歴史は繰り返すのか!『現在の世界情勢は1937年8月の「アメリカ/ヨーロツパの情勢は複雑怪奇なり」とそっくり』★『この1週間後にドイツ・ソ連のポーランド侵攻により第2次世界大戦が勃発した★『日本は<バスに乗り遅れるな>とばかり日独伊三国同盟を結び、1941年12月、太平洋戦争に突入する』★『インテリジェンㇲの無知で亡んだ日本』
「米欧情勢は複雑怪奇なり」
1939年(昭和14)8月23日、突如、独ソ不可侵条約が締結され日本側は「寝耳に水」、驚天動地のショックを受けた。平沼棋一郎内閣は28日「欧州情勢は複雑怪奇なり」との恥ずかしい声明を出して総辞職した。
当時の日本は国際共産主義運動の脅威に対抗するためソ連を第一敵国として1937年に「日独伊防共協定」を結び、これを軍事同盟化しようとドイツと画策していた。熱心に推進する陸軍に対して「三国同盟ができると米英との戦争になる」と海軍の三羽烏(米内光政、山本五十六、井上成美)が絶対反対を貫き、デッドロックに乗り上げた。平沼内閣下(8ゕ月間)でもこの問題を審議する「五相会議」(首相、陸相、海相、蔵相、外相)が延々と70回も続く「小田原評定」が繰り返された。
この間、関東軍が勇み足的に5月にノモンハン事件も起こして、ソ連軍に大敗した。ヒットラー・ドイツは一向に決まらない日本側に業を煮やして独伊両国で軍事同盟をさっさと結んだ。8月には独ソがポーランド分割の秘密協定を結び、相互不可侵条約を提携した。日本は完全に裏切られ無視された。
9月1日朝、突如、ドイツ軍は電撃戦でポーランドに侵攻して第2次世界大戦が始まった。またたく間にノールウエー、デンマーク、フランスを制圧、パリは翌40年6月14日に陥落。大方は「もう戦争はドイツの勝利で終わる」と予想した。
このドイツの圧勝ぶりに慌てた日本側は『バスに乗り遅れるな」とばかり、三国同盟論が再燃し、近衛内閣での松岡洋右外相の剛腕外交によって40年9月「三国同同盟」と「日ソ不可侵条約」を締結した。この結果、日米戦争は不可避の情勢となった。
1年3ヵ月後の1941年(昭和16)12月8日に山本五十六連合艦隊司令長官の計画でハワイ真珠湾をアタックし、日本は最後に第2次世界大戦に加わった。ちょうどその日はドイツがソ連に侵攻し、モスクワ攻防戦を展開中だったが、マイナス42度の冬将軍に阻まれてドイツ軍が敗退、撤退を開始した日だった。これ以後、ドイツ軍は敗北の道を転落していった。
戦争も同盟も勝敗のプロセスも歴史とともに目まぐるしく変転する。その裏でし烈な情報戦、諜報戦が展開される。外交の裏面は国益をかけたあの手この手のだましあい、かけ引き、取引の情報戦、インテリジェンスである。日本側は赤子の手をひねるようにヒトラーとスターリンに騙された。
昭和戦争史の転換点を振り返ると「複雑怪奇な欧州情勢を読み切れず」、「バスに乗りおくれるな」との時局便乗主義、八方美人的性格で、大局を長期的にみる判断力がなく、スローモーな時機を失した決断で外交戦、情報戦に失敗を重ねた苦い教訓がある。この外国知らず、情報音痴の民族性は遺伝し簡単には直らない。2度あることは3度ある。
現在進行中の世界政治経済情勢の激変ぶり傍観しながら、80年前の「西欧は複雑怪奇なり」とその後の経過を思い出した。
イギリスのブレクジットによるEU離脱交渉は12月12日夜、与党・保守党のメイ党首に対する信任投票が行われ、200対117票でメイ首相は辛くも信任された。しかし全体の37%もの保守党議員が反対したので、今後の野党も含めた議会での可決は一層難しい情勢となってきた。3月29日がEU離脱の期限であり、もしこのまま「合意なき離脱」となれば世界は大混乱に陥り、リーマン級の大恐慌が起きる可能性が高い、とみられている。(英国中央銀行の調べ)、
そうなった場合、GDPは15年間で9.3%縮小し、仮にメイ案が承認されても、2.5%の縮小となる。世界の金融センターのシティーも甚大な影響をうけて、イギリスの没落は決定的とみられている。
一方、米中貿易戦争はトランプ、習近平会談の結果、米国は関税引き上げ25%を3ゕ月間延期すると発表したが、同時にファーウェイ社副会長で最高財務責任者(CFO)の孟晩舟氏をカナダで逮捕、拘束した。もう1人重要人物で「将来のノーベル賞候補」とうわさされていた米スタンフォード大学の張首晟教授が、この日大学内で自殺しているのが発見された。
