前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

「英タイムズ」「ニューヨーク・タイムズ」など外国紙が報道した「日韓併合への道』⑲「伊藤博文統監の言動」(小松緑『明治史実外交秘話』)④「ハーグ密使事件」の前にも、 米国にも親翰を送り、ルーズヴェルト米大統領に拒否される。ところが、韓帝は伊藤統監には虚偽の弁解。

      2015/09/10

「英タイムズ」「ニューヨーク・タイムズ」など外国紙が報道した「日韓併合への道』の真実⑲

  「伊藤博文統監はどう行動したか」(小松緑『明治史実外交

秘話』中外商業新報社, 昭和2年刊)より)④

「韓帝親翰事件の真相は・・」ー「ハーグ密使事件」の前にも、

米国にも親翰を送り、ルーズヴェルト米大統領に拒否される。

ところが、韓帝は伊藤統監には虚偽の弁解をする。

「ソンタク嬢の涙話」

ソソタク・ホテルの密室が外交的陰謀の相談所となっていたのであるが、日韓併合以前は治外法権が存在していたために、伊藤統監の威光でもなおその情偽を探ることができなかった。

著者は外国領事等との交際上、度々ソソタク・ホテルで宴会をやっていたので或晩ソソタク嬢をつかまえて話かけて見た。この時分はもう五十ばかりの老嬢さまで奸侫(かんねい)=心が曲がっていて悪賢く、人にこびへつらう=な人柄にも見えなかった。著者は試みに、『国王に厚い恩恵を蒙りながら、何故に国王のためにならぬような陰謀をやっていたのか。その結果は見られる通り国王の没落となったではないか。』 と訊いて見た。

するとソソタクは、『世間の人々が、自分を非常な悪人のように言っているのを聞くにつけ、残念で残念で耐らない。私は唯、使い役に病まれただけで、何事に依らず自分から先に仕かけた覚は絶えてない。王様に頼まれた事柄の善悪に気が付かないでもなかったが、それを私が拒めば、きっとほかの韓人が外人かが引受けるに極まっている。

例えば何か国王から伝言を頼まれたとする。ほかの人ならそれを自分の都合の好いよぅに取り繕ろうから、王様の意思と反対な結果になる事がままあるが、私は王様の申付け通りにいつも正直に取り次いでやった。

王様から内証で五万円運動費を渡されることがあるとする。ほかの人ならば、その内から一万や二万は途中で着服するに極まっているが、私は一文も胡麻化さずに全部届けてやった。

他人の瞞着するところを、私が正直にやっただけである。それでも悪人と言われねばならないでしょうか。』 と涙と共と物語った。

このソソタク嬢は、ドイツ人であるが英仏語にも朝鮮語にもよく通じていたから、四方八方から重宝がられたのである。ソソタクの手を経て、王室から金を引き出した者は数限りもないが、その重なる者は、英人トーマス・ベセル、これは大韓毎日申報(韓文)および「コリア・デーリー・ニユ-ス 」(英文)の両新聞を発行し、盛んに排日論を鼓吹した者。

次ぎが米人ハル.ハートおよびコールプラン、前者は学校教員でありながら政治運動に浮き身をやつした者、後者は電車の車掌から一躍して電気会社社長、鉱山会社々長となり、巨万の富を作った者。

それからドイツ人クレーベル夫妻なども、いづれも恥を知らぬ冒険家ばかりであった。

伊藤が統監として京城(ソウル)に乗込んでからまだ一年もたたぬ中の事である。国王の信認殊の外深厚なのを得々として誇っていた伊藤の鼻柱を、ポキンとへし折るような椿事が起った。

それは、ベセルの経営している「大韓毎日申報」に、国王の親翰(真筆)と称するものの写真版が突如として登載された事である。それは勿論,韓文であったが、日本文に直訳すると左の通りである。

『思わざりき、時局大変、強隣の侵逼(しんひつ)=­侵略のこと=、日に甚だしく、終に我外交の権を奪い、我自主の政を損するに至る。朕および挙国臣民働憤鬱●(りっしんべんに邑と書いて『ゆう』して天に叫び地に泣かざるなし。願わくば、交好の誼および扶弱の義を垂念し、広く各友邦に議し、法を設けて我独立の国勢を保ち、朕および全国の臣民をして恩を含みて万世にその徳を領せしめられんことを、切に祈る。』それにチヤンと御璽が捺してある。

