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日本敗戦史(53)A級戦犯指定・徳富蘇峰の 『なぜ日本は敗れたのか』⑤ 「日本人の先天的欠陥と後天的欠陥」

      2015/04/12

 日本敗戦史(53)

マスコミ人のA級戦犯指定の徳富蘇峰が語る

『なぜ日本は敗れたのか』⑤ 

「日本人の先天的欠陥と後天的欠陥について」

(異民族理解の不足、自文化の押しつけ、国民的教養の不足など)

  • 日本人は、異民族というよりも、自己以外の者の心理状態を理解するにはほとんど無能力であって、相手方の気持などは、さっぱりわからず、ただ自分の気持を押売する傾向がある。(今はやりのTVでの日本礼賛、日本料理のブーム、外国人観光客への「おもてなし」などは日本文化の押し売りではないのか・・・)

  • 日本民族は、世界の隅っこにおける田舎者であって、世界の風がどこを吹いているかもわらず、一本調子で、わが流儀を世界を押し通す教養の不足である。

「日本人の先天的欠陥と後天的欠陥について」(異民族理解の不足、自文化の押しつけ、教養の不足、世界の田舎者・・)

これはわが国の軍閥とか、財閥とかいう特殊階級についてばかりでなく、むしろ大和民族全体についていうべき事である。日本民族の資格審査において、アジア諸国の指導者たるべき任務に、不適当であり、先覚者たる資格がないという事に定まっている。

それを強いて行おうとしたために、ようやく10トンを積む車に、100トンの物を積んだから、動かぬだけでなく、車自身さえも、破壊してしまう結果となった。その責任は、誰れかれというばかりでなく、大和民族(日本民族)全体が、引受くべきが当然であろう。この資格の欠乏について、これを分類すれば、本質的な欠陥と、教養不足のためと見るべき欠陥とがある。

本質的という事は、わが日本人は、異民族というよりも、自己以外の者の心理状態を、洞察するには、ほとんど無能力であって、相手方の気持などは、さっぱりわからず、ただ自分の気持が相手方の気持ちと同じと心得て、それを押売する傾向がある。

台湾や朝鮮で失敗したのも、もっぱらこの欠陥のためと言っていい。しかしそれが、今度の戦争ではむしろ露骨に、無軌道に、乱暴に行われた。そのために、ひとしくアジアの黄色人種でありながら、新たにやってきた日本人より、昔からきた白人を慕うというような結果を来した。

親類よりも、むしろ他人の方がよいというような結果を来した。いわば日本人は、西洋人の言う通りの、野蛮人でもなければ、悪人でもない。しかし相手構わず、己れの欲する所を、他に施こして、ある場合には、親切がかえって、相手方の迷惑を招き、怒りを招き、やがては怨みを招き、一日も速く日本人に、立退いてもいたいというような感情さえ、引き起すに至った訳であろう。

  • たとえて言えば、己れが酒好きなものであれば、洒を飲まぬ者に、毎日毎日酒を強いられては、如何に親切であっても、相手方は困るに違いない。碁や将棋を好む者には、親の死に目を離れて、夢中になる者さえあるが、碁将棋に興味のない者は、三日も四日も徹夜でやられては、堪まったものではない。相手方では、こちらの親切を、単にありがた迷惑で済ます訳ではない。それを親切と受け取らず、何か殊更に我等をいじめるために、やるものと受け取り、ますます日本人に対する悪印象を、惹起するに至った事も、少なくなかった事と思う。

ところ変れば品変るで、チベットでは、最敬礼に舌を出すようだが、日本では、最敬礼どころではない。舌を出せば、侮辱のきわみで、昔の武士ならば、これがために、決闘もし、打ち果さなければ、やまぬというような、珍事さえ、出来たかも知れぬ。

この相手側の心理状態を、見ることの出来ない短所は、自ら世界第一の優越人種を誇っているドイツ人が、また同様である。流石にビスマルクなどは、その欠点を、多年の教養によって、補いたるようだが、前にしてはウィルヘルム二世、後にしてはヒットラー、皆な日本人同様の欠点を、日本人以上に、使用したようにみえる。

以上は先天的の欠点とも、いうべきものであるが、別にまた後天的の欠点がある。

  • それは教養の欠乏である。わが大和民族は、世界の隅っこにおける田舎者であって、世界の風が、どこを吹いているかもわらず、純然たる田舎男で、しかも千篇一律、物に応じてことをなし、勢を察してこれを導くというようなことをせず、一本調子で、我が流儀のみを知って、他を知らず。一本調子で、世界を押し通すというような気分で、その教養が、余りに局部的に偏し、田舎者の上に、田舎者の上塗りをするに至ったことが、その原因であろう。

例えば日本人でも、徳川家康は、甲州(山梨)を治めるには、武田氏の旧慣を用い、関東地方には概しては北条氏の仕置き(法律)を採用し、水の欲しい者にはする者には飲料水を与え、飢えたる者には食を与え、凍えたる者には衣を与え、疲れたる者には休養を与うるというが如き、時に応じ、場合に応じて、その手を打っていった。

日本人の教育が、後天的に進歩すれば、あるいは進んで、総てとはいわぬが、多少先天的の欠陥を、補充する事が出来たと思うが、不幸にして明治維新以来、日本人の学問は、局部的には相当進歩したようだが、いわゆる国民的教養という水準の、極めて低調であった事は、争われない。

その低調であったことが、最も遺憾なく暴露せられたのが、即ち今回の戦争である。捕虜虐待事件なども、別に日本人が残酷であったというではない。ただ田舎者が、田舎流儀を、無遠慮に振り回わして、遂に世界の物笑いとなったに、過ぎないのである。

(昭和22年1月10日午前、晩晴草堂にて)

 - 戦争報道

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