前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

世界史の中の『日露戦争』①英『タイムズ』米「ニューヨークタイムズ」は「日露戦争をどう報道したか」を読む①

      2025/03/02

 『日本世界史』シリーズ

 

世界史の中の『日露戦争』①-

英国『タイムズ』米国「ニューヨークタイムズ」は
「日露戦争をどう報道したか」を読む①

『日本世界史(同時進行・比較外交報道・世界史)講義』

<日本の現代史(明治維新からの明治、大正、昭和、平成150年)は

日本の新聞で読むよりも、外国紙で読む方がよくわかる>

 

『ニューヨーク・タイムズ』<1903(明治36)年1027日付>

 『戦争不可避の極東の戦雲』(戦争勃発4ヵ月前)』
https://www.maesaka-toshiyuki.com/history/1711.html

 

ロシアと日本の緊張関係は若干緩んだように見えるが,戦雲がもとより消え去ったわけではない。ヨ-ロッパとアジア諸国の首都ではいろいろなうわさを懸命に集めては広めているが.それよりロイド保険組合が東洋向け船舶の保険料率を上げたことを重視する人が多い。

保険業者は「政治的な意図を持たず」,異例のリスクと見なすもの

に対して自らを防御しようとしているだけだ。彼らが本物の情報によらずしてこの方針をとったとは考えにくい。

 実際,東アジアにおけるロシアの究極の目的が,日本が自らの権利と利益と見なすものと相いれないことを否定するものはいない。そうである以上,両国の相違は,シュワード元国務長官が奴隷制度で述べたように「持久力のある対立勢力間の押さえがたい抗争」なのだ。国家間のこうした抗争を最終的に決着させる唯一の道は戦争である。

「すべてが臨戦態勢」なのだ。しかもどちらか一方がその立場や主張を放棄しなければ-それは問題外だ-日本が自国の権利と見なすものをロシアが絶えず侵している以上.戦争は不可避だしさほど遠くもないようだ。

 この慢性的な問題をただ今の深刻な危機に変えたのが,ロシアによる朝鮮侵入であることは確かだ。満州におけるロシアの振舞いに日本は怒っており,わが国も怒っているし,ロシア人を除く極東貿易の業者もすべて怒っている。

だが日本は,満州がロシアのものにならず中国にとどまることを欲し.同地で日本人もロシア人と平等の通商の権利を持っことを主張しているが,ロシアの満州占領だけをとって戦争の原因としようとするのではないことはわが国と変わらない。

だが日本は朝鮮においては平等でなく支配権を主張している。もしロシアがその支配権を握れば,日本の独立は直接的な脅威を受ける。ロシアが朝鮮の港から日本の役人を締め出していることに対する釈明も日本を憤激させているはずだ。

というのはその釈明は,日本の役人はロシアの許可なくして朝鮮に入ることはできないという想定に基づいているからだ。日本は「政治家たちの会議」でロシアの満州撤退という比較的重要度の低い要求とともに,朝鮮撤退の最後通告を主張することを決めたと伝えられるが,これは戦争の気構えを示したものだ。

ロシア側の同様の好戦的態度は,かの興味深い御用新聞は日本だけでなく大英帝国に対しても挑戦的で,極東のロシア軍は,ロシアが太平洋岸までを支配することに対し,日本がいかに抵抗しようともこれを十二分に撃退できるだけでなく,インドに対しても「他国の助けや同意なしに」重大な企てを行うことができると主張している。

 この情勢にかんがみ.イギリスは,19021月に締結し即時公表した対日条約に正確にどこまで縛られているかを当然検討している。わが国の政府と違ってイギリス政府は秘密条約を結ぶ権限がある。したがって同条約の公表は双方の締約国がその取決めを皆に知らせたかったことを意味する。

実際これは関係国全員に対する通告だった。条約の中で,大英帝国は特に中国における,日本は特に朝鮮における,それぞれの利益を改めて表明し,締約国のいずれかがその利益を守るため1国と戦争に入る場合は,他方の締約国は厳正中立を守るとともに,第2国が前者への戦争に加わらないよう仲介を行うこと,しかしもし第2国が加わった場合は,後者の締約国は前者の防衛にはせ参じるとうたっている。

 この条約はいくつかの点で注目に値するが,その1つは日本が単独でロシアと争う自信を示していることだ。また大英帝国の方は,こうした取決めが自国の利益になると信じていることだ。これはこうした取決めをもっと以前に結ぶべきだったとイギリスが告白しているものとも受け取れよう。日本がイギリスの「門戸開放」主義の

チャンピオンの座を武力によってかちとった6年前に,この条約が予想している事件が偶然に起こった。 

日本はロシアだけでなくフランスとドイツも一緒になって攻撃され,満州の門戸開放という主張をやむなく放棄させられたのだ。その結果については,われわれすべての知るところだ。

