<資料>外国メディアが見たアジア三国志(日本、中国、朝鮮戦争史)、① 日清戦争について
外国メディアが見たアジア三国志(日本、中国、朝鮮戦争史)①
<1894年9月18日英国「タイムズ」の報道>
東洋における戦争〈日清戦争〉
日本は最初の大攻勢で,われわれが予想していたとおりの戦果を収めた。日中双方の死傷者数は,そのままうのみにはできないもののほぼ事実に近いものと見て間違いあるまい。右翼を固める元山の部隊.中央を占める鳳山の部隊.そして左翼に位置する黄州(ウンジ)の部隊はいずれも14日夜には配置についており.翌日中央の部隊が攻撃に打って出た。
その一方で最終的な作戦計画が練り上げられていたのは間違いなく,日曜日の早朝には一斉攻撃が加えられた。左右の両側面と背後を断たれた中国軍はすっかり混乱をきたし、その上日本軍は白兵戦を好むため中国側の被害は甚大だったという。
平壌(ピョンヤン)で待機する中国軍の兵力はおそらく2万を超えていたと思われる。しかし日本軍がこの最終攻撃に投入できる兵員は4万に近かった。
日本側の情報源からに違いない電報の内容は当然誇張されていると考えなくてはならないが.それにしても日本側の作戦行動の指拝は見事だったようだ。元山の部隊を山を越えて移動させたのは大変な快挙と言えるし闇夜の同時攻勢は、同様の状況下で指揮した経験のある者なら称賛を惜しまないだろう。この作戦に向けた部隊の配置は野津将軍の発案に相違ない。彼こそは生まれながらの軍人だ。
日本軍は,その訓練を目にして戦闘能力を高く貰う人々の目に曇りがなかったことを遺憾なく証明してみせた。日本の努力は立派に報われたのであり,その野望は新たに大きく燃え上がることになろう。
今後日本は東洋において侮りがたい勢力となるに違いない。この島国の人々の台頭ぶりを少なくともイギリス人は嫉妬心や掃疑心を 差し挟むことなく眺める必要がある。彼らの利益は大部分が自分たち自身の利益であり、近い将来わが国と深い関係を取り結ぶことになるかもしれないのだ。はるか後世の歴史家は,東洋の新興海軍国と西洋の古い海軍国との間に著しい類似性を認めるに相違ない。
というのも,日本のめざましい軍事的成功はその海軍力に負うところが大きいからだ。制海権を手にして優位に立ったこの小国は.決定的な場面で手ごわい敵の数を上回り,勝利を収めることができたのだ。
アジアの2大国が当事者となって戦う今世紀最大の戦闘の結果を占うのは時期尚早というものだ。日本が知恵と節度をもって勝利を収めるのか?長年の念願がかなって、ついに日本は東洋の大国という地位を手にし,今やアジアの人々の間で新たに独自の地歩を築きっっある。それでいかなる変化が出来するか?いくつかの可能性が考えられる。
ロシアは,落ち着いた期待の姿勢を不安の姿勢に変え,おそらくはいくぶんこれみよがしの海軍による牽制行為に出るだろう。中国では敗戦の報が国内をかけめぐるや内乱は必至と思われる。まとまりの軌、帝国内のいたるところに不満があふれ、高官の罷免が相次ぎ彼らの体制からの離反を呼ぶこともあり得るだろう。
朝鮮はおける軍事行動はたぶん年内はこれで終りだろう。満州からゆっくりと進んでくる組織化されていない大群の動きは歯止めがかけられるだろうし,中国からの軍隊の動きも4月までは実施されることはないと見てよい。軍事的には当分日本が朝鮮の統治者として君臨することになり.没収物資があるので糧食にもさしあたり不自由はしまい。
しかし、朝鮮の人々が断固たる決意のもとに日本に対して立ち上がることになれば,そのとき日本が大きな困難に直面するのは間違いない。国の秩序を維持し、軍隊の食料を確保するためには根気と才気・そして物資と人材の両面にわたる資源が欠かせぬものとなろう。だがきわめっけの悪政にさんざん苦しんできた朝鮮の人々は,この新しい統治者を受け入れるかもしれないし,日本人に対する民族的反感を押し隠してその支配に黙従すると考えられないこともない。
ただそれでも支配階級の敵意と陰謀の可能性を否定しさることはできない。日本の朝鮮における仕事は困難を免れないだろうし.日本が支配権を確立すれば.それがロシアの感情をいたく刺激することを思えばなおさらだ。ところで次の軍事行動はどのようなものになるだろうか?これまで兵員を朝鮮へ輸送することにかかりきりだった日本海軍は,今やすっかりゆとりを取り戻している。
