日本リーダーパワー史(804)『明治裏面史』★『「日清、日露戦争に勝利』した明治人のリーダーパワー、 リスク管理 、 インテリジェンス⑳『ローゼンが旅順でアレキシェフ極東総督と協議』★『ロシアの対案出る―日本案を否定、日露交渉は、その第一歩から正面衝突した』
2017/05/11
日本リーダーパワー史(804)『明治裏面史』
★『「日清、日露戦争に勝利』した明治人のリーダーパワー、
リスク管理 、 インテリジェンス⑳
ローゼンが旅順でアレキシェフ極東総督と協議
こうして、ロシア駐日公使ローゼンがロシア側責任者となり、日露交渉は仕切り直しとなった。しかし、ロシア政府の対案は、いつ提出されるかわからず、日本側の不信感は募るばかりであった。
9月23日、ローゼンは、アレキシェフの招電で東京から長崎に行き軍艦で旅順に向かった。ローゼンが旅順で、アレキシェフ極東総督と会談した内容については、後年のローゼンの『回顧録』に次のように書かれている。
ローゼンは、アレキシェフに対して「日本政府は、韓国を専管的監理の下に置く決意である。日本は清国、韓国両国の独立の保全をして、ロシアの侵略から守ることをスローガンにし、英米諸国の後援を得ようとしており、ロシアは一歩対応を誤れば、韓国、満州の地歩が危うくなる。
この際、唯一の合理的解決方法は、ロシアは満州だけを固執し、韓国はこれを放棄するにある」と説いた。
これに対してアレキシェフは日露開戦後ロシア政府が一部に配付した「秘録」によれば、9月28日にロシア皇帝のこう電奏していた。
「現下の対日談判は成功の望みがあり、ローゼン公使は、ロシアの満州における権益は、必要の場合には、武力に訴えても支持する決意であることを日本に十分に認識させれば、談判は成功するとみており、私もローゼン公使と同意見である」と、奏上していた。
ロシアの対案出る―日本案を否定
ローゼンは10月3日、旅順から東京に帰任し、即日、小村外相を訪れて、ロシア皇帝の許可を得た対案を提示した。
第l条 韓帝国の独立、領土保全を尊重することを相互に約すること。
第2条 ロシアは韓国における日本の優越なる利益を承認し、第l条の規定に背反することなく、韓国の民政を改良すべき助言及び援助を同国に与える、日本の権利を承認すること。
第3条 韓国における日本の商業的及び工業的企業を阻害しないこと。かつ第一条の規定に背反しない限り、右企業を 保護するがために執られたすべての措置に反対しないことを、ロシアにおいて約すること。
第4条 ロシアに知照の上、右同一の目的を以て韓国に軍隊を送達するは、日本の権利たることをロシアにおいて承認すること。但し右軍隊の員数は実際必要なるものを超過せざるべきこと。かつ右軍隊は、その任務を果たし次第、直ちに召還すべきことを日本において約すること。
第5条 韓国領土の一部たりとも軍略上の目的に使用せざること。及び朝鮮海峡の自由航行を迫害する兵要工事を、韓国沿岸に設けないことを相互に約すること。
第6条 韓国領土で、北緯三十九度以北に在る部分は中立地帯と見なし、両締約国いずれもこれに軍隊を引き入れないことを相互に約すること。
第7条 満州とその沿岸は全然日本の利益範囲外であることを日本において承認すること。
第8条 本協約は従前韓国に関して日露両国の間に結ばれたるすべての協定に替わるべきこと。
以上のロシアの対案は、次の点で日本の提案とはまるで違っていた。
➀ 独立と領土の保全を韓国のみに限って、清国に及ぼしていないこと。
② 韓国におけるわが自由行動権に対し種々の制限をつけていること。
③ 韓国へのわが出兵権に対し、〝ロシアに知照すべき″条件を付すること。
④ 韓国領土たりとも軍略上の使用を禁ずること。
⑤ 北緯三十九度以北、すなわち韓国領土の三分の一以上の地域を中立地帯とすること。
⑥ 独立と領土保全の約諾を清国に及ぼさざること。
⑦ 韓国における機会均等主義を承認しないこと。
⑧ 満州及びその沿岸を日本の利益範囲外とすること。
このロシアの対案の趣旨は、「満州においては、日本と協定することを拒絶し、韓国においては、その3分の2において、日本の優越を認めるが、その運用には幾多の制限を付す」というもの。日露交渉は、その第一歩から正面衝突した。