そのときもし大英帝国が日本を助けて,6年後に結んだ条約を結んでいたなら,仏独両国は,中国分割に関心はあるものの,イギリス海軍を後ろ盾にした日本に強制措置をとることはまずいと考えただろう。1902年に結んだ条約を1896年に結んでいたなら,今ではうまく無効化できない危害を防げたろうが,後の祭だ。条約をやっと結んだことは,あのとき結んでいなかったのが情けない大失態だったと告白することになったのだ。

 - 戦争報道, 現代史研究, IT・マスコミ論 , , , , , , , , ,

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

『リーダーシップの日本近現代史』(65)記事再録/ 日本国難史にみる『戦略思考の欠落』(55)『三国干渉』後に川上操六はスパイ大作戦をどう組み立てたか『日英同盟締結に向けての情報収集にエース福島安正大佐 をアジア、中近東、アフリカに1年半に及ぶ秘密偵察旅行に派遣した』

    2016/02/25 &nbsp …

no image
日本戦争外交史の研究』/ 『世界史の中の日露戦争カウントダウン㊲』/『開戦2週間前の『英タイムズ』の報道ー『昨日、天皇の枢密院は,開戦の際にしか公布されない勅令の草案をいくつか採択した』●『疑問の余地のない平和愛好者である ロシア皇帝がどうして世界を戦争の瀬戸際へ追いやったのか』

 日本戦争外交史の研究』/ 『世界史の中の日露戦争カウントダウン㊲』/『開戦2週 …

no image
日本メルトダウン脱出法(896)日中韓パーセプションギャップ『中華思想』『恨の思想」は超えられない」●『中国は日本を誤解しているのか』●『歴史を反省せずに50年、習近平の文化大革命が始まった』●『韓国各紙、オバマ氏の広島訪問に不満 韓国人慰霊碑訪れず』

  日本メルトダウン脱出法(896) 消費増税延期で消費、金利、為替、株価はこう …

『Z世代のための日中韓外交史講座』 ㉙」『1874(明治7)年5月23日付 フランス紙『ル・タン』報道の「日本便り」(下)』★『150年前の日本人分析<日本の政治、教育の欠陥をこれほど見事に分析した記事はない>』★『現在も延々と続く政治の混乱と教育貧困の日本の<死に至る病>は今も続いている(下)』

『1874(明治7)年5月23日付 フランス紙『ル・タン』報道の「日本便り」(下 …

no image
池田龍夫のマスコミ時評(110)『解釈改憲を目論む安倍政権の危うさー地方自治体の「憲法集会」にも圧力5/7)』

  池田龍夫のマスコミ時評(110)   解釈改憲 …

『リーダーシップの日本近現代史』(187)記事再録/作家・宇野千代(98歳)『明治の女性ながら、何ものにもとらわれず、自主独立の精神で、いつまでも美しく自由奔放に恋愛に仕事に精一杯生きた華麗なる作家人生』『可愛らしく生きぬいた私・長寿10訓』★『 何歳になってもヨーイドン。私はヨーイドン教の教祖なのよ』★『 人間同士のつき合いは、心の伝染、心の反射が全部である』★『 私は書ける、書けると思って、強い信念をもって書いてみよう』★『 健康法らしいものといえば、一つは毎日一万歩くらい歩く。気が向いたとき、書斎部屋(20畳)のまわりをぐるぐる歩くんです』

2012/11/22  百歳学入門(55)記事再録 作家・宇 …

『Z世代のための大谷イズムの研究』★『ドジャース地区優勝決定翌日のロッキーズ戦』『大谷は特大54号3ランで「54-57」を達成』★『地元TV局は「タイタニックな一発」と驚嘆』★『大谷の父親は「真美子さんがいなければ、今の翔平はない」』

ドジャースが地区優勝を果たした翌日の一戦で、大谷翔平投手は27日、敵地・ロッキー …

no image
野口恒のインターネット江戸学講義⑦『第3章 町人文化を創った出版文化のネットワ-カ-(上)』

日本再生への独創的視点<インターネット江戸学講義⑦>    第3章 町 …

no image
知的巨人の百歳学(144)/『天才老人・本多静六(85歳)ー「70,80歳になっても元気で創造する秘訣―『人間は老衰するから働けなくなるのではなく、働かないから老衰する』★『② 「忙しさ」が自分を若返らせる、忙しいことほど体の薬はない』

  記事再録/ 2012/05/12/ &nbsp …

no image
速報(186)『日本のメルトダウン』●『女性を活用しない人材浪費国!ニッポン』☆『インターネットの世界を変えるHTML5』

速報(186)『日本のメルトダウン』   ●『女性を活用しない人材浪費 …