池田龍夫のマスコミ時評(46)『「愛川欣也パックインジャーナル」放映打ち切りへ』『「脱原発」へ向け、意義ある出版記念の集い』
池田龍夫のマスコミ時評(46)
●『「愛川欣也パックインジャーナル」放映打ち切りへ』
★『「脱原発」へ向け、意義ある出版記念の集い』
池田龍夫(ジャーナリスト)
「愛川欣也パックインジャーナル」放映打ち切りへ
CS放送「朝日ニュースター」の看板番組「愛川欣也パックインジャーナル」が、3月末を最後に放映が打ち切られる。親会社「テレビ朝日」の経営合理化によるものと伝えられるが、14年間も親しまれてきた番組を惜しむ声が強い。毎週土曜2時間の「分かりやすいニュース・トーククショー」で、愛川欣也氏の巧みな司会によって、難解なニュースを噛み砕いて論議する仕掛けが成功した番組だった。
生番組スタートに合わせ、新聞各紙が報じた直近のニュースを数項目ピックアップして提示。専門家・ジャーナリストら数人が論じ合う形式で、分かりやすいニュース解説との評判が年々高まっていた。
〝生ニュース〟の問題点と背景を分析
〝生ニュース〟を素材としての番組だけに、甲論乙駁かなり厳しい論戦もあって、興味深い内容が盛り込まれていた。重要項目ごとに問題点を論議するわけだが、「3・11事故」後は、原発のテーマが多くなったのは、他メディアと同様当然のことであろう。ただ、この「パックインジャーナル」は、他局では見られないほど執拗な捉え方に特徴があり、視聴者の関心を引き寄せたような気がする。
特に原発に批判的な後藤政志・小出裕章氏ら既成メディアに余り登場しない研究者や評論家を招いての論議などは、問題提起の番組として思い切った手法と感心させられることが多かった。愛川欣也氏と前尾和博氏(評論家)の2人が牽引役で、他の専門家は取り上げるテーマに応じて交代。それだけに、通常のメディアでは聞けないような話が飛び出すことに、興味を感じた視聴者が多いという。
大手放送局が取り上げないテーマも発掘
専門分野の論客が多いため、厳しい政治批判が飛び交うこともあったが、〝攻撃〟されている側からは、〝偏向報道〟と見る人もいたとは思う。筆者は長年、この番組を見続けてきたが、視点の確かさに感心しており、大手放送局ではやりにくいテーマを発掘してきた功績は大きいと思っている。
「この番組はあと7回で終わります」との看板を掲げて始まった2月11日の番組を観ながら、「何らかの政治的圧力があったのでは?」と考え込んでしまった。愛川氏は多くを語らなかったが、「テレ朝幹部から『現在の毎週2時間ナマ番組を止め、月2回の録画番組にしたい』と提案されたが、それを拒んで番組に終止符を打つことにした」との痛恨の言葉が耳に残った。
全国590万世帯が「朝日ニュースター」を観ているといわれ、「パックインジャーナル」視聴者も少なくないはずだ。「どこかの局がこの番組を継承できないだろうか」との惜しむ声が全国からたくさん届いているという。既成メディアの〝横並び報道〟に批判が高まっている現在、ユニークな番組が消えていくのは悲しい。
「脱原発」へ向け、意義ある出版記念の集い
「脱原発」のうねりが全国に広がっているが、2月8日夜、東京千代田区でユニークな出版記念会が開かれた。原発論議が高まる中、いま注目を集めている弁護士2人が〝警世の書〟を相次ぎ出版。各界の同志が集まり、「脱原発の集い」のように祝賀パーティーは盛り上がった。
気鋭・弁護士2人の新著を祝う
海渡雄一弁護士の「原発訴訟」(岩波新書)と日隅一雄弁護士の「福島原発事故・記者会見~東電・政府は何を隠したのか」(岩波書店)刊行を祝って駆けつけた仲間は300人余。両弁護士が所属する「東京共同法律事務所」主催だったが、内輪のパーティーの枠を越えた素晴らしい出版記念会だった。
著者それぞれが新著に賭けた思いを語ったが、その強烈な問題意識と情熱に、感動の耳を傾けた。このあと、奥平康弘・東大名誉教授(憲法学)が2人の業績を称える挨拶のあと乾杯。談論風発の宴は、午後9時近くまで続いた。
福島瑞穂さん(社民党党首)、河合弘之弁護士(脱原発弁護団全国連絡会代表)、原寿雄氏(ジャーナリスト)宇都宮健児弁護士(日本弁護士連合会会長)らが祝辞を述べて、タイムリーな新著刊行を称えた。会場は押すな押すなの賑わい。澤地久枝さん、佐高信氏、桂敬一氏らジャーナリストや弁護士仲間が、熱心に原発論議をしている光景は素晴らしかった。
堅い権力構造の岩盤にメス
権力構造「政・官・業・学・報」(ペンタゴン)の〝情報隠蔽体質〟に果敢に挑んで、ベールを剥がしていった海渡、日隅両弁護士の力作には敬服するばかりである。海渡氏が原子力問題に関心を持ったのは大学時代で、弁護士として30年間も各種原発訴訟を手がけてきたが、日本の司法判断のお粗末さに〝煮え湯〟を飲まされてきたという。
