『外紙」からみた『日中韓150年戦争史』(54)日清戦争の原因 『日本側の言い分』英紙「ノース・チャイナ・ヘラルド」
2015/01/01
『中国紙『申報』や『外紙」からみた『日中韓150年戦争史』
日中韓のパーセプションギャップの研究』(54)
1894(明治27)年8月10日 英紙「ノース・チャイナ・ヘラルド」
日清戦争の原因―
「ジャパン・メール」に掲載された『日本側の言い分』
6日の朝本紙は.休戦をもたらすべくイギリスおよびロシアがいまだに続けている努力がうまく功を奏してくれればよいが.と切なる願いを表明した。しかし.中国が両国の説得に快く耳を貸すことはほぼ疑いないものの,日本に自分で決めた針路をあきらめさせるには.日本が太刀打ちできないと思うような武力以外にはないだろうと思う。
日本がめざしているのは北京だが.東京から得た情報によると,彼らは遅くともこの11月の30日までには北京へ10万の兵を送り込もう,いや送り込めると確信しているという。それが日本の狙いなのだ。
そのために彼らは予備兵を召集している。日本は準備に関してはおさおさ怠りはなく,もし外国が口出しでもしようものなら,中国はもとよりその国とも戦いを交えることだろう。聞くところによれば.日本人は例外なく国内の不和など忘れ去って愛国心に沸き立っており.戦地の軍隊の用に供するために金や食料,あらゆる種類のぜいたく品などを続々と政府に送り届けているという-それもかなりの量が,なるほど,今はそういうものが必要とされてはいる。
日本の計画によれば,まずは中国艦隊を打ち破り.その後,大部隊を天津の南と山海関付近に上陸させ,そして,すでに述べたように,遅くとも11月の30日までには北京へ乗り込むことになっている。ジャパン・メール紙は先月30日付の紙面で例のごとく政府のために弁じて(と考えるべきだろう),このような
国に加えねばならないわけを明らかにしている。
平均的日本人は朝鮮の解放や改革などにはいかなる関心も持ってはおらず,彼
ジャパン・メール紙は目下の戦争の原因について述べるにあたり1873年までさかのぼる。その年.釜山で日本の役人が朝鮮の当局から無礼な仕打ちを受けた。
そこで日本は,朝鮮もしくは中国に補償を求めてもよいかと中国に問い合わせた。中国は朝鮮の行為に対するあらゆる責任を否諾したので.日本は朝鮮と条約を結び.1876年には他の国々も日本の例に倣った。
1884年,金玉均事件が起こり,日中両軍はソウルで衝突したが,1885年に次のような合意が成立した。「朝鮮で騒乱が発生した結果.日中いずれかが,朝鮮に居住する自国民を保護するために軍隊を派遣しようと望むときは,まずその旨の通告を他方に対して行わねばならない。
また,騒乱が収まったときは直ちに軍隊を撤退させなければならない。本合意は.朝鮮を日中共同の保護の下に置くというに等しいと考えて差し支えない」。
しかし,この合意がそうしたたぐいのものでなかったことは明らかだ。事実,中国が同時撤兵を提案したにもかかわらず,日本はそれを拒否してこの合意を放棄してしまったのだ。メール紙は続けて次のように説明する。
朝鮮の悪政は甚だしいものであり,この悪政が暴動を招いたのだが,これを鎮圧するために朝鮮政府は中国に軍隊の派遣を要請した。「中国は要請に応じたが-注目すべきことは,軍隊を送り出した後に【原文ではこの部分イタリック]-そのことを日本に通告してきたのだ」。
本紙が強調して呈示した箇所はジャパン・メール紙一流のやり方をよく示して
いる。ほんの数日前同紙は,中国が誠意をもって行った同国の意図に関する通告に対し日本は苦情を申し立てたことはないしそのつもりもない,と言っているのだ。
ところがどうしたわけか今度は,中国は事前に通告を行わなかった,と言い出したのだ。この主張については,われわれは全く根拠がないものと確信している。しかしながら,これは単なる枝葉の問題に過ぎない。
戦争の原因は,ジャパン・メール紙によれば次のようなものだという。
朝鮮はその政治システムが徹底的に改革されない限り決して真の独立国とはなり得ない,と日本は見ている。そこで,日本は中国にそうした必要不可欠の改革を協力して推し進めようと提案したが,その提案には,もし中国が協力しようとしないなら日本は独力で改革を実行するだろうということが付け加えられていた。
中国は属国に内政干渉を行うことは自国の慣行にそぐわないという理由から日
本の提案を拒否し,メール紙自身の主張では.朝鮮から兵を引かざるを得ない事情が自国にあったため日本に対してもそうするよう要求した。
「この要求に日本政府は応じなかった。それどころか,朝鮮における日本の兵力を増強した。日本政府が朝鮮にどの程度の兵員を送ったのか正確なところ
は不明だが.1万を超えていることは間違いない」
戦争の原因についてメール紙は記事の最後の部分で次のように述べている。
「中国は日本と協力することを拒否し,日本が朝鮮の政治に必要な改革に着手するのを阻止するために開派の政治家と通じるようになったので(日本はそう信じて疑わない),日本政府は朝鮮における中国軍のこれ以上の増強を阻止することを決めた。というのも.それらの兵は開氏一派を支援するために,また.旧来の悪弊を維持するために動員されるに違いないと考えたからだ。そこで日本の軍艦数隻が,おそらくは南陽湾に上陸しようとしていたと思われる兵員を乗せた中国の輸送船の進路を遮断した。その結果,事実上戦争の火ぶたが切られたのだ」
