前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

世界/日本リーダーパワー史(891)ー金正恩委員長からの会談を要請に飛びついたトランプ大統領、「蚊帳の外」に置かれた安倍首相、大喜びする文在寅韓国大統領のキツネとタヌキの四つ巴のだまし合い外交が始まる①

      2018/03/13

世界/日本リーダーパワー史(891)ー

平昌オリンピックは2月25日に閉幕したが、その後の韓国と北朝鮮の話し合いは急展開している。

3月5日、北朝鮮を訪れた韓国の特別使節団は金正恩朝鮮労働党委員長と会談したが、始終、笑顔で対応した金委員長は「北の体制保持を認めれば、非核化を受け入れても良い。また早期の米朝対話の実現をのぞむ」とこれまでのかたくな態度を一変させた。

この北朝鮮の180度の変化に韓国 在寅大統領は大喜びして、早速、特別使節団を米国に派遣して報告させた。

この結果、3月9日には金正恩委員長からのトランプ大統領への会談を要請に対して。トランプ氏は快諾し、「5月までに会談する」と応じた。まさに、ビッグサプライズの急展開で、世界に衝撃が走った。

北朝鮮は同時に「非核化」の意向を表明し、今後は核実験と弾道ミサイル発射を「自制する」との約束も行った。

米朝関係は1956年の朝鮮戦争停戦以来、民主党の元大統領、ジミー・カーター氏が米朝間の緊張が高まった1994年、米大統領経験者として初めて訪朝し、当時の金日成主席(故人)と会談、緊張緩和につなげた。2010年、11年にも訪朝している。クリントン元大統領も訪朝しているが、トランプ大統領との会談が実現すれば、現職大統領では初めてのことになる。

  • まさに電撃的な米朝会談の発表

訪米した韓国の鄭義溶国家安保室長が8日にホワイトハウスでトランプ氏らと会談し、5日からの訪朝時の金委員長との会談結果を説明した。それによると、鄭氏が『金正恩朝鮮労働党委員長が直接会い、話をすれば大きな成果を出すことができるだろう』と発言したことを口頭で伝えると、トランプ氏は大きくうなづき『よし、会おう』と会談受け入れを即断したという。

トランプ氏はその後『「金正恩は核開発の凍結だけでなく、非核化に言及した。大きな前進だ」とツイッターへ投稿し、いきなり前向きの評価を下した。

トランプ氏は点数を上げたいために自分の軍事・経済の強硬圧力が成功したとアピールしたいのでしょうが、いつもの癖の、一人合点の周りに相談しない素人外交の典型ですね。北朝鮮が言う「非核化の意思」の真偽すら確認しないうちにトランプ氏が直ちにOKしたことに外交、軍事筋からも一斉に反対の声が上げている、といいます。

 

無知ゆえに米朝会談に乗ったトランプは、平和に対する最大の脅威https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/03/post-9717.php

 

何といっても米大統領が北朝鮮との首脳会談することは、米外交の最重要課題であり、ただ1回の韓国の仲介を通しての金正恩の発言に飛びつくのは軽率のそしりを免れない。

外交の常識からみれば、首脳会談の開催が発表には、水面下でかなりの交渉が進み、さまざまな問題がすでに決められた後からです。ところが、トランプ大統領にはそんな常識は通用しない。

将来の核合意が完全に機能するには、『非核化』の定義や核兵器の解体手続きなどを厳格に取り決めた文書と、核放棄の確実な履行を保証するための検証体制の確立が必須だ。そのためには外交当局者間の『予備的対話」を経て本格協議に入り、合意事項を積み重ねていくのが政府間交渉の「常識」(サンケイ3月9日付)

時事通信によると、メデイロス元国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長は米メディアに『金氏は決して核兵器を放棄しない。文在寅大統領を手玉に取り、今度はトランプ氏を手玉に取ろうとしている』と首脳会談の実現は金委員長の存在感を高めるだけだと警告した。

たしかに、会談決定をあたかも和平達成のように大ハシャギしているマスコミもおかしいね。トランプ、金正恩ともつい1ヵ月前まではドナリ合い、核戦争はやるぞと威嚇しあっていた敵同士なのに、急に手のひらを返した。態度がころころかわる2人のこと、これからどうなるか1つ1つねじれにねじれた関係を修復して、非核化への難解なプロセスを登らなければならない。

この気まぐれな、約束を破りっぱなしの暴走・独裁者の2人がうまくいくのかね。タヌキとキツネのだまし合いと一部のメディアは報じていたが、体型はそっくりの『大タヌキ』と「小ダヌキ」のだまし合い外交がこれから本番を迎えるということ。外交担当者による入念な準備を経ずにトランプのトップダウンでの交渉は紆余曲折で、難航すると思う。

