前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

『Z世代のための日本スポーツ史講座』★『パリ五輪の日本柔道の苦戦を見ながら、加納治五郎の奮闘を思い出した』★『なぜ1940年(昭和15 年)の東京大会は幻のオリンピッ クに終わったのか?』★『グローバリズムの中での『大相撲騒動』の行方はー 「アジアの田舎相撲」か「国際競技・SUMOU」への分かれ目にある』

   

 

日本リーダーパワー史(863)記事再録

日本最大のクーデターの2・26事件から5ゕ月後の1936年(昭和11)7月29日、ベルリンで開催されたIOC総会で次期オリンピック候補地の投票が行われた。柔道の父・嘉納治五郎IOC委員が招致演説を行い、ヘルシンキを破って、昭和15年の東京オリンピック開催が決定した。

日本のスポーツの父」でもある嘉納は1909年(明治42)、近代オリンピックの父・クーベルタンから「アジアのオリンピック普 及のためIOC委員に就任してほしい」と要請されアジア初の委員になった。 当時の日本ではオリンピックといっても誰も知らなかった時代である。

幻のオリンピッ クに終わった昭和15 年の東京大会

昭和となり世界はファシズム時代に突入する。満州事変、満州国建国、2・26事件と軍国主義が吹き荒れた。日中戦争を避けようと、国内和平派の昭和天皇、嘉納、杉村陽太郎(国際連盟事務局次長)、広田弘毅(後、首相)らの努力で「平和の祭典」の招致に成功したのだ。

ところが、昭和12年7月に日中戦争(盧溝橋事件) が勃発しドロ沼化した。英米各国からボイコット論、国内からも返上論が浮上する。

さらに1938年(昭和13 )5月4日、嘉納がカイロでのIOC総会に出席し帰国途中の氷川丸で77歳で死亡した。このため、7月15日に近衛文麿首相は返上を決定し、昭和15 年の東京大会は幻のオリンピッ クに終わった。

それから26年後。1964年(昭和39)10月、東京で実現した五輪では柔道が正式に採用された。嘉納が柔術を統一して創設した『柔道』が世界の『JUDO』として認められたのである。

この時、柔道無差別級ではオランダのヘイシンクが神永昭夫五段を破って優勝し、日本のお家芸ではなくなったが、真の国際スポーツになった日でもあった。

ーシンクは、日本の柔道について
①基礎訓練をおろそかにして乱取りをしすぎる。
②選手は2,3の得意技を繰り返すばかりで、多くの技を知らない。
③日本人だけが柔道の正しい練習法を知っていると過信している。
と述べている。
へーシンクは20代で講道館に何度も通い、古武道も勉強し基礎訓練での腰の鍛練の重要性をしり、オランダで丸太をかついで小山に登るなど、足腰を強化してきた。

2020年の第2回東京オリンピックでは空手「KARATE」が新種目に採用され、「JUDO」に次いで、国際スポーツの仲間入りを果たした。そんな中で、日本の国技と言われる大相撲に不祥事がまた起きた。

柔道が「JUdO」となって60年、2024年のパリ五輪では日本(柔道人口17万)は「JUdO大国」フランス(同60万人)に大敗した。
「デイリー新潮」(8月09日付)「男子柔道の「五輪メダリスト」はなぜ“柔の道”を離れるのか…」によると、「誤審問題もあるが、負けるのはすでに国際大会では、相手の襟と袖口をしっかり持つのではなく、両袖、両襟、肩口、背中を抱えるなど、柔道の基本から外れた体勢が当たり前になっている。次のロサンゼルス大会はもっとメダルを減らすことになるでしょう」五輪取材記者は語る。

ーーーーーーー

2017年11現在、日馬富士の暴行傷害事件がメディアで連日、大事件として報道されている。

グローバリズムのなかで相撲は『SUMOU』になれるのか、伝統を守る親方日の丸の大相撲のままで行くのか、分岐点に差しかかっている。

もともと「相撲」とは何か。
松浪健四郎著「格闘技の文化史」(ベースボールマガジン社、1993年刊)によると、相撲のルーツは古代の神事祭事、奉納儀式の格闘技として生まれた。古代ギリシャの格闘技と蒙古相撲を原点としてユーラシア大陸全体に広がっていった、という。
BC3世紀に誕生したモンゴル相撲はモンゴル大帝国の格闘技として朝鮮まで伝わり、韓国相撲の「シルム」(角力)」が日本の『相撲』の語源となったとも言われる。
この各国の伝統的な格闘技、『相撲』が民族のスポーツとして発展、近代化してレスリングになり、オリンピックにも採用、現在の格闘技ビジネスの人気スポーツとして進化した。

現在、大相撲力士の国際化が進んでおり、中でもモンゴル勢が圧倒している。

2017年11月現在で、白鳳、日馬富士、鶴竜の3横綱以下、幕内(約40人)には9人(約20%)。十両(約30人)には3人、幕下(約120人)には8人。

モンゴル力士はなぜ強いのか、

騎馬民族のDNAと馬上の生活で足腰を鍛えられて筋肉質でバランス感覚、スピードに秀でている。本家本元のモンゴル相撲「ブフ」の優勝者は民族の英雄として日本以上に尊敬されている。

