前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

世界リーダーパワー史(936)ー『トランプ大統領の弾劾訴追の可能性は?』★『ムラー特別検察官の『ロシアゲート事件追及』にトランプ陣営の最側近、参謀たちは総崩れ、危うし大統領!』

   

世界リーダーパワー史(936)

ムラー特別検察官の『ロシアゲート事件追及』はどこまで進んだか

 

「8月21日、トランプ氏個人の元顧問弁護士であるマイケル・コーエン氏がニューヨークの連邦地裁で司法取引に応じ、「トランプ氏の指示のもとで不倫関係にあった2人の女性に口止め料を選挙資金の中から支払った(選挙資金法違反)」を証言し有罪となった。コーエン被告の弁護士のラニー・デービス氏は判決後に「これがコーエン被告の罪ならば、トランプ氏も当然罪となるのではないか」と語った。

これに対して翌朝、トランプ大統領は「でっちあげだ」と激しく非難し「口止め料は自分のお金で支払った。選挙資金は使っていないので選挙資金法違反ではない」とツイッターで反論した、しかし、大統領は当初、不倫自体を認めず、支払いについても知らないと強弁していたが、これが、うそであったことが今回、明確になった。

コーエン氏は10年以上もトランプ氏の顧問弁護士を務めて、訴訟取引や裏工作を一手に引き受けてきたいわば「汚れ役」、懐刀。トランプ一族が経営する不動産会社「トランプ・オーガニゼーション」(企業コングロマリッド)の海外取引にも携わり、2018年4月、連邦捜査局(FBI)はコーエンの事務所や自宅を捜索し、押収した資料の中で2人の女性に支払われた口止め料の証拠をつかんだ。検察官は司法取引に応じなければ、何年も服役するぞと圧力をかけて、司法取引に応じさせた。2016年の米大統領選中にトランプタワーで行われた長男ドナルド・トランプ・ジュニア氏とロシア人弁護士との面会について、コーエン氏がモラー特別検察官に対し、大統領は事前に承認していたと証言したといわれている。

彼だけではなく、捜査の手はトランプの財産形成にあてられて、トランプ・コングリマリッド(企業集団)の最高財務責任者(CFO)のアレン・ワイセルバーグ氏も大統領選の直前、女性の1人に口止め料を支払ったことが分かった。ワイセルバーグ氏はトランプ氏の“金庫番”で、1970年代にトランプ氏の実父フレッド氏の会計士になり、息子のトランプ氏の時代になっても、同企業やトランプ氏個人の経理を任せられ、トランプ氏のカネの全体の流れを把握する人物です。同社はコーエン氏がポルノ女優に支払った口止め料13万ドルの返済金として、ボーナスを含め42万ドルを同氏に払っており、ワイセルバーグ氏はこの経緯を詳細に知る立場にあった。ワイセルバーグ氏も司法取引をして刑事訴追を免除されている。つまり、トランプ懐刀の2人が有罪を認めたことで、トランプは一挙に窮地に追い込まれている。

また、これとは別に大統領選挙でトランプの外交政策顧問を務めていたジョージ・パパドプロス被告も9月7日、ロシア疑惑を捜査しているFBIに偽証言したとして禁錮14日の有罪判決を受けた。パパドプロス被告は、トランプ陣営のトップから2016年にロシアとパイプを作るように指示され、ヒラリー・クリントン氏に不利な情報をロシア側と共有していた。

トランプ大統領はコーエンの有罪証言に対して「僕が弾劾されるようなことがあったら、おそらく市場は暴落して、みんなすごく貧乏になると思う」と強気の発言をしている。

 

さらに9月14日には2016年の米大統領選でトランプ氏の選対本部長を一時務めたマナフォート被告(69)はワシントン連邦地裁で、同被告は、06~15年にかけて、元ウクライナ大統領の親露派ヤヌコビッチ氏らへのロビー活動で得た巨額の報酬を国外口座に隠して、マネーロンダリング(資金洗浄)した容疑を認め、司法取引に応じ、モラー特別検察官に協力する意向を示した。

これまで一連のモラー特別検察官の捜査では、フリン元大統領補佐官(国家安全保障問題担当)やトランプ陣営の選対幹部らが、続いて8月にはトランプ氏の元顧問弁護士のコーエン被告も取引に応じて、トランプ陣営の参謀、側近たちは総崩れ状態となった。これに加えて9月に入って中間選挙の世論調査の結果での民主党の躍進伝えられ、「トランプ大統領弾劾」の可能性も高まっ一段と高まってきた情勢だ。

 

弾劾の規定は合衆国憲法第2条第4節にあり、「大統領並びに副大統領、文官は国家反逆罪をはじめ収賄、重犯罪や軽罪により弾劾訴追され有罪判決が下れば、解任される」と定めている。この弾劾のポイントは、反逆罪や殺人罪などの重罪に限定しているのではなく、幅広く軽犯罪であっても弾劾できること。

トランプ大統領の弾劾訴追理由は数多くある。利益相反問題(トランプ氏が大統領就任後も自分の企業の所有権を手放さず、個人の利益と公務を分離していないこと)、ロシアゲート事件(ロシアが米大統領選に介入したとされる問題でロシア側とトランプ陣営との連携、情報漏洩、スパイ行為、金銭の授受などが数々の疑惑)、トランプ大学の詐欺訴訟(ニューヨーク州検察は13年、トランプ大学を詐欺罪で刑事訴追し、16年11月、この集団損害賠償訴訟で、総額2500万ドルを支払った事件)、大統領宣誓下での偽証罪、今回の不倫事件の口止め料を選挙資金から支払われたのではないかという選挙資金違反容疑や偽証罪など山ほどある。

