前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

池田龍夫のマスコミ時評(78)◎『「第2の国会事故調」を作れ(2・22)●『ボーイング787機生産ストップの波紋(2・20)

   

 
池田龍夫のマスコミ時評(78)
 
「第2の国会事故調」を作れ(2・22)
ボーイング787機生産ストップの波紋(2・20)
 
ジャーナリスト 池田龍夫
 
 
             「第2の国会事故調」を作れ(2・22)
 
 東日本大震災から間もなく2年。破壊された福島第1原発1~4号機は未だに無惨な姿をとどめたままだ。高放射能に阻まれて、作業は遅々として進まず、16万人にも及ぶ住民は故郷へ帰ることもできない。
 
                                         東電、国会事故調にウソをついて調査を拒む
 
 朝日新聞2月7日付朝刊は、「原子炉内部調査を求めた国会事故調に対して、東京電力が『建物内は真っ暗で調査できない』と虚偽の説明をして調査を拒んだ」事実をスッパ抜いた。国会事故調は当初から、東電の津波原因説に対し、地震直後に非常用覆水器が破壊されたとの複合的要因を挙げていた。
 
原因究明のカギを握る重大ポイントであり、特に田中三彦委員(当時)は原子炉設計技術者として再三再四調査を求めていた。東電が虚偽説明で隠蔽、炉内調査をさせないとは、犯罪的行為ではないか。
 
 原発事故の原因究明のため、民間事故調・東電事故調・政府事故調・国会事故調4つの組織ができた。その中で国会事故調のみ立法府に設置され、行政府から独立した機関だ。民間人によって構成され、黒川清委員長のもと徹底した情報公開に基づき会を運営。私も参員議員会館に足繁く通い、熱心な討議を傍聴させてもらった。
                 
                                         調査報告書を審議しない国会の怠慢
 
 昨年、膨大な報告書が衆参両院議長に提出されたので、それに基づいた原子力政策論議を期待していたが、国会の反応が冷ややかなのに失望した。政局の駆け引きに明け暮れる国会は、未だに報告書の趣旨を真剣に討議していない。
 
 こんな折、毎日新聞2月18日付朝刊オピニオン面に、黒川清・前国会事故調委員長のインタビューが掲載された。示唆に富む発言の数々を興味深く読んだが、日本社会の構造的劣化を指摘していた一部を紹介しておきたい。
 
                                                黒川清前委員長が怒りの指摘
 
▼原子炉内の立ち入り調査、エンジニア出身の田中三彦前委員は、自分で4号機の原子炉圧力容器を設計したこともあり、どうしても確かめたいことがあった。
我々は放射線が高いぞと心配したが、田中氏は「自分の身を守るのは自分でするから」と東電に掛け合った。ところが、中に入れないのは放射線のためじゃなく、「暗くて何も見えないからだ」と断られた。それがウソだというのだから。
 
▼原発政策には、政・官・財・メディアが一体となって同じ方向へ進む「規制の虜」と
言われる現象があった。本来は規制しチェックすべき側が、規制される側に取り込まれるねじれた関係。責任ある立場の人が責任を果たさない構図だ。
 
 ▼除染から廃炉まで事故の後始末どう収束させるか、使用済み核燃料をどうするか、今後のエネルギー政策はいかにあるべきか、国会に第2、第3の独立委員会を作って、調査すべきことはたくさんある。
 
 
 
  ボーイング787機生産ストップの波紋(2・20)
 
 
 ハイテク旅客機「ボーイング787」は、2011年秋から商業運行が始まった。ところが、今年になって、米国や日本で燃料漏れなどのトラブルが続発したため、運行をストップさせて原因究明に当たっている。
 
機体の軽量化のための炭素繊維複合材は東レが開発、主翼・タイヤ・電子部品など製造の35%に日本企業が参加。日航、全日空はいち早く新鋭機の運行を進めていた。
 
日経2月9日付朝刊特派員電は、「787機の運行停止が長期化する見通しになった。①原因究明②電池の認可条件見直し③設計の変更④運行認証――という4つのハードルが立ちはだかるためだ。……米運輸安全委員会は7日の記者会見で、熱暴走に至ったプロセスの一部を明らかにした。それによると電源を構成する8つの『セル』と呼ばれるリチウムイオン電池のうち1つがショート。
 
これが隣接するセルにも広がり熱暴走が発生した。『電気飛行機』と言われる787では『フライ・バイ・ワイヤ』と呼ぶ高度な電子制御を採用。以前は油圧装置などで主翼などを動かしたが、電線1本で電気信号を介して操作する方式に変えた。設計変更には関係国の調整が必要だが、手間がかかる。
一連の作業を経たうえで『1000%の安全が確認できれば』(ラフード米運輸長官)運行再開させる方針。787復活への道のりは長くなりそうだ」と現状報告していたが、事故の重大性を再認識させられた。
 
                                      日航・全日空、部品生産企業にも深刻な影響
 
ボーイング社にとっては今後、日航など航空8社に引き渡し済みの49機の修理に加え、受注している約800機の生産ストップの大打撃を受けることになった。欧州エアバス社としのぎを削ってきたボーイング社には、まことにショッキングなことだ。
 