これは戦争の発端の説明としては不完全きわまりない。済遠,広乙,操江に対する攻撃についてひと言も触れられていないからだ。しかし,そのことはさておいても.ここには戦争の真の理由が全く述べられていない。
対中戦争は日本政府の最後のよりどころとして何か月も前に計画されたものだった。今年の初頭には.薪炭に至るまで遠征の準備はすっかりできあがっていたのだ。
もし政府がこのほどの議会で優勢に立っていれば,戦争はひとまずお預けということになっていたに違いない。しかしながら,政府はまたもや少数派へと追いやられ,総辞職して政党内閣の発足を認めるか,あるいは中国との戦争に乗り出すか,さもなくば革命に直面するかの岐路に立たされた。
結局のところ政府は対中戦争への道を選び.総力をあげてその準備に取り組んだのだ。彼らのつけた火はいったいどこまで燃え広がるのか,まだわれわれには予想できない。
関連記事
-
-
日本リーダーパワー史(820)『明治裏面史』 ★ 『「日清、日露戦争に勝利」した明治人のリーダーパワー、 リスク管理 、 インテリジェンス㉟『日本史決定的瞬間の児玉源太郎の決断力⑦』★『日英同盟によって軍艦購入から日本へ運行するまで、英国は日本を助けて、ロシアを妨害してくれたことが日露戦争勝利の要因の1つ』●『児玉、山本権兵衛の『先見の明』と『最強のリーダーシップ』の証明でもあった。』
日本リーダーパワー史(820)『明治裏面史』 ★ 『「日清、日露戦争に勝利」し …
-
-
日中韓異文化理解の歴史学(3)<まとめ記事再録>『日中韓150年戦争史の原因を読み解く』(連載70回中、37-50回まで)★『甲午農民戦争、閔妃と大院君の朝鮮王宮の腐敗と内部抗争、金玉均の暗殺、李鴻章の陰謀、日本の圧力、 ロシアの侵攻の三つどもえの対立が日清戦争へと爆発』●『英タイムズの警告(日清戦争2週間前)「朝鮮を占領したら、面倒を背負い込むだけ(アイルランドと同じ)』★『「日清戦争開戦10日前『中国が朝鮮問題のため日本と一戦交えざるを得ないことを諭ず(申報)』●『<日本はちっぽけな島国で鉱山資源には限度があり,倉庫の貯蔵も 空っぽで,戦争になれば紙幣も流通しなくなり,商店は寂れて.たちどころに困窮してしまう。 中国は日本に必ず勝利するのだ』
『日中韓150年戦争史』㊲ ロシア皇太子暗殺未遂事件(大津事件 …
-
-
「Z世代のための百歳学入門」★『「少子超高齢社会」は「青少年残酷・老害社会」ー250年前の江戸中期、俳人・横井也有の<江戸の老人8歌仙と老害>で自戒する」★『70.80歳過ぎて、いつまでも地位や金やアンチエイジングにしがみつくな!』★『81歳を18歳に逆転する爆笑術!』
2013/10/15 百歳学入門 …
-
-
『F国際 ジネスマンのワールド・カメラ・ウオッチ (106)』「パリ・ぶらぶら散歩/オルセー美術館編」(5/2日)⑤』★『 セザンヌ、ルノワール、モネ、ドガなど続々と溜息の出る豪華な顔触れ②』
2015/05/19 『F国際ビジネスマンのワールド・カメラ・ウオッ …
-
-
『日本・世界最先端「見える化」チャンネル 第3回国際ドローン展(4/20)』ー『ロームの<ドローン産業の未来を支えるI0Tソリューション>』★『JUAVAC ドローン エキスパート アカデミーのドローン女子』(動画20分あり)
日本・世界最先端「見える化」チャンネル 第3回国際ドローン展(4/20)ー ●『 …
-
-
『オンライン/新型コロナパンデミックの研究』ー「2020年4月,米欧から遅れること1ヵ月.日本は「平時から非常時へ」,「知られざる敵との第3次世界大戦に参戦した。第2次世界大戦(太平洋戦争)の愚かな戦争ではなく、「ITデジタルスマート戦争」にする必要がある』
コロナパニックと緊急事態法発令へ 前坂俊之(ジャー …
-
-
『観光立国・日本』ー『2020年には外国人旅行者4000万人、その消費額8兆円の目標に一歩近づいた』★『日本観光のメリットは『世界一の多様性に富んだ自然環境(デービッド・アトキンソン氏)』●『観光の語源とは「国の光を観る」こと』★『伊藤博文は100年前に日本の地理学的、自然的な特徴から世界的な観光地になれる『観光立国論』を提言』
観光とは「国の光を観ること 今年は国際観光年に当たり …
-
-
世界、日本メルトダウン(1015)「地球規模の破壊力示したトランプ」とガチンコ対決」★目からウロコ名解説『トランプ大統領はプロレス悪役のトリックスターで 『プロレス場外乱闘政治ショウ』に騙されるな!』(動画名解説10分間)
世界、日本メルトダウン(1015)- 「地球規模の破壊力示したトランプ」とガチ …
-
-
ANA(全日空)25/11/30/朝ー岡山空港発→羽田空港行の機内から富士山をスマホで撮影(2重窓の外側のガラスが雲っているので写真を拡大すると、富士山、地上もよりはっきりと見える)
駿河湾・相模湾・東京湾上から眺める小さい三角形の白雪富士山は素晴らしいよ!
-
-
日本リーダーパワー史(92) 閉塞状況を突破するために奇人政治家・田淵豊吉を見習え<河村名古屋市長・橋下知事の先輩>
日本リーダーパワー史(92) 閉塞状況を突破するために奇人政治家・田淵豊吉を見習 …