結局、ロシアは「満州とその沿岸は全部、日本の利益範囲外とすること」を主張し,日本案の第1条から「清国」の語を削除して,領土保全の保障を韓国にだけ限定した。
また,日本の韓国に対する援助を「民政の改良」に限定し,韓国領土の一部たりとも軍略上の目的に使用せず,北緯39度以北部分を中立地帯とするよう求めた。8月の日本提案を裏返しにしたもので、完全にすれ違ったのである。
関連記事
-
-
『Z世代のための日本風狂人列伝①』★『 日本一の天才バカボン・宮武外骨伝々』★『「予は危険人物なり」は抱腹絶倒の超オモロイ本だよ。ウソ・ホントだよ!』
2009/07/12 、2016/03/31/記事再録編 …
-
-
「知的巨人の百歳学」(145)―『世界史を変えた「真珠王.御木本幸(97歳)の長寿健康法」★『「ないないづくし」の三重県の田舎の海で、日本初代ベンチャービジネス王に輝いた御木本の独創力をエジソンも大絶賛。ノーベル賞級の大発明!』★『ミキモトパールの発明が20世紀・中東の「石油の世紀」きっかけとなった』
世界史を変えた「真珠王.御木本幸(97歳)の長寿健康法」 &nbs …
-
-
産業経理協会月例講演会>2018年「日本の死」を避ける道は あるのか-日本興亡150年史を振り返る③
<産業経理協会月例講演会> 2013年6月12日&nb …
-
-
『F国際ビジネスマンのワールド・ウオッチ㉘』レッドソックスの神業マネージメント!昨年の大不祥の後遺症を猛スピードで解決した
『F国際ビジネスマンのワールド・ウオッチ㉘』 <レッドソックスの神業 …
-
-
「Z世代のための約120年前に生成AI(人工頭脳)などはるかに超えた『世界の知の極限値』『博覧強記』『奇想天外』『抱腹絶倒』の南方熊楠先生の書斎訪問記(酒井潔著)はめちゃ面白いよ①』南方熊楠の方法論を学ぼう』
2015/04/30/ 「最高に面白い人物史①記事再録 …
-
-
記事再録/『幕末明治の歴史復習重要問題』明治維新150年の近代日本興亡史は『外交連続失敗の歴史』でもある。
2016年10月28日/ 日本リーダーパワー必読史(742) 明治維新 …
-
-
記事再録/知的巨人たちの百歳学(120)ー戦国時代の医者で日本長寿学の先駆者・曲直瀬道三(86歳)の長寿養生俳句5訓」★『日本人の健康長寿の古典的な実践をおこない、貝原益軒よりも先駆的な業績であろう。』
2013年6月20日/百歳学入門(76) 日本長寿学の先駆者・曲直瀬 …
-
-
『リーダーシップの日本近現代史』(296)日本興亡学入門⑩1991年の記事再録★『百年以上前に<企業利益>よりも<社会貢献>する企業をめざせ、と唱えた公益資本主義の先駆者』ー渋沢栄一(日本資本主義の父)、大原孫三郎(クラレ創業者)、伊庭貞剛(住友財閥中興の祖)の公益資本主義の先駆者に学ぶ』
2019/01/09日本興亡学入門⑩記事再 …
-
-
「英タイムズ」「ニューヨーク・タイムズ」など外国紙が報道した「日韓併合への道』⑳「伊藤博文統監の言動」(小松緑『明治史実外交秘話』)⑤ハーグ密使特派事件の真相ー韓人韓国を滅す事態に
「英タイムズ」「ニューヨーク・タイムズ」など外国紙が報道した「日韓併合への道』の …
-
-
『中国紙『申報』からみた『日中韓150年戦争史』⑳朝鮮のなぞ-ロシアの進出で、日中と紛争の可能性」
『中国紙『申報』からみた『日中韓150年戦争史』 日 …
- PREV
- 『 地球の未来/世界の明日はどうなる』< 世界、日本メルトダウン(1042)>『トランプ大統領の就任100日間(4/29日)が突破した』④『朝鮮半島有事の『米中北』のチキンレースの行方はーー 金正恩がレッドラインを超えた7つの大罪』★『ここまで、事態を悪化させた中国の「ダブルスタンダード」』●『北朝鮮の石炭輸出、200分の1に激減 中国が購入停止』★『北朝鮮のミサイル発射を失敗させた米国7つの手口』●『 中国は中朝同盟を破棄できるか?』
- NEXT
- ★『 地球の未来/世界の明日はどうなる』< 世界、日本メルトダウン(1043)>『朝鮮半島クライシス』ーここまで、事態を悪化させた中国の「トリプルスタンダード」★『「北朝鮮危機」はあざとい猿芝居だ! 日米朝「形だけ」の演出 軍事のプロなら一目でわかる』●『北朝鮮・金正恩体制が制裁にビクともしない理由』