両者の因果関係ははっきりしないが、中国政府が海外の中国人研究者や技術者を破格の待遇で呼び寄せる「千人計画」というプログラムがある。米国はこれを「知的財産権の泥棒プログラム」と危険視し、FBIはこの関係者を次々に逮捕しているが、張首晟教授はこの千人計画の立案者ともいわれている。
米中ハイテク戦争の激化で華為技術(ファーウェイ)が5G(現在進行中の第5世代移動通信システム)とスマホで世界トップを握るグローバル通信網の覇権奪取目的にして、それを軍事的に利用する「中国製造2025」計画について米側が全面的に待ったをかけた。
世界覇権国(米国)と第2の経済軍事の膨張国(中国)間の対立は歴史的には75%の確率で戦争に突入という恐ろしい「トゥキディデスの罠」がある。来年はそのリスクは一層高まるのではないか。
米中間に挟まれた日本はこれまで八方美人的な外交態度をとってきたが、来年は20カ国・地域(G20)首脳会議(大阪、6月)、第7回アフリカ開発会議(横浜市、8月)など外交ラッシュが続く。この正念場にいかに対応するか見ものである。
関連記事
-
-
日本リーダーパワー史(634)日本国難史にみる『戦略思考の欠落』(27) 『川上操六参謀次長の田村怡与造の抜擢②<田村は川上の懐刀として、日清戦争時に『野外要務令』や 『兵站勤務令』『戦時動員」などを作った>
日本リーダーパワー史(634) 日本国難史にみる『戦略思考の欠落』 …
-
-
日本リーダーパワー史(187)『世界史上空前の宰相としての桂太郎―「日英同盟』破棄と「日独・日中同盟」を孫文と密約!?―
日本リーダーパワー史(187) 『世界史上空前の宰相としての桂太郎 ―「日英同盟 …
-
-
世界リーダーパワー史(935)ー『迷走中のトランプ大統領のエアフォースワン』★『米中間選挙の予備選挙は事実上、9月12日に終わったが、情勢はこれまでとは一変して民主党が上、下院を奪還する勢い!(世論調査の結果)』
世界リーダーパワー史(935)ー 中間選挙の情勢はこれまでとは一変して民主党が奪 …
-
-
『オンライン講座/日本戦争報道論①」★『ガラパゴス国家・日本敗戦史』⑫「森正蔵日記と毎日の竹ヤリ事件⑤まきぞえをくった二百五十名は硫黄島 で全員玉砕した』★『挙国の体当たり―戦時社説150本を書き通した新聞人の独白』森正蔵著、毎日ワンズ)は<戦時下日記の傑作>森桂氏に感謝します』
2014/10/09 記事再録 120回長期連載中『ガラ …
-
-
日本リーダーパワー史(162)国難リテラシー⑩最後の首相・鈴木貫太郎の突破力ー『まな板の鯉になれ』
日本リーダーパワー史(162) 国難リテラシー⑩最後の首相・鈴木貫 …
-
-
『オンライン講座・国難突破力の研究』★『(1945年敗戦)「この敗戦必ずしも悪からず」と勇気と今後の戦略を提示したその国難突破力』★『 (外交の鉄則)列国間の関係に百年の友なく 又、百年の敵なし、 今日の敵を転じて明日の友となすこと必ずしも 難かしからず』
近現代史の重要復習問題/記事再録/ 2019/05/18 …
-
-
『現代版・葛飾北斎のf富嶽三十六景動画』★『白雪姫/富士山」を愛する鎌倉散歩ー材木座海岸、和賀江島上、逗子マリーナからの富士山はワンダフル!』
2015/01/11 動画版再編集』 湘南海山ぶらぶら日記ー「白雪姫のような富士 …
-
-
人気記事再録/日本天才奇人伝③「国会開設、議会主義の理論 を紹介した日本最初の民主主義者・中江兆民―③<明治24年の第一回総選挙で当選したが、国会議 員のあきれ果てた惨状に「無血虫の陳列場」(国会)をすぐやめた>
2012/12/02明治24の第一回総選挙で当選したが、あきれ果て …
-
-
『日本敗戦史』㉛『太平洋戦争敗戦70年目―ポツダム宣言を即座に受諾する政治決断力がなく終戦までの3週間 に50万以上が犠牲に。
『ガラパゴス国家・日本敗戦史』㉛ 『来年は太平洋戦争敗戦から70年目― …
-
-
『Z世代のための太平洋戦争講座』★『山本五十六、井上成美「反戦海軍大将コンビ」のインテリジェンスの欠落ー「米軍がレーダーを開発し、海軍の暗号を解読していたことを知らなかった」
太平洋海戦敗戦秘史ー山本五十六、井上成美「反戦大将コンビ」のインテリジェンスー「 …