新たな攻勢があるのか?それとも朝鮮における実質的な統治権を手にした日本は.ヨーロッパに介入の口実を与えないためにもこれ以上の攻勢は控えるつもりなのか?というのも中国沿岸で作戦行動を行えばそれは必至だからだ。
周到な準備と不断の努力がもたらしたこのたびの勝利にもかかわらず,日本が冷静な判断を失わずにいられるかどうか・すべてはその一点にかかっている。
いかなる結果になろうとも.少なくとも日曜日の戦闘が大きな意味を持っことは確かだ。その結果,東洋における力のバランスに変化が生じて事態は全く新たな様相を呈することになろう。その影響は日中両国にとどまるものではないだろう。
以下は8月4日付のペキン・アンド.テンシン・タイムズ紙に載った中国の宣戦布告書の翻訳だ。その概要は本紙の9月6日付で発表された。
InnerCouncilからの転載
「日清戦争の清国の勅令」
過去200年以上にもわたって朝鮮がわが偉大なる清帝国の辺境に位置する属国だったこと、ならびに朝貢の務めを忠実に果たしてきたことは、わが中華の臣民であると異国の者であるとを問わず,周知のところだ。その王国(朝鮮)にはこの十数年というもの国内に無秩序がはびこっていた。
わが皇帝陛下は,国土が小さいこと.ならびにその国力が非力であることにかんがみて慈しみと高配の念をもって接し.混乱を治めるにときに兵を送りもした。またわれわれは首都に役人を駐在させて,必要とあれば外国勢力から国を守る任に就かせもした。
この4月には謀反を企てる音があって,国王は自らの救出をわれわれに願い出た。しかもそれは急を要した。われわれは即座に李鴻章に出兵を命じて国王の救出に向かわせた。一行が牙山に善くや反徒らは一斉に姿を消した。
ところが,日本はなんのいわれもなしに軍隊を送り込み,その上ソウ)レを占拠した。続いて1万を上回る兵を派遺して朝鮮人に圧力をかけつつ,全く理に合わない武力をもって彼らに政府の変更を迫ったのだ。
わが皇帝陛下は一貫して朝鮮の保護に当たり、内政への口出しは控えてきた。日本は互いに対等な立場で朝鮮と条約を締結したのであり.それ放武力をもって政府の変更を迫ることはできないはずだ。
列強諸国は.慎重な協議の結果この一件においては日本側にいかがわしくしかも不当な点が認められるとして.日本に対し撤兵を求め,事を平和裏に収めるよう申し入れたのだが,日本の態度は頑なでこれを聞き入れず,話合いは物別れに終わった。その間も日本は朝鰍こ兵を増強し続けたため・朝鮮人.ならびに中国やその他の外国商人は連日大変な不安にさらされることとなった。
そこでわれわれは朝鮮保護のために兵を送った。その部隊が途中で日本の艦船に遭遇しようとはわれわれが予想だにせぬことだった。しかも彼らはこちらの不意をついて牙山港の外でわが輸送船団に攻撃を仕掛け,軽微の被害を与えたのだ。このような不意打ちをだれが予想し得よう?日本という王国は条約も国際法も眼中になく、人を欺く策略を駆使して思うがままに平和を損なうのだ。
この戦いの戦端を切ったのが日本であることを知らぬ国はない。したがってわれわれはこの勅書を公にして,帝国の全臣民に対し,われわれの慈悲の心と正義に対する配慮にもかかわらず,日本が粂約を踏みにじって非道なる戦法のもとに戦争を始めたことを告げる。
われわれの忍耐も限界であり.ここに李鴻章に対し.日本軍打倒のため兵を派遣するよう命を下す。朝鮮人を窮状から救うべく,彼には休みなく多くの兵士を送ってもらいたい。さらに,われわれは支配下に海岸線を有するか,大河が走る地方の全総督ならびに全長官-軍の将官を含む-に命ずる。部隊を待機させよ。日本軍がその艦船をいずれかの港に入港させるときには一切のためらいも恐怖心も捨てて断固これを迎え撃ち.完膚なきまで敗走させよ。たじろぎ,ひるむ者はこれを犯罪者とみなし処罰する。
帝国の全地方に告ぐべし。これを順守せよ。
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