を疑わせる決定的な証拠と思う。
さらに、5月9日の調査委員会の発表によると、小保方氏は「サイエンス」にも同様の論文を投稿、画像の切り貼りを指摘されたいう。
調査委員会はこの論文の提出を求めたが、小保方氏は拒否したまま。理研側の「サイエンス論文はネイチャー論文と同様のSTAP細胞の存在を裏付ける資料ならば速やかに提出すべきものだが、これを拒否しているのは存在そのものが疑問視される」との指摘は的を射ていると思う。
いずれにしても、あらゆる部門に一番大切な科学的、論理的、実証主義の姿勢が欠落し、無責任であることがわかった。3・11福島原発事故を「想定外」として、政府、通産省、文科省、東電、原子村の責任追及は一切、不問に付されたが、文文明国の最低条件である科学主義の欠如が日本全体に蔓延していると気になる。
つづく
関連記事
-
-
日本リーダーパワー史(667) 日本国難史にみる『戦略思考の欠落』(49) 「日本の『インテリジェンスの父』川上操六参謀次長が密命して、シベリアに送り込んだ『日本の007、満州馬賊隊長の花田仲之助」
日本リーダーパワー史(667) 日本国難史にみる『戦略思考の欠落』(49) …
-
-
『世界漫遊・ヨーロッパ・街並みぶらり散歩』★『2016/5『ポーランド・ワルシャワ途中下車③ 『世界遺産の旧市街』ナチスにより徹底的に破壊された市街は市民により丹念に復元され世界遺産となった➂
2016/06/04 『F国際 …
-
-
★10 『F国際ビジネスマンのワールド・カメラ・ウオッチ(170』『オーストリア・ウイーンぶらり散歩④』『旧市街中心部の歩行者天国を歩き回る①』
★10 『F国際ビジネスマンのワールド・カメラ・ウオッチ(170』 『オーストリ …
-
-
『リーダーシップの日本近現代史』(251)/東武鉄道創業者/根津嘉一郎(79)ー「借金が恐ろしいのではない。利子が恐ろしい」「克己心」(己に克つこと)こそが健康長生法」★『長生する大欲のためには、日常生活での小欲を制しなけれならぬ』
2015/08/20 知的巨人 …
-
-
速報(455)『日本のメルトダウン』15分で読める『中国版サブプライム問題』 (シャドウバンキング)のバブルは破裂するか
速報(455)『日本のメルトダウン』 <目 …
-
-
日本メルトダウン(937)『焦点:中国でロボット産業ブーム、制御不能な地方債務を露呈』●『中国、南シナ海の各礁で航空機格納庫を建設か=米シンクタンク』●『「都議会のドン」がいなくなれば、問題は解決するのか?』●『手詰まりの日銀に求めたい「撤退する勇気」』●『[江川達也]<日本の学校に足りないのは「戦争」という授業>アホの巣窟・戦後日本を正すために』
日本メルトダウン(937) 中国、南シナ海の各礁で航空機格 …
-
-
『2018年「日本の死」を避ける道・日本興亡150年史』⑤『アベノミクスで政権百日は大成功、このナロウパスを突破せよ』(上)
★『2018年「日本の死」を避ける道はあるのか ー―日本興亡150年史』⑤― < …
-
-
日本メルトダウン脱出法(674)「コリアリスクをコントロールし、「ロボット大国」 「IoT、5G」に特化せよ」など計6本
日本メルトダウン脱出法(674) 「コリアリスクをコントロールし、「ロボット大国 …
