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日本リーダーパワー史(509)日中韓150年戦争史での福沢諭吉「日清戦争開戦論」③」社説「日本臣民の覚悟」

      2015/01/01

   日本リーダーパワー史(509 

 

◎<日中韓150年対立・戦争史を踏まえて「脱亜論」でアジア

侵略主義者のレッテルを張られた福沢諭吉の「日清戦争

開戦論」の社説を読み説く>③ー

<海洋進出と領有権を主張して日本・フィリピン・ベトナムとの対立をエスカレート

させている中国の膨張政策≪核心的利益政策)は120年前の日清戦争当時と

全く変わっていない。韓国が中国にすり寄って歴史認識問題で日本との

溝深めているが、その行動パターンも清国の属国だった<小中華・韓国>

と同じものである。

もともと「親中国・韓国派」であった福沢は西欧列強によるアジア併呑に

危機感を募らせて、韓国の独立のため教え子の井上角五郎を送りこみ、

金玉均らの「朝鮮独立党」を全面支援したが、ことごとく妨害にあい、

ついに堪忍袋の緒をきっての「日清戦争開戦論」であった。

昨今の対中・韓・北朝鮮外交のすれ違い、ネジレ、対立のエスカレートの経験と

対比させながら、福沢の主張を読むと、その正当性がよくわかる。

 

前坂 俊之(ジャーナリスト)

 

 

「日本臣民の覚悟(①-福沢諭吉〔1894明治27828日時事〕

 

 

日本臣民の覚悟

 

今度の戦争は、内乱にあらずして外戦なり。内乱なれば国民の心次第にて敵味方おのおの贔屓(ひいき)もありて、思い思いの説を作(な)し、思い思いの挙動することにして、古来の戦争皆しからざるはなし。

 

源平の合戦に、白旗を建つる者あり、赤旗に従う者あり、南北朝相分かれて、南朝に勤むる者あり、北朝に働く者あり、関ケ原の合戦には、大坂方と関東方と相分かれ、王政維新の時にも、勤王、佐幕の党派あるがごとく、ただに軍人と軍人と戦うのみにあらず、天下の人心も自ら双方に分かれて、向かう所を異にするの常なれども、

今度の戦争は根本より性質を殊(こと)にし、日本国中一人も残らず一心同体の味方にして、目差す敵は支那国なり。

 

我が国中の兄弟姉妹四千万の者は同心協力して、あらん限りの忠義を尽し、外に在る軍人は勇気を奮って戦い、内に留守する吾々はまず身分相応の義消金するなど差し向きの勤めなるべけれど、事切迫に至ればへ財産を挙げてこれを勝つは勿論、老少の別なく切り死にして、人の種の尽きるまでも戦うの覚悟を以って、ついに敵国を降伏せしめざるべからず。

 

我輩は平生より文明開化の西洋主義に従い、居家処世の方針すべて数理の外に逸することなきを勉め、まず一身一家の独立を成して、自然に立国の基礎を固くせんとて、万事着実を主とし、時としては世間流行の風潮に逆うて、人心に激したることなきにあらず。在普棲夷論の盛んなる時代にも、我輩は身を危うして、これに同意したることなし。

 

 

世人は往々かの支那流の儒教主義に偏して、忠勇の極端論を弄び、または簡単なる古学を学んで大和魂の義烈を喋々する者あり、

 

我輩は忠勇義烈の要を知らざるにあらず、否、これを知りこれを重んずるの点に於いては、耗も他人に譲る所なしと敢えて自らから信ずる者なれども、これを言論するに場所あり時節あり、みだりに喋々して、かえって文明の人事に害あるを知るが故に、わざと世論に雷同せざりしのみ。

 

宝刀利なりといえども、深く鞘(さや)に納めて抜かざるは治世の武士の嗜みなり、忠勇義烈の壮語を吐かずして、内に自から重きを持するは、文明士人の心掛けなりと、深くひとりを慎しみたりしに、今や不幸にしてかの頑陋不明なる支那人のために戦いを挑まれ、我が日本国民は自国の栄誉のため、東洋文明の先導者としてこれに応ぜざるを得ず。

 

宣戦の詔勅を拝する者は軍人のみにあらず、既に宣戦とあれば、その身の軍籍に在ると在らざるとに論なく、共に陣頭に立って戦う者と心得、一耗の散といえども、いやしくも味方の利益のために力を尽すこそ本意なれ。

 

我輩が平生に沈黙したるも、今日を待って大いに発せんがためなり、ただにひとり奮発するのみならず、天下幾多の有志者も共に大いに奮発して、文に武にその平生の壮語を実にせんことを祈るのみ。

 

一人の力は徴なりといえどもへ心を一にして方針を共にすれば、大いに成すに足るべし。一髪千鈎を繋げばこそ危うけれども、我輩は千髪一鈎を繋いで我が必勝を期するものなり。就いては我輩が今度の大事件に際し、外戦の終局に至るまで国民一般の向かうべき方針として、至当なりと思い付きしままへその1,2箇条を記さんに、

 

第一、官民共に政治上の恩讐を忘るる事なり。

 

政治上に意見を殊にするは、ほとんど人間の持ち前にして、世界万国皆しからざるはなし。

 

近年我が国に於いては最もはなはだしく、その意見の殊なる者は相互いに容るることあたわずして、讐敵もただならず、それも真実国家の利害いかんを目的にして相分かるることなれば、なお恕すべしといえども、一歩を進めてその内実を叩くときは、単に功名手柄を争うて、政治上の好地位を占めんとするの野心に発するものこそ多しと云えば、平時に於いてさえ、この種の喧嘩は面白からざる処に、今度の大事件に当り、何としてこれを許すべきや。

 

国家の栄辱存亡を眼前に見ながら、政治家の喧嘩に余地はあるべからず、官とも云わず民とも云わず、いやしくも政治上の技量あるものは互いに気脈を通じ、また一処に相集まりて、共に国事を負担し、同心協力、真実の兄弟のごとくにして、始めて日本臣民の名に憤ることなきを得べし。

 

今日のこの場合に迫りても、なお平生の細事情を忘れずして、政治上の友敵を分かち、はなはだしさはひとり日から功名手柄をもっぱらにせんとして、他の一方よりは暗々裡にその功名手柄を妨げんとするの言行を演じ、これがために、間接、直接に大事の進行に影響するがごときあらんには、実に相済まざる次第ならずや。

 

我輩が過日の紙上に(本月十六日時事新報)、現政府は大いに胸襟を開いて部外の長老を容れ、長老撃もまた種々の難題を云わずして、素直に政府に入るべしと論じたるむ、全くこの辺の意味に外ならず、或いは民間の各政党に於いても、その平生の持論いかんに拘わらず、大事の終局までは方針を共にして、相互に争わざるのみか、昨日の赦をも今日の友として、向かう所を同じうせざるべからず。

 

 

帝国議会の開期も近さに在り、私を去って公けに殉ずるは、まさにこの時なるべし。我輩は朝野政客の徳義に訴えて、その協同一致を信ずるものなり。

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