そうしてこの親翰は同文で露、独、仏、米四国の元首に送られたものであると説明してあった。

伊藤がこれを見るや、血相を変えて怒ったのは言うまでもない。彼はすぐに官内大臣季載克(りたいこく)を呼び寄せて、国王に事情を糺させた。すると、国王はそんな親翰を贈った覚えがないから、新聞に出たものは多分、陰謀者の偽作であろうと、事もなげに言ってのけられた。

光武帝は、日本の圧迫より救援せられたしという意味の親翰を、未だかって各国元首に送られしことなく、随って大韓毎日申報所載の親翰と称するものは、偽物に付き取消すべという正誤文が、宮内府から申報社に発送された。

申報社は形式的に取消した。その後著者は申報社の主幹ベセルに会った時に、『どういう目的で、かかる偽物を新聞に掲載したか。』と訊いて見た。

『あれは偽物ではない。本ものの写真だ。』

『本物がどうして君の手にはいったのか。本当に贈られたものなら返って来る訳がないではないか。』

『これは、わたしの友人ハルバートが、国王に頼まれて米国大統領に届けた親翰の写真だ。』

当時ベセルはこれ以上語らなかったので、どうも信用が出来なかったが、後になってその真相がよくわかった。それは.こうだ。

親翰の伝達者たるハルバートは、始め学校教師として傍聴されたが、後には殊の外、国王の寵遇を受け、或は朝鮮に関する書物を著し、或は新聞雑誌に寄稿し、他の宣教師等と共に排日運動に努めていた者である。

国王が親翰を各国に送ることになったのも、このハルバートの献策の為めであった。

彼は米国から帰ってから、わざわざ著者と当時の総務長官代理石塚英蔵

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9F%B3%E5%A1%9A%E8%8B%B1%E8%94%B5

とを訪問し、両人の面前で、『予が自ら韓帝の署名ある書翰を、米国大統領に伝達したのは事実である。予がこの任に当ったのには、公明正大な理由がある。

即ち米韓修好通商条約第二条に「米韓いずれれか一方の政府にして、若し第三国より庄迫を受くる時は、他の一方の政府は友情に依ってこれを援くべし」とあるから、予は単にこの条約上の規定を履行すべき仲介者となっただけである。』と弁明した。

そこで著者は、『如何にも米韓条約にはその通りの規定があるが、韓国に何の関係もない外国人が、国際使節たる任務に当るは、して正当であると思わるるか。』

と詰問したところ、彼はただ韓帝から頼まれただけで、国際儀式などは一向に知らぬと逃げた。

ハルバートがワシントンに行って、時の大統領ルーズべルトに問題の親翰を渡そうとしたのは、明治38年11月末であった。ハルバートは直接に大統領に会見しようとしたが、それができなかったので、親翰を国務長官ルートの手に渡し、それから大統領に伝達されることになった。

やがてルーズヴェルトは、ルートに左の訓令を与えた。

『予はハルバート氏より貴下に手交されたる韓帝の書翰を精読せり。ハルバート氏は、この親諭の存在を私密にし、何人にも、殊に日本人に知らしめざることが韓帝の希望なりと言いたる由なるが果して然りとせば、ハルバート氏のいわゆる韓帝の希望を裏切らずして、此書翰を公文書として取扱うは不可能事に属す。それのみならず、我政府は既に韓国政府が保護条約を締結したる通告に接したるに、此書翰はそれより以前に認められたるものにして、保護制度を希望せざる意を寓せり。これ等の事情に鑑み、右書諭に対しては、何等の処置を執るべき途なしと認む。』

問題の親翰の写真が、大韓毎日申報に現れた時分には、駐米日本大使館から、こういう事情の報告が来ていたので、光武帝が親翰を各国元首に送った覚えがないといわれるのは真赤な偽りで、事実ハルバートに親翰を頼まれたに違いないから、一応、糺問されては如何と、著者は伊藤統監に注意した。