もちろん、主力機を787機に移した日航、全日空の打撃も大きい。旧型機で当分運行せざるを得ないが、便数削減も心配されている。787機には日本の技術が貢献していただけに、日本経済にとっても深刻だ。
 
「成長戦略には日本企業の技術力の輸出が不可欠。その大事な信用が失われると、戦略の練り直必要となる」と、経産省幹部が指摘(サンデー毎日2・3号)していたが、事故調査が半年いや1年も延びるようだったら、世界経済への影響は深刻だ。
 
                                              三菱重工株など軒並み下落
 
経済専門紙の日経は、787機問題を原因究明だけでなく、世界経済への重大な影響について連日のように報じており、参考になる。同紙17日付朝刊は「部品各社、影響大きく」
との見出しで、ボーイング社と日本企業との密接な関係をコメントしている。
 
一部を紹介すると――。「三菱重工業、川崎重工業、富士重工業3社で機体構造の35%を担当。東レは翼や胴体の部材として炭素繊維と樹脂の複合材を供給している。三菱重工は主翼の専門工場を名古屋に設置、2030年をメドに月産10機体制の準備を進めていた。
 
今回の事故によって、先行きは不透明。このため、16日の株式市場は787機の部材を生産する日本企業の株価が軒並み3~6%も株価が下落した。各工場に在庫が増え、今後の動向に気をもんでいる」とレポートしている。
ボーイング社の損害は膨大であり、世界経済を揺るがす様相を深めてきた。
 
(いけだ・たつお)1953年毎日新聞入社、中部本社編集局長・紙面審査委員長など。
 
 

 - 現代史研究 , , , ,

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

日本リーダーパワー史(648) 日本国難史にみる『戦略思考の欠落』(41)国難『三国干渉』(1895年(明治28)に碩学はどう対応したか、三宅雪嶺、福沢諭吉、林ただすの論説、インテリジェンスから学ぶ』(2)『ただ堪忍すべし』福沢諭吉(明治28年6月1日 時事新報〕

  日本リーダーパワー史(648) 日本国難史にみる『戦略思考の欠落』(41)  …

『テレワーク、SNS,Youtubeで天然生活術』★『日本初海上説法/南無むにゃむにゃバカ話!』★『鎌倉座禅カヤックで魚と遊び、波に揺られて昼寝すれば快楽・悦楽・満足スピードアップ!』

「釣れなくてよし、釣れればなおよし」の座禅釣りの坊主じゃ。海上説教といくよ。 む …

no image
速報(352)『日本のメルトダウン』野田、安倍両総裁は近衛内閣の「国民政府を相手にせず」の外交大失敗をくりかえすな』

速報(352)『日本のメルトダウン』      & …

no image
★『 地球の未来/世界の明日はどうなる』< 日本メルトダウン(1060)>★『週刊ニューズウィーク日本版 』特集『2050 日本の未来予想図』★『『日本を待ち受ける2つの未来』<中国の機嫌をうかがう衛星国か、平等な世界における中堅国になるか>』★『先進国陥落は間近!戦後幻想の終焉(デービッド・アトキンソン)』★『座して死を待つ<自死>の国/日本の惨状!終焉のベルはなる』

★『 地球の未来/世界の明日はどうなる』 < 日本メルトダウン(1060) …

『Z世代のためのオープン講座』★『ウクライナ戦争と「アルマゲドン(最終戦争)」の冬の陣へ(上)』★『WHOが「コロナの終焉近い」』★『クリミア橋爆破事件の衝撃』★『悪名高い「アルマゲドン将軍」の異名を持つスロヴィキン将軍を総司令官に抜擢』★『EUはロシアの「最も野蛮で凶悪な戦争犯罪」と非難』(10月15日までの情報)

   前坂俊之(ジャーナリスト)   ウクライナ戦争はクリミ …

『Z世代のための百歳学入門』★『玄米食提唱の東大教授・二木謙三(93歳)の健康長寿10訓』★『1日玄米、菜食、1食のみ。食はねば、人間長生きする』★『身体と精神の健康は第一に欲を制するにあり、食べなければ頭がより働く』

2012/11/05 百歳学入門(54)記事再録再編集 玄米食提唱の東大教授・二 …

no image
日本メルトダウン脱出法(605)【ソニー・ピクチャーズは過ち犯した=上映中止でオバマ大統領】[受精卵1615個、万能性不確認 別の発光現象を誤認?]

   日本メルトダウン脱出法(605) &nbsp …

no image
人気記事再録/世界が尊敬した日本人(54)地球温暖化、地球環境破壊と戦った世界の先駆者/田中正造―『ただ今日は、明治政府が安閑として、太平楽を唱えて、日本はいつまでも太平無事でいるような心持をしている。これが心得がちがうということだ』」

   2016/01/25世界が尊敬した日本人(54) 月刊 …

no image
速報「日本のメルトダウン」(495)「日本の進まない構造改革(英エコノミスト誌」◎『世界有数の森林資源を利用しない日本」

 速報「日本のメルトダウン」(495)   ◎「日本の改革: …

no image
◎『ITS世界会議東京2013(10/14-10/18)-世界中から150社が出展―参加国や地域は65か国、約2万が参加した。

◎『ITS世界会議東京2013(10/14-10/18)-世界中から150社が出 …