前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

世界リーダーパワー史(928)-『「アメリカ・ファースト」から「トランプ・ファーストへ」」★『トランプの仕掛ける世界貿易戦争勃発』、第一ターゲットは対中国、第2ターゲットはEU・NATO同盟国、日本も第3ターゲットに?』★『1945年後の米国1国支配の国際秩序の崩壊へ』―「トランプ・ファースト」へ

   

 

米中貿易関税戦争勃発―「トランプ・ファースト」へ

コミー前FBI長官はその回顧録で「トランプ大統領はニューヨークで検挙したマフィアのボスの態度そっくりで、ボスへの忠誠心が組織の絶対の掟となっている」と批判した。

そのトランプ対金正恩の「仁義なき戦い」(米朝首脳会談(6/12)篇)は「トランプ氏の大失敗、金正恩の大成功、中国の大喜び、一番割を食ったのが日本」と世界メディアは酷評した。

続く「仁義なき戦い」第2弾の習近平・中国との貿易関税戦争が7月6日に勃発、トランプは中国の知的財産権侵害を理由にハイテク製品に制裁関税25%を課した。

7月20日、トランプは「われわれは不公平を正す。中国には単年で5700億ドルもの赤字があり,これはアンフェアだ。だからこの先、(中国からの輸入品)5000億ドルまで、追加関税をかけていく」とテレビ会見で吠えた。

第3弾の「ロシア篇」、ロシアの独裁者プーチンとの決闘が7月16日にヘルシンキで行われた。トランプは「ロシアによる大統領選挙への介入はなかった」と会談後の記者会見で述べたが、共和党の一部からも「国家に対する反逆だ」と大ブーイングを浴びて翌日にはあわててその発言を訂正した。相変わらずの迷走、脱線ぶりだ。

さらに第4弾は同盟国への「仁義なき戦い」の開始である。米ロ首脳会談に先立つNATO首脳会議ではトランプは加盟国に対し、「GDPの2%を国防費に充て、最終的には4%にすべきだ」と大幅な国防費の増額を要求した。

「読売新聞(7月5日付)で、フランシス・フクヤマ氏(国際政治評論家)は「G7でトランプは、米国の緊密な同盟諸国の全てに貿易制裁の脅しをかけた。トランプ氏の「アメリカ・ファースト」の世界は、実は「アメリカ・アローン」(米国独りぼっち)の世界なのだ」

「アメリカ・アローン」(米国独りぼっち)の世界へ

米ニューヨーク・タイムズ(6月15日付)では、国際戦略研究所(IISS)コリ・シェイク副理事長は「いまから数十年後に二〇一八年六月を振り返ると、あれが世界史の曲がり角、すなわち自由秩序の終わりだったと思うだろう。」と述べた。

 

以上のトランプの全面戦争は、単なる米中の関税・貿易戦争ではなく、両国の熾烈な覇権争いであり、新国際秩序(経済と国力を定めるルール)の再定義をめぐる戦いなのである。

 

そこでトランプが最大のターゲットにしているのは中国・習近平である。習近平は今年2月の全人代で連続2期10年という国家主席の任期を撤廃し、盟友の王岐山を国家副主席に抜擢し史上初めての「永久国家主席」の地位につき、「独裁体制」を築いた。メディアも完全に制圧し、習近平賛美のプロパガンダ映画『すごいぞ、わが国』を上映、毛沢東流の個人崇拝を強要し、外交政策は「習近平思想」一色と化している。

さらに長期戦略「一帯一路」の広域経済圏構想を掲げ、中国の貿易輸出国をユーラシア大陸のほぼ全域から、アフリカ、その他地域に至るまで73カ国へ拡大した。それを全面金融支援する「AIIB」(中国が主導するアジアインフラ投資銀行)や「中国製造2025」(建国100周年にあたる2049年に「世界一の製造強国となるという産業高度化の長期戦略)で米、西欧主導の国際秩序に対抗しており、隣国との領有権問題で紛争が絶えない南シナ海で軍事プレゼンスを拡大、強化してきた。

中国を自由貿易圏の仲間に加えれば、共産主義的政治体制は民主的に改革されると歴代米政権は対中政策を緩和してきたが、それが全くの裏目に出た。トランプはそれに堪忍袋の緒を切って反撃に出たのである。

特に、「中国製造2025」で、日米欧が特に警戒するのは航空や産業用ロボット、半導体、ハイテク分野の基幹部品や基礎材料での自給率を「20年に40%、25年に70%」に引き上げて、2049年に「世界一の製造強国」をめざし、米国を凌駕することを習近平が明言したことで、トランプはこれに激怒して、全面的にストップをかけるために知的財産権侵害の制裁を発動したのである。

習近平は6月の会議で「米国も衰退期に入り、いずれ中国の時代が来る。ただ、現時点では米国の方が強大だ。周辺国や発展途上国と連携して国を高め、機が熟すのを待つ」という内容の発言を行った。