特に重大なのはロシアゲート事件で、もしトランプ氏がロシア側と連携したことを示す証拠が出れば、明らかに「国家反逆罪」で弾劾訴追される。

最近ではクリントン元大統領が1999年に不倫疑惑での偽証をめぐってそれぞれ弾劾裁判に持ち込まれた。いずれも無罪となっている。ニクソン元大統領は74年、ウォーターゲート事件をめぐる司法妨害などで下院司法委員会が弾劾の勧告を決めたが、ニクソン氏が辞任したため弾劾裁判は行われなかった。

 - 人物研究, 戦争報道, 現代史研究, IT・マスコミ論

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
『リーダーシップの日本近現代史』(271)★『日本敗戦(1945/8/15)の日、斬殺された森近衛師団長の遺言<なぜ日本は敗れたのかー日本降伏の原因>★『日本陸軍(日本の国家システム中枢/最大/最強の中央官僚制度の欠陥)の発足から滅亡までを 日露戦争まで遡って考えないと敗戦の原因は見えない』★『この日本軍の宿病ともいうべき近代合理的精神の欠如、秘密隠ぺい主義、敗因の研究をしない体質はその後の日本の官僚制度、政治制度、国民、政治家、官僚も払拭できず、現在の日本沈没に至っている』

  2010/02/10 /日本リーダーパワー史( …

no image
<一連のオウム真理教事件の全解説>

1 『明治・大正・昭和・平成事件・犯罪大事件』東京法経学院出版(2002年7月刊 …

no image
★5 日本リーダーパワー史(754)–『日本戦争外交史の研究』/『世界史の中の日露戦争を英国『タイムズ』米国「ニューヨーク・タイムズ」は どう報道したか」②(11-20回)★『 戦争とは外交の一手段。<恫喝、罵倒、脅迫、強圧のケンカ外交で相手は参ると思って、日本を侮ったロシアの油断大敵>対<日本の礼を尽くしてオモテナシ、臥薪嘗胆、無言・沈黙・治にいて乱を忘れず、天機至れば『一閃居合斬りも辞さぬ』とのサムライ外交との決戦が日露戦争で、両国の戦略論、パーセプションギャップ(認識ギャップ、思い違い)をよく示している。』

  日本リーダーパワー史(754) 『世界史の中の『日露戦争』ー (英国『タイム …

『MF・ワールド・カメラ・ウオッチ(9)』「フィレンチェぶらり、ふらり散歩(4/19-4/28)「ウフィッツィ美術館」の「ヴィーナスの誕生」などに圧倒される②

  2015/06/07 『MF・ワールド・カメラ・ウオッチ …

no image
『各国新聞からみた日中韓150年対立史⑦』●『朝鮮は中国の属国であり、一朝事あると中国が朝鮮を助ける』(『申報』)

 『各国新聞からみた東アジア日中韓150年対立史⑦』   & …

no image
   日中北朝鮮150年戦争史(37)<歴史復習問題>『120年前の日清戦争の真実』② 陸軍でも秀吉の朝鮮出兵以来の大陸へ進出する『日清戦争」が開始された。開戦の詔勅に「国際法を遵守すべし」

   日中北朝鮮150年戦争史(37)<歴史復習問題> 『120年前の日清 …

no image
<2018年は明治維新から150年 >「目からウロコの明治裏面史(1)」日本の運命を決めたドイツ鉄相・ビスマルクの1言『大久保利通の「富国強兵政策」はこれで決まった』

2018年は明治維新から150年 目からウロコの明治裏面史(1) 日本の運命を決 …

no image
日本リーダーパワー史(852)-「安倍自民党対小池希望の党」 の戦(いくさ)が始まる。』●「安定は不安定であり、不安定は安定である」★『恐るべし!小池・前原の策略に<策士、策に溺れた安倍自民党>』

 日本リーダーパワー史(852)-   トランプ対金正恩の『世界スリラー劇場』は …

no image
「英タイムズ」「ニューヨーク・タイムズ」など外国紙が報道した「日韓併合への道』⑱「伊藤博文統監の言動」(小松緑『明治史実外交秘話』昭和2年刊)③『陰謀の裏に女性あり』韓国王宮隣のソソタク・ホテルが陰謀の策源地」

  「英タイムズ」「ニューヨーク・タイムズ」など外国紙が報道した「日韓併合への道 …

「75年たっても自衛権憲法を全く変えられない<極東のウクライナ日本>」★「ウクライナ戦争勃発3日後に<敗戦国ドイツ連邦議会>は防衛費を1,5%から2%に増額した」★『よくわかる/日本国憲法制定真相史③』★『わずか1週間でGHQが作った憲法草案 』★『30時間の憲法草案の日米翻訳戦争』★『米英ソの対立が決定的となり、2月4日にはチャーチル英首相が「鉄のカーテン」演説を初めておこなった』★『冷戦勃発で、日本の憲法改正問題はこの代理戦争の色彩を帯びた」

日本リーダーパワー史(357)●『東西冷戦の産物の現行憲法』『わずか1週間でGH …