しかし大度な統監は、よしんばこんな親翰を贈ったところで何の効力もあるまいから、ほうっておけとて取合わなかった。

つづく

 - 現代史研究

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
『オンライン講座/ハリウッドを制したイケメン日本人俳優・早川雪洲とは何者か?』★『ハリウッドの王者』となった早川雪洲は一転、排日移民法の成立で米国から追われた』★『「働き中毒」で米国になじまなかった「出稼ぎ労働者の日本人移民」は 「排日移民法、排日土地法」の成立で米国から追放された』②

  2015/12/16 記事再録 決定版・20世紀/世界が …

『オンライン/百歳学入門講座』★「女性芸術家たちの長寿・晩晴学④」―石井桃子、武原はん、宇野千代、住井すゑ

    2013/01/02 &nbsp …

no image
(まとめ記事再録)『現代史の復習問題』★『ガラパゴス国家・日本敗戦史➀』150回連載の1回~15回まで』★『近衛文麿、東條英機の手先をつとめたのは誰か』●『「近衛内閣、東條内閣はどうして日米開戦に突入したか」』★『野田に決まった民主党総裁選の無惨、じり貧』★『(リーダーシップの欠如で2度あることは3度ある。 日本人の 精神的な構造欠陥!」』●『「 ロジスティックで敗れた太平洋戦争」『1千兆円の債務を抱いて10年後の展望は?」』●『大東亜戦争下の毎日新聞の言論抵抗・竹ヤリ事件の真相③ ―東條首相は「毎日」の廃刊を命令』

(まとめ記事再録)『現代史の復習問題』★ 『ガラパゴス国家・日本敗戦史➀』150 …

no image
『 地球の未来/世界の明日はどうなる』ー『トランプ米大統領とホワイトハウスの内情を暴く『Fire and Fury』は全米でベストセラー1位に』★『ほら吹き、ナルシズム、攻撃的性格のトランプ氏の「精神状態」を専門家70人から「認知症検査」を求める声』

『 地球の未来/世界の明日はどうなる』 ドナルド・トランプ米大統領とホワイトハウ …

no image
『F国際ビジネスマンのワールド・ニュース・ ウオッチ(196)』★『空調トラブルで2日連続引き返す、半世紀ぶりの国産旅客機、今後の受注活動に影響も』●『テスト飛行の連続失敗の原因は?- MHI(三菱重工)組織の驚くべき硬直性ー 日本企業の中でもこれほど上意下達と その履行を強制する会社は珍しいと実感!』

 『F国際ビジネスマンのワールド・ニュース・ ウオッチ(196)』 『三菱MRJ …

no image
日本リーダーパワー史(396)中国が侵略と言い張る台湾出兵外交を絶賛した「ニューヨーク・タイムズ」 (明治7年12月6日)

   日本リーダーパワー史(396)   …

no image
日本リーダーパワー史(841)★☆(人気記事再録)『明治維新150年』★『日本人だけが忘れ去った世界的英雄/革命家としての西郷隆盛を再評価する』★『世界革命史に例のない<江戸城無血開城>を実現した西郷 隆盛、勝海舟の超リーダーシップを見よ』●『一個の野人・西郷吉之助を中心とし、一万五千の子弟が身命を賭して 蹶起し、うち9千人までも枕を並べて討死するとは、じつに 天下の壮観であります。』

 日本リーダーパワー史(841) ★☆(人気記事再録)『明治維新150年』 &n …

no image
日本の「戦略思想不在の歴史⑴」(記事再録)-日本で最初の対外戦争「元寇の役」はなぜ起きたか①

  日本で最初の対外戦争「元寇の役」はなぜ起こったか 今から2年前20 …

『百歳学入門(215)』100歳時代の世界のシンボル・ギネス芸術家・平櫛田中(107歳)の長寿パワー(気魄・禅語)に学ぶ』★『悲しいときには泣くがよい。つらいときにも泣くがよい。 涙流して耐えねばならぬ。不幸がやがて薬になる』

  記事再録/2010/07/31 日本リーダーパワー史(77) 『超 …

no image
日本メルトダウン脱出法(847)『今春闘で賃金抑制なら日本の成長はない』『バフェット氏:大統領選候補者の暗い米経済見通し、「完全な間違い」』●『米専門誌が選ぶ「最高の車」、日本の5メーカーがトップ10入り』●『第2次大戦前夜にそっくり!ー米国離れが加速する世界情勢』

 日本メルトダウン脱出法(847)   今春闘で賃金抑制なら日本の成長 …