米朝首脳会談 トランプ米大統領は「リスクを理解している」CIA長官
http://www.bbc.com/japanese/43367660

 

トランプ氏即断、側近も驚き=安倍首相は「蚊帳の外」-米紙

https://www.jiji.com/jc/article?k=2018031100303&g=use

 

日本は今回の急激な変化は予測できず、傍観者として置き去りにされたのではないかと藪中三十二(元外務事務次官)は朝日3月10日付でコメントしている。

「日本にとって大事なのは、真の非核化の実現。米国が北朝鮮から「核兵器の開発凍結」の約束を引き出せれば一定の評価をする場合もあるが、日本は核ミサイルの射程に入った状態が残ることになり、その事態は絶対に避けるべきだ。米韓と戦略を練り、非核化や検証に向けた具体的なアイデアを出すなど外交不在の米国を助ける必要がある」と述べている。

米朝首脳会談は極めてリスクの高いギャンブル
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/03/post-9698.php

 

北朝鮮の「非核化」は実現されるか 悲観的結末を予想する理由
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/03/post-9707.php

 

 - 人物研究, 戦争報道, 現代史研究

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
小倉志郎の原発ウオッチ(6)動画「ウラルの核惨事 65年後の放射能」ーこれを見れば、汚染地域の今後 が予想できる

 小倉志郎の原発ウオッチ(6)   動画「ウラルの核惨事 6 …

『オンライン/日本政治リーダーシップの研究』★『日本の近代化の基礎は誰が作ったのか』★『西郷隆盛でも大久保利通でも伊藤博文でもないよ』★『わしは総理の器ではないとナンバー2に徹した西郷従道なのじゃ」

    2012/09/09 &nbsp …

no image
速報(385)『日本のメルトダウン』◎動画『今年の経済見通しーロバート・フェルドマン 』● 『浜矩子同志社大学大学院教授』

速報(385)『日本のメルトダウン』   ◎『「どうでもいい存在」から …

『日本の運命を分けた<三国干渉>にどう対応したか、戦略的外交の研究』⑲』★『ベルツの三国同盟に対するドイツの態度を批判』★『伊藤博文の<ドイツ批判>と日英同盟への発展』

  皇室付き外科医エルビン・ベルツの新聞記事 <W・K・フオン・ノハラ …

no image
まとめ>吉田茂について『昭和戦後(1945年〜)の自民党日本政治は吉田茂と吉田学校の生徒(池田勇人、佐藤栄作)がつくった

 <まとめ>吉田茂について   『昭和戦後(1945年〜)の …

『リーダーシップの日本近現代史』(339)-<国難を突破した吉田茂の宰相力、リーダーシップとは・・>★『吉田茂が憲兵隊に逮捕されても、戦争を防ぐためにたたかったというような、そういうのでなければ政治家ということはできない。佐藤栄作とか池田勇人とか、いわゆる吉田学校の優等生だというんだが、しかし彼らは実際は、そういう政治上の主義主張でもってたたかって、迫害を受けても投獄されても屈服しないという政治家じゃない。』(羽仁五郎の評価)

日本リーダーパワー史(194)<国難を突破した吉田茂の宰相力、リーダーシップとは …

no image
日本リーダーパワー史(134) 空前絶後の名将・川上操六(23)日本のトップリーダー養成はなぜ失敗したか

 日本リーダーパワー史(134) 空前絶後の名将・川上操六(23)日本のトップリ …

『百歳学入門(215)』100歳時代の世界のシンボル・ギネス芸術家・平櫛田中(107歳)の長寿パワー(気魄・禅語)に学ぶ』★『悲しいときには泣くがよい。つらいときにも泣くがよい。 涙流して耐えねばならぬ。不幸がやがて薬になる』

  記事再録/2010/07/31 日本リーダーパワー史(77) 『超 …

「Z世代のための日本宰相論」★「桂太郎首相の日露戦争、外交論の研究①」★『孫文の秘書通訳・戴李陶の『日本論』(1928年)を読む』★『桂太郎と孫文は秘密会談で、日清外交、日英同盟、日露協商ついて本音で協議した①』

2011/08/29 日本リーダーパワー史(187)記事再編集 以下に紹介するの …

『Z世代のための日中韓外交史講座』㉑」★『憲政の神様・尾崎咢堂の語る「対中国・韓国論②」の講義⑩尾崎行雄の「支那(中国)滅亡論」を読む(上)(1901年(明治34)11月「中央公論」掲載)』

2013/07/07 日本リーダーパワー史(392)記事再編集 前坂 俊之(ジャ …