前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

日本リーダーパワー史(840 )(人気記事再録)-『権力対メディアの仁義なき戦い』★『5・15事件で敢然とテロを批判した 勇気あるジャーナリスト・菊竹六鼓から学ぶ➂』★『<人権と民主主義を守るため報道の自由> に貢献した「20世紀の世界の 報道人100人」に選ばれた』●『トランプ対メディアの<仁義なき戦い/死闘編>』

   

2013年9月13日の日本リーダーパワー史(417

 

軍部テロと闘った不屈の新聞人・菊竹六鼓(福岡日日新聞
(現・西日本新聞)―

<人権と民主主義を守るため報道の自由>

に貢献した「20世紀の世界の

報道人100人」に選ばれた

<歴史読本(201210月号)に掲載>

前坂俊之(静岡県立大学名誉教授)

〔世界が認めた報道人〕

いま、世界的なグローバリズムの嵐の中で、日本丸は沈没寸前だが、それだけに政治を監視するメディアのカが問われている。昭和政治史の分岐点となった5・15事件で軍部テロを敢然と批判した新聞人・菊竹六鼓の勇気と見識こそ大きな教訓となる。

菊竹は、人権と民主主義を守るため報道の自由に貢献した「20世紀の世界の報道人100人」の一人に選ばれた。

 

昭和七年(一九三二)五月十五日、犬養毅首相(当時七十七歳)は、首相官邸で国家革新をねらう若手海軍将校に襲われ「話せばわかる」と言った瞬間、「問答無用」 と拳銃で射殺された。

この結果、第一回総選挙以来の政党政治家の犬養首相の死とともに議会政治は終止符を打たれ、以後、軍閥ファッショ政治となり、日本は戦争への道を転落していった。この時、軍部テロを真正面から批判したものは菊竹ら少数だった。

 

菊竹六鼓(本名・淳)は明治十三年(一八八〇)一月、福岡県生業郡福益村(現うきは市)で生まれた。二歳の時に骨髄炎で左足が不自由になったが、早稲田大学を卒業、福岡日日新聞社(現・西日本新聞)に入社。明治四十四年に編集局長となり、のちに主筆となった。

足は何度か手術したが失敗し、〝ビッコ″となったが、六鼓はこれを号とした。反骨精神が旺盛で、軍人の政治関与を批判し、憲政擁護、議会政治を守る強い信念をもっていた。

また、〝木鐸記者〃 意識にこり固まっており、若い記者には 「ウソは絶対に書くな」「新聞記者は裁判官より清潔でなければならぬ」と、口ぐせのように言っていた。

〔軍部台頭への痛烈な批判〕

五・一五事件が発生したのは夕方だったが、直ちに号外を発行した。翌朝、出社した菊竹編集局長は「ふだんとかわらずやりましょう」 と訓示し、さっそく論説の筆をとって「首相兇手に斃る」を上野台次整理部長に出した。

上野は感動し、「この社説は夕刊に載せたい。夕刊社説は例のないことですが…・‥」というと、菊竹は「ヨウ、ゴザッショウ」と、二段組で掲載することになった。以後、菊竹は激越な軍部批判の論陣をはる。

・翌十七日 「あえて国民の覚悟を促す」

・十八日  「宇垣総督の談」

・十九日  「騒擾事件と与論」

・二十日  「当面の重大問題」

・二十一日 「憲政の価値」

と、六日連続で火を吐くような論説を書きつづけた。

『朝日』『毎日』などの全国紙の社説は1,2回と軍部批判の口を閉ざす中で、菊竹は「テロは言語道断」と追及し、「陸海軍の政治介入、軍紀の乱れは国を破滅させる」と警告し、返すカタナで、言論の力が一番必要とされる時に沈黙した『朝日』『毎日』などを「魂を売った」とまできびしく批判した。

〔徹底抗戦〕

こうした菊竹の軍部批判は、おひざ元の久留米歩兵第十二師団や在郷軍人会、右翼から激しい抗議となってバネ返った。

第十二師団は久留米支局に対し出頭を命じ、「社説は軍部を誹謗するものであり、取り消せ!」「福日の社説は軍部攻撃を改めない。今、軍部を攻撃する輩をピストルで撃ち殺すぞ」と脅した。

また、同師団と在郷軍人会は 『福岡日日』 の不買同盟をもくろみ、片倉衷大尉は脅迫状を出し、福岡日日新聞社を航空機から爆撃する、とのウワサが飛びかった。これに対し、菊竹は一歩もひかず、脅迫電話には「国を想う気持はあんた方に一歩も劣りはせん」と激しくやりあった。

菊竹は毎朝、徒歩で出勤しており、身の危険を心配した社は車の送迎を申し出たが、これも断わった。

永江真郷(まさと)副社長は「正しい主張のために、わが社にもしものことがあっても、それはむしろ光栄だ」と励まし、不買運動を恐れた販売担当者が「このままでは会社がつぶれるかも……」と泣きつくと、「バカなことを言ってはいかん。日本がつぶれるかどうかの問題だ」と気を吐くなど、社をあげて全面支援した。

