『ナツひとりー届かなかった手紙』の解説ーー100周年を迎えたブラジル日系移民の歴史
日露戦争から3年ほどたった明治41年(1908)4月28日、日本人781人を乗せた第一回移民船「笠戸丸」が神戸港を出航し、約2ヵ月の航海の末にブラジル・サントス港に到着しました。『コーヒーの木に金がなる、夢の大地』に移民たちは希望に胸を膨らませて第一歩を印しましたが、想像以上の苛酷な運命が待ち構えていました。
ちょうど、アメリカの奴隷解放の影響で、ブラジルでも20年前に奴隷を解放したため、コーヒー農園は著しい労働力不足となり、世界中から移民労働者をかき集めていました。大部分はヨーロッパ系移民(イタリア、スペイン、スラブ系)でしたが、その奴隷的な待遇が各国で問題となり、移民を制限され、困ったブラジルは日本人を新移民として受け入れを始めたのです。
この結果、笠戸丸以来、明治、大正、昭和戦前までに19万人、昭和戦後には6万人の計約25万人がはるばる海を渡って移住し、ブラジルは世界で日本人の最も多い移住先となりました。
「富国強兵」「殖産振興」「人口増大」のスローガンの下で、国策として移民は遂行され、大正期に入って一層盛んになります。ブラジル移民の最盛期は国からの渡航費の全額補助となった大正14年(1925)から、ブラジルが移民を制限した昭和9年(1934)までの10年間で、「満州に行くか、ブラジルにいくか」と国内では海外移民大ブームとなり、この間に計13万人以上が海を渡りました。太平洋戦争の勃発、1945年8月の敗戦という日本の運命の変転とともに、日本人移民の立場はブラジルでも二転三転して、一層、苦難の歴史を歩むことになります。
終戦直後には、「勝ち組、負け組」騒動で大混乱に陥りました。情報の途絶と愛国心から、敗戦を信じない移民が多く、日系社会は『勝ち組』「負け組」に2分され、勝ち組が敗戦を認める負け組みの幹部らを襲うという暗殺、テロが続発して、約30人が死亡し、200人近くが負傷する悲劇的な事件が起こり、深刻な対立、分裂状態が続きました。
28(1953)から移民は再開され、アマゾンの中流に入り、開拓、開墾に従事するなど戦後移民は合計約6万人にのぼりました。
こうした数々の試練と、混乱、苦難の中で、斃れていったたくさんの移民たちと同時に、不屈の闘志で困難を乗り越えて、ブラジル社会の中に溶け込んで、政界、経済界、医者、弁護士、教員、文化人として確固たる地位を築いた人たち数多くいます。1985年ごろにはブラジルでは日系人口は約75万人にまで増えました。
関連記事
-
-
「Z世代のための生成AIをはるかに超えた『世界の知の極限値』・南方熊楠先生の書斎訪問記(酒井潔著)はびつくり話③』★『先生は本年65歳。数年前より酒を廃して養生に心がけ、90歳まで生きて思うよう仕事を完成して、「死んだら頭の先から爪の先まで売り払って乞食にいっぱ飲ましてやる」と豪語された。』
2015/05/01 記事再録編集 <以下は酒井潔著の個人 …
-
-
『Z世代のための昭和史敗戦講座』★『太平洋戦争敗戦(1945/8/15)の日』★『斬殺された森近衛師団長の遺言<なぜ日本は敗れたのかー日本降伏の原因』★『日本陸軍(日本の国家システム中枢/最大/最強の中央官僚制度の欠陥)の発足から滅亡までを 日露戦争まで遡って考えないと敗戦の原因は見えてこない』
2020/02/02   …
-
-
連載「エンゼルス・大谷選手の大活躍ー<巨人の星>から<メジャーの星>になれるか」② 『大谷メジャー初本塁打 本拠地で右中間へ3ラン』★『大谷翔平は「天才」米メディアも連日の大絶賛』★『全米が大谷フィーバー!「カネではない」純粋な野球愛に感動』
連載「エンゼルス・大谷選手の大活躍ー <巨人の星>から<メジャーの星>になれるか …
-
-
日本メルトダウン脱出法(814)「アベノミクスは「損切り」のときだー首相は財政改革に指導力を発揮せよ(池田信夫)」●「2016年、安倍政権はいよいよ憲法改正に着手かー衆参同日選挙で戦後の大きな節目の年に?」●「中国の”恥部”が暴露され、欧米は大フィーバー/毛沢東は「周恩来が同性愛者である」ことを知っていた」
日本メルトダウン脱出法(814) アベノミクスは「損切り」のと …
-
-
日本メルトダウン脱出法(752)「ロビー活動に喧しい中国・韓国にノーベル賞は取れない」●「習近平は容赦なし、中国の人権弾圧が「最悪」の状況に~米国の政府委員会がオバマ政権に対策を要請」
日本メルトダウン脱出法(752) ロビー活動に喧しい中国・韓国にノーベル賞は取れ …
-
-
『百歳学入門』(210)-再録『白銀に描く100年の夢のシュプール/100歳でロッキー山脈を滑った生涯現役スキーヤー・三浦敬三氏は三浦雄一郎の父』★『「世界一のスキー・ファミリー」の 驚異の 長寿健康実践法とは・』
2015/03/29「百歳・生涯現役学入門」(108) 息子に受け継がれた10 …
-
-
月刊誌『公評』7月号『異文化コミュニケーションの難しさ― <『感情的』か、『論理的』かーが文明度の分かれ目>➁
月刊誌『公評』7月号―特集『実感』② 『異文化コミュ …