1998年の若乃花以来、稀勢の里が今年3月に横綱になるまでは19年間にわたって朝青龍、白鳳、モンゴル横綱が大相撲を制覇してきた。日本人横綱待望論の中で稀勢の里横綱が誕生したが、無理とケガがたたり、今回で4場所連続の休場が続き、来場所如何では横綱引退の危機を迎えている。
今回の一連の不祥事はグローバル化の大波で世界中で起きている異文化衝突現象の一環である。白鳳、モンゴル勢の大活躍に対して、お株を奪われた日本勢の感情的な対立、しこりが背景にある。
異文化コミュニケーションでのエスノセントリズム(自民族自文化を優先し他の文化を否定したり、低く評価する態度)とパーセプションギャップ(思い違い、偏見)も根底にある。
解決のためには相撲協会側の統一的な組織づくり、立ち合いの問題、勝負の審判判定の公正、公平な統一ルールの作成、力士の超肥満体、非健康体の問題によるケガの多発など科学的でトレーニング健康な食事管理も課題であろう。
要は、国際化の波の中で日本型経営の不祥事が連発しているケースと同じで同協会の一層のガバナンスの強化が問われている。

 

◆コラム◆ 相撲界の「生きにくさ」
若林哲治の土俵百景

https://www.jiji.com/jc/v4?id=dohyouhyakei-0064_201711240001

 - 人物研究, 戦争報道, 現代史研究

Comment

  1. 武内暁 より:

    前坂さま。お元気に発信ありがとうございます。一度お会いしたいです。76歳になりましたが相変わらずの毎日です。18日の東京新聞「生きる」ページに二回にわたり「地域・民衆ジャーナリズム賞」について掲載されます。
    今も日本記者クラブ会員サロンたまにはですか。
    今後ともよろしくお願いいたします。武内

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

『電子書籍 Kindle版』の新刊を出しました。★『トランプ対習近平: 貿易・テクノ・5G戦争 (22世紀アート) Kindle版』

米中二大大国の覇権争い——開幕。 「トランプ大統領の大統領の大統領就任から2年間 …

no image
日本リーダーパワー史(546)安倍地球儀外交(積極的平和主義)をオウンゴール外交 にしてはならない②

  カメラと写真映像のワールドプレミアショ「CP+(シーピープラス)- …

no image
終戦70年・日本敗戦史(119)日清戦争は日中韓認識ギャップ(思い違い)の対立で東学党の乱から日清出兵⑥

 終戦70年・日本敗戦史(119)                   <世田谷 …

no image
日本メルトダウン脱出法(717)「世界同時株安は「投機の時代」の終了を示す」●「天津爆発が証明した中国の想像を絶する“ずさんさ”」

    日本メルトダウン脱出法(717) 世界同時株安は「投機の時代」の終了を示 …

片野勧の衝撃レポート(82)原発と国家―封印された核の真実⑭(1997~2011) 核抑止力と脱原発 ■東海再処理工場で火災・爆発事故発生ー三谷太一郎氏 (政治学者、東大法学部長、 文化勲章受章者)の証言➀昭和20年6月の岡山大空襲を9歳で体験、 九死に一生を得た。『原発事故は近代日本の挫折である』

  片野勧の衝撃レポート(82) 原発と国家―― 封印された核の真実⑭(1997 …

『日本の運命を分けた<三国干渉>にどう対応したか、戦略的外交(外交の要諦 )の研究』㉑』★『三国干渉』後に川上操六はインテリジェンスをどう組み立てたか『日英同盟締結に向けての情報収集にエース福島安正大佐 をアジア、中近東、アフリカに1年半に及ぶ偵察旅行に派遣した」

2019/09/29 『リーダーシップの日本近現代史』(65)記事再編集 前坂  …

no image
日中北朝鮮150年戦争史(11) 日清戦争の発端ー陸奥宗光の『蹇々録』で読む。日本最強の陸奥外交力④『陸奥が徹底したこだわった宗属関係の謎とはー』李朝は、宗主国「清朝」の代表的属国。 朝鮮国王は、清国皇帝の奴隷のまた奴隷である。

日中北朝鮮150年戦争史(11)  日清戦争の発端ー陸奥宗光の『蹇々録』で読む。 …

no image
速報(233)『ソ二―はよみがえることができるか』『自動車産業は「農業化」したー輸出は半減、国は補助金頼み』ほか

  速報(233)『日本のメルトダウン』   ●『ソ二―はよ …

no image
日本メルトダウン脱出は可能か(598)『円安と通貨戦争:能力の低い武器』(英エコノミスト誌)★【特別企画】アベノミクスのジレンマ」

       日本メルトダウン脱出は可能か(598 …

no image
日本リーダーパワー史(211)<無責任国家・日本の死にいたる病>―<良心の政治家はいないのか>ー『福島原発事故』で

  日本リーダーパワー史(211)   <無責任国家・日本の …