鄧小平の「韜光養晦」(とうこうようかい)「才能を隠して、内に力を蓄える」との抑制的な外交姿勢をとるように訓示したという。

こうした習近平独裁体制のおごりへの批判が外国からはもちろん国内の1部からも出始めた。

このため、習近平は戦術変更したのか、外交当局はこの「韜光養晦」という言葉を盛んに引用し、引き締めを図っているという」(日経7月11日付)

今、トランプが最も気にしているのは「ロシアゲート事件」であり、モラー特別検察官の追及でトランプ陣営の選対本部長が収監されるなど捜査手が身辺に近づいていることだ。

ワシントンの知人の情報では米中間選挙(11月)の結果は、「トランプが勝利するだろう」という。別の識者は「ロシアゲート事件の起訴によりニクソン大統領の二の舞になる」ともいう。さて、一体どうなるか。トランプマジックショーから目が離せない。

 - 人物研究, 戦争報道, 現代史研究

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
知的巨人たちの百歳学(182)/記事再録/作家・野上弥生子(99)-『今日は昨日、明日は今日よりより善く生き、最後の瞬間まで努力する』★『『いっぺん満足のゆくものを書いて威張ってみたいのよ』』

    2015/09/25/百歳学入門(22) …

no image
日本メルトダウン(940)『尖閣に迫る中国、日本はどう対応すべきか米専門家が警告、中国の尖閣奪取計画は確実に次の段階へ(古森義久)』●『西側をスケープゴートにする中国の「賭け」 偏見をあおるプロパガンダに拍車、裏目に出る恐れも (英FT紙)』●『歴史を軽視した革命思想から解き放たれ、初体験は55の夏 (李小牧)』●『石炭ブーム終焉で中国の地方を襲う地盤沈下、膨らむ経済負担』●『南シナ海“中国敗訴”で共産党統治のジレンマが浮き彫りに 』

 日本メルトダウン(940) 尖閣に迫る中国、日本はどう対応すべきか米専門家が警 …

no image
日本リーダーパワー史(787)「国難日本史の復習問題」 「日清、日露戦争に勝利」した明治人のリーダーパワー、リスク管理 、インテリジェンス④』★『日本史の決定的瞬間』★『撤退期限を無視して満州からさらに北韓に侵攻した傍若無人のロシアに対し東大7博士が早期開戦論を主張(七博士建白書事件)』

日本リーダーパワー史(787) 「国難日本史の復習問題」 「日清、日露戦争に勝利 …

no image
日本の最先端技術『見える化』チャンネル-★再録『働き方改革EXPO(2008 /7/11、東京ビッグサイト)』でのプレゼンベスト5」★『富士ソフトブースでの「日本マイクロソフトが行った働き方改革」の実践。』

 2018/07/21日本の最先端技術『見える化』チャンネル再録 &n …

「来日した『21世紀の資本』の著者 トマ・ピケティ氏が日本記者クラブで会見、記者の質問に答えた動画90分」(1/31)

『来日した『21世紀の資本』の著者 トマ・ピケティ氏が日本記者クラブで会見し、記 …

Z世代への歴史的遺言★『日露戦争に勝利した伊能博文の知恵袋・金子堅太郎(農商務相)とルーズヴェルト米大統領の「友情外交インテリジェンス」『日本海海戦勝利に狂喜した大統領は「万才!」と 漢字でかいた祝賀文を金子に送る

金子堅太郎が語る(「日露戦役秘録」1929年 博文館)より ルーズベルトがバルチ …

no image
日本リーダーパワー史(731)再録記事・日本の最強の経済リーダーベスト10・本田宗一郎の名語録⑥『怖いのは失敗することではなく、失敗を恐れて何もしないこと 』●『⑤需要がそこにあるのではない。われわれが需要を作り出すのだ』

日本リーダーパワー史(731) 再録記事ー日本リーダーパワー史(80)   日本 …

no image
世界/日本リーダーパワー史(965)ー2019年は『地政学的不況』の深刻化で「世界的不況」に突入するのか』④『2021年の米大統領選でトランプ再選の目はない。』★『今年は日本は外交決戦の年になる,安倍首相の地球儀外交の真価が問われる。』

2021年の米大統領選でトランプ再選の目はない。 中間選挙の結果、米議会は下院は …

no image
『リーダーシップの日本近現代興亡史』(231)/2020年は終戦75年目ー『昭和史の大誤算を振り返る』★「国を焦土と化しても」と国際連盟脱退した「昭和最大の外交大失敗」を冒した荒木陸相、森恪、松岡洋右のコンビと、それを一致協力して支持した新聞の敗北』★『日本は諸外国との間で最も重要な橋を自ら焼き捨すてた」とグルー米駐日大使は批判した』

    2015/08/17 &nbsp …

no image
月刊誌『公評』7月号『異文化コミュニケーションの難しさ― <『感情的』か、『論理的』かーが文明度の分かれ目>➁『小保方氏は科学者か、論理的な説明がなぜできないのか』

         2015/0 …