内容を紹介する紙幅がないため、病身の日隅氏が記者会見場に日参し、「東電・政府の情報隠し」と戦い続けた文章のほんの一部を紹介しておきたい。
事前の「情報開示」が極めて重要
「今回の原発事故対応が十分に行われなかった最も大きな原因の一つは、事前の情報開示が不十分だったことだ。
津波の想定に対する新しい知見が耐震性をめぐる再評価の過程で広く明らかにされていれば、対策を直ちに成すべきであるという指摘が住民や自治体から成されただろう。
……事故対応マニュアルが全て事前に開示されていれば、どのように情報がどう伝わるべきであるかが分かり、SPEEDIやERSSのデータが隠されるようなことはなかっただろう。今回のような対応を繰り返さないためには、そのような情報が開示される仕組みを設け、私たちが重大な政策決定の是非について判断できるようにならなければならない」(p200から引用)。
情報公開と国民の知る権利の行使こそ、民主主義国家の〝屋台骨〟であるとの認識を国民すべてが共有する必要性を痛感させられるのである
(いけだ・たつお)1930年生まれ、毎日新聞社整理本部長、中部本社編集局長などを
歴任。著書に『新聞の虚報と誤報』『崖っぷちの新聞』、共著に『沖縄と日米安保』
歴任。著書に『新聞の虚報と誤報』『崖っぷちの新聞』、共著に『沖縄と日米安保』
関連記事
-
-
『Z世代のための米大統領選挙連続講座⑥』★『シーソーゲームの選挙戦』★『ほぼトラから確トラへ、バイデン撤退か?』★『トランプ氏は共和党全国大会で大統領候補指名受諾』★『バイデン撤退しハリス副大統領を指名』
前坂俊之(ジャーナリスト) トランプ前大統領は7月18日に共和党全国大会で大統領 …
-
-
世界/ 日本メルトダウン(912)『投資家に朗報、遠のく英EU離脱とトランプ大統領』●『英国EU離脱でも中国でもない、ジョージ・ソロスが怯える「第3の危機」』●『日銀緩和すでに「ヘリマネ」化、財政危機は杞憂=エモット氏』●『日本:20年後世界経済のトップに返り咲く、人口構造の若返りで=中国メディア』
世界/ 日本メルトダウン(912) コラム:投資家に朗報、遠のく英EU離脱とトラ …
-
-
『世界漫遊/ヨーロッパ・パリ美術館ぶらり散歩』★『オルセー美術館編』★『オルセー美術館は終日延々と続く入場者の列。毎月第一日曜日は無料、ちなみに日本の美術館で無料は聞いたことがない』
2015/05/18 『F国際ビジネスマンのワールド・ …
-
-
『リーダーシップの日本近現代史』(41)記事再録/『日本議会政治の父・尾崎咢堂のリーダーシップとは何か③>』★『世界に例のない無責任政治、命がけで職務に当たらず 辞任しても平気で再び顔をだす3代目政治家』③』
2012年2月25日/日本リーダーパワー史(238) …
-
-
最高に面白い人物史⑨人気記事再録『日本風狂人伝(28)』 大預言者(?)で巨人の大本教の開祖・出口王仁三郎のジョーク
日本風狂人伝(28) 大預言者(?)で巨人の大本教の開祖・出口王仁三郎のジョーク …
-
-
世界最先端イベント『見える化』/チャンネル世界最大級の観光の祭典『ツーリズムEXPOジャパン-『 『日本財団』日本パラリンピックサポートセンター』●『 東京都の『多摩、島しょと東京の特産品」』★『山口のパビリオン』★『鹿児島のパビリオン』
世界最先端イベント『見える化』チャンネル 世界最大級の観光の祭典『ツーリズムEX …
-
-
『Z世代のための日中韓三国志のキーワード<福沢諭吉の脱亜論>の研究講座①』★『福沢諭吉の「脱亜論」と時事新報の主張に全面的に賛成した』上海発行の英国紙「ノース・チャイナ・ヘラルド」1884(明治17)年5月2日』
逗子なぎさ橋通信、24/0707/am11]逗子海岸 …
-
-
池田龍夫のマスコミ時評(32) 世界各地への騒乱拡大を危惧-米独善主義に反発が強まる
池田龍夫のマスコミ時評(32) 世界各地への騒乱拡大 …
-
-
『Z世代のための勝負脳の鍛え方』★『ボストンレッドソックスを優勝させた上原浩治投手の<土壇場完勝力>10か条『どんどん行く、結果がどうであれ、1日ごとに気持ちを リセット、真っ向勝負する<瞬殺パワー>」』
2020/11/18 日本リーダーパワー史(428)記 …
-
-
知的巨人の百歳学(150)ー『日本で最も聡明な女性・野上弥生子(99歳)の晩年の生き方』★『もし文学者たらんと欲せば、漫然として年をとるべからず、文学者として年をとるべし(夏目漱石)』★『今日は昨日、明日は今日よりより善く生き、最後の瞬間まで努力する』
日本で最も聡明な女性・野上弥生子(99歳)の晩年の生き方 野上弥生 …
