「トランプ関税と戦う方法」ー「石破首相は伊藤博文の国難突破力を学べ⑦』★『日本の運命を変えた金子堅太郎の英語スピーチ①』★『米国第1の広い公会堂のカーネギーホールで約6千人の聴衆を前に大演説』★『米国の依頼で「日本人の性質及び理想」というテーマで講演」★「日本軍はなぜ強いのかー武士道にその根源があり』
2025/04/14
2017/06/28<日本最強の外交官・金子堅太郎⑦>再編集
以下は金子堅太郎の『日露戦役秘録』(1929年(昭和4)、博文館>の紹介である
<日本軍はなぜ強いのかー武士道に根源あり>
さて、奉天の戦争がいかなる衝動をアメリカ人に与えたかというと、わが軍は鴨緑江を渡って以来、連戦連勝、ただ沙河の戦で少し負けたくらい、わが軍というものは強い。あの奉天の戦は当時の日露両軍の兵数から砲門の数、その他戦争の日数を比べてみますと、世界始まって以来の大戦争といってもよい。
それで非常にアメリカ人の感動をひき起した。これは何がゆえに日本がかくのどとき立派な兵隊を持っているか。又かくのごとく忠勇なる兵隊はいかなる訓練によってできたかということについて、アメリカの陸海軍の軍人は勿論、学者、政治家、教育家、実業家その他の人も研究を始めた。
で、それらの人が寄り寄り私を各クラブ、協会等に呼んで、日本の軍人の教育はどういう方法をもってやっているか。どういうわけでかくのどとき勝利を得たか、実は我々は今まで日本はかくのごとく勇武な国とは思っていなかった。少し話を聞かせてもらいたいというのである。
●米国第1の広い公会堂のカーネギーホールで6千人の聴衆を前に大演説
ニーヨークに政治論理学協会というものがありますが、その会長のアドラス氏の案内で4月2日にニューヨークのカーネギーホールで公開演説を致しました。ここはアメリカ第一等の広い公会堂。そこには六千人ぐらい入るすばらしい大きい会場があります。
その演題は彼らの要求によって「日本人の性質及び理想」というのを選びました。もう戦が勝つことは分っている事実であるから、日本人の性質及び理想につき聞きたいという要求であったためにこの演題に致しました。
約束通り行ってみますと、六千人ばかりの聴衆が来ている。その会場がまことに音響の反射悪いから、私の英語が向うの隅まで通るや否や不安に思われたが、あらかじめ準備をしておいて、それから演説しました。幸いに隅々まで声が通って、二時間以上の演説が一言一句も漏らさずアメリカ人の耳に入ったということでありました。
この「日本人の性質及び理想」という演説の内容は、いちいち詳しく申し上げませんが、ただその骨子だけを申し上げます。
「そもそも日本の文明の原則は正義である。正義を遵奉するというのが原則である。これに反して欧米の文明の精神は、勢力を得るということである。」
これは私が冒頭に述べた意見である。
「ゆえに生存競争の舞台においてもし東西の両国が衝突するときには、今日までの実例に徽するに正義は常に勢力に圧迫せられ、道徳上の識見は常に物質的の腕力に圧倒されるという結果をもたらした。現に支那(中国)がアヘン戦争においてイギリスから負けたが、これはアヘンをイギリスの商人が売り込むためで、つまり支那人の体質を軟弱にさせ、病気にさせるような、人道に背く商売をしたから起った戦争である。
それに支那が反対したがためにアヘン戦争が起って、支那は香港を取られ結局正義が腕力に圧迫されたのであります。近く我国においても同様二十七、八年の戦争(日清戦争)で、我軍が支那に勝って遼東を占領した。ところが露独仏の三国が干渉して、日本が遼東を支那から割譲させることは東洋の平和に害があるから支那に戻せというのである。
表向きは遼東還付の忠告であるけれどもつまり圧迫である。当時日本の陸海軍は戦後の疲弊から回復しないため、やむをえず涙を飲んでこれを環付した。
日本は最初からどういう考えを抱いているかというと、日本は数千年前すでに支那から儒教を取り入れ、インドから仏教が伝来したのを同化させ、ここに文明の基礎を築き上げた。ゆえに精神的訓練を経て、正義の守るべく人道の貴ぶべきことは十分知っているが、いかんせん交通の関係上欧米人の有する学術・技芸・機械的の方面には、今まで力を尽くさなかったからこの方面で思わぬ不幸を見るに至った。
★正義の主張も腕力の裏付けなくしては貫徹できない
日本は古来から、正義公道を道義の根本としているが、これに加うるにヨーロッパの物質的の文明、すなわち腕力、機械の発明、学術の応用をもってし、これによって彼に対抗するの外はないと決心した。
