前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

『中国紙『申報』からみた『日中韓150年戦争史』(53)「日清戦争宣戦布告2日後―中国連勝の朗報に接し喜んで記す」

      2015/01/01

  


『中国紙『申報』からみた『日中韓150年戦争史』

日中韓のパーセプションギャップの研究』53


 

1894(明治27)年 光緒20年甲午日『申報』

 

日清戦争宣戦布告2日後―中国連勝の朗報に接し喜んで記す

 

 

孟子の言にいわく。「小はもとより以て大に敵す可からず.寡はもとより以て衆に敵す可からず,弱はもとより以て強に敵す可からず」と。今日,日本が中国を軽視し,中国の属邦を奪おうとしてい.るのは.孟子の言に甚だしくもとることだ。

 

論者はこう言う。大小.衆寡.強弱は.地と人のみについて言うのではない,と。中国の国土は日本に10倍し,中国の人口は日本に数十倍するが,中国が甚だ強いとは思えず,日本は甚だ弱いとは思えない。それはなぜか。

 

 

日本はよく西洋のやり方に目を向け.政治.教育,法制ことごとくこれに従い,西洋の方法は従来の沈滞した積習を一変した。これにより,維新以来、徐々に東海に雄をとなえるようになり.西洋諸国は日本がよく自分たちの下風を拝するのを快く思っている。

 

西洋に慈しみ育てられた日本は,暦を改め,服装を変え,従前の将軍の権力をことごとく剥奪した

 

先ごろ台湾に侵入して,ほしいままに振る舞ったが.中国はこの戦いにおいては譲歩した。さらに.琉球を滅ぼしたが.中国は結局これに関しても不問に付した。他の国々は皆,日本は強く,中国は弱いとみなしている。中国が西洋と通商をしている理由は西洋のやり方を倣うことにある。

 

しかし,汽船.銃砲,電信などのはかは中国の学問をすべて捨て去ったとは言えず,しかも中国の学問で最も悪いところは.因循,粉飾にある。海軍は錬磨数十年にわたるが.先きごろの馬江の一戦では,あろうことか戦わずして壊滅したが,いまだ大々的に仇を討ったということを聞かない。

 

今日,日本は不法にもソウルを占拠しようといている。中国人にして心穏やかな者はなく,中国がここにおいて.大々的に討伐の挙に出ないことを,我慢すべきだというなら,我慢できないこととはいったいどんなことだろうか。また,軍艦を出動させようとしないのは.前車の轍を踏むのを恐れるからではないか。それぞれが自分が強いという自信を持てず,また,日本を弱視することもできないと憂えている。

 

私は日本が驕り,中国に恐れる心があれば,何とか一戦を交えることができるといいたい。日本は最近兵を発しいちはやく、朝鮮の首都に侵入し.国王を誘拐し,さらに要害の地に兵を配して中国の援軍の進路を阻み,途中の交通を遮断して攻撃をかけ.ついに中国兵を乗せて朝鮮に赴こうとする

汽船

 

 高陞号は日本に隙をつかれて,軍隊,船ともに沈められてしまった。日本はすべてに先を制し.中国はいたるところで後手に回っているようだ。切歯扼腕、,無念の涙にくれ,鬱々として楽しまずにいるところへ,このところ次々と勝報がもたらされた。

 

済遠が日本船を撃破し,日本船は高々と清の国旗を掲げ,頭を垂れて降伏し.白旗を立てて停戦を求めた。もし2隻の軍艦が来て日本船を援護しなければ,これは 高陞号の恨みを晴らす一大快事となっただろう。

 

済遠もまた損傷を受け,砲術士官を大いに悔しがらせたが,なお自在に航行するを得た。このことから中国には使用に堪える船がないわけではない。また,乗組の兵士も役に立つ者が1人もいないわけではないのだ。

 

牙山の初戦では.日本軍は,わが国の大軍がまさに到着しようとするのを知るや,先を制さんと中国軍の手薄に乗じて突然攻撃をかけてきた。牙山の中国軍の兵力は,以前に外の地へ出したため,残りはわずか2000余,日本軍は初め1600の兵力で攻めてきたが,さらに3200の兵を動員し,二をもって一を制圧せんとした。

 

 

中国の兵はよく勇をふるい,先を争い,闘志を100倍させ,一をもって十に当たり,長時間の激戦を戦い抜いた。日本軍は敗北を喫しこそこそと逃げ去った。残念なのは,葉曙卿【志超】将軍が自ら前線に赴き.身に銃弾を受け,重傷を負ったことだ。

 

昨日もたらされた電報によると,牙山でまたもや日本軍の猛攻撃を受けたが,中国兵は力をふるってこの攻撃を制して,完全な勝利を獲得し,無数の日本軍が死傷したという。

これは望外の喜びだ。 高陞号沈没という不幸なできごと以来鬱々として数日を過ごしているところだったからだ。中国兵は陸戦に長じているが.日本人もまた,かつて明の時代にしばしばわが国を侵犯しており,もともとは陸戦に長じ,その倭刀は向かうところ敵なしと称していた。

 