菊竹はどのような気持ちでこうした社説を書いたのか。

「今、私は日本の誰よりも最もよく君国を憂い、日本をこの危機から救うために有力な発言をなしうる地位にあることを誇らしく思います」と、長女にあてた手紙に心情を吐露している。

これから五年後、日本を破局への道にひきずっていった軍国主義の末路を見ることなく、菊竹は昭和十二年(一九三七)七月、五十七歳で亡くなった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

CNN記者3人辞職 トランプ氏側近について記事撤回で

http://www.bbc.com/japanese/40427055

 

トランプ氏が女性の容姿侮辱-議員ら反発、ホワイトハウスは擁護https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-06-29/OSBFIDSYF02401

 

トランプにどう対抗するか 米ジャーナリスト1600人が集結
https://news.yahoo.co.jp/byline/tateiwayoichiro/20170629-00072613/

 

自民・二階氏がメディア批判 「お金払って新聞買ってんだ」 

http://www.nikkei.com/article/DGXLZO18369870R00C17A7000000/

 - 人物研究, 戦争報道, 現代史研究, IT・マスコミ論

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

『Z世代のための日本政治がなぜダメか、の講義』①<日本議会政治の父・尾崎咢堂が政治家を叱るー『売り家と唐模様で書く三代目』①『自民党の裏金問題の無責任・C級コメディーの末期症状!」 

   2019/04/21日本リーダーパワー史(2 …

no image
日中北朝鮮150年戦争史(29)★現代史復習、記事再録『外国の新聞が報道した120年前の日清戦争の「三国干渉」の内幕と【腐敗した清国軍の実態】ー南シナ海紛争と同じ中国人民軍の実態!

  日中北朝鮮150年戦争史(29) ◎『外国の新聞、ロシア紙「ノーヴォエ・ヴレ …

no image
『F国際ビジネスマンのワールド・ ニュース・ウオッチ(188)』●「とんがったことを」富士フイルム、76歳の変革者 富士フイルムHD会長兼CEO古森重隆氏に聞く』●『ソフトバンクが英ARM買収、過去最大規模3.3兆円IoT強化へ』●『「ポケモンGO」大ヒットに見る、ソニーが敵わない任天堂の強み』●『LINE上場で“1兆円企業”入りも課題は深刻な人材不足』

  『F国際ビジネスマンのワールド・ ニュース・ウオッチ(188)』 …

no image
速報(366)『日本のメルトダウン』総選挙前にー原発廃炉まで50年、迫る巨大地震を前に事故を忘れ去りたい無責任な政治家、企業

速報(366)『日本のメルトダウン』   総選挙を前にー原発廃炉まで5 …

『オンライン/70歳からの晩年長寿研究講座』★「昆虫記(全10巻)を完成したファーブル(92歳)は遅咲きの晩年長寿の達人』★『晴遊雨学で庭の植物や昆虫を観察し、海でのサーフィンと魚クンと遊び学び、山をぶらぶら散歩して森林浴をすれば楽しさいっぱい、生涯健康/研究できるよ』

  百歳学入門(79) ▼「昆虫記(全10巻)を完成したファ …

no image
日本メルトダウン(993)―『韓国の危機はまだまだ続く、政治スキャンダルで国がまひ状態―海外メディア』●『白人支配の幕引き役となるトランプ新大統領 ―エバンジェリカルズが勝利した「最後の戦い 』●『香港:中国の新たなチベット (英エコノミスト誌 2016/11/12)』●『日本人駐在員も悲鳴、猛烈バブルが続く上海 「このままでは上海に人が住めなくなる」●『共産党の「核心」になっても続く習近平の権力闘争― “誰も挑戦できない権威の象徴”ではなくなった核心の座 』●『トランプノミクスで日本企業に円安の神風、世界は財政拡大へ』●『九州の相撲ファンをうならせた…石浦って何者? 最軽量で敢闘賞』

日本メルトダウン(993)   韓国の危機はまだまだ続く、政治スキャンダルで国が …

no image
『ガラパゴス国家・日本敗戦史』⑬『 戦争も平和も「流行語」とともにやってくる』(上) 月刊『公評』(2011年11月号掲載)

  『ガラパゴス国家・日本敗戦史』⑬   『アジア太平洋戦争 …

「オンライン講座・日本興亡史」の研究」⑯』★『憲政の神様/日本議会政治の父・尾崎咢堂が<安倍自民党世襲政治と全国会議員>を叱るー『売り家と唐模様で書く三代目』②『総理大臣8割、各大臣は4割が世襲、自民党は3,4代目議員だらけの日本封建政治が国をつぶす』②

    2018/06/22 &nbsp …

no image
日本風狂人伝(25) 日本一のガンコ、カミナリオヤジ・内田百閒 のユーモア

日本風狂人伝(25) 日本一のガンコ、カミナリオヤジ・内田百閒 のユーモアじゃ …

日本リーダーパワー史(535)「山本権兵衛を激賞した福沢諭吉(上)」

                  日本リーダーパワー史(535) & …