よって明治の初年から殖産工業を盛んにし、陸海軍を拡張し、一面には憲法を制定して人民に自由の権利を与え、信教を自由にし、議会を開いて、国民をして政務に参画させた。ためにヨーロッパの今日の文明的政治を立ちどころに日本流に取り入れた。祖先伝来の正義公道という国をなす根源は少しも忘れずして今日まで来た。ゆえに日本の国民教育の方針は、いわく、自負することなかれ、弱者を虐げることなかれ、常に自ら慎んで放らつな挙動をすることなかれ。他人に対しては、丁寧懇切にして決して粗暴な振る舞いをするなかれ、などである。」
「この日露戦争の影響がいかに日本人の頭に響いたかと言えば、いかほど正義を主張するも腕力が乏しくては決してこれを貫徹することができぬ。
国家は軍備が充実してなければ、いかに外交的折衝が巧みでも何の効能もないということを今度の戦で痛感した。
翻って今度の日露の戦が欧米人にいかなる影響を及ぼしたかといえば、これまで欧米人は自ら称して文明の民である。
アジア・アフリカの未開国の人民を救うのが我々欧米人の天職である。キリスト教を伝播して哀れな未開化又は野蛮の人民を救ってやる。これが我々の天職である。
それで我々の行くところ、未開の国は取ってもよい。未開の人民を虐げても彼らを文明に導くためには少しもかまわないというので土地を分割して取る。それが天職と彼らは心得ている。ところがこれまで彼らが未開国と侮ったアジアの一隅にある日本が、何ぞ知らんキリスト教国のロシアを一撃の下にたたきつけたのをみて日本という国は恐るべき国だ。
今まで我々がアジアを救うのは我が天職と思っていたのがすでに間違いである。アジアの人民は欧米人に向っては、ただ命令にこれ従うものと思っていたが、日本という強国が出てきた。これすなわち今度の戦によって日本の国民の真価を欧米人が発見したのである。又この戦争がアジアにおける我が同種族の人民にいかなる影響を及ぼしたかと言えば、これまでは欧米人から言われればご無理でもっともで、いかに正義を主張しても何らの効能もなくただ、白色人種の悪虐無道のロシアをたたきつけた。
我々もまた日本と同じ人種であるから、潜在力は十分あるということをアジア人をして自覚させた。そこで彼ら東洋人種は日本の先輩にならって、欧米文明を扶植し機械を輸入して発憤すれば、将来は独立を回復することができるという希望を抱くようになった。
★東洋と西洋の融合を行う
これが今度の戦争の影響である。第一は日本国民に与えた影響、第二は欧米人種に与えた影響、第三はアジア人種に与えた影響である。
しかし日本国民はこれを誇って欧米人は我々には敵対できないというようなどう慢な考えは決して起こさぬ。しからば日本人の将来における希望は何かといえば、
将来においては東洋の特性と西洋の学術とを融和せしめ打って一丸となして一つの新文明を造り、世界の人民をしてその恩恵に浴せしめ、全世界の平和を維持して世界皆兄弟という東洋西洋の聖教の本旨を実現させるという大希望を日本人は抱いている」
とこう演説した。これは欧米人から言わせれば随分思いきったうぬぼれ演説かもしれぬが、私は思いきって六千のアメリカ人に向ってこう演説した。ところがそれが翌日の新聞に出て、大変ほめる者もあれば、攻撃する者もあるというわけでありましたが、これが日本人の性質及び理想ということについて、私がアメリカ国民に向かって公会堂において公開演説をした初めての演説であります。
そうすると、それから面白い結果がでてきました。その演説が新聞に出るや否や、ロシア大使のカシニーは新聞紙上において私の説を反駁をして、非常な毒舌悪筆をふるって縦横無尽に悪口を言って、私に戦をいどんできた。そうして「ニューヨークヘラルド」紙がロシア大使のこの攻撃論文を載せた。
しかしながら私はこれまでロシア大使カシニーの議論に対してはたびたび攻撃したから、もう不問に付して何も取合わなかった。これは四月二日です。そうすると同月二十三日に匿名の手紙がきて、こういうことが書いてある。
「拝啓貴下は米国に遊ぶこと前後数回、しかしてこの国に在留せらること、幾星霜に及べり。ゆえに米国人が虚偽の言論をもって世人を瞞着する特性あるのを見破られ、しかして自らそのひそみにならい、昨年以来各所において日露戦争に関し虚偽の言論をもって米国人を欺瞞(ぎまん)されている。
しかるに米国人中、また貴下の術策に陥らず術策を看破するの具眼者あることを記憶せよ。貴下自ら警戒せられよ。しからずんば変、あるいはその身にいたらん。」
金子男爵貴下
一米国人
とこういう手紙が来た。これは脅迫状である。すなわち私が演説したり活動するのをみて、演説を止めなければ-ロシア攻撃を止めなければ、変が及んで爆弾が飛ぶかも分らぬという脅迫状である。私はこれも一笑に付して、少しも顧みなかった。それでこの演説は随分アメりカには影響があった。
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