明治になってから,西洋の方式に倣って,刀を廃し.銃を採用するようになり.近来.刀は骨董品と化してしまった。人は皆銃砲に慣れ,陸戦の法が全くわからなくなり,ただ堅牢な軍艦,高性能の火砲を侍んで東海の浜でほしいままに振る舞い,天下無敵と自負している。

 

西欧各国に対しても近年来またすこぶる軽侮の意を抱き.先ごろのイギリス公使に対する侮辱事件はすでに非を認めて謝罪したとはいえ,その軽挙妄動,ヨーロッパ軽視はすでにうかがわれる。ヨーロッパ各国は近年来,これに対して強い不快感を抱いているようだ。

 

ところが日本はそれを悟らず,なおその虚勢をたくましくし,侵犯することにより中国の藩属国朝鮮を奪おうとしている。大いなる懲罰を与えてもよいのだ。牙山の諸軍は.今やこの炎暑の中で鎧をまとい剣をとって強敵を破っている。

 

熱しては東海の汝を浴び,渇しては倭奴の血を飲む。これこそまさに汗血の功労でありその功績は皇帝の旗に記され,鐘鼎(しょうてい)に刻まれるに値するもので,楼蘭人の頭を斬り,升のように大きな金印を博取したようなものだ。頭をあげて東を望み,諸君のために額に手をかざして,慶祝してやまない。

 - 戦争報道 , , , , , ,

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

『Z世代のためのウクライナ戦争を知るための日露戦争講座』★『日露開戦2週間前の『仏ル・タン』報道ー『日本国民は自分たちの力と軍事力に対する節度の感覚を失っている。中国に勝利して以来,日本はロシアにも簡単に勝てると思い込んでいる』★『対露同志会がメンバーを旅順や満州,ウラジオストックに派遣して,極東におけるロシアの状況を調査している』

  2017/01/13 『世界史の中の日露戦争カウントダウ …

『オープン歴史講座』・なぜ日本は21世紀のAIデジタル世界で後進国に転落中なのか』★『「桜田義孝五輪相のお笑い国会答弁とゾッとするサイバーセキュリティーリスク』★『国家も企業も個人も死命を分けるのは経済力、軍事力、ソフトパワーではなく『情報力』である』★『サイバー戦争で勝利した日露戦争、逆にサイバー戦争で完敗した日米戦争』』

2018/12/02    2018/12/03世界/日本リ …

『オンライン/ウクライナ戦争講座⑨』★『ウクライナ戦争勃発―第3次世界「見える化」SNS大戦へ(上)』★『植民地時代の恫喝・武力外交を相変わらず強行するロシアの無法』★『テレビ戦争からYoutube・SNS戦争へ』★『無差別都市攻撃・ジェノサイドの見える化」の衝撃』』

  ウクライナ戦争―第3次世界「見える化」SNS大戦へ(上) 前坂俊之 …

no image
「日韓衝突の背景、歴史が一番よくわかる教科書」②記事再録『ベルツの『日本・中国・韓国」と五百年の三国志①<日露戦争はなぜ起こったのか>

クイズ『坂の上の雲』ーベルツの『日本・中国・韓国』五百年の三国志①<日露戦争はな …

no image
 日本リーダーパワー史(830)(人気記事再録)『明治維新150年』★『日露戦争勝利の秘密、ルーズベルト米大統領をいかに説得したかー 金子堅太郎の最強のインテジェンス(intelligence )②』★『ル大統領は金子特使を大歓迎 ー米国到着、米国民はアンダー・ドッグを応援』

 日本リーダーパワー史(830)(人気記事再録)『明治維新150年』★ &nbs …

no image
世界/日本リーダーパワー史(915)-『米朝首脳会談(6月12日)で「不可逆的な非核化」 は実現するのか(下)

世界/日本リーダーパワー史(915) 一方、日本の対応と、日中のパワーバランスの …

『Z世代のための最強の日本リーダーシップ研究講座㊲」★『明石元二郎のインテリジェンスが日露戦争をコントロールした』★『情報戦争としての日露戦争』

インテリジェンス(智慧・スパイ・謀略)が戦争をコントロールする ところで、ロシア …

no image
日中韓対立のルーツ『日清戦争』を日本の新聞はどう報道したのかー徳富蘇峰,福沢諭吉、朝比奈知泉らの主張は・①『対朝鮮発言権は日本のみと』(徳富蘇峰)

  日中韓対立のルーツ『日清戦争』を日本の新聞は どう報道したのかー徳 …

no image
『オンライン/75年目の終戦記念日/講座⑦』★『新聞は昭和アジア/太平洋戦争(昭和15年戦争)をどう報道したのか』★『『戦争とジャーナリズム』ー前坂氏に聞く 図書新聞(2001,5,5)』

  ●『戦争とジャーナリズム』(図書新聞(2001、5,5)再録 &n …

no image
世界/日本リーダーパワー史(968)―『今年6月はG20が大阪で開かれるなど安倍地球儀外交の総決算の年となる』★『安倍首相にとって恫喝、強圧外交のこわもてのトランプ氏、プーチン氏、習近平国家主席、金正恩委員長との外交決戦を迎える』

世界/日本リーダーパワー史(968) 今年は安倍外交の総決算の